《星の見守り人》029 メトセラ計畫

5日後、ミオの進言に従って、辺の整理を々と終えた如月が、ミオに話しかける。

特に唯一の親である母親には、これからは今まで以上に実家には帰ってこれなくなるであろう事を説明した。

「あら、まあ!そうなの?

ミオさん、面倒かもしれないけ、どうちの息子をよろしくね?」

「はい、お任せください」

幸いなことに如月の母は亜人に偏見を持つような人間ではなかった。

もっともそういう人間が母親だったからこそ如月のような人間が育ったとも言えた。

如月は親しい友人たちにも説明をしようかとも考えたが、それはミオが止めた。

何故ならば、如月の親しい友人たちというのは、その全員がほぼ銀河探査局の人間だったので、説明する意味がさほどないし、逆におかしく思われるだろうとミオが説明したからだ。

そう言われて如月も納得した。

「それもそうか?」

如月の友人たちは探査局、それもそのほとんどが如月同様、天文探査になっている者がほとんどだった。

その連中にしてみれば、今とさほど変わらない生活をするのにわざわざ説明をする方が不審に思われるだろう。

そう考えた如月は一応、海賊退治のおかげで昇進して、々別の仕事に就く事だけを友人たちに連絡した。

「さてと、準備は整ったし、それでは閻魔様に會いに行くとするか!」

「待ってください。

それでしたらミランダさんとかすみさんとあやねさん、それにジュンさんを一緒に連れて行く事をお薦めます」

その一見、これからの事に関係ないとも言える人選に如月は不思議に思ってミオに尋ねた。

「ああ、そうだったね?

別に連れて行くのは構わないと思うけど、やっぱり必要かな?」

「実はこの數日間お話した通り、これから科學局の研究所へ行って、この計畫に応じる事になれば、私のは現在のから最終実験であるA級へ換裝される事になります。

その作業は非常に複雑なので、半年ほどかかりますし、あなたのの醫學的強化処置や基本的醫療教育、その他の用意にもやはり半年ほどかかります。

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でも、その間は機の保持や醫學的安全の観點から研究所からは出る事が出來ないのです。

ですからその間にセイさんの話し相手や護衛が必要になりますから、最低でもその4人を連れて行く事をお勧めします」

「つまり、その半年の間は君にも會えないのかな?」

「そうですね。

私の換裝期間と行試験を合わせた時間は、ほとんど半年丸々かかるでしょうし、その間はセイさんが研究所の中で、気心の知れた相手がいなくなってしまいます。

しかも外には出られない訳ですから、一人でブラブラしているのもイヤでしょう?

