《星の見守り人》016 侵

2度の海賊捕縛後、順調に探査の旅は続いていた。

各星系を巡り、未知の天を探る。

しかしある日突然、警報の大音響が船に響た。

ちょうどその時、自室で寢ていた私はその響きで起きた。

そのそばで一緒に橫になっていたミオは私よりも早く反応し、モニターに取り付く。

亜人であるミオは當然寢てなどいなかった。

「どうしました?當直士?」

「突然本船に何かが衝突しました。

はわかりません」

ミオの質問に當直の船務長が答える。

「近付くまでわからなかったのですか?」

「はい、現在もレーダー上は何も無いことになっています」

「斥発スクリーンは働かなかったのですか?」

遅れてミオの橫で私も報告を聞く。

「斥発スクリーンは現在も稼中ですが、このはスクリーンを何らかの方法で通過した模様です。

あっ!」

「どうしました?」

「接舷したから何者かが侵してきます」

「侵

この船のアレナック鋼を破ったというのですか?」

「はい」

第3世代型汎用宇宙探査船は、未知の宇宙を探査するために、金屬の中でも特に強い特殊金屬のアレナックで船を建造されている。

その特殊鋼であるアレナックをこれほど短時間で破って船に進するとは、並大抵の相手ではない。

「場所は?」

その時、畫面の橫に副長の顔が映る。

どうやらたまたま艦橋近くにいて、かけつけた様子だ。

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「こちらは第一艦橋のナタリーです。

現在侵者は居住區の士室區畫に侵

者の目的は不明ですが、すでに船迎撃制にりました」

「よろしく頼む」

「了解しました!」

私の要請と共に副長が指示を出す。

「各區域防シャッター下ろせ!

全船、白兵戦戦闘!

場所は居住區士室階層付近、警備ロボットは最短ルートで即座に現場に急行、到著次第、相手を足止めして白兵戦部隊到著までに現場を確保せよ!

第1部隊以外の白兵戦闘部隊は現場へ急行!

拘留監督以外の副長補佐はそれぞれ遊撃隊として機関室近辺にて部下と共に待機、

それ以外の各船員、各探査隊員は各擔當區域を防

「現場での戦闘指揮は戦闘隊長に一任する」

「承知しました」

すでに自室から走りながら部下たちに命令する戦闘隊長のジュン。

「白兵戦部隊に告ぐ、現在侵者は第8甲板右舷に進、第1部隊は船長代理の護衛、

第2部隊から第4部隊は第8甲板船首から、第5部隊から8部隊は第8甲板船尾からそれぞれ現場に急行。

第9部隊は第7甲板へ、第10部隊は第9甲板でそれぞれ防衛せよ」

過去に海賊に襲われた探査船のうち、実に7割以上が白兵戦によって制圧されていた。

いかに近代裝備の粋を盡くした宇宙船とは言え、接舷して白兵戦を挑んでくる海賊には一たまりもなかったのだ。

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宇宙海賊というと、とにかく宇宙船を攻撃して撃沈、というイメージが強いが、本來彼らは資を奪うために襲ってくるのであって、破壊行為自が目的ではない。

たまたま攻撃の勢いが余って船を撃沈してしまう事や、要求を拒否されたために腹いせに相手を破壊してしまう事は確かにあるが、大抵の場合は相手に降伏を要求して資を奪う。

従って最終的には必ず襲撃した船に乗り込んでくる。

あのギムナールたちとの戦闘の時にも白兵戦を警戒したのはそういう理由だ。

そのため銀河連邦宇宙探査局は探査船の白兵部隊の必要を重視し、現代の最新の探査船であるコランダム777には10部隊からなる白兵戦部隊が組織されている。

それぞれの部隊長はC2級、もしくはC3級の白兵戦用亜人で、普段は高級士室のメイドを替でしているが、各員が撃・格闘の名手であり、有事になると、それぞれ白兵戦の部隊長となり、各々戦闘用C4級亜人を6人ずつ率いて戦闘に対処するようになっていた。

