《星の見守り人》025 境界と言う
話し合いが再開されて、ブルーム8世が尋ねる。
「しかし境界と言うがそれほど重要なのですか?」
「はい、その通りです。
こういった話し合いでは、これがもっとも重要な事となります。
なぜならば「境界」とは単なる理的境界でだけではなく、法的境界も同時に示すだからです」
「ホウテキ境界?それはどういった意味ですか?」
「あなた方は今「境界」というを知りつつあります。
そして境界の外にいる我々にはカザラムの教えが意味のない事だとわかってきましたね?」
「はい、殘念ながらその通りです」
「それと同じです。
境界の外ではカザラムの教えは全く無意味なのです」
そのミサキの言葉に聞いていた住民たちは全員が驚く。
「えっ?」
「そんな馬鹿な!
カザラムの教えはどこまでも広がり、全ての人がけれるべきだ!」
「しかし私はけれておりませんし、先程みた地球の人々も誰もカザラムの教えなどける気はありませんし、賛同する気もありませんよ?」
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「そ、それは・・・」
「それであなた方はどうしますか?」
そのミサキの言葉に対してウイリー9世が決然と言い放つ。
「いや!それでもカザラムの教えはけれられるべきで、地球の人々も全て我々の教えに従うべきなのだ!」
「ええ、あなた方の始祖であるブルーム・カザラム氏も地球でそう主張した訳です。
そして地球ではけれられないので、こうしてここに逃げて、ここで新たなる國を作ろうとした訳です。
あなたが今言った事はまさにその繰り返しです。
しかしあなたがどんなにそう言っても地球の人々はカザラムの教えなどけれませんよ?」
「そんな・・・」
「そのために「境界」が必要なのです。
境界を決めればその中であなたがたがいくらカザラムの教えを広げようが問題はありません。
しかし「境界の外」ではそれは許されないのです」
「境界の外・・・」
ブルーム8世の呟きにミサキがうなずく。
「ええ、別の言い方をすれば、カザラムの教えはこの境界の中でしか通じないなのです。
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決して無限に広がって行くなどではありません。
ですから境界と言うが重要になるのです」
「なるほど・・・」
ようやくブルーム8世にも境界というの重要がわかってきた。
「ではどうやってその境界を決めるのですか?」
「大抵は理的境界が境目になる事が多いですね」
「ブツリテキ境界?先程もそれを言いましたが、それは一どういうなのですか?」
「それはホウテキ境界と違って、簡単に言えば目に見える境目の事です。
例えば、川のあちら側とこちら側、海の中にある島、昨日私が引いた線も理的境界の一種です」
「なるほど」
「そして大抵の理的境界は昔は川や海でした。
それが一番わかりやすい境目ですからね」
「はい、それはわかります」
「しかし現在の國家の境界は天そのがなる事が多いですね」
「テンタイ?」
ブルーム8世にはその言葉の意味がわからなかった。
「それは「星」そのという事です」
「ホシ?
ホシとはあの空に輝く星の事ですか?」
「その通りです」
「なぜ星が境界になるのですか?
我々の土地とは関係ないと思いますが?」
「それはここも星の一つだからです?」
「は?」
今度こそブルーム8世はミサキの言っている事がわからなくなってしまった。
星と土地が何の関係があるかもわからないのに、相手はここが星だと言い始めた。
一何の事だろうか?
「ここが星?一どういう意味なのですか?」
「そのままの意味です。
ここは星の一つなのです」
「申し訳ありませんが言っている意味がわかりません。
一どういう意味なのでしょうか?」
「あなた方が住んでいるこの大地、場所は球、つまり丸い球のような場所なのです。
実際に見せればこのようなじですね」
そう言ってミサキは持ってきた荷の一つである天儀を見せる。
これは私達探査隊が即興で作ったこの星の模型で地球儀のようなだ。
「これはこの星、我々は仮にカザラム星と名づけましたが、それを模型にしたです」
「これが我々の土地であると?」
「そんな馬鹿な!」
「我々の住んでいる場所がこのような丸いである訳がないでしょう!」
村の住人たちは一斉に抗議を始める。
「そう言われると思いましてこちらも々と用意をして參りました。
実際にお見せしましょう。
これを覧ください」
そう言って今度は一般探査機「エッグ」を見せる。
これは天探査の者が用いるもっとも基本的な探査機で、長さ1mほどの扁平な卵形をしている事から「エッグ」と言われている。
「これは我々の使う探査機でエッグと言われているです。
どのように使うかを今からお見せしましょう」
ミサキがそう言うと、エッグはその場でふわりと浮き上がる。
そして村人たちの周囲を靜かに飛び回り始める。
「おおっ!」
「これは・・・」
驚く村人にミサキが説明を続ける。
「皆さん、あちらの畫面を覧ください。
そこには今エッグが撮影している姿が映っております」
村人が畫面を見ると、そこには自分たちが移っている。
「あれはブルーム様ではないですか?」
「ウイリー殿もいる!」
「いや、全員いるぞ!」
村人たちが手を振ったりすると、その畫面の中の自分も手を振る。
村人たちは面白がって盛んに手を振ってみたり、様々なきをすると、畫面の自分たちも同じきをするので驚く。
「お分かりいただけたかと思いますが、現在この畫面は我々を映しております。
さて、ここで高度を上げてみましょう」
エッグが空高く舞い上がると、畫面がどんどん広がり、村人たちは點となり、やがて見えなくなる。
そこには緑の大地が広がり、そばには海も見える。
「こ、これは・・・」
「我々の住んでいる場所は空から見るとこんなじだったのか・・・」
それでもさらにエッグが高く上ると、やがて周辺は丸みを帯びて、やがて完全に球となる。
それを見た村人たちが驚く。
「そ、そんな・・・!」
「本當にここは丸いの上だったのか?」
「これが・・・星・・・?