それに場合によっては彼たち自にも関わる話になるので、呼ぶ必要があります」

確かに外に出て暇つぶしが出來るのならともかく、正直あまりなじみのない研究所の中で半年も一人で暮らすのは出來ればごめんこうむりたかった。

「なるほどね、確かにそれは何人か話し相手を連れて行った方が良さそうだね。

でも彼たち自にも関わる話というのはどういう意味なんだい?」

「それは場合によっては彼たち自にも、私同様、これからのセイさんの人生に関わってもらう判斷をしてもらうためです」

「え?それはミオと同様、この計畫に直接加わるって事?」

「そうです。

この計畫が実際に発するとなったら、私一人の手に余ります。

そのためにも他の亜人たちの手助けが必要です。

當然、科學局からも數人は用意しますが、セイさんとしても自分の選ぶ人員がしいでしょうし、その四人は公私ともにセイさんとの繋がりがあるので、適役だと思われます」

確かにミオの言う事ももっともだった。

この計畫に如月が參加するのであれば、ミオ以外にも気心が知れた者が數名いた方が如月自の心も安らぐし、それに関してはその4人が妥當だと如月も納得した。

「わかった、じゃあ、その4人を呼んでおいてくれないかな」

「はい、それではコランダム777に連絡して4人を研究所の方に呼んでおきます。

我々が到著するのと同じくらいには現地に到著すると思います。

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他の人たちはよろしいですか?」

「う~ん、そうだねぇ・・・その科學局の研究所には大抵の設備はあるんだろ?」

「はい、なくとも生活に不自由しない程度には」

「過ごすのは半年でいいんだろう?」

「多前後はするでしょうが、概ね半年と思っていただいて間違いないと思います」

「それならその4人でいいんじゃないかな?」

「承知しました」

かすみとあやねは如月の部屋付のメイド兼白兵戦部隊の隊長で護衛を兼ねていて、よく如月やミオとも話していて気心の知れた仲だった。

一方ミランダは単なる第一大型探査艇艇長だったが、ミオを除けば如月の隊の中では最古參だった。

如月が天文探査學校を卒業し、探査隊を組む時にわざわざ自分を採用するように直談判までしに來た人なのだ。

當時からなぜか如月を非常に好いていており、時間があれば理由をつけて・・・いや、理由がなくとも、如月に會いに來ていた。

しかも彼は採用當時からミオが認める如月の「人」だった。

そんな理由から彼は數いるコランダム7の乗組員の中でも、ミオを除けば、最も如月に対して好意を持っている亜人として周囲にも認識されていた。

また、戦闘隊長であるジュンは寡黙な格ながら、仕事を確実にこなし、過日侵者の撃退にも貢獻して、如月の信用も大いに得ている亜人だった。

如月もミオも長期間一緒に宇宙船に近い環境の閉鎖空間で過ごすのならば、この4人が適任と考えて呼び出したのだった。

「しかし、聞いてはいたが、半年も君と會えないとはなあ・・・

その間は話も出來ないんだろ?」

深いため息をつく如月に対して、ミオが申し訳なさそうに謝る。

「すみません、この工程はどうしても省けないものなので・・・」

「いやいや、君が謝る事はないさ。

ただ・・・」

「ただ?」

ミオの質問に逡巡した如月だったが、素直に心を吐する。

「いや、けない話だけど、正直君がいない生活に半年も耐えられるか心配なんだ」

それほど、今やミオの存在は如月にとって、大きなになっていた。

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その如月を勵ますようにミオも話しかける。

「大丈夫ですよ。ミランダさんたちもいる事ですし、私がいなくても・・」

「そうかなあ・・・」

元々ミオとそれこそ半永久的に暮らせる事が前提でこの計畫をれる気になった如月だけに、逆にそれをけるためにミオと半年も離れ離れにされるというのは、理では理解してもとしては矛盾をじ、いかんともしがたいものがあった。

「半年過ぎれば會えるんですから」

「そうだねぇ」

ミオの説得に不承不承ながらも納得した如月が研究所へと向かう。

如月とミオが研究所に著くと、そこには呼び出した4人がすでに到著していた。

コランダム777で如月の部屋のメイド長で、第1白兵戦部隊長でもあるC2級亜人のかすみが折り目正しく挨拶をする。

「お待ちしておりました、船長代理」

同じく第2白兵戦部隊長のあやねも気に話しかけてくる。

「いっや~。私たちも船長代理が外にいる時は戦闘訓練ぐらいしかやる事がないんで、呼んでもらって助かったわ~。

ミオ副から話は聞いているわ。

護衛でも、話相手でも任せてね!」

いつも如月を翻弄する、第1大型探査艇長のミランダも、その魅力的なの威力を存分に発揮せんと、全力でしなだれかかりながら話しかけてくる。

「そうそう、寂しい夜の相手もバッチリよ!

ここの所、大分無沙汰でしたからね!

それにミオさんもしばらく留守をするんでしょう?

こういう時こそ、私の活躍時よ!」

「はは、よろしく」

「それでは行きましょう」

ミオの言葉に全員がうなずくと研究所の中にっていく。

「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

付にいた亜人に案をされてバスに乗ると、研究所の奧深くへとっていく。

バスに乗って周りを眺めていた如月が思わず想を口にする。

「それにしても隨分広いもんだなあ・・・」

「そうですね、ここは科學局の基幹研究所でもありますから25平方kmはありますよ」

「そんなに広いんだ?」

「ええ、私もここで生まれましたから」

「そうなんだ・・・あれ?そう言えば、確かA級アンドロイドは最高基地でしか製造できないんじゃなかったっけ?」

人類文明の要でもあり、1でも世界を揺るがしかねない可能を持つA級アンドロイドに関しては連邦政府も細心の注意を払っており、その製造は銀河連邦の中心たる最高基地の中でしか出來ない事になっていた。