この戦闘部隊にかかれば、人間の白兵戦部隊など相手にならない。

一方、私とミオは船長代理室で副長からの報告を聞いていた。

「船長代理、現在侵者は20ほどで、全て戦闘ロボットと思われます。

狀況から考えて現在そちらから移した場合、侵者と出會う危険がありますので、そちらで待機していてください」

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「わかった」

「ミオ副、カスミ部隊長、船長代理をお願いします」

「承知しました」

「了解です」

現場へ急行するジュン戦闘隊長。

途中、腕にチッ!と何かを掠ったような衝撃をじ、一瞬停止する。

「何?」

ジュンは立ち止まり周囲を見るが何もない。

だがそれを気にする間もなく 敵ロボットに遭遇する。

すでに戦いは始まっていた。

通路に展開した侵者は先ほどよりも増えて、すでに30近くになっていた。

「侵者は格闘ロボット30前後、現在當方の警備ロボットと戦闘中!

當方の警備ロボット、次々とやられていきます!」

驚いた事に連邦軍の正式警備ロボットが次々となぎ倒されていた。

相手の格闘ロボットは相當な出力と格闘能を持っているらしい。

そしてそこに戦闘隊長をはじめとする白兵戦部隊が到著した。

遠距離より線銃を撃つが、敵ロボットの裝甲によりはじかれてしまう。

「ちっ!対ビーム裝甲か!」

これ以上破壊力の強い銃を使えば敵の裝甲を貫けるかもしれないが、それでは艦にもが空いてしまう。

仕方なく白兵戦部隊は敵ロボットを相手に格闘戦を始めた。

しかし驚いた相手は格闘を得意としていた。

もっともそれは対ビーム裝甲をしている以上、當然ともいえた。

敵は完全に格闘に特化したロボット部隊であったが、コランダム777の白兵戦部隊も格闘に関しては日頃から訓練していたために格闘に関しては問題なかった。

しかし進してきた戦闘ロボットは並みではなかった。

「こいつら!普通の格闘ロボットよりも、はるかに強いわ!」

白兵戦部隊の全員が驚いた事に、その侵してきた戦闘ロボットたちは連邦の正式警備ロボットより、力も早さも、そして驚いた事に格闘技すらも上回っていた。

それでも侵者たちは次第に制圧され、戦闘力を奪われていった。

「大方片付いたわね?」

「ちょろい ちょろい」

「油斷するな!」

戦闘隊長が注意した瞬間、侵口のチューブから巨大なロボットがのそりと出てくる

それは先ほどまでの長170cmほどの通常戦闘ロボットではなく、船通路の天井2m30cmのギリギリ近くまでの大きさだった。

「大型格闘ロボット・・・」

「うわあ・・・」

「これはキツイかも」

當然の事ながら大型な分、速さは制限されるかもしれないが、力は遙かに大きいだろう。

こちらも戦闘用とはいえ、C4級の亜人では力負けをするだろうし、C3級ですら危ないかもしれない。

その大型ロボットが次々と6も出てくる。

白兵戦隊長達が會話していると、その大型格闘ロボットの後から2人の人が出てくる

そこにはやせていて髪はボサボサの半白髪で、いかにもマッドサイエンティストという現しているかのような白の男と、黒いマントで首から下を全て隠している10才前後の無表な金髪のが立っている。

