《リターン・トゥ・テラ》9話『コーヒーブレイク』
ムラクモは僕を個室に案した。その個室には重力発生裝置で擬似重力が働いていた。しが重くじる。
部屋の隅には植が置いてあり、奧の方には飲料の自販売機がある。テーブルの上にはポットが置かれており、そのテーブルを囲むようにソファーが置いてある。そして食などのった戸棚がある。
単なる小型艇ではなかったのだろうか。それにしては嗜好品が充実しているようにも見けられる。銀河帝國の小型艇にはこんなスペースは無かった。
「休憩室さ、しでもくつろげると良いと思ってね。」
ムラクモそう言って僕をソファーに座らせる。
「ちょっと待っていてね。準備をしよう。」
ムラクモは戸棚をから何かを取り出す。何かの袋と何かの裝置に見えるが、何をするつもりなのだろう。
僕はじっとムラクモを見つめる。
ムラクモは取り出した袋を開け、中にっていた黒い豆をその裝置にれ、手で裝置の取っ手を回し、砕いている。
「私はね、このコーヒーと呼ばれる飲みが大好きでね。」
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ムラクモは語り始める。
「そこの自販売機にも売っているのだがね、こうして自分で豆を挽いて作った方が味しいんだ。」
そうして戸棚から不思議な形をした水差しを取り出した。
「火星基地から出する時に、どうしてもこのコーヒーを作るセットは持っておきたくてね。無理矢理この艇に持ってきたのさ。」
ムラクモが手で回していた裝置を開ける。先程砕いた黒い豆がとなっている。それを紙の筒のようなにれ、カップの上に置く。
「轟沈した空母にはね。もっといい機材があったんだよ。もちろん私の私でね。」
そう言ってポットのお湯を沸かす。
「この機材一式は火星基地から出する時に、急拵えで食堂から持ってきたんだよ。」
不思議な形の水差しにポットから沸いたお湯を注いでいる。
「それでもね、私は自分で淹れるコーヒーが飲みたいんだよ。」
不思議な形の水差しからお湯をカップの上に乗せたに向かってゆっくり注ぐ。
「……話を聞いてるかい?」
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ムラクモのそのコーヒーとやらを作る手順を見ていて話は最初の方しかよく聞いていなかった。
「いや、この一連の作業に気を取られてしまって、話は半分くらいから聞き逃していた。申し訳ない。」
と、僕は謝罪した。
地球軍の階級制度はよく知らないが、艦長と言うことは位の高い人だと想定出來る。そんな上であろう人の話を聞き逃した。それなりの処罰は下るだろう。
「君は正直だなぁ。まぁさっきの話は本當にどうでも良い話なんだけどね。」
処罰はなかった。しかも先程までの話はどうやら聞かなくてもよかったらしい。地球軍の人間の事がよくわからない。なくとも、合理的ではない。
「さぁ、出來上がったよ。ぜひ飲んで想を聞かせてくれ。コーヒーを飲んだ事がない人に私が淹れたコーヒーを飲ませる。滅多にない事だよ!それで味い!と思ってくれたら、どんなに嬉しい事か……!」
豆のと同じ、黒い飲みが手元に置かれる。先程の手順を見るに、毒をれるタイミングとすれば……ポットだろう。あれには最初から水がっていた。
僕が警戒しているのをムラクモは察知したのか
「そうだよね。わかった。じゃあ私から頂こうかな。」
そう言って自分の分のコーヒーを飲み始める。
「うん、今日もいい味だ。さぁ、君も飲んでみてくれたまえ。」
毒がない事を証明してくれる。これなら頂けるか。
そう言って僕も飲んでみる。
「な、なんだこの味は……」
苦味が強い。そして後から酸味が襲ってくる。そして鼻に広がる焦がしたような匂い、不思議な味だ。銀河帝國ではこんな味のもの、味わった事がない。
「どうだい?味しいかい?」
ムラクモが聞いてくる。どう答えたらいいかわからないが、聞かれてる以上は自分の知る範囲で答えるしかないだろう。
「銀河帝國ではこんなものを飲んだ事がないのでわからないが……不思議な味の飲みだ。第一に苦味が強いとじた。地球國家では、このような飲みが當たり前に飲まれているのか?」
ふふっとムラクモは笑う。
「割と當たり前に飲まれている部類の飲みだよ。まぁ好き嫌いは分かれるがね。ユウカは嫌いらしくてね。っても飲んでくれないのさ。」
「そ、そうか……確かに好き嫌いは分かれるだろうな。」
「ただ、僕は、嫌いではない。味、匂いに慣れればもうし味しく味わえそうだ。」
「そうかそうか!それはよかった!」
ムラクモはとても満足そうだ。
