《星の見守り人》020 植民者たち

「こちらの宗教、カザラム教の教祖、ブルーム・カザラム氏は言うなれば天才型の人間で、宇宙航法士の免許を持っていただけでなく、天文知識、工學、數學など、多數の分野の知識を持っていたようです。

それで信者の中で信用ある醫者の資格を持つ男と二人で探査を計畫し、それに加えて二人のお気にりの信者をそれぞれ3人ずつ選び、その8人で星探査に出発したようです」

「なるほどね」

「當初の予定では新天地を見つけたら、そこに理想の國を作り、ある程度國づくりが進んだら、地球に迎えの船を出して、殘りの信者を連れてきて一大國家を作り上げる予定だったようです」

ミサキ隊長は報告を続ける。

「しかし、予想よりも星発見に時間がかかった事、そして街づくりに至っては、はるかに時間がかかってしまった結果、ブルーム氏はもはや長期の宇宙船の航行に耐えうる年令ではなくなり、地球への帰還はあきらめて、この地で自分の教えを永遠に語り継ごうと言う考えに至ったようです」

「・・・なるほど、それで?」

「彼らは現在移民の6世代目から9世代目辺りが混在していますが、科學知識などは皆無の様子です。

數學などはせいぜい四則演算か分數演算が限界のようです。

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王族階級と貴族階級、それに平民に分かれ、共同生活をしている様子です」

「その階級はどうやって出來たんだい?」

「それは住む場所によって決まっているようです。

彼らはここに到著した當初、もちろん宇宙船で生活していましたが、ここで致命的な事が判明しました」

「なんだい?」

「教祖であるブルーム氏は様々な科學知識を持っている人でしたが、建築知識に関してはほとんどその知識がゼロだったのです」

「なんだ?そりゃ?街を造るのならそりゃ必然な知識なんじゃないのかい?」

「どうやらブルーム氏は建築學と言うものを相當軽んじていた様子で、數學や理の知識さえあれば、建築など、どうにでもなると考えていた節があります」

「何だって?そりゃひどいな」

確かに數學や理は事の本となる知識だ。

それがわからなければ他の建築學や冶金學、材料工學などはわからないのは間違いない。

しかし、數學や理學が天才的だからと言って、そこから派生する他の分野を軽んじるというのは大問題である。

どうやら教祖のブルーム氏は天才ゆえの自信過剰な落としのようなに落ちたようだ。

「ええ、ですから最初は簡単な竪式住居ですらままならず、それでも付け焼刃で船に多積んであった建築學の本で學んだブルーム氏が、船の資材と自建築機械を使って、だいたい19世紀から20世紀程度の住宅は建築できたようです」

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「そりゃ大しただ」

「これはブルーム氏が建築學の事は知らなくても、基本の數學や理知識があった事に加えて、たまたま積んであった自建築機械が當時としては最新式の非常に優秀なだった事が大きいです」

「なるほどね」

「そしてそういった住居を20棟ほど造った所で、彼の生命は盡きました。

アンドロイドなどはおらず、一緒に著いて來た醫者のウイリー氏はすでに亡くなっていたために、事実上、その後、宇宙船に関連する一切の機械を使える者がいなくなってしまいました」

「彼らは子孫に機械の使い方を教えなかったのかい?」

「はい、彼らはそういった文明知識を不要と考えていたらしく、自分達の宗教的教義は熱心に教えましたが、數學や、天文學、理と言った學問はほとんど教えていなかったようです。

ですから2世代目以降の人々は機械等も最低限のしか作できないようです。

その結果・・・」

「その結果?」

「生活、特に住居関係に極端な差が出始めました。

何しろ宇宙船の中は27世紀の生活ですが、通常の住居は20世紀、ブルーム氏が亡くなった後に人口が増えて造った住居に至っては、全く建築知識が無かったために、地球で言えば縄文時代の竪式住居とほとんど同様なしか造れませんでした。

