《星の見守り人》028 ミオとの會話

シジマの話を聞き終わって部屋を出ると、如月がミオに話し始める。

「ミオはもちろん今の話しを知っていたんだろう?」

「はい、私はその計畫のために作られた亜人ですから…今まで黙っていてすみません」

「いや、それは別にいいさ、もちろん、そういう事があるのは承知の上で、この話しを引きけた訳だからね。

しかし考えを整理するためにいくつか質問したい。

答えられないは答えなくてよいから」

「はい」

「さっきもし聞いたけど、この計畫に私が加わったら、実際的にはどういう風になるのかな?」

「はい、さきほど説明された通り、探査という立場は同じですが、多違う事に従事する事になります」

「違う事?」

「ええ、おそらくは通常の探査ではなく特別探査という形になって、特定の星系の単獨探査に向かう事になると思います。

あまり他の人たちと一緒に過ごすと々と疑われる事も出てくるでしょうから、その懸念を晴らすためです。

実際にする仕事は今までとほとんど変わらないと思いますが…」

「今までと同じような仕事を何百年・・・場合によっては何千年もか?」

「もちろん、狀況が変化すれば、々と別の仕事に就く事もあるでしょうけど・・・その辺はさすがにわかりませんが、一つ確実に言える事はあなたの職場兼私的生活空間の主要な場所は専用の宇宙船となるのだけは間違いないです。

地上で普通に生活するには々と不都合な點が出てくるでしょうから」

地上に住めないという點はでは、確かにそうだろうと如月も考えた。

まったく年をくわない人間が一定の場所に數十年、數百年も住んでいれば、周囲から不審がられるのは間違いない。

そのためにはどこか人目のつかない場所に隔離するのが一番だろうし、そういう意味では現在如月が乗っている獨員探査船は理想的とも言える。

「今乗っている探査船のようなかい?」

「基本的な機能は似たようなですが、より能は高く、生活的にはより快適な場所になるでしょう」

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「もちろん、たまに降陸する事も出來るんだろう?」

さすがに永久に地表に降りる事が出來ないのではたまらないなと考えた如月が質問すると、ミオが驚いたように答える。

「もちろんです。

別に永久に宇宙船の中にいて出られないなどという事はありません、

仕事で必要な時以外ではいつでも宇宙船の外に出る事は出來ますよ。

ただあまりお勧めはしませんが・・・」

その外に出るのにお勧めはしないというミオの言葉に今度は如月が驚いて質問をする。

「え?勧められないってどういう事?」

「この計畫に參加すれば、セイさんの生命は常に守らなければなりません。

もちろんそれは今までもそうでしたが、今度は重要度が違います。

そういった意味では街中より宇宙船の中の方が遙かに安全です。

街中ではどんな事故がおこるか、予想もつきませんからね。

ですからセイさんの命を守るという意味では、危険が増大する宇宙船の外に出るという行為は基本的にお勧めできないのです」

「なるほどね」

ミオの説明に納得する如月に対して、さらにミオが宇宙船の説明を続ける。

「そのためにセイさんに用意される宇宙船はかなり快適な宇宙船になるだろうと聞いています。

なくとも現在の探査船にそれほど不満が無いのであれば、全く問題は無いと言える位に通常生活は保証できる船と聞いています」

ミオの説明に如月はうなずいた。

確かに街中にいれば突然何が起こるかもしれないのだ。

それは現在の如月の狀態、つまり普通の壽命の人間でも當然同じだが、永遠の壽命の実験という観點から言えば、そういった危険を極力避けたいという考えはわかる。

もちろん宇宙船の中も絶対に安全とは限らないが、街中で事件が起こる確率と宇宙船が何らかの事故を起こす確率を考えれば、比較にならないほど宇宙船の事故の方が小さいのは間違いない。

