《星の見守り人》022 王権代
星の上空ではコランダム777の中で私が寛ぎながら現狀の報告を聞いて、ミオたちと話していた。
「さて、これで何日もつかな?三日か?四日か?」
「彼らは農耕すらしていませんから食料の備蓄は恐らく皆無に近いでしょう。
四日はとても持たないと思います。
早ければ明日にでも・・・」
「そのブルーム7世陛下とやらはどう出てくるかな?」
「正直な所、ちょっと想像がつきませんね。
普通でしたらこういう狀況下なら単に降參して相手の條件を飲む事になるでしょう。
しかし、専制國家的で、しかも外敵が全くいなく、今までの人生で敵らしい敵というにあった事のない人だと「降參」という概念自がない可能があります。
常に自分が勝利と共にあった訳ですから、降參や降伏という行為は自分以外がするであって、自分には関係ないという考えが捨てきれない可能があります。
その場合、どういった行を取るか、予想がつきません。」
「しかし、彼一人がそう考えても周囲はそうは考えないだろう?」
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「そうですね、そこが今回の鍵になると思います」
その頃、下では村の口で問答が起こっていた。
「我々をここから出してくれ!」
村人が懇願してもミサキたちは首を縦に振らず、ただ同じ答えを繰り返すだけだった。
「殘念ながらあなた方の王との話し合いで、ここが境界線と決まりました。
外に出たいのならば王を呼んできてください」
「しかし王は宇宙船の中にってしまった。
もう出てこない」
「ならば我々も話し合いには応じません。
我々は王以外とは話す気はないのです」
とりつくしまも無いミサキたちに抗議しつかれた村人達はやがて互いに話し合うと、王の宇宙船へと向かった。
もはや彼らに殘された方法は限られていた。
ブルーム7世にとってはこのような事は初めてだった。
彼は父が早世したために心ついた頃にはすでに王になっていた。
たまたま兄弟や叔父、従兄弟など跡継ぎを爭う相手がいなかった事も幸いした。
そして今まで自分に逆らった者など一人もなく、後先など考えた事はなかった。
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いつでもその時の気分で事を決めていて、その言葉はそのまま常に実行されたのだった。
それが今民衆達が自分に余所者との話し合いを求めて要求を突きつけている。
ありえない事だった。
どうして神の代理人で王たる自分にそのような事を言えるのだろうか?
ありえない!
しかしついには自分の息子までがその事を言いに來た。
息子であるブルーム8世は、格も溫厚で、村人達にも人気があった。
元々が偏屈で気難しく、格にムラがある現在の王よりも、この若く、賢い王子に早く王位を継いでしいと考えていた村人がほとんどだった。
そして今、まさにその時を迎えたのだった。
「父上、どうしてもあの余所者と話し合いをなさらぬというのであれば、退位していただきます。
それでよろしいですね?」
「なんだと!」
「どうしますか?」
「許さん!そんな事は許さんぞ!」
「許さなければどうしますか?」
自分の息子の口から出たその言葉はあろう事か、あの余所者が言った言葉と全く同じ言葉だった。
「おまえ達!こやつを捕らえろ!」
しかしその命令は実行されず空しく聲が響くのみで、王の命令に従う者はいなかった。
「聞こえないのか?おまえ達!
こいつを捕らえろと言っておるのだ!」
しかし再度のその王の言葉にも誰もかない。
「父上、無駄です。
私はここにいるみんなに頼まれてここにきたのです。
あなたがあの連中の話し合いに応じなければ、退位させて代わりに私が王となり、話し合いに応じるようにと」
「なんだと!許さん!そんな事は許さんぞ!」
「許さん、許さんですか・・・では、どうするのです?
どの道、あのよそ者達がいる限り、我々は外に出れないのですよ?