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そして権力ある者が宇宙船に住み、王族として、20世紀住宅に住む者は貴族として、その他の住居に住む者は平民として扱われるようになっていったのです」

「ほほう、なるほど、住居による、差別化と階級か・・・」

これはある意味珍しい事だった。

もちろん、地球の歴史でも王侯貴族は豪奢な住まいに住んではいたが、それは結果としてそうなったのであって、そこに生まれたからではない。

しかし、この星の場合は宇宙船に生まれればすなわち王族、20世紀住宅なら貴族という住居基準な區分けなのだ。

「はい、それで私達は宇宙船で降りていったために王族の一種と見なされて、宇宙船にもれてもらえたようです」

「ふ~ん、しかしよくそれで「平民」たちが我慢しているね?

などは起きないのかい?」

「はい、現在でも宇宙船の一部の力が生きているせいで、熱戦銃などがいくつか使用可能ながあるようで、年に一度、王の権威を維持するために、村の周囲にある大木などをそれで打ち倒して見せるそうです。

それによって権威を保ち、王に逆らえばその大木と同じ運命になると信じさせて、民衆を統治しているようです。

そして実際に咎人が出た場合、その熱線銃で処刑をするために権威が保たれているようですね」

「なるほど・・・」

「しかし、彼らは今揺しています。

自分達が知らない王族である、我々が突然現れたからです。

しかも我々の立場は微妙なのです」

「微妙?どういう風に?」

「実は王族の中でも階級があって、我々はそれによると下位王族に相當するようです」

「下位?何で?」

「王族の階級は生まれた宇宙船の大きさによってきまるようで、彼らの宇宙船は正確に言えば、4隻あるのです。

一つは母船としての80m級の超速宇宙船、そして超速航行はできませんが、目的地で星探検に使う予定で搭載していて、実際に使用していた30m級の宇宙船と、20m級の宇宙船2隻です。

この補助船は全て星間の長期探険に耐えうるように、完全自己完結で部での生活も可能な設計になっているので、住居としても十分使えます。

この母船で生活しているのが王族で、他の3隻で生活しているのは正確に言えば、準王族と言った所です」

「そうか、君達は10m級の著陸船で降りていったから、準王族扱いという訳か」

「はい、その通りです」

「ちょっと待てよ?それだったらこのコランダム777は200m級の宇宙船だ。

そこの母船の全長の2倍以上、容積にいたっては、おそらく10倍以上あるだろう。

我々がこのまま降下したら「超王族」として歓迎されるのか?」

「正直それはわかりません。

ただここの王族は、自分がこの星ならず、全宇宙の支配者となる運命になると考えていて、他の者もその考えを信じていますから、それを上回る者の出現に理解は出來ないでしょうし、認めるとも思えません」