28世紀現在の宇宙船は安全に関して厳しい。

小さな事故や故障はともかく、人命にかかわるような事故は皆無と言っても過言ではないし、生活空間も快適に作られている。

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そして現在、如月が乗っている探査船も、別に窮屈で、生活しづらいという事はない。

むしろ慣れてくれば、地上より快適な位だった。

降陸に一種の楽しみがない訳ではなかったが、別段、宇宙船の中に數年篭っていたとしても、おそらく自分としては特に不都合はないだろう。

そもそも今現在の自分の生活様式がそうなのだから・・・

その現在乗っている宇宙船よりも、より快適な生活空間である宇宙船というのであれば、問題もないだろうと如月は考えた。

普通の一般人であれば長期間の宇宙船での生活はごめんこうむるという所だろうが、如月はむしろ地上よりも宇宙船の中の方が安心して生活ができるほどだった。

(おそらく、そういった格も加味されて、この実験に最適と判斷された部分もあるんだろうな・・・)

そんな事を考えながら如月としては、仮にこの話をけるのであれば、そんな事よりも別の問題の方が重要だと考えて、その重要な問題をミオに質問する。

「しかし千年、いや、1萬年以上と言ったら隨分長いね。

その間、君はずっとボクの副でいてくれるのかい?」

「はい、セイさんが正式にこの計畫に參加された時點で、私は完全にセイさんの所屬となり、それはあなたが生きている限り有効となります。

これは今後どんな命令が下ろうと覆る事はありません。

そして私の最優先事項はあなたの生命保護となります」

そのミオの説明に並ならない、決意と覚悟をじて如月も驚く。

「ええぇ?君は…それで良いのかい?千年も1萬年も・・・ボクのパートナーで?」

「はい、私は永遠にセイさんのパートナーでいたいと思っています」

ミオの返事に如月が考え込みながら答える。

「しかし、もしボクが途中で格が変わったら?

君を待したり、ないがしろにしたら?」

「それでも構いません、それに私はセイさんを信じています」

ニッコリと微笑んで答えるミオに対して、如月が頭をかきながら考える。

もちろん、ミオはアンドロイドだからそのように格をプログラムされているのはわかる。

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しかし、それを差し引いても、これほどの熱意を持って答えられるとは思わなかった。

「こりゃまた隨分信用されたもんだね?」

単なる肯定ではなく、自分を信じきっているかのようなミオの回答に、如月もうなるように驚いて返事をする。

「はい、この數年間、あなたが私に対して、どう接してきたか、私は知っています。

私はそれに対して非常に好意を持っています。

ご存知のように我々亜人にもはあるし、好悪の覚も、もちろんあります。

私があなたに持っている覚は人間で言うならば、非常に強い好意・・・おそらくは「」と言っても差し支えないだと思います。

もちろん、そう言った設定は初期の段階で可能な訳ですが、我々もを持っている以上、それが変化しない訳ではありません。

例え、その設定を上限値に設定していたとしても、を持つ以上、數年間一緒に生活していて、相手の行が好ましくなければ、その數値は下がっていきます。

しかし、私はあなたとの數年の生活を経験して、好ましいが上がる事はあっても、下がるという事はありませんでした。

これは私個人のであり、設定や作されたではないので、その結果には自信を持って言えます」

「なるほどねぇ・・・しかし、そう言ったも最初の設定や、格設定で可能なんじゃないかな?」

「もちろん、ある程度それはあります。

しかし亜人である私の方はともかく、人間であるセイさんはそういった設定などない訳ですから、どんなに初期設定をしても、相手によって好悪のは変化するのを止める事は出來ません」

