《星の見守り人》031 宇宙船の仲間たち
シジマに付いて別室に行くと、そこにはすでに何人かの人たちが待っていた。
「さあ、それでは次は新しい乗組員の幹部を紹介しよう。
まずは今度の船の船長イリスだ」
「よろしくお願いします。如月隊長」
濃い茶の髪を後ろでまとめた亜人が挨拶をする。
年恰好は30代前半ほどのに見える高級僚というじだ。
「よろしく」
「彼は見ての通り、B1級亜人だ」
「B1級ですか?大型基地か戦艦並みですね?」
B1級といえば探査船などではなく、普通はもっと大規模な組織や集団の司令や副司令を務める等級の亜人だ。
「當然だ。今度君が乗る大型探査船「アルゴー1」は巡洋艦以上の扱いだからな。
そもそもA級を乗せている船だってそうそうない」
「そう言えばそうですね」
A級亜人ともなれば管區司令部以上の場所でなければ配置される事はあまりなく、普通は探査船はおろか重巡洋艦にすら配置される事はない。
如月がそう心していると、シジマは次の亜人を紹介する。
「副長のハセガワ、B2級だ」
「よろしく」
紹介された男の見かけは五十代ほどの亜人で、見た目の雰囲気はいかにもそうで、常識的な思考をするじの男で、にこりともしないような雰囲気だった。
「よろしくお願いします、隊長」
如月の想像道理に微笑すら浮かべずに挨拶をするハセガワ。
「よろしく」
「さて、次は・・・この半年で手室や醫務室でもう顔はしっているな?
醫務長のワカナと副醫務長のミナヅキ、君の主治醫でもある。二人ともB2級だ」
「よろしく、如月隊長」
「よろしく」
「そうそう主治醫といえば、ミオも今回から一応醫師の免許は持っている。
A級に換裝した際に増えた機能の一つだ。
それとマヤもだ」
「そうなんですか?」
「そりゃ君の一番近くにいる者が、醫療知識がないのでは、いざという時に困るからな」
「言われてみればそうですね」
納得してうなずく如月にシジマがつぎの人たちを紹介する。
「そしてもうお馴染みの護衛隊長のバリスとハーゲンだ」
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この二人はこの半年、頼もしく思っていた。
「改めてよろしくお願いします、如月隊長」
「うん、君たちは非常に頼りになるよ。こちらこそよろしくね」
「栄です」
「全力を盡くします」
二人が挨拶をすると、その隣にはやはり護衛隊らしき人たちが二人立っている。
「そして第二護衛隊隊長のミラーと副隊長のシャドウ、二人ともB2級亜人だ」
「よろしくお願いします。如月隊長」
「よろしく・・・あれ?君たちもどこかで見たような・・・」
ミラーは金髪碧眼で、シャドウは銀髪青眼だったが、その中中背の雙子のような青年亜人を見て如月は首をかしげる。
「はっはっは、そりゃ當たり前じゃよ、おいミラー、シャドウ、見せてやれ」
「はい」
シジマが聲を掛けると、たちまちミラーとシャドウの髪のと瞳のが黒くなり、如月そっくりの姿となる。
「これは僕じゃないですか?」
驚く如月にシジマが説明をする。
「その通り、普段は今見たとおり金髪碧眼と銀髪青眼の姿だが、それ以外の姿形はお前さんと同じじゃ。
そして場合によってはこの通り、お前さんと同じ姿となる。聲も含めてな」
「なぜこんな事を?」
驚いて不思議がる如月にシジマが説明をする。
「我々の考えで君の影武者がいた方が場合によっては都合が良かろうという配慮からだ。
何かの時に役に立つだろうと考えてな」
「何かってどういう時です?」
「正直に言ってそれはわからん。
しかしこれから長い君の人生には何が起こるかわからんのだ。
