《リターン・トゥ・テラ》6話『名前』

しばらく沈黙が続いた。

先に口を開いたのは男の方だった。

「俺は、あのアームド、ストライカーに乗っていたんだ。1番機、隊長だった……」

「ジェシカも、バッツも、リューもみんな良いやつで、基地のみんなにも仲良し部隊って呼ばれてさ……」

「お前が……奪ったんだ……みんなを……」

そんな事を言われても、僕だって大切なものを失ったんだ。

「僕もあの戦闘で相棒と呼べるAIを失った。それはお前らの攻撃によるものだ。」

また沈黙が訪れた。

そうして男が力なくこう呟く。

「こんな事を、言っても仕方ないか……戦爭なんだもんな……」

「お前も生きるために必死だったんだろう……こんな事を言っても……何の解決にもならない……よな……」

生きるため、そうだ。生きると言えば。

「僕はこのまま銀河帝國に戻れば処理される。頭を撃ち抜かれるんだ。何か助かる方法はないか?」

「どういう……事だ……?」

「作戦本部の命令とは違う行を行った。それによって、もう僕は処理される事は確定している。」

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「なんてところなんだ……銀河帝國は……」

そうしてまた沈黙。

この男に聞いても、答えは出てきそうにも無い。それはそうだ。この男も言っていたが、どうやら銀河帝國と地球軍では勝手が違う。

こんな場所で生きた人間に話を聞いてもらえただけでも奇跡だと思うしかない。

「無いならば無いでいい。あと1週間程度は生命維持裝置で生きれる。その間に僕は僕のできる事を探す。」

「ちょっと、待ってくれ……的には、何か考えてるのか……?」

「いや、なにも。ただ、相棒からは『決して諦めるな。その命、大切にしてください。』と言われている。僕はそれを全うするだけだ。」

「お前……」

さらに沈黙が訪れる。相手も苦しいのだろう。鎮痛剤は打ったにせよ、が止まっていない。

しかも場所が悪い。おそらく彼は腹部を損傷している。止裝置は散している醫療キットの中にあるにはあるが、今、彼を下手にかせば更なる出に繋がり、すぐに死を招くだろう。

「すまない。僕に醫療の詳しい知識はない。止裝置を使いたい所だが、この出量だ。下手にお前をかせば、お前をこのまま殺しかねない。」

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何故だろう。何故僕は地球軍の兵士を助けようとしているのだろうか。

この気持ちはなんだ……?相手は敵軍だぞ……?

気持ちの理由を聞きたいが、相棒はもういない……

「気にかけて貰って……すまないな……」

そう言って、彼は話を続ける。

「な、なぁ……もしだ、お前、こう言う事は知らないかもしれないが……地球軍に投降する気はないか……」

「投降とはなんだ。」

「やっぱりな……わからないよな……降參して地球軍側にを置くって事だよ。そうしたら、銀河帝國でお前が処分される事もない……生き殘る事ができる……」

地球軍にを置く……?確かにそうすれば処分もされないが……

「簡単に出來ることなのか。」

「いやいや……簡単にはできないさ……でもな……」

そう言って彼は力を振り絞って立ち上がり、震える手でCICにある通信裝置を予備電力で回復させ、通信のコードをやっとの思いで打ち込む

「こちらアロー1……火星基地HQ、応答願えますか……」

「HQよりアロー1へ、狀況報告を。発信源も轟沈したはずのドレッドノート級になっている。どう言うことだ。ストライカーはどうした。」

「アロー1より、HQ、長く話していられるの狀況ではありません……この轟沈したドレッドノート級の中で……醫療キットを探していました……ストライカーまで戻ろうと思ったのですが……その力はもうありません……ストライカーはコックピットブロック以外はほぼ問題ありません……」

「HQよりアロー1、怪我をしているのか?合、程度はどれほどだ?もう時期、火星基地からは撤退が始まる。撤退の最中、小型艇をそちらに回収に向かわせる。」

「撤退……?どう言うことだ……?アロー1よりHQ!撤退とは……?」

「HQよりアロー1、アースゲートは陥落した。火星基地本部も戦中だが、もう時期ここも制圧されるだろう。撤退の準備を進めている。」

「そん……な……」

「HQよりアロー1、そろそろ限界のようだ。小型艇をそちらの位置座標まで送る。それまで頑張って生き抜いてくれ。」

「待ってくれ……!HQ!銀河帝國軍の軍人が一人投降してきた……!俺は彼に介抱され、やっとの思いで通信を繋げたんだ……!そいつの扱いは……!?そいつの扱いはどうなる……!?」

「HQよりアロー1、何?投降だと?さらに介抱までされているのか……?そんな事今までの戦闘機録で、おそらく初めてかもしれない。とにかく小型艇到著後、捕虜として扱え。」