「その通りですが、ここは例外中の例外なのです。

それに建前は最高基地のA級アンドロイド製造所の分室という事になっていますから、法的には最高基地で作られている事になっているのです。

もっともこれは一般には公開されていませんし、この研究所の中でも知っているのはごく一部の人のみです」

「なるほどねぇ」

そう話していると、やがてバスは止まり、どこかの建の前に到著する。

その建の中にると、いかにも厳重そうな口がある。

「ここから先は特別區畫になりますので、ここで一旦登録をさせていただきます」

如月は指紋、網伝子等の登録をされ、亜人たちも認識番號等の登録をされた。

してきた付の亜人とはここで分かれる。

「それではここからは私が案しますね」

「うん、よろしく」

ミオの案に従って5人は研究所の中を進んでいく。

「ここです」

ミオが扉を開いて中にると、そこは付のような場所になっている部屋だった。

「セイさん以外の皆さんはこちらで待っていてくださいね」

「はい、承知しました」

ミオの言葉にジュンが返事をして、4人がうなずく。

「さあ、セイさんはこちらにどうぞ」

ミオの案によって如月が先へ進むと、別の部屋でシジマが待っていた。

「おお、來たな、しかし期限までには、まだ隨分と日にちがあるぞ。

本當にいいのかね?」

シジマの問いかけに如月が苦笑いをしながら答える。

「待つまでもなくなりましたのでね」

「そうか、それでどうするかね?」

「モルモットとやらになりましょう。

ミオを失うのはゴメンです。

逆にミオがそばにいれば、いつまでも一緒に生きていたいと思います」

その如月の答えにシジマが「はっはっは」とひとしきり笑うと話しはじめる。

「そう悲観したでもない。

しかし、事は君の生涯、それも數千年、數萬年に関わる事だ。

念を押すが、本當にそれで良いのだな?」

真顔になって念を押すシジマに如月も真顔になると話し始める。

「はい、但し一つだけ條件があります」

「何だね?」

「今言った通り、私がこの話しをけるのはミオがいるからです。

ミオがいなくなるのに耐える事なんて出來ません。

ですからもし自分の前からミオがいなくなったら理由は問わず、この計畫から外させてもらいます。

それだけは譲れません。

それを公的文書で確約していただきたいです」

その如月の言葉を聞くと、突然シジマがまたもや「はっはっは」と笑い出す。

「いや、すまん、すまん・・・ただ君の答えが、あんまり我々の予想通りだったので驚いたんだ。

だがその心配はしなくてよい。

いずれわかるだろうが、ミオは君が想像しているより遙かに頑丈で高能だ。

君が恐れているように完全に壊れる…死ぬ事はまずないと斷言できる。

以前にも言ったが、人間に例えるならば、ほとんど不死だと言えるだろう。

だから例え何らかの原因で離れ離れになったとしても君が生きてさえいれば、必ずいつかは會える。

その事もこれから詳しく説明をしよう。

それに他の計畫に移する事もない。

例え、そういった命令があったとしてもミオが特別A級権限で拒否するだろう。

だから君が生きている限り、ミオは君のパートナーでいるだろう。

ありていに言ってしまえば、君が死ぬ可能より、彼が死ぬ可能の方がはるかに小さいし、その可能はゼロと言ってもいいだろう。

したがって君のその心配は不要と言える。

君が求めるなら公文書ももちろん作ろう」

そのシジマの言葉に如月も改めて安堵する。

「それならば、お引きけします」

「よろしい、それでは君にはいくつかの醫學的処置と教育をけてもらおう」

「不老不死になるための?」

思わず如月が質問すると、それまでのにこやかな表から、シジマは突然キッとした顔になると説明を始める。

「それは違う!

以前にも説明したし、後ほど詳しく説明するが、これから君に施す処置は、あくまで不老にはなるが、不死ではない。

例えば君が生のままで宇宙空間に放り出されれば、それで君の命は終わりだ。

溶鉱爐に落ちても普通の人間と同じく死んでしまう。

毒などはある程度は大丈夫だろうが、病気の類は萬一現在未知の致命的な病原菌に曬されれば死んでしまうだろう。

それにある程度の期間、飲食をしなければ、やはり死んでしまう。

ミオは限りなく不死に近いが、君は決して不死ではないのだ。

不老であるというだけで、普通の人間と同じなのだよ」

「すると當然、腕を事故で失ってしまえば、永久にその腕はないままですか?