我々は君の「死」に対するあらゆる可能を考慮しているのだ。
その中には君の「暗殺計畫」というも視野にれているのだ。
そういった場合にはこのような人材もいた方が良いという判斷からだ。
つまり影武者とか替え玉という事だな。
何しろ用心に越した事はないからな」
「暗殺?そこまでしますかねぇ?」
如月には一どうしたら自分が暗殺の対象になるのか皆目見當がつかなかった。
「ああ、それに関してはいくつかの予想がある」
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「予想?では私が暗殺される可能があるというわけですね。
一どういう場合なんです?」
如月としては自分が暗殺されなくてはならない理由など全く思いつかなかった。
それなのに仮にも暗殺される可能があるとは穏やかでない。
自分としては品行方正とは言わないが、なくとも人の恨みを買うような事をした覚えはないし、これからもする気はなかったからだ。
そう考えている如月にシジマが説明を始める。
「もっとも可能が高いのは逆恨みだ」
「逆恨み?どういう事です?」
「例えばここにある老人がいたとする。
彼のこれまでの人生は苦労もあったが、努力の甲斐もあって何とか地位も財産も人並み以上に恵まれて一生を送ってきた。
しかし人生も半ばを過ぎて殘りない人生を悲しむようになって、人生をもっと楽しみたい、そのためにも壽命を延ばしたいと考えていたとする。
しかしそれは無理なみだという事も知っている。
だが、ある時、何かの偶然で君の存在に気づき、自分が切しているを君が何の努力もなく、ただ運だけで手にれたと思うだろう。
そんな人が君に好意を抱くと思うかね?」
その説明で如月も納得がいった、
確かにそんな人がいれば、自分に好意など抱く訳がないのだ。
「ははあ・・・なるほど・・・
まあ、確かに運が良かっただけというのは當たってますが・・・」
「そういった人間が権力や地位・財産を持っていたとすれば、君を逆恨みして暗殺くらい考えても不思議はあるまい?
そしてそういった人間は、実は結構な人數がいるのさ」
「確かにそれはありえそうですね」
如月が納得してうなずくと、シジマはさらに話しを続ける。
「また、例えば君の副であるミオはA級亜人だ。
君の永久壽命は知られなければわからないが、彼が君の副である事は一目瞭然だ。
そして君も知っていると思うが、C3級よりもC1級、そしてC1級よりもB2級を副にしている方が、世間は上だと考えている輩も世の中にはいるのだ」
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「そうですね」
如月にしてみれば何級だろうが副は副だった。
確かに等級が上の亜人を副にしている方が法的に便利な事も多い。
そういう意味ではより上級の亜人を副にした方が良いのはわかる。
だから如月もC級よりもB級亜人の方が後々楽を出來ると考えたので、それを永久貸與してもらえる探査になろうと考えたのだった。
しかしそういった連中はそのような意味ではなく、単に自慢の種として、より上級の亜人を副としたがるのだった。
「そういった連中の中にはA級亜人を個人的な副としたがる連中もいるのだ。
しかも君が想像する以上の大人數がな。
しかし君も知っての通り、A級亜人が個人の副になるような事はまずありえない。
連中もそれは知っているのだが、逆にそれ故にA級亜人をそばに置きたがるのさ。
世間への自慢のため、自分を引き立たせるアクセサリーとしてな。
全く馬鹿馬鹿しい事だ!