「了解した……通信を切る……ご武運を……!」

通信を終えた男は力なく崩れ落ちる。

「大丈夫か。倒れてもらっては困る。聞きたいことがある。」

僕は男に駆け寄る。そうして男を楽な勢にしてやる。出の量がさらに増えている。無茶をしたからだろう。

今まで暗くてよく見えなかったが、顔立ちの整った、金の髪をした大人の男だった。

「お前については……多分もう大丈夫だ……」

「本當なのか?」

「あぁ……」

そう言って男はを吐く。もう長くは無いだろう。

「小型艇が到著したら……俺の乗っていたアームド、ストライカーを回収してくれ……お前もパイロットなんだろう……」

かせるのか?」

「コックピットに破片が突き刺さってるが……それ以外は問題ない……モニターも、網投影も、AIも……あの機は……銀河帝國に回収されるわけにはいかない……」

「どう言う事だ。」

「新技の結晶みたいなもんだ……あれが銀河帝國に渡って解析されたら……地球は間違いなくアイツらによって征服され、また歴史の過ちを繰り返す事に……ッ」

激痛が走っているのだろう。男の顔の表が歪む。それに耐えながら男は話し続ける。

「とにかく……あの機に乗ってくれ……後はお前の意思だ……」

「後は、僕の意思、か。」

「これが……認証キーだ……これがあれば、生データから書き換えて、作する事ができる……」

「機は特殊不可視モードで……この戦艦のおそらく俺とお前がってきたところに……置いてある……認証キーを持って近づけば自的に不可視モードは解除される……」

「この機があれば、僕は復讐できるか。」

「復讐……?」

「僕は銀河帝國に使い捨てにされた。偽の作戦を與えられなかったら相棒も死ななくてよかった。」

「そんな……気持ちに……飲まれるな……」

そう言って男は俺に手をばす。

「俺もお前が憎い……仲間を殺し、帰る基地すらなくなったんだ……」

「それでもな……それでも……これは希の星、地球を守る戦いで……俺も志願してパイロットになったんだ……」

「もし、銀河帝國に立ち向かう気持ちがあるなら……」

「復讐なんて気持ちに突きかされるのではなく……俺の代わりに、銀河帝國から地球を守ってくれ……」

「銀河帝國から地球を守る……?わかった。どちらにせよ。僕は銀河帝國と戦う意思がある。」

「それを……ちゃんと小型艇に乗ってきた人たちに伝えるんだぞ……」

「了解した。」

男はまたを吐く。そろそろ限界なんだろう。

なんとかして救ってやりたい。そう思って散している醫療キットを見るが、僕にはどうにもできない。

「なぁ……君のコードネームをもう一度教えてくれるかい……」

男は僕に語りかける。

「K-201だ。」

「だったら……そうだな……『ケイ』。そう言う名前を名乗ったらどうだ……?地球軍に名前を持たないやつなんていないし、なんなら呼びにくい……」

「ケイ、か。俺の……稱號……」

「名前、な……?君は今日からケイ。俺が名付け親だ……はは……こんな狀態で自分に子供みたいな存在が出來るとはな……」

「名前でさ……呼び合ってみよう……なぁケイ……」

「どうした。ええと、フィル。」

「ははは……上出來だ……小型艇が到著したらそう名乗って、みんなと仲良くやってくれ……」

僕にこれからの目標も與えてくれた。さらには、名前も。フィルはきっと銀河帝國にはいないような人だ。

今まで目標は本部からの任務か、相棒からしか伝えてもらった事はない。そんな目標を、地球を守るために銀河帝國と戦うと言う目標を僕はもらった。

本當は相棒に々聞ければ良いのだが、もう相談する相棒はいない。だから、自分の率直な自分の気持ちを彼に伝えるしかない。僕はそう思った。

「僕はフィルを助けたい。」

「もう無理だってわかっているだろう……」

「それでもだ。フィルのような人に銀河帝國の中で僕は出會った事がない。」

「銀河帝國は……ひどい所だな……」

「それは地球國家の事を知らない僕からはなんとも言えない。でも、フィルが僕にとって良い人間だという事はわかる。」

「そうか……ありがとう……」

「なぁ、フィル。」

「なんだい……?」

「フィルが守ろうとした地球の事を教えてくれ。」

「やっぱり知らないで戦っていたのか……地球はな、綺麗になってからはすごいぞ……澄んだ青い空……広い範囲で水が広がっている海という場所……木々が生い茂る森という場所……低い草が広がる草原……そして季節というものがあってだな……」

「そして、一番綺麗なのは……夜空だ……」

「夜空とはなんだ。」

「地球はな……時間によって暗くなるんだ……コロニーでも同じだろうが、それでもな……その暗くなった空に煌めく……星々……」

「もう一度……地球で夜空を……今度は……彼と……一緒に……見たかった……なぁ……」

「おい!フィル!しっかりしろ!」

「じゃあな……ケイ……お前も、地球に行って……夜空を……見てみろ……天のは……全て……星だ……」

「フィル!!」

それ以降、フィルはかなくなった。

僕はまた目が熱くなって、溢れる何かを止められなくなっていた。

7話へ続く。

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