まあ、いまはサイボーグ技や細胞再生技が発達していますから、そう困る事はないでしょうが・・・」

如月の質問にシジマが首を橫にふりながら答える。

「いや、それに関しては心配しなくとも良い。

この処置をければ、骨や臓も含めた、あらゆる細胞が君が生きている限り、自的に再生可能となり、君のの完全な狀態・・・まあ今の君に近い狀態にはなるだろう。

君の言う通り、細胞再生処置も一緒にするからな。

もちろん一瞬で魔法のように腕が生えて來るような訳ではなく、それなりに再生に時間はかかるし、元通りにかすにはリハビリも必要だがね」

「なるほど、つまりトカゲの尾のようなじですかね?」

想像しながら質問する如月にシジマがうなずきながら答える。

「話はもうし複雑だが、おおむねそんな様なものだ。

君は脳を一瞬で破壊されない限り、そうそう死ぬような事はないだろう。

これからする醫學処置を施せば、例え心臓を撃ち抜かれても、即座にのナノマシンが代行して傷を塞ぎ、擬似心臓を生するだろうからな。

そしてその脳すらもそうそう破壊される事はなくなるだろう。

そういう意味では不死とは言わないが、かなり一般人より死ににくいとは言えるだろうな」

「つまり短時間で死ぬような致命的な事故や未知の病気に會わない限り、永久に生き続けるという訳ですか?」

自分のこれからの人生をかいつまんで話した如月にシジマが大きくうなずきながら答える。

「理論上はな、今でも君は連邦士級のナノマシン投與をされているが、これから將級のナノマシンに移行する事になる。

それは今までのナノマシンよりも遙かに優秀で高能だ」

「將級ナノマシン?

もちろん聞いた事はありますが・・・?」

シジマの言う通りに如月にはすでに銀河連邦士用の醫療用ナノマシンがに注されている。

これは士として、軍の作戦を確実に遂行するためだ。

その醫學的措置により、連邦の士々の傷や怪我では痛みをじたり、きを制限されたりするような事はない。

より正確に言えば、ナノマシンを通じて自分の意志で痛覚等を作する事が可能なのだ。

そして將用のナノマシンは、詳細は極でわからないが、噂ではそれを遙かに上回る能だと聞いていた。

その將用ナノマシンを一士である自分に注すると聞いて如月は驚いた。

「ああ、それの作を確認するのも、今回の実験の大きな目的だ」

年齢も現狀のままで?」

「それも理論上はイエスだ、確認事項の一つではあるがね」

「なるほど、では覚悟は出來ました」

これからの自分の人生を考えて答えると、驚いた事に自然に如月のがまるで痙攣したかのようにブルブルと震えてくるようにじる。

(おや?驚いた!もしやこれが武者震いって奴なのかな?)

如月は戦國時代の武士がいざ戦に出る時に「武者震い」と言って、なぜかが勝手に震えるというのを、本で読んだ事があった。

そういった語を読みながら実際にそんな事があるのだろうか?とも思っていた。

しかし今まさに自分の一生・・・それも何百萬年になるかわからない一生を決めるという段になって、自分のが勝手に意識して武者震いを起こしたのかも知れない・・・そう考えたのだった。

(実際にこんな事があるなんて驚いたな・・・)

想像上の産だと思っていた、武者震いという現象を実際に験した如月が驚きながら考えていると、シジマが説明を始める。

「よろしい。

では、これから約半年の間、君の醫學的措置と、ミオの特別A級換裝のために、ここから外に出られなくなる。

その他にも多手続きはあるがね。

何かしておきたい事があれば、多は日をずらすが、どうかね?」

「それはミオから聞いて知っています。

用事はすでに済ませてあるので、大丈夫です」

「うん、準備が良いな。

しかし、君はすでにこの計畫に參加を表明した訳だから、もう一つ君の心配に関する事と、君がこの計畫、「メトセラ計畫」に選ばれた理由を説明して安心させてあげよう」

「メトセラ・・・聖書の人ですね?確か長い壽命の・・・」

28世紀のこの時代、ほとんどの宗教はほぼ壊滅していたが、それを學問の一つ、宗教學として如月は知っていた。

「そうだ、メトセラは洪水伝説で有名なノアの祖父に當たり、969歳まで生きたと言われる。

聖書の人の中で最も壽命が長く、長命の人の代名詞のようになっている。

しかし君の場合、そのメトセラ以上に長生きする事になるぞ?」

にやりと笑って、脅かすように説明するシジマに対して、如月が肩をすくめて答える。

「そう言われても今の時點では、まるで実が湧きませんね」

「それはそうだろう。

それは年を経る毎にイヤでも実してくるさ。

・・・さて、説明の方を続けよう。

人間、この場合、特に男だが、食住の生活を完全に保証された人間が次にが何だかわかるかね?