実際わしもそういった例を何人か知っているが、それは病的なほどだ。
中にはわしの立場を使って、どうにかA級亜人を個人的に手できないかと言ってくる者すらいる。
そういった連中が君のような一見何の変哲もない若造が、A級亜人を連れ立っているのを見れば、どういう心象を抱くかは推して知るべしさ」
「なるほど・・」
そんな事は如月は考えた事もなかったが、確かにそうなのかも知れないと思った。
「今の話は我々が予想したのほんの例だが、実は実際に起きた、我々の予想をはるかに超えた実例もある」
「実例ですって?どういった話なんです?」
「良い機會だから話しておこう。
この永命伝子の研究が始まった際に実際に実験に加わった二人の人間がいる。
いわば君の先輩さ。
仮に一人目をAとして、二人目をBとしよう。
Aは君と似たような格で、どちらかといえばのんびり屋であまり事に拘らない格だった。
そして一方Bの方はどちらかと言えば杓子定規に事を考えて、々プライドの高い人間で多問題がある人間だった。
しかし我々はそれを実験の許容範囲として考えて、Bも実験として採用して君と同じ永久生活の実験を始めた。
何しろ同じ格の人間ばかりを実験として採用してもあまり意味がないからな。
そしてAとBの実年齢差は一年Bの方が若く、実験を始めたのはAの方が先で、その8年後にBが実験生活にったのだ。
つまりこの二人の狀況を簡単に説明すれば、Aの方が年上ではあるが、見た目の年齢は年上のAの方が若く見えるという訳だ。
そしてそれから10年ほど経った時にBがAとの流を希し、Aもそれを承諾した。
我々としても永命伝子実験者同士の流と言うものも興味深かったので、それを許可した。
別に何も問題はなかったしな。
そして二人が始めて會った時にどうなったと思うかね?」
質問をされた如月だったが、今の話に特におかしな部分があったとは思えない。
この話だけでは答えは全くわからないので素直にこう答えた。
「さあ・・・同じ狀況の者同士、自分たちの事を普通に話したんじゃないですか?」
「うむ、そう考えるのが普通だろうな。
我々もそう考えた」
「ちがうのですか?」
「実は二人があったその瞬間に、いきなりBがAを刺し殺そうとしたのだ」
そのあまりに予想外の答えに如月は心底驚いた。
「何ですって?その時、二人は初対面だったんですよね?」
「その通りだ。それまで面識は全くない」
「では一なぜそんな事に?」
「我々も當然の事ながら驚いて即座に二人を引き離した。
幸いな事にAは重傷ではあったが一命を取り留めた。
君ほどではないにしても、一応には一般士級のナノマシン処理をしてあったからな。
その後、我々は當然Bを追及し、そうなった経緯と機を調べ、その結果、驚くべきBの心理と行結果が判明したのだ」
シジマはそこで一息つくと話を続けた。
「AがBよりも1才年上なのは話したな?」
「ええ」
「そして実験を始めたのはAの方がBよりも8年先だった」
「はい」
「そこが問題だったのさ」
しかしそう言われても、如月にはどこが問題なのか全くわからなかった。
「は?今のどこが問題だったんです?」
「AはBよりも一才年上だ。
つまり二人が生きている限り、その差は永久に埋まらない。
しかも二人は理論上は永久に生きるのだからその差は文字通り永久だ。
そして実験を始めたのはBよりもAの方が8年先だ。
この事はAの方がBよりも年が上なのにも関わらず、的年齢はAの方がより若い。
実際、二人の個人的差もあって、AはBよりもかなり若く見えた。
Aは君と同様に顔で、逆にBの方は実年齢よりも老けて見える顔立ちだったからな。
だから実際の見た目はBの方がはるかにAよりも老けて見えた。
Aの方は20代後半程度の見た目だったが、Bは40代ほどに見えた。
さらにAはどちらかと言えば男子に近かったが、Bはそうではなかった。
そしてこれは二人が生きている限り、絶対にくつがえらないのだ」
そこまで聞いて如月は愕然とした。
「それはそうですが、まさかそんな事で・・?」
「さきほども話したが、Bはプライドが高い男だった。
彼はこの実験計畫に參加した時に自分は特別な人間と思い込んだ。
実際それは間違いではないが、彼はそれに関しては事あるごとに我々に確認を求め、我々はそれに対してうなずいた。