「そう言われてみればそうか・・・」

確かにミオの指摘した通りだった。

相手は変化する事象、人間であり、當然、その相手をするアンドロイドにもがある以上、相対的に好悪が変化するのは避けられない事だった。

もしそれを強制的に固定するのであれば、それはアンドロイドではなく、単なるロボットであり、を持つアンドロイドである意味がない。

「例えば『どんなに待されても相手を好きでいる』という設定は可能ですが、それは現実と矛盾してしまうので、時間の経過と共に齟齬をきたして、最終的には破綻します」

ミオの例えがわからなかった如月が詳しい説明を求める。

「ん?今のはちょっとわからないな。それは、どういう事?」

「相手に好意を持つという事と、相手から待されるというのは矛盾していますから、それを長期間継続すると、無理が生じます」

「それも格設定で何とかなるんじゃないの?」

如月の問いかけにミオは頭を左右に振って、そのしく長い金髪を緩やかに揺らしながら答える。

「実はそれは無理なのです。

人間と違い、亜人の本には、まず「目的を達する」という本的な設定があります。

これは格設定などよりもっと本的な部分で、これがなければ亜人の本がり立ちません」

「うん、それは知っているし、わかるよ」

人間は無目的に自然の産として生まれてくる訳だが、エーアインたち、つまりアンドロイドやロボットは人工的に作られただから、必ず目的があって製作されるのは當然の事だった。

「そして、その目標達のためには、まず自分の存在が不可欠と言う事になります。

ただし、そのために人間や他の環境・狀態に可能な限り負荷をかけないという前提があります」

「アシモフの3原則だね」

人工知能「エーアイン」に関しては「アシモフの3原則」というものがある。

これは20世紀の小説家兼科學者であったアイザック・アシモフが提唱した原則で

第1條は「ロボットは人間を守らなければならない。

また、それを看過する事により人間の生命を脅かしてはならない」

第2條は「ロボットは人間の命令を守らなければならない。

ただし、第1條に反する場合はこの限りではない」

第3條は「ロボットは自分を守らなければならない。

ただし第1條、第2條に反する場合はこの限りではない」

というものだ。・

古典的ではあるが、この原則自は28世紀の現在でも正しいとされている。

もちろん実際にはもっと複雑なプログラムとなってはいるが、原則的にはこのような基本原則で現在の人工知能である「エーアイン」はいている。

「そうです。

しかし待されるというのは自分の存在を危うくしますし、それを喜ぶというのは、自己否定や自己破壊に繋がりますから亜人にそういった設定をするのは無理なのです。

それは亜人に自殺願を設定するのと同じですから非常に不安定になりますし、おそらく無理にそのような設定をした場合、完した瞬間に自分の存在を抹消してしまう可能が高いです」