外に出られなければ狩りも出來ないし、木の実も取れません。
どうやって食べを手にれるのか教えてください。
それを教えてくれたら、私たちもおとなしくそれに従いましょう」
その質問にもちろん王であるブルーム7世は答えられない。
無言の父に息子が再度質問を繰り返す。
「さあ、どうするのか教えてください。
あなたが我々の食べを空から出してくれるのですか?」
度重なる息子の質問にもやはりブルーム7世は答えられない。
「答えていただけないのであれば、父上には退位していただいて、私が王となって、あの連中と話し合う事にします」
ブルーム7世としては、相手の要求は呑めないし、かなえられはしないが、退位するのだけは許すわけにはいかなかった。
「お前が王となるだと!そんな事は許さん!」
そう言い放つ父王に息子はため息混じりに話す。
「では、王としてあの連中と話してください。
連中と話すか、私が王となるのを認めるか、2つに1つです。
他の選択肢はありません」
「そんな、そんな馬鹿な・・・私は王だ・・・私が王なのだ・・」
「どうしますか?どちらにしますか?」
その問いにすでに王の返事はなく、ただブツブツと言葉を繰り返しているだけだった。
「返事がいただけないようですね。では私が王になります」
息子は振り返るとそこにいた者たちに宣言をする。
「皆のもの!我が父ブルーム7世は王を退位した。
今から私が王となってブルーム8世となった。
私はこれからあの空から來た王族と話し合う事を誓う!」
その言葉に村人達は喜びの聲を上げた。
かつての王は未だに何かを呪文のようにブツブツと唱えていたが、もはや省みる者はいなかった。
ブルーム8世は村の口に行くと、相変わらずそこを封鎖していたミサキたちに誠意をこめて話しかけた。
「空から來た諸君。私は話し合いに來た」
「何回でも言いますが、我々は王としか話しません」
「私がその王だ」
「あなたが?ブルーム7世様はどうしました?」
「父は退位した。
今は息子である私がブルーム8世として王となった」
「そうですか。
それでは王となったあなたを代表と認めて話し合いましょう。
王となったあなたはどうしますか?」
「私は君達と話し合いたい。
父は君達の話を聞く耳を持たなかったが、私は聞こうと思う。
ただ、君達の話は私達には難しいのも事実だ」
この村の人間には元々領土や境界線などという概念は無かったために、それは無理からぬ事だった。
実際ブルーム8世は昨日父のそばにいて、彼らの話を聞いていたが、その容がわからなかったのも事実だった。
しかしブルーム8世に心から対話をむ姿勢を理解したミサキたちは、大きくうなずいて返事をする。
「わかりました。話し合う気があるのであれば大丈夫です」
「しかし我々は急いでいる。
君達がそこを通してくれないし、他の場所からは出られない。
そのために食べの調達ができないのだ。
急いで話し合わないと、我々は飢え死にしてしまう」
「それは大丈夫です。
話し合うとなれば我々の食料を分けましょう。
話し合いが終わるまでは、その食料を供給し続けるので安心してください」
「わかった。では早速その食料とやらをわけてしい。
それと同時に私は話し合いにる」
「わかりました」
そういうとミサキが合図を送る。
その合図にうなずいた者達が、すでに事あるを考えて、用意してあった食料を村の中に運び始める。
移式のテーブルや椅子も村の中に運び込み、座って食べられるように仕度を整えていく。
その手際よさに村人たちも驚く。
食事の仕度をしながらミサキがブルーム8世に問いかける。
「ではどこで話し合いますか?」
「私の父は全て自分ひとりで決めて、それを自分の部屋で決めていた。
しかし私はここにいるみんなにもあなたたちとの話を聞いてもらいたいと思う。
天気も良いし、ここで話し合うのはどうか?」
「結構です。では話し合いましょう」
そういうとミサキは何やら合図をする。
するとそこには長いテーブルと他のよりはやや豪勢な椅子、そして上には天幕が張られて即席の會議場となる。
手際よく並べられたテーブルの上には料理が並べられる。
料理と言っても、連邦軍のレトルトや宇宙食だったが、それらが整然と並べられると、ミサキが食事を促す。
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