飲料と言えば、作戦が始まってからパイロットスーツのタンクにっている水すら飲んでいなかった。慣れない味だが、水分は補給しておこう。そう思い、コーヒーを飲み干す。
「し落ち著いたかい?」
ムラクモはそう聞いてくる。
質問の意図がわからないが、立ったり座ったりを繰り返し行なっているわけではない。むしろ、疑似重力化で、今まで無重力空間にいた分、が思ったようにかせない。
「逆に疑似重力化ではかし辛いぐらいだ。それでも落ち著きがないように見えただろうか?」
と僕は答える。
「ああ、いや、コーヒーにはリラックス効果もあるのさ。落ち著くってのは神的な意味だよ。君も々と疲れただろう。」
「萬能な飲みなんだな。そうだな。おそらく疲れている。」
壁に取り付けられている時計を見る。あの時の作戦開始時刻からどのぐらい経過しただろうか……
時計の針から逆算していると
「話は今度にしようか?」
とムラクモから聲がかかる。
「いや、聞きたいことが山ほどある。今にしてくれ。」
「わかった。でも、長話は今度にしよう。昔からこう言われている。難しいことは一度にに語らない方がいいってね。」
「了解した。僕も聞き返す事が多くなってしまうから、その方がムラクモにとってもいいだろう。」
ははは、とムラクモが笑う。そうして本題を切り出す。
「じゃあまず、知っておいてしい事。銀河帝國側が行った、地球和平協定の破棄についてだ。」
そこでムラクモは顔をしかめる。
「うーむ、協定について話しても、とても難しいかな……ある程度は省略して、なんとか、わかりやすく説明しよう。」
「もともとはね、地球の浄化が終わって、人々が住める星になったら、地球の資源は地球國家と銀河帝國でちゃんと分けようとしていたんだよ。」
「そのことにはね、銀河帝國側の前皇帝、ギルバートは賛同し、條約は締結された。」
「だが、5年前、ギルバート前皇帝が急死してね。即位したヴィンセント皇帝が、その協定を急に破棄する事を宣言したんだ。」
「地球を銀河帝國のものにする。と言ってね。」
「ヴィンセント皇帝……」
僕は々と思い出す。
「何か引っかかる事があったかい?」
ムラクモは僕に尋ねる。
「常に僕らは何かといえばヴィンセント皇帝の為に、と言って戦ってきた。特にB階級以下のクローン兵は、その傾向が強かった気がする。だが、そのヴィンセント皇帝はスクリーン上でしか見た事がない。」
「ほぅ……クローンにも階級みたいなのがあるのかい?」
「AからDまである。僕はA階級だった。それは個差……そうだな、例えば頭の良さ、運神経、アームドの適正などで區別される。クローン技に関しては僕の乗っていたアームドのAI、V-21ですらデータのアクセスが出來ないと言っていた。だから、わからない事だらけだ。」
「そうか……クローン兵、技に関しては何かヴィンセント皇帝と関わりがありそうだな……」
沈黙が訪れる。ムラクモはし考え事をしているようだ。僕はふとV-21の言っていた事を思い出す。
『その資源とも呼べる地球を地球國家は獨占しようとしています。』
では、ムラクモの言っていることは……?
V-21の語った事との食い違いが大きく、僕は混していく。
ムラクモはハッとして、「あぁ、ごめん、話を戻そう。」と言って語り始める。
「そして、ヴィンセント皇帝は地球國家に宣戦布告を行い、地球國家保有の武力を持たないスペースコロニーを次々と侵略していったんだ。」
「多くの人が死んだ。私は既に地球軍に所屬していたがね、々な所で々な人を助けることができなかった……」
しだけ沈黙が訪れた。ムラクモは悲しい顔をしている。
僕はさらに混していく。
「過去の事を悔やんでも仕方ないよね……ごめん。話を再開しよう……」
ムラクモはしだけ僕に笑顔を見せた。それは偽のものである事はすぐにわかったが、僕は何も言えなかった。ムラクモは話を続ける。
「それから、地球國家も軍を強化して、戦火は拡大していった。そうして、今に至ると言うわけだ。」
「今や火星も陥落した。本當に地球が危ない。」
ムラクモは僕に向き合う。
「地球を救う為に、協力してくれるか。ケイくん。」
混している。僕は言われた報を一つ一つ整理しようとしたが、まるで整理がつかない。V-21と言っている事とまるで違う。V-21は僕に噓なんてつかない。相棒は……
「噓だ。全て。僕の相棒は噓なんてつかない。ムラクモ、本當の事を話してくれ。」
「ケイくん。君は噓の報を吹き込まれたんだ。全て事実なんだ。どうか、け止めてくれ。」
「噓だ……!!相棒は!!噓なんかつくわけがない!!」
「ケイくん……!」
そこで思い出す、フィルが言っていた事。
『銀河帝國から……地球を守ってくれ……』
僕はさらに混する。
「何が正しい!!相棒は正しいはずだ!!でも、