「なるほど、確かに人間の場合でもそうかも知れないな」

関係や社會の不適応、様々な要因により神に齟齬を來たして、その結果、自殺願を持つ人間を知識として知っている如月もうなずく。

「はい、人間の場合は自然発生的な生命なので、場合によっては、そういった矛盾を孕んでいますが、亜人の場合は論理的に製造されたですから、そういった事はありません。

もちろんそういった設定を無理やり作る事は可能でしょうが、おそらく無意味でしょう」

「う~ん、中々考えさせられる話だね。

しかしそういった話も含めて君はボクの副でいてくれる訳か・・・それもボクが生きている限り永久に?」

「ええ、もちろんです。私のしい人ですもの♪」

にっこりと微笑みながら答えるミオに如月も無駄な質問はあきらめた。

「まいったね、こりゃ完全にやられたよ」

無言になり、考えにふける如月に、今度はミオが自分の問題を問いかける。

「それよりも、むしろ逆の方が心配です。

もしセイさんが私に飽きたり、鬱陶しく考えるようになったとしたら・・・その方が可能としては遙かに高いぐらいです」

ミオのその心配そうな質問に、如月が考えながらも、あっさりとその可能を否定して答える。

「それはないな~・・・この數年間、君と一緒にいてそんな事を考えた事もないし、これからもないだろうしなぁ・・・

ミオ、ボクがこの話しをけるとしたら君がいるからだ。

逆にもし君がいなくなったら・・・そう考えるのも嫌だね」

肩をすくめて、そんな事は想像するのもいやだというじで、ブルッと全を震わせながら如月が話す。

「私はセイさんが考えている以上に頑丈と言うか・・・強固に作られています。

先ほどの會話ではありませんが、人間に例えれば不死と言っても過言ないと思います。

その點はシジマ博士の言葉を信じていただいて大丈夫です」

そのミオの言葉に如月も心底ほっとした様子で答える。

「それは本當にありがたいな、しかしそうだな・・・例えばの話だが、僕が連邦を裏切ったりしたらどうなるんだい?もしも犯罪を犯したとしたら?」

「その場合でも私はセイさんについて行きます。

先ほども言った通り、私の命令重要度はセイさんの生存が最優先です。

どれほどの重要度で設定されているか、わかりやすく例えるなら全人類と同等の設定をされています。

ですから極端な話、あなたを引き渡さないと地球を破壊すると脅迫されたとしてもあなたを連れて逃げるでしょう。

地球を破壊されても人類は殘りますが、セイさんは一人だけですから」

そのミオの説明に如月は心底驚いた!

「こいつは驚いた!

君のボクに対する設定はアシモフの第零原則並なのかい?」

「はい、その通りです。

実際にはその設定はセイさんが、この計畫に參加したと同時に発するのですが、実は私の中ではすでにそれに近い狀態になっています。

これは私があなたに本來の想定以上の好意を持ってしまった結果です。」

実はアシモフの3原則には後に足された原則が他にもう一つあって、それは第零原則といわれている。

すなわち

「第0條 ロボットは人類が滅びるのを見逃してはいけない」

というである。

これは三原則全てより優先される最優先の原則で、先の三原則に加えて、この法則を取り込み「アシモフのロボット四原則」とも言われている。

そしてこの「第0條」の法則により、第1條以下が次のように修正される。

第1條は「ロボットは人間を守らなければならない。

また、それを看過する事により人間の生命を脅かしてはならない。

ただし、第0條に反する場合はその限りではない」

第2條は「ロボットは人間の命令を守らなければならない。

ただし、第0條、及び第1條に反する場合はこの限りではない」

第3條は「ロボットは自分を守らなければならない。

ただし第0條、及び第1條、第2條に反する場合はこの限りではない」

実はA級アンドロイドには、この第零原則が完全に設定してあって、それゆえに人間と全く同様の扱いになっている。

これは裏を返せば「人類のためなら狀況によっては、個人もしくは一部の人類を抹殺する事もやむを得ない」という事になる。

この人類全のためならば、場合によっては個人、もしくは一部の人類の殺傷も遂行するという自己判斷の條件付けをもっているがゆえに、A級亜人は人間と同等の格付けと人権を持っているのだった。

この法則はB級亜人にも一応組み込まれているのではあるが、そちらの場合は不完全で、それを実行する場合には、人間もしくはA級亜人の判斷が必要とされている。

しかしミオの場合は特殊な目的のB級亜人であるがために、通常のB級亜人以上にこの法則が組み込まれているようだ。

そして、今ミオはその全人類と如月が等価であるという驚くべき事を発言しているのだった。

極端な言い方をしてしまえば、どこかに男のペアが一組でも殘っている限り、如月を守るためなら他の人類を壊滅させる事も辭さないと言っているも同然なのだった。

その意味を理解した如月が呆然として話す。

「それは栄の至りだね。

正直な話、自分にそこまでの価値があるとはとても思えないが、ここは素直に謝しておこう」

自分がミオにとって、他の人類全てと等価値と言われた如月が、驚きをじえずに想を述べると、さらにミオが説明を続ける。

「また、仮に犯罪を犯したとして、そしてその結果、もし懲役になったとしても、科學局としては収容場所を我々の船にするように計らうでしょうから問題はありません。

これからセイさんの乗る事になる宇宙船は一部區畫は拘置所や刑務所も兼ねていますからね。

そして犯罪者であるあなたを監督する監視としてA級亜人である私を指名する事になるでしょう。

もちろん懲役刑が何年になろうとも結果として、あなたにはあまり意味が無い事はご承知だと思います。

ですからもしあなたが仮に犯罪を犯したとしても、なくとも私に関する限りは心配ありません。

そして何よりあなたがそういった犯罪をわざわざ犯す確率はほぼ0に近いという事はあなた自にもわかっているでしょう?