ただし、君ではなく、普通の男子がだ」

シジマは「普通の男子」という部分を強調して質問した。

確かに自分は「普通の男子」ではないかも知れないと如月は考えて自分なりに答えを出した。

「う~ん、何でしょうね・・・財産とか地位かな?」

如月の答えにシジマがうなずきながら答える。

「うむ、一般的には権力、地位、名聲、財産、、そしてその全てを得た者が最後に求めるが「永遠の命」だ」

「なるほど」

言われてみればその通りだと如月も思った。

歴史を紐解いて見ても、秦の始皇帝、アレキサンダー、ナポレオン、ヒットラーと、そう言った人には枚挙にいとまがない。

そう如月が考えていると、シジマが補足するように続きを説明する。

「後は人によるが、より多くの知識の獲得願というがある」

「あ~、私にはそれはありますね」

自分が大いに納得する部分を言われて如月も大きくうなずく。

その如月にシジマが質問する。

「うん、君は今「それ」、つまり知識はあると言った。

では逆に他のはどうかね?」

そのシジマの質問に如月が首を捻り、腕を組みながら考えて答える。

「そうですねぇ・・・なくとも今の所は権力や地位・名聲にはまったくと言っても良い位に興味はないし、將來もあまり無さそうですね。

財産はもちろんあった方が良いでしょうが、そんなに金の亡者というほどに集めるとは思えない・・・

もっとも何萬年も生きるとなったら、それはもうし考えなければならないでしょうね?

でも何千年、何萬年後の世界の資産価値なんて、どうなるからわからないから今から考えてもなあ・・・

う~ん、なるほど、確かにこの実験に私を選んだ理由がわかってきましたよ・・・」

如月の話を聞いたシジマが満足そうにうなずく。

「そうだ、君が権力や地位には興味を示さないし、財産といったにもおそらくある程度以上は興味がないという事はこちらの綿な調査でわかっていた。

それにこの仕事をやっていれば、余程君が我々の想像を超えた使い方をしない限り、おそらく財産は溜まっていく一方だろう。

何しろ君はほとんど宇宙船の中で生活する訳だからね。

そしてその宇宙船も將來的には君が永久に生活可能なをこちらで構想中だ。

そこでは食住は保証されている訳だし、財産を使う機會そのがあまりない。

もっとも財産という概念自、數千年、數萬年の間にどう変わっていくか、それは我々にもわからないがね?