元々宗教集団の移民というものは、要は自分たちが頂點をとりたいために地球文明から離するのだから、自分たちがこの世で一番上と考えるのはごく自然な考えである。

「う~ん、これはどうやら調査を続行してもらって、もう報を集めてもらう必要があるね」

「了解しました」

やがて報を収集した降陸班が報告に戻ってくる。

「彼らはこの星で唯一の知的生命の集団であるために、同格の集団や組織に出會った事がありません。

そのために対応に苦慮しているようです」

「どうやら彼らにはまず「対等の相手」や「格上」、それに「外敵」という概念から教える必要があるみたいだね」

「そのようです」

「仕方がない。

まずは我々がその外敵一號になるか」

「承知しました」

「ではこうしよう。

彼らに々としつこく尋ねれば、単純な連中だ、必ずボロが出てくるだろう。

そうなれば都合が悪くなってきて、我々の事を鬱陶しくなるだろうから、村から出て行けと言うだろう。

そこで・・・」

こうして私たちは作戦を立てて再び村の長と話し合う事となった。

ミサキ隊長が話し合いを始める。

相手はこの村の長で王でもあるブルーム7世とやらだ。

「我々銀河連邦はあなた方と協定を結ぶ用意があります」

「キョーテイとは何だ?」

「あなた方と我々の間に決める約束事という事です」

「約束?どのような?」

「例えば領界の境界線ですね」

「リョーカイとは何だ?」

「こちらの世界とあなた方の世界の境界を決める事です」

「なぜそんな事をするのだ?」

「それはどこからどこまでが、あなた方の土地で、我々の土地との區別をつけるためです」

そのミサキの言葉を王であるブルーム7世は鼻先で笑って答える。

「馬鹿げた事を・・・この世界は全てわがカザラム教のと決まっておる」

「我々はそれを認めていません」

「お前たちの事など関係ない」

「では、我々がここを我々の土地と決めたらどうしますか?」

「それは許されない」

「許されなければどうしますか?」

「ここから出て行ってもらう」

「ここというのはどこの事ですか?」

「ここと言えば、この村に決まっている」

「では、この村さえ出て行けば良いのですね?」

「そうだ、早く出て行くが良い!」

「では、お聞きしますが、どこからがこの村の外ですか?」

「そんな事はどうでも良い、早くこの村から出て行くのだ!」

「ええ、出て行けと言えば、出て行きます。

ですが、どこからがこの村の外なのか教えていただかないと出て行けないではないですか?

教えてください」

「うるさい!出て行け!」

「ですからどこからが村の外か教えていただかないと、出て行くにも行けません」

「ええい!うるさい!」

腹を立てたブルーム7世が、強引にミサキのを押し出そうとするが、もちろんその程度の力でC2級アンドロイドたるミサキを押し出す事など出來ない。

「ええい!この者をつまみ出せ!」

ついに猛り狂ったブルーム7世が手下に命じるが、どういう訳だか、誰にもどうやってもかせない。

「かまわん!殺してしまえ!」

その命令に従い、手下達が一斉に槍や剣で突き殺そうとする。

しかし事を予想していたミサキたちは、アレナック金屬で出來た宇宙服でを固めており、たかだか青銅や脆い鉄の剣ではもちろん傷一つつかない。

中には思いっきり宇宙服を叩き、折れてしまった剣すら出てくる。

唯一むき出しになっている顔を狙おうとすれば、あっさりと手甲でけられて、その剣を折られる始末だ。

「村の境界線を教えていただけない限り、我々は排除できませんよ」

どうしても相手を排除できないとわかった王が忌々しく思いながらもミサキたちを案する。

「わかった・・・ついて來い」

「はい」

王が村から數歩出た所で、そこの地面を指差してぶ。

「ここだ!ここが村の外だ。

ここから一歩もってくるな!」

「承知しました。

ここから側へらなければ良いのですね?」

「そうだ、早く出て行け!」

「ではここに印をつけましょう」

そう言ってミサキが腰からレーザー銃を抜くと、その一帯にズバッ!と撃ち流す。

その線の通った後には一筋の焦げた跡が數十メートルも殘り、村の境界線となる。

ミサキの放った線銃の威力にブルーム7世は驚き、村人たちは息を呑む。

村人達は王であるブルーム7世と同様の銃をミサキが持っている事に驚いたが、口には出さなかった。

「これでここに境界線が出來ました。

それでは反対側の境界も教えてください」

「反対側?」

「ええ、反対側の境界も教えていただかないと、そちらからりますよ」

「・・・ついて來い」

銃の威力を見て諦めたようにブルーム7世が村の反対側へと案し再び地面を指す。

「ここが反対側の境界だ」

「はい、わかりました。ではここにも印をつけましょう」

そう言うと再びレーザー銃で先ほどと同様の印をつける。

それが終わると、焦げ臭い匂いが立ち込める中、再び王に話しかける。

「では、こことあちらの境界かららなければ良いのですね?」

そのミサキの質問に王がいらいらしたように答える。

「そうだ。2度とってくるな」

「わかりました。では我々の宇宙船はあちら側にあるので、あちらへ戻ります」

そう言って村の外へ出て行った一行を目にすると、王たるブルーム7世はホッと一安心したのだった。

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