それは事実だったからな。
そしてそういった事を繰り返すに彼の自我は過剰に膨らみ、次第に態度も尊大になっていった。
彼は自分の事を人類を超越した超人類だと考え始め、自分は全ての人類の頂點に立つべき人間だと考えるようにさえなった。
しかし彼はある事に気づいてしまったのだ」
「ある事?」
「Aの存在さ。
彼が生きている限り、決して自分が一番になれない事に気づいたのさ。
彼が生きている限り、人類の最高壽命はいずれ彼になる。
何しろ彼は永命伝子の第一被験者だったからな。
彼より年上の実験はいない。
Bはあくまでも2番目でしかも年下だ。
それは決して永久にくつがえらない。
そして彼が自分よりもいつまでも若い事にもBは嫉妬した」
「そんな・・それこそただの偶然で、どうにもならないことでしょうに・・・」
「彼にはそうは思えなかったのさ。
そしてBはAさえいなければ自分が人類の頂點に立てると考えた。
逆に言えばAがいる限り、BはNo2に永久に甘んじる訳だな。
この事が自己が大したBには我慢がならなかった訳だ。
そして彼は一計を案じ、事を起こした」
「そんな・・・まさか、そんな理由で・・・?」
「ああ、人の神とはかくも恐ろしいものさ、我々としてもこの教訓は非常に良い勉強となった。
この事件があった時點で、永命伝子の実験者はすでに5人ほどいたが、それ以降は以前にもまして実験の選定基準は高くなった。
たとえ永命伝子を持っている者を発見したとしても、実験に採用するかどうかは最低でも三年は近場で生活を観察して極めて慎重に考慮する事となった」
その説明で如月は自分の観察経過に數年を要した事を納得した。
「・・・それで私の場合もこんなに話すまでに時間がかかった訳ですね?」
「その通りだ。納得してもらえたかね?」
「ええ、でもその後、二人はどうなったんです?」
「Aの方はもちろん何も問題はない。
怪我は無事に回復をして、今でも元気で普通に生活をしておるよ。
Bの方はある有人星上に居住を定められて、決してその星から外には出ない取り決めとなった。
文字通り永久にな。
一種の巨大な狀態となった訳だ。
萬一これを破った場合は、さらに行範囲を狹めるとBには警告をしてある。
そしてAにはBの居場所を教えるが、BにはAの場所を教える事は決してない。
これは永遠に生きるBに対する罰則でもある訳さ」
「妥當な所ですね」
永久に生きるもの同士の接を防ぐにはどちらかが場所を固定するのが最適だが、永久に拘留ができない事を考えれば、それしか方法はないだろうと如月も思った。
「しかし我々の見る所では、Bはかなり狀況を楽観視しておる。
何しろ我々が研究対象たるBを殺せない事を知っていて、機會は文字通り、永久にある訳だからな。
しかも仮にBが自分の目的を達しても、確かに我々はBに手出しはせんだろう。
何しろもし仮に我々がBに何らかの罰則を與えたとしても、Bはその時點で目的を達しているのだからな。
だからおそらくBはいつか自分の野を達できると今だに考えておるのだろう」
それを聞いて如月はゾッとした。
自分が永久に生きると同時に、その死を常に願い、隙あらば狙っている存在がいるのだ。
気が弱く、神経が細い者ならば、それだけで病んでしまいそうな狀況だ。
「恐ろしい事ですね・・・」
「ああ、だから君に関しても今後どういった事がおこるか、現時點では正直我々にもわからん。
しかし最初からその可能をこちらが織り込んでおけば心配は無いと言う事さ、備えあれば憂いなしというやつだ」
「はあ・・・」
確かにこちらには何の問題もないのに、いきなり殺されるような事態になってはたまらない。
正直なところ、如月に実はまだわかなかったが、ここは今まで実験に攜わってきたシジマのいう通りなのだろう。
「確かに単に君のを偽裝させるだけならC5級亜人を利用しても良いし、先ほどのメルクーロのような不定形ロボットでも可能なことだ。
しかしミラーたちは君の姿かたちだけでなく、この半年、君から収集した的報や、ミオから収集した報で可能な限り、君の癖や考え方、そして的なきを真似して行する。
長期的に君の影武者を勤めるためにはそれぐらいしなければ勤まらないだろう」
「しかし、認識章はどうします?