「やあ、こんにちは諸君」

「あなたは誰?」

その戦闘隊長ジュンの質問に白の男が機嫌よく答える。

「私の名はドクタースラスキー。

ただの一科學者だ。ただしギムナールの盟友でね。

これは私の娘でエイト、まあ、彼がやられたと聞いて驚いて馳せ參じた訳だ」

「本船に侵した目的は?」

再度のジュンの質問にまるで晝食を注文するかのように軽く答えるスラスキー。

「なあに、大した事ではないよ。

まずはこの船の指揮をしている人の顔を拝見したいのが一つと、後はその人を捕虜として使ってギムナール達と換、まあ~月並みだが人質というところかな」

「そうはさせない、先頭の奴は私が片付ける、殘りの奴は各部隊長が二人で対応」

「了解!」

大型格闘ロボットは大きい事もさる事ながら、それまでの格闘ロボットとは出力が違った。

通常の格闘ロボットはせいぜい人間の2~3倍の力で、これはC5級とほぼ拮抗する。

戦闘隊長であるジュンはC1級、白兵戦部隊の彼たちはC2級からC4級なので問題はなかった。

しかし大型格闘ロボットはC2級に匹敵するか、それ以上のパワーを持っているためにてこずった。

それでも彼たちは日頃の訓練を生かし、連攜プレイで一、また一と倒していった。

各部隊長たちと戦闘員たちの連攜により、最後の一がズズ~ン・・と倒れる。

「さあ、あなたの自慢のロボットは全て倒れたわ、降伏しなさい!」

そのジュンの言葉に心底心したようにスラスキーが答える。

「これは驚いた・・・正直、君たちがここまで優秀とは思わなかったよ。

あの格闘ロボットは私としては結構自信作でね・・・多はやられるのは覚悟の上だったが、まさかそちらに一人も損傷無く無傷とはね、これは々へこむなあ・・・

連邦の科學者もやるなあ… まだまだ私も甘かったようだよ」

白髪頭をかきかき、悪びれる事もなく反省する様子のスラスキー。

「それで?」

「仕方がないので私の娘に活躍してもらう事にする。

本來はこの娘には見學させるだけの予定だったのだがね」

「そのお嬢さんに我々の相手をさせるというつもり?」

「まあね、なくとも君達が考えているよりウチの娘は強いと思うよ」

「?」

訝しがる隊長達の前で黒いマントをバッと取り外すエイト

そのマントに隠れ、素早くくと、すでに前方にいた二人の部隊長が足を切られて転がっている。

その橫には件のが2本の短剣のような武を持って立っている。

あきらかに人間業ではないそのきに全員が驚く。

「なっ!これは?」

「戦闘用サイボーグ?」

「いえ、違うわ、まさか?B級亜人?」

「そう、エイトはB級亜人だよ、殊に戦闘に特化したね。

本來は私の護衛役なんだが・・・

まあ、場合によってはこういう仕事もするさ」

そう言っている間にも次ぎ次ぎとやられていく部隊長たち。

「ああっ」

「強い!」

その景を自室のモニターで見ていた私が即座に橫にいるミオにぶ。

「ミオ!」

その私のびの意味を察したミオが答える。

「おっしゃりたい事はわかります、しかし…」

「どうせ奴らはジュン達を倒した後でここにも來る!

おそらくアレに対抗できるのはこの船で君か副長しかいない!

艦橋は遠いし、副長は指揮をしなければならない。

ここにはカスミが居てくれる。

時間が惜しい!早く行ってくれ!

達が全滅する前に!」

それ以上論爭をしている暇はないと悟ったミオが承諾する。

「わかりました。

セイさんをお願いします!

カスミさん!」

「はい、ミオ副、お気をつけて」

こくっと頷くと私とカスミを後に部屋から飛び出すミオ。

現場は凄慘を極めていた。

すでに上下の甲板からもかけつけた2人を含め、9人中6人の部隊長が戦闘不能に追いやられ、他の戦闘員もすでに半數以上が行不能になり、殘りも時間の問題だった。

(戦闘隊長、私が囮になります、その隙に・・)

(わかった)

7人目の部隊長がやられる寸前に止めにるジュン。

「ガッ!」

そのままエイトの右腕の関節を極める。

きの止まった所をすかさず殘っていた部隊長達2人が両足にしがみついて足止めをしようとする。

「このお!」

その様子に心したようにぶスラスキー。

「こりゃ驚いた!

この中では最上位のC1級とはいえ、一瞬でもB級のエイトを止めるとは!

信じられないよ。

全く驚愕に値する。

君たちは相當優秀な戦闘員だね!

後でゆっくり調べさせてしい位だよ…だが、しかし…」

そう言っている間にもグイグイと押されるジュン。

「くっ!」

「所詮はC級、どう間違ったってB級のパワーには勝てないんだよ」

無表にいとも簡単にC2級の部隊長たちを引き剝がすエイト。

さらに無造作にジュンを力づくで自分から剝がして放り飛ばす。

「ああ~っ!」

そのジュンが放り投げられた先にはミオが駆けつけていた。

投げ飛ばされたジュンをけ止めるミオ。

「ミオ…副

「大丈夫ですか?戦闘隊長」

「はい・・まだけますが、後はお願いします」

「わかりました」

ミオがソッと戦闘隊長をその場に下ろす。

その後、キッ!とドクタースラスキーを睨むミオ。

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