ましてや私や他の者がそばにいれば、必ず、そのような行を阻止します」

「ふう~・・・なるほどね・・・」

ミオに言われた事を如月が改めて反芻をしていると、それは理にかなっているし、実際にそんな事になる可能は0と言っても、おかしくない位だった。

むしろ、もしありえるとすれば、何らかの冤罪を著せられる可能だろう・・・

もちろん、そのような場合はミオが無実を証明するために奔走するのは想像に難くない。

自分の犯罪の可能に考えている如月に、真顔になったミオが遠慮がちに話しかけてくる。

「・・・実は私からセイさんに話したいことが、もう一つあります」

「なんだい?」

「今から私が言う事は、厳に言えば、私の権限を越えていませんが、本來は好ましくない発言です」

「どうしたの?そんなに改まって?」

すでに數年の間、ごく親しい友人以上に、それこそ人同様に親な付き合いをしていたミオが、突然改まって話を切り出した様子に如月も々驚いて問いかける。

「はい、今言ったように私はセイさんに非常に好意を持っていて、ずっと一緒にいたいと考えています。

先ほど言った通り、人間ならばしていると言ってもおかしくはないでしょう。

ですから出來れば、私個人としてはセイさんにこの計畫に參加していただきたいのです。

そうすれば私の願は葉えられ、いつまでもあなたと一緒にいる事が出來ます。

しかし、これは私の個人的なであり、本來そういったセイさんの思考を偏向するような発言は控えて、あなたがこの計畫に參加するならば、あくまで自主的に參加していただかなくてはなりません。

ですから私がセイさんを導するような・・・こういった発言は本來は好ましくないのです。

これは今お話したように、厳に言えば、私の権限を越えている訳ではないのですが、あなたに中立的な判斷をしていただくという點においては非常に・・・非常に好ましくないのです。

それでも・・・私はあなたにお願いしたいのです・・・どうか、この計畫に・・・參加してくださいと」

その震えるように搾り出す聲で「お願い」するミオを見て如月は考えた。

人間のだったらここでしなだれかかって男を篭絡しようとするだろう。

おそらくミオもそれはわかっているのは間違いない。

しかし、そうした的な魅力ではなく、あくまで言葉で説得をしようと考えているのが逆にいかにもミオらしく健気に思えた。

本當は自分を抱きしめて計畫に參加してしいと言いたいのではないだろうか?

そう考えたが、しかしそれも自分の格を見抜いて、そういう態度を取った方が相手を落としやすい・・・とプログラムされているとも考えられる訳だが、それを言っていたらキリがないし、螺旋思考に陥ってしまう。