驚愕する村人たちにミサキが説明をする。
「いかがですか?
この場所が星の一つだという事をわかっていただけましたか?」
しかし村人たちは呆然として言葉も出ない。
ようやくの事でブルーム8世が言葉を搾り出す。
「では・・・本當にここは星なのですか?
空に輝く星もこのような場所なのですか?」
「ここが星なのは間違いないですが、空に輝く星とは違います。
にも々とあるように、星にも々と種類があるのです。
例えばあの今空にある太、正確には「恒星」と言いますが、それは星の中でも熱く、自分で輝いているのです。
そしてとても熱いのでもちろんその表面で人は住めません。
このカザラム星のような星は「星」と言って、その中でも地球やこのカザラム星のように人が住める星はめったになく、非常に珍しい星なのです」
「そう・・・なの・・・ですか?」
「はい、そして最新の銀河連邦法では地球は例外として、1國家は1天と定められておりますので、一つの星がそのまま領界、つまり領界の境目になっている事が多いのです」
「な・る・ほ・ど・・・」
こうして話し合いは長引いたが、雙方共に辛抱強く話し合いに応じたために、共に納得の行く結果となった。
この大地、すなわちこの星は基本的に全てがカザラム教徒たちの土地である事、
星と言うのは球で、一つの星だと言うこと。
そこでは彼らの法や教義で統治をして良い事、
當面は銀河連邦には屬さないが、村の外に銀河連邦との公使館は作って、流はする事などだ。
どちらにしてもこの村程度の規模では、銀河連邦の法では國としての基準は満たしていないので、獨立組織の自治州扱いだった。
そして話し合いを終えたミサキが最後の助言を與える。
「それと最後にこれは助言ですが、ここは保護區域の申請をしておいた方が良いでしょう」
「ホゴクイキ?何ですか?それは?」
「この星、いえ、この恒星系一帯を、銀河連邦の許可を得た者以外、立ちり止にする措置です」
「恒星系というと、この星だけでなく、太を中心としたとても広い範囲ですね?
なぜですか?」
今回の會議で始めて覚えた単語を駆使してブルーム8世が質問する。
「なぜならば今回のこの探査により、この星は正式に銀河連邦の銀河地図に記載されて、公表される事になるからです」
「それが何か?」
「公式に発表されれば、この星の資源や土地を狙った有象無象が大挙してやってきます。
失禮ながらあなたがたにその連中を排除する力はありません」
「そんなに?」
「そうですね。
例えば我々の母船である探査船一隻の力はあなた方・・・というよりも、この村を全滅させるのに1分もかからないでしょう」
ミサキの言葉にブルーム8世がまたもや驚く。
「あなた方の力はわかっているつもりですが、いくらなんでもそんな馬鹿な?」
さすがに自分達の村を、たかが船一隻で、1分もかからずに壊滅する事が出來ると公言されて反論する。
それを説明するのにミサキは言葉ではなく、もっとも手っ取り早い方法を取った。
「いえ、殘念ながらまだあなた方は何もわかっていません。
・・・そうですね。
々お待ちください・・・船長代理、ミサキです。
お願いがあります。
この村の近くに、この村の1割を破壊可能な程度のミサイルを一発撃っていただけませんか?
もちろん村には被害がない辺りに」
ミサキがツウシンキとやらで、ここにいない誰かと話すと、その相手は「了解した」と答える。
その返事があってからしばらくすると、どこからかキ・・ンという音がすると、村から々離れた場所に、何かが落ちてくる。
それは地上に落ちると共に今まで聞いた事もない轟音と閃で、周辺の土地をふっとばし、その欠片はいくつか村にも屆いた。
空には大きなきのこ雲が上がり、大地は揺れて、その発の大きさが驚くほどの規模である事を語る。
「これは・・・」
その凄まじい景にブルーム8世だけでなく、村人全てが驚きのあまり、聲も出さずにいる。
中には震えて泣いている者すらいる。
「いかがですか?あなた方はこのような攻撃に対抗できますか?」
ミサキの質問にブルーム8世は素直に肯定する以外の選択肢はなかった。
「・・・出來ません」
「今のは我々の力のほんの一部です。
我々がその気になったら、この程度の村の百や二百は一日で簡単に消し炭にできるでしょう」
「そんな・・・」
そのあまりの戦力の差、いや、もはや神の力と言っても遜が無いほどの相手の攻撃力にブルーム8世以下、だれも何も言えなくなる。
「そしてその我々の探査船一隻の力は、銀河連邦全からすれば、百萬分の一にもなりません」
「百萬?ちょっと待ってください!
銀河連邦とはそれほどまでに巨大で強力な組織なのですか?」
「はい、現在、連邦に所屬する國家は地球以外では16、國家といわれる星の、そのほとんどが所屬しています。
そしてそう言った國家のいくつかは新たなる土地を求めています。
また宇宙海賊といわれる連中にはこの星は絶好の獲です。
そのような連中からこの星をあなた方が自分で守る事はほぼ不可能です」
「確かに・・・」
海賊という連中が先ほどのような力を持っているなら、とてもこの星、いや村の力ではどうする事も出來ないとブルーム8世たちは思った。
そして自分達がいかにこの宇宙で矮小で弱い存在かも知った。
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