まさかそれを外す訳にはいかないでしょう?」
各アンドロイドの首にある認識章は人間との區別や犯罪に利用するのを避けるために、厳に法律で決まっており、それをはずしたり隠したりする事は基本的に出來ない事になっている。
それならばいかに如月そっくりに作ってあっても、人間である如月とB2級亜人であるミラーたちとの區別は簡単につくはずだ。
「さすがにそれは君の方でまねてもらうしかないな。
例えば、もし仮に彼らを影武者として使う機會があるとしても、いきなりある日その役割をする事はないだろうから、その計畫がある場合には君の方で、あらかじめB2級の認識章をつけてもらうしかなかろう。
そうすれば君を標的にしている連中は混するはずだ」
「なるほど」
よほどの理由がない限り、アンドロイドが認識票をはずしたり偽ったりする事は出來ないし、それは亜人法に違反する。
だが、逆に人間がアンドロイドを真似て法にれるという事はないので、如月がアンドロイドのふりをすれば、確かに如月を抹殺しようとする連中は困るだろう。
そう如月が納得して考えていると、シジマが次の人の説明を始める。
その3人は見慣れた人だった。
「そしておなじみ部屋つきのメイド兼護衛のかすみとあやねだ。
彼たちもそのをB2級に換裝してある。
これからは第3護衛隊長と副隊長を務める」
「よろしくお願いします、セイさん」
「よろしくお願いします。船長」
「そしてミランダ。
但し、彼は見た通り、まだC級のままだ」
「え?どうして?」
「我々もそれを聞いたのだがな?
彼には何か考えがあるようだ」
「まあ、気にしないでください。
隊長、時期が來たら私も換裝をしますよ」
「そうか」
「そして最後が戦闘隊長のジュンだ。
彼はバリスと同じくB3級に換裝されている」
「よろしくお願いします。隊長」
「ああ、よろしく・・・しかし・・・」
局長を振り返った如月が質問する。
「こんなにもたくさんの護衛が必要ですか?」
さきほどのような予想や実例を聞いても、まだ如月にはいささかこの數は多すぎるような気がした。
「もちろんだ、ミオやマヤ、それにまだここにいない他の護衛隊の連中を含めてな!
君はまだ自分の重要さがわかっていないようだが、君は今日から人類に取って貴重な実験見本となるのだよ。
今までの話でそれを自覚してくれ!」
「それはわかっているつもりですが・・・」
「確かに君の宇宙船に乗っている間はさほど護衛は必要ないだろう。
地球や他の星上にいるより、よほど安全だ。
しかし一旦地上に降りれば何が起こるかわからん。
以前にも似たような説明をしたが、突然君の頭上に鉄骨が落ちてくるかも知れない、暴走した乗りに轢かれるかもしれない、突然の地震で君のいる建が崩れるかも知れない、突風で鉄の看板が君にぶつかるかも知れない、街中で暴徒に襲われるかも知れない。
そういった事の対処にはこれ位の配慮は必要だよ、キミ」
「なるほど・・・」
確かに言われてみればそうかも知れない。
人間自分だけは大丈夫と無意識に思っているが、いつどんな事故に巻き込まれるかなど誰にもわからない。
「くどいようだが先日も言った通り、君は不老ではあるが、決して不死ではない。
例え多は死ににくいになっているとしてもな。
我々の理論に間違いがなければ、自殺以外で君が死ぬとしたら、それは99%の確率で事故死だ。
殘りの1%は未知の病気だ。
それを防ぐために萬全を講じるのは當然の事さ」
「わかりました」
全員を紹介し終えると、シジマはその全員に向かって大聲で話し始める。
「さて、諸君!今、この部屋にいる者達は全員如月特務の參加している実験に関して知っている。
逆に言えば、いまここにいない者には人間であろうと亜人であろうと宇宙人だろうと話してはいけない。
全員それは刻み込むように」
その言葉にうなずく一同。
さらにシジマが説明を続ける。
「君たちの表向きの任務は辺境探査と相対理論の人間に対するウラシマ効果の実験と冷凍睡眠の実験を兼ねているという事になる。