もっともそれは相手が人間でも同じだろうと如月は考えた。

財産狙い、政権狙い、それに関連した相手を陥れるハニートラップなど、いくらでも相手を疑う事は出來る訳だし、人間の方がよほど質(たち)が悪いと言える。

だが、彼が自分にこの計畫に參加してしいというのは本當だろうと如月も考えた。

そもそもそうしなければ彼の存在意味がないのだから、それだけは間違いのない所だ。

もっともそういう意味では彼というよりも、彼にそう指示した人間、もしくは組織にそう指示されていると言い換えてもよい。

つまり彼の言葉に噓はないと考えて間違いはない。

そしてそんな事よりも、何より如月は単純にミオを疑いたくはなかった。

如月は彼を人間のつもりで扱っていたし、今までの行から彼を疑うなどという考えはした事もないし、今後もしたくもなかった。

そこまで考えた如月は立ち止まって天を仰いだ。

そういった事も含めて如月はミオの事が好きだったし、彼の言い草ではないが、この數年間、ミオは実に公私共に自分に対して盡くしてくれた。

その事は事実だったし、當然謝もしていた。

もしミオに騙されるなら・・・そう、それならそれでも構わないと考えていた。

1千年だろうが一萬年だろうが、ミオにならずっと騙されていてかまわない。

要は相手が人間だろうがアンドロイドだろうが、結局は相手を信じるか信じないかだと如月は考えていた。

そして如月はミオの事を誰よりも信じていた。

(え~い!機械に踴らされていると言わば、いくらでも言え!)

もちろん如月にとってミオは「機械」などではなかったが、元々ほとんど決まっていた如月の心は、この瞬間に完全に決まった。

歩きを止めて、自分を見つめる如月にミオも真剣に見つめる。

「わかっているよ、ミオ・・・君が我ままを言うなんて初めてだしね。

むしろこんなボクで良ければ、この計畫に參加させてもらうよ」

その如月の言葉にかすかに震えながらミオが再度問いかける。

「本當・・・ですか?」

「ああ、ウソはつかないよ。君と一緒にこの計畫に參加させてくれ」

「これから私と何千年・・・いえ、何百萬年も私と一緒に暮らすかもしれないんですよ?

本當にそれで良いのですか?」

から搾り出し、震えるような聲で問いただすミオに対して、如月はニカッと笑って大聲ではっきりと答える。

「ああ、何萬年だろうが、何億、何兆年だろうが、ドンと來い!さ。

・・いや、違うな、それはおこがましいと言うか、傲慢だね。

むしろ逆だね。

どうかいつまでもボクと一緒にいてください、と、こちらから頼むのが正解だね」

そう言って如月が深々とミオに頭を下げる。

その如月の返事にミオが嬉々としてびを上げる。

「セイさん!」

今度こそミオが如月に抱きついてきて禮の言葉を浴びせかける。

「ありがとうございます!本當にありがとうございます!」

「はは、そんなに謝される事でもないさ・・・

いや、今言ったようにむしろ謝するのはこっちだろう?

こんなチャンスをもらえてね。

何しろ君とこのままずっと一緒にいられるなんてね。

それこそ夢みたいなことさ。

本當にどんなに謝してもしたりないくらいじゃないかな?

何だったら土下座して、もう一度頼んだ方が良いかな?」

そう言って如月はその場で膝をつこうとするが、それをミオが止める。

「やめてください!セイさん!

そんな必要はありませんよ!」

「そうかい?

私的にはそれ位した方が良いと思うがなぁ?

それ位、君には謝しているんだが?」

立ち上がりながら改めて自分の選択した事をしみじみとじる如月に、ミオがこれ以上はないと言う位にはしゃいで謝の言葉を浴びせかける。

「いえ、本當にありがとうございます!

私、セイさんに盡くします!

今まで以上に一生懸命盡くしますから・・・」

ミオの言葉に如月が困ったように返事をする。

「おいおい、今までだって十分すぎる位に盡くしてもらって謝しているのに、これ以上盡くされたら、こっちが良心の呵責でつぶれちゃいそうだよ。

君もよく知っての通り、僕は小心者なんでね。

それは勘弁してしいな、頼むから今までどおりでいてしいよ」

「ふふ・・・相変わらずですね。そんな所も大好きですよ!」

「まあ、今後とも今まで同様よろしくって事だよ」

「はい」

こうして人間である如月は、人工知であるミオと生涯、それも何千年、何萬年になるかわからないほどの年月を共に過ごす事を決意したのだった。

それは人間同士で言えば、プロポーズのようなだった。

これが如月星(きさらぎ せい)とミオの生活、そして人類の歴史そのとも言える事の始まりだった。

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