《私たちだけ24時間オンライン生産生活》20. パーティー「警ら隊」

東村の中央広場で、淡いの粒のエフェクトが表示されながら、はじめは薄く、段々はっきりと、私たち3人が表示されていく。

3人とも、広場の真ん中で倒れていた。

空はまだ夕方で、夜になる一歩手前だった。

HPは1。MPは1。そして所持金が、げげ。30%減の49,455セシルになっていた。

『ぐ~~』

クルミのお腹が大きい音を立てた。

「あー。お腹空いた~」

このゲームではありがたいことに、死亡時にアイテムはドロップしない。

しかし、々なものが減っていた。

3人ともなんとか立ち上がった。

「死に戻り、お疲れさまです。キリ」

通りがかりのヒューマンの男ユーザーが敬禮した。

しかも「キリ」まで発音していた。

すると、その人のパーティーメンバーだろうヒューマン男3人も、その橫に整列して、すぐにこちらを向いた。

「「「お疲れ様です。キリ」」」

一糸れぬ行だった。マジの軍隊か警察みたいだ。

仮に警隊と呼ぼう。

「あーどうも、どうも。お迎えありがとう」

クルミはのんきなことを言っている。

「いえ。大変だったでしょう。一緒に宿屋でご飯にしませんか? ステーキおごりますよ」

「あっステーキ!? ほんと? じゃあ食べようかな」

クルミが一人で決めちゃったけど、サクラちゃんはどうやら反対するつもりはないようだ。

と言うか、お腹が空いたのだろう。お腹をさすっている。

隊の人たちには、先に宿屋に行ってもらって、私たちは雑貨屋に寄る。

雑貨屋のトラニー君から売り上げをけ取らないといけない。

今日も完売で、40,000セシルの売り上げだった。

場所はいつもの宿屋だ。

この村では食べるところも、2つある宿屋ぐらいしかないのだ。

到著して食堂に顔を出すとすでに長テーブルに著いた警隊の人が手を上げて呼んでくる。

「やあ、うれしいなあ。そのまま、ほっぽらかしにされるかと思いましたから」

「お待たせしました」

「どうぞ、座ってください。約束通りステーキのおごりです」

そう言うと、警隊のリーダーは大きい聲で注文する。

「おばちゃん、ステーキ追加3つね」

「あいよ、ステーキ3つで600セシルだよ。出來上がったら換ね」

私たちは、促されて席に座る。

彼らは「警ら隊」と名乗った。リーダーは「アルク」。

他の人は「シロガネ」「アリクイ」「イシバシ」という。

大盾がリーダー。魔法使い。片手剣使い。大剣使いのパーティーだそうだ。

さっそくアルクがクルミの方を向いて質問してくる。

「それで、単刀直に質問します。何に殺されたんですか?」

「あー、いやまぁ、えっと……」

「3人はバランスの良いチームに見えます。そんな人たちがこの初心者ゾーンで殺される敵とはなんでしょう? PKはできないはずですし、まだ夜になっていない。遠くまで行ったなら、それも興味があります」

「あははー。実はね。オオカミがでたんですよ」

「夜ではないのに?」

「そーなんだよー。単には勝てたけど、森で7匹の群れに遭遇して、1匹だけ大きかったよ」

「ほう。それは新報かな。ボスなのかもしれないですね」

「なるほど。ボスね~」

「ちなみに、答えられないなら構いませんがレベルはいくつですか?」

「わたしたちは、6レベだよ」

私たちは途中でLv6になっていた。レベルアップすると、殘りの経験値が0になるのでデスペナの経験値減はほとんどなかった。

「いや、まいった。結構高いですね。でもあまり気軽に答えない方がいいですよ。間違いなくトッププレイヤーでしょう」

「あっそうなんだ。うん。気を付ける」

このゲームは、6倍加速だからなのか、結構レベリングの設定がマゾ仕様らしく、序盤なのに1日で1レベルぐらいしか上がらない。

私たちですらそうなのに、一般プレイヤーはさらに上がらないだろう。

「いい話を聞かせてもらいました。ビールもおごりましょうか?」

「えっいいの?」

「いいえ、私たちはまだ未年なので、ジュースで」

クルミがビールを飲もうとするのを抑えて、私はジュースを頼む。

「分かりました。では、おばちゃん、ツグミのジュース3つ」

「ツグミ3つね。600セシルだよ」

おばちゃんがさらりと怖いことを言う。ステーキと値段が同じだ。

「あぁ、あれジュースになるんだ」

「ツグミご存知ですか。さすがです。狩場では見かけませんね。今日店で見つけましたけど」

「……私たちも店で見たから。イチゴ風だよね」

「ちなみにジュースもステーキもおばちゃんの好度上げないと売ってくれないみたいですよ」

そうらしい。私たちはその存在すら知らなかったくらいだ。

ステーキはウサギのステーキでボリュームがあった。

ツグミのジュースは、イチゴジュースだと思ってくれていい。

「おばちゃんの好度を上げる方法は?」

「あれはつらかった。4人でやっとこなしたよ」

それは井戸からの「水汲み20往復」をはじめとする手伝いだったそうだ。

4人だったので、1人5往復で済んだそうだ。

料理も手伝わされたが、料理スキルは付かなかったとか。

マリッジおばさんって結構人使いあらいのかな。

警ら隊は、一通りご飯を食べ終わると、私たちを殘して、ログアウト部屋へと去って行った。

日課の夜の作業をして、その日は眠った。

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