貨幣、土地、金を初めとした希、それらの価値がどう変化するかもわからない。

しかし君が格的にケチでも浪費家でない事もわかっている。

君は必要な時には必要なだけ資産を使うだろうが、逆にそうではなくてはならない」

「必要な時に必要なだけ?」

如月の疑問にシジマがうなずいて答える。

「ああ、例えば何かで億単位いや兆単位の財産を扱わなければならない時も來るかも知れない。

そういった時に逆に財産を使う判斷が出來ないようでは困るのだ」

その説明に如月も納得した。

「なるほど・・・そしてはミオや亜人たちがいるし、永遠の命は実験の目的そのものという訳ですか・・・」

如月がシジマの説明の後を引き取って言葉を続けると、シジマは我が意を得たりとばかりにうなずきながら話し続ける。

「うむ、相変わらず理解が早くて助かるな」

「確かにそう改めて説明されると々とスッキリしてきましたよ・・・」

如月はなぜ自分が理想的な実験なのかを今改めてじ取っていた。

この実験に參加する者は地位や名聲に固執する者ではかなり困るだろうし、権力に執著する者や野心を持ちすぎる者を參加させるのは論外だろうと思った。

確かに如月のように科學的好奇心はあるが、のほほんとした晝行燈とも言われかねないような人間がちょうどよい人材だろう。

「わかってもらえて嬉しいよ。

そして実は今言ったもの以外にも、もう一つ、大抵の人間が求めるがある。

おそらく君もな」

「なんですか?」

「先日も言った通り、永遠の友人だよ」

「なるほど、それは確かに」

これもまた正論である。

よほどの偏屈な人間や、自分自を至上の者として絶対視する人でもない限り、生きている間は誰かと話していたいし、々と流も求めるだろう。

「しかし、普通の男はその件に関しては、つまり異と友人を分けて考える場合が多いが、君の場合、そうではないだろう?」

「そうですね、ミオは私にとってかけがえのないであると同時に、最高の友人、親友でもあります」

「うむ、そこだ、そこでもう一つの君の要素がこの計畫にとって必要でもあり、君がこの計畫の適任者となった理由なのだ」

シジマの言っている事が理解できない如月が問いただす。

「どういう事です?」

「ありていに言おう。

今、君はミオはかけがえのないであり友人と言ったね?」

「ええ?間違いなくそうですが?それが何か?」

如月がキョトンとした表で答えると、シジマが大いに満足そうに笑いながら話し出す。

「それだよ!君はまるでわかっていないが、「それ」が我々の求めているなんだよ」

シジマの言葉に面食らって理解不能といったの如月が答える。

「なんです?正直、私にはあなたが何を言っているのか、まったくわかりませんが・・・」

「では聞くが、ミオは、つまり人間かね?」

「ああ、なるほど、そういうことですか?」

その一言で、如月にもシジマが言いたい事に合點がいった。

いくら亜人、アンドロイドが人間そっくりとはいえ、一般社會ではまだそれは機械の一種という認識が強い。

つまり法的にはともかく、一般的な覚では人間扱いされてはいないのだ。

如月自やその母親、そしてシジマはもちろんの事、探査の友人同士ではそのような事はないが、世間ではまだ亜人を人間扱いしないといった風は強い。

「わかったようだな。

世間ではまだ亜人たちに対する偏見や差別に近いが、連綿として殘っている。

法的にはA級亜人は人間と同等だし、B級やC級にもそれに準ずる人権がある。

しかし、世間一般では表向きはともかく、やはり彼たちは機械であり、人間とは同等ではないのだよ。

君も知っての通りにな。

一時的なの対象や鬱憤晴らしの対象としてならともかく、そんな「機械」とをしたり、自分と対等の友人扱いしようとは思わない人間の方が、依然として多數派と言う事だ」

「言いたい事はわかります」

將來的にはともかく、現狀ではシジマの言う通りなのだった。

アンドロイドはあくまで機械、人間ではない。

法的にはともかく、それが世間の一般認識だ。

「そう、君も知っている通り、「人間主義者」たちのような極端な連中に言わせれば、私や君のような人間は異常であり、理解不能な、いや、存在してはならない人間なのだ」

人間主義者というのは人間が唯一絶対の知的生命であり、機械による知的などというは認めない、すなわちアンドロイドなどというが人間と同等などという事は決して認めないと言う一種の差別主義者の集団だった。

もっとも逆も真なりで、彼らに言わせれば自分たちこそが正常なのであり、機械に人間的なを持つ方が異常であり、それに人間と同等の権限を與えるなどありえないという考えであって、自分たちは決して差別などした覚えはないというのが彼らの意見だった。

「そうですね、彼らから見れば、私のような人間はカブト蟲や鉛筆にしているのと大差はないと思うでしょうね。

もっとも私は別にそれでもかまわないと思いますがね」

そう話しながら如月がどうしようもないというじで肩をすくめる。

如月としては人間主義者という連中がどう考えても構わないと思っている。

ただそれを他人に押し付けるのは許せないし、放っておけと思う。

しかし、これもまた彼らに言わせれば、そういった「機械」を自分たちの社會に「押し付ける」のが許せないのであった。

しかし現実問題として、アンドロイドは現社會になくてはならない者になっている。

実際、彼らもアンドロイドを否定しながらも結局は使用している。

そう言った連中はその矛盾には目をつぶるし、耳をそむけるのだ。

こうして両者は平行線で決してわる事はない。

シジマもそれはわかっているようにうなずく。

「それに関しては私も同だ。

しかし君もそれはそれとしてわかってくれただろうが、この計畫の一環として、我々は被験者の友人という存在が必要だと意見が一致した。

しかし一般的な壽命の人間はこの場合論外だ。

被験者から見ればおそらくあっという間にいなくなってしまう覚になるだろう。

次に考えられたのが被験者同士の流というが考えられて、実際にすでにそうした実験も行われているが、これは遠距離で稀に會話などをするのには有効だが、共同生活をするにはどうも問題があるし、他にも予想外の々な問題點が出てきた。

そこで相手として亜人を考えてみた訳だが、今度は被験者の方がそれを拒否するという訳さ。

つまり機械を友人にするなどとんでもない!とね」

その説明で如月も納得がいく。

「なるほど、それで私のような者を探していたと言う訳ですか?