これで対外的には如月特務が年を喰わない説明にはなるだろう」
「なるほど、それにしてもB1級が1人、B2級が9人にB3級が2人、ミオを合わせればBクラス以上が10人以上ですか?恐ろしく上級亜人が多い船になりますね。
戦艦だって、これほどB級亜人を乗せていないでしょう?」
探査母艦は例外で140人以上のB級亜人を乗せているが、これは各探査船の副長と副たちを數にれているからで、純粋に母艦だけの要員に限ればB級は數人程度しかいない。
「確かに君以外が別の目的でこの船を使用するのならば、多くともせいぜいB1級が一人とB2級が2~4人ほどで、おそらく5人以上B級が乗るような事態にはなるまい。
それだけこれからの君の仕事が特殊だと思ってもらいたい。
何しろ千年以上稼する事を考えると、どうしても自己修復機能のあるB級以上の構造で無いと無理があるからな。
それにこの船はあくまで試験船で、この後にこの船の設計と実用を參考にした、本來の船を作る事になっている。
もっと高能で大きな船をね。
このメンバーはその時のために今から用意されたと思えばよい」
「また、この後に別の船に?」
てっきりこれから乗る船にずっと乗っているのだろうと考えていた如月はすでに別の船の計畫があると聞いて驚いた。
「そうだ、そしてその船こそが君の最終的な乗船であり、住処だと思ってもらってよい。
今からその前段階の船、つまり君がこれから乗船する船を君に紹介するが、その前に一つ重要な・・・大変重要な事を君に知らせておく必要がある」
「なんですか?」
「実はここにいるA級・B級のメンバーは全てこれから君の率いる組織、我々は仮に「完全獨立組織・如月」と呼稱しているが、その組織に屬する事になる。
當然、君がその組織の長なので、事実上、ここにいる亜人たちは全員君に個人的に所屬する事とほぼ同義になる」
「はあ、まあ、それは組織的によくある事だし、元々ミオだってB級のままなら二十年経てば私個人の所有になる訳だったのですからね、いささか人數が多くなったとは思いますが・・・」
そう言って今回自分の下につかされた亜人たちを改めて眺める。
これはどういう事かというと、全ての亜人は製造された時に必ず所屬機関か所屬人というが登録されて、それがもっとも本的な指揮系統の源となる。
これによって同じ場所で同じ仕事をしていたとしても立場が全く異なる場合もあるのだ。
例えばAとBという亜人がいたとして、それぞれ甲という會社で働いていたとする。
二人の能は全く同じで、職場も全く同じ部署で同じ仕事をしている。
唯一の違いはAの方は所屬が甲會社になっており、Bの方の所屬は同じ會社で働いている乙という人であったとする。
この場合、A・Bともに會社の命令通りに仕事はするが、もし乙という人が會社の仕事を拒否するように命令したり、自分がその會社を辭める時に一緒に辭めるように命令を出した時に、Aは乙の言う事を聞かないが、Bの方は乙の言う通りに仕事も拒否するし、會社も一緒に辭めるのだ。
すなわち命令系統の優先順位が製造された時に必ず決められていて、それを覆す、もしくは無効にするには犯罪に関するなど特殊な事がない限り、その命令最優先権を持っている人または組織が消滅しない限り有効なのだ。
ただし、これはあくまで一般的優先権であって、本的な優先権は銀河連邦の法律が優先される。
例えば最優先順位を持つ人が誰かを殺せと亜人に言っても、それは連邦の憲章や法律に抵するので、そういった銀河連邦に逆らう命令はきかないようになっている。
最優先命令権を持つ人や組織が消失し、次の優先権を持つ人や、組織が存在しない場合はその亜人の所屬は自的に銀河連邦の所屬となる。
全ての亜人がこの法則に従っているために亜人を利用した反逆やクーデター等は起こり得ない事になっているし、実際に起こった事がない。
先日起こったエイトの事件はスラスキーという天才科學者がいたために起こった、例外中の例外のようなだった。
そんな事を考えていた如月にシジマはかぶりを振って説明をする。