地位や名聲に執著がなく、それでいて永遠の命にも倦まず、アンドロイドを友とし、人とする人間を」

如月の端的な説明にシジマも大きくうなずく。

「かいつまんで言えばそういう事だ。

ありていに言ってしまえば、君は我々が想定した以上の被験者であり、最高の実験だ。

納得したかね?」

そのシジマの言葉に如月もニヤリとして答える。

「やはり理想的なモルモットという訳ですね?」

「その通りだ」

如月の言葉にシジマも笑いながら同意する。

「そういった君の自己客観視できる覚は非常にありがたい。

それも君が理想的なモルモットな理由のひとつという訳だ。

さらに君の知識の追求に関しては、むしろこちらとしては願ったり葉ったりという所だ。

単なる実験ではなく、この計畫に自主的に參加してもらえる訳だからね。

実は私としては君にこのメトセラ計畫に関しては単なる実験だけではなく、同時に研究者としても參加してしい。

異存はあるかね?」

そのシジマの勧に如月も同意する。

「いいえ、何も問題はありません。

確かにこの研究自、私も興味はあります。

なんと言っても自分自の事ですからね」

「うむ、では今後はそう計らっておこう」

そう言ってシジマが合図をするとミオが二人に茶をれる。

ミオがれてくれた茶を飲みながら如月が再び話し出す。

「それにしても、今まで頭の中で多もやもやとしていたが、今の説明でかなり消え去りましたよ、ありがとうございます。

しかしこちらからも質問があります」

「なにかね?」

「似たような質問をミオにもしましたが、私自が変化したらどうなりますか?

突然、格が変わったり、もっと極端な話、野心に目覚めて銀河系征服を考えたり、あるいは神異常になって全人類抹殺を考えたりしたら・・・」

その如月の言葉にシジマが大きく首を橫にふりながら答える。

「君にだってわかっているだろうが、人間の格はそうそう変わるではないし、もし変わって來た所で、君の場合はこの計畫にさほど影響はないだろう。

事に君がほとんど隔離されている狀態ならばなおさらな。

神異常に関して言うならば、この28世紀の世なら、ほぼ神異常の原因は摑めているし、それがよほど特殊な格に基づいたでもない限り、ある程度の治療も可能だし、君にそういった伝子や格的要素がないのは調査済みだ。