「そうではない、君は勘違いしているし、その理由はわかるが、ミオを含め彼達は全員銀河連邦ではなく、君に、いいかね?君の組織である「完全獨立組織・如月」に所屬するのだ。
別の言い方をすれば、君個人に屬する事となる」
その意味をしばらく理解できなかった如月だったが、數秒のうちに理解すると、驚きの聲を上げる。
「なん・・ですって?」
「そうだ、彼達は完全に君のなのだよ」
「つまり彼達の命令優先権は私の方が銀河連邦より上なのですか?」
「その通り、極端な話、君がここで彼達に私を殺せと命令すれば、彼達は私を殺すだろう、流石にためらいはするだろうがね。
彼達にとっては君の言葉が法律なのだ」
「なんでまたそんなことを?」
「それは必要だからだ。
まだ君は自覚がないだろうが、君の壽命は銀河連邦の存続よりも高い可能もある。
また銀河連邦を最優先機関にしてしまった場合、君を守れなくなる場合もありうる。
そういった憂いをなくすために彼達の最優先命令順位を君の組織にしたのだ」
その説明に如月は唖然とした。
「それに君も知っての通り、彼達は単なるロボットではない。
単純に君の命令に従うわけではないのわかるだろう?
先ほどの私を殺すという命令にしても、たとえ君が命令しても彼達はためらうし、君にその命令を撤回させようとするだろう。
もちろんそれでも君があくまで私を殺せと命令すれば従うだろうがね。
君が最優先命令順位を持っているのは事実だが、それによって銀河連邦憲章や法律をないがしろにする訳ではないし、無法者の言う事を唯々諾々と聞く訳でもない」
そのシジマの説明で一応の納得はした如月だったが、驚きが止まないのも事実だった。
「まあ、まずは君の乗る最初の船を紹介しようじゃないか」
そう言いながらシジマは如月たちを宇宙船ドックへと案した。
【書籍化】斷頭臺に消えた伝説の悪女、二度目の人生ではガリ勉地味眼鏡になって平穏を望む【コミカライズ】
☆8/2書籍が発売されました。8/4コミカライズ連載開始。詳細は活動報告にて☆ 王妃レティシアは斷頭臺にて処刑された。 戀人に夢中の夫を振り向かせるために様々な悪事を働いて、結果として國民に最低の悪女だと謗られる存在になったから。 夫には疎まれて、國民には恨まれて、みんな私のことなんて大嫌いなのね。 ああ、なんて愚かなことをしたのかしら。お父様お母様、ごめんなさい。 しかし死んだと思ったはずが何故か時を遡り、二度目の人生が始まった。 「今度の人生では戀なんてしない。ガリ勉地味眼鏡になって平穏に生きていく!」 一度目の時は遊び呆けていた學園生活も今生では勉強に費やすことに。一學年上に元夫のアグスティン王太子がいるけどもう全く気にしない。 そんなある日のこと、レティシアはとある男子生徒との出會いを果たす。 彼の名はカミロ・セルバンテス。のちに竜騎士となる予定の學園のスーパースターだ。 前世では仲が良かったけれど、今度の人生では底辺女と人気者。當然関わりなんてあるはずがない。 それなのに色々あって彼に魔法を教わることになったのだが、練習の最中に眼鏡がずれて素顔を見られてしまう。 そして何故か始まる怒濤の溺愛!囲い込み! え?私の素顔を見て一度目の人生の記憶を取り戻した? 「ずっと好きだった」って……本気なの⁉︎
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8 116何もできない貴方が大好き。
なーんにもできなくていい。 すごく弱蟲でいい。 何も守れなくていい。 私の前では隠さなくていいんだよ? そのままの君でいいの。 何もできない貴方のことが好き。 こうしていつまでも閉じ込めておきたい。 私だけは、貴方を愛するから。 『…ふふっ 寢顔かーわい』 純粋な愛のはずだった。 しかしある日を境に、少女の愛は狂気へと変わっていく。
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