それに君が人類に害を與えようとするならば、ミオを初めとする、君の仲間がそれを止めるだろう、もしその時に生きていれば、私も含めてな。

そして自分自でわかっているだろうが、君がそのような神狀態になる確率はそもそも恐ろしく低い。

0と言っても良い位だ。

そういったも含めてすでに調査はしてある。

しかしそういった可能の低い事も考慮する事は、この計畫を遂行する者にとっては良い事だ。

長い時間の間にはどういった事が起こるかわからないのだからな。

例え確率が低くても0でない可能を考えるのは正しいといえる。

この計畫にはいわゆる「杞憂(きゆう)」というはないと考えてくれてさしつかえない。

もちろん可能が完全に0のは考慮する必要はないがね」

杞憂と言えば中國の故事で天が落ちてくるかもしれないと考えて鬱になった人間の事だ。

もちろんそんな事はありえないが、この計畫に関してはそこまで考えても考えすぎではないという事だろう。

「なるほど、わかりました」

「うん、これからもそういう疑問が浮かんだら是非わしやミオに相談してくれ。

それはこれからの我々の研究のヒントになる可能が高いのだからな。

・・・では君が納得した所で何人か紹介したい者がいる。ついてきたまえ」

「はい」

シジマについて近くの別室に行くと、そこには2人の男亜人がいた。

一人はがっしりとしたじの男亜人で、見かけからはいかにも格闘などが得意そうだ。

もう一人はそれほどではないが、やはり格はよく、眼鋭く、何事も見逃さないじだ。

「今後、君の護衛隊長を勤めるバリスと副護衛隊長のハーゲンだ」

「護衛隊長?私の?」

つい先日、佐級になったとはいえ、たかが1士に過ぎない、自分のような者に取って、「護衛隊長」などという聞きなれない言葉に不審に思った如月が問いかける。

その問いに対してシジマがゆっくりと説明をする。

「君の意識に刷り込むためにこれからも何回でも言うが、この実験に參加した時點から君の命は非常に貴重だ。

現在、君が想像している以上に貴重なのだ。

だからその生命を守るために我々は最善を盡くすつもりだし、その一環が君の護衛隊だ」

「護衛“隊”ですか?」

単なる護衛ならばまだしも“隊”とわざわざ言うからには相當數の人數がいるに違いないと考えて如月が再び驚く。

「それはそうだ。

いくらミオが優秀な副兼護衛だとしても、一人で君を守るのには限界がある。

そのためにこれから君には護衛隊を三隊つける事になる」

「三隊もですか?」

自分のような者に護衛隊がつくという事だけでも驚きなのに、それが3隊もあると聞いて、如月がさらに驚く。

「正確に言えば、現在の所、正式なが「まずは三隊」で、いずれは他にも何隊か作る予定だ。

さし當たって、この二人は第1護衛隊の隊長と副隊長という訳だ」

「なるほど、よろしく、バリス」

「はい、如月隊長、どうぞよろしくお願いします」

「おや?君は?」

その首の亜人認識章に気づいた如月が質問をしようとすると、シジマが答える。

「そう、彼はB3級だ。それも戦闘に関して飛び切りのな」

「それは頼もしいですね」

アンドロイドはA・B・Cの三段階に分かれるが、そのうちC級はC1からC5までの5段階、B級はB1とB2の二段階に分かれるが、まれにB3級と言うクラスが存在する。

これはB級ではあるの、その一部の機能がB級を超えて秀でる者や、逆にC級ではないが一般的なB級よりは劣る場合のクラスとされる。

だから通常のB級よりも上の能の者もいるし、下の能の者もいる。

言ってみれば等外のようなである。

これは実験的に作られる場合もあるが、確固たる目的の元に製造されるも多い。

今回の場合はあきらかに後者であり、相當高能な能力を持っているのは想像に難くない。

「これから君の部下になる者で、ミオを除けば彼に勝てる者はそうそういないだろう。

もちろん君を襲う輩にもな」

やはり特別製なのかと納得する如月に、自慢の亜人なのか、シジマが得々とバリスの説明をする。

「いえ、まだロクに実戦経験もない未者ですから」

謙遜するバリスの説明をシジマが続ける。

どうやら実直で誠実な格のようだ。

もっともそういった格でなければ、護衛隊長などという役目は務まらないかも知れない。

「彼は第1護衛隊から第3護衛隊までの総隊長も兼任する」

「なるほど」

如月が心していると、さらにシジマが隣の男の説明を始める。

「そして副隊長のハーゲンもB2級としては、かなり格闘に特化していると言って良いだろう。

さらに言えば速さに特化している。

速さだけならバリスよりもハーゲンの方が上だな。

力ならバリス、速度ならハーゲンと言った所だ」

なるほど、それは確かに場合によって使い分けが必要だろう。

俺が納得しているとハーゲンが挨拶をして來る。

「よろしくお願いします。如月隊長」

「うん、よろしく、ハーゲン」

「差し當たりミオがいないこの半年間、彼らが君の護衛にあたる」

「しかし必要ですかね?ここでそんなに護衛が?」

何と言っても科學局の膝元、特別研究所の中だ。

セキュリティも萬全だし、そもそも遠い將來ならいざ知らず、現時點で自分をどうこうする相手がいるとは思えない如月だった。

その如月の疑問にシジマがうなずきながら答える。

「もちろん君がこの研究所の中にいる間は、実際には護衛の必要はまずあるまい。

まあ、これは君と彼らの間に、これからの友関係を作る期間だと思ってくれ」

「なるほど、わかりました」

確かにそれなら話がわかる、と如月も思った。

これからどれほどの期間を彼らと過ごす事になるかわからないが、いきなり船の中で生活が始まるよりは、こうして地上にいる段階から知っていった方が、より互いに理解は深められるだろう。

「さしあたって君に紹介しておくのはこの二人だけだ。

後は君の醫學的処置が終わり、ミオのA級換裝が終了した時にあらためて何人か紹介するよ。

さて、それではいよいよ君の醫學的処置をするか」

「はい」

いよいよこれから自分のが改造されるのかと思うと、如月も覚悟を決めて醫療室に向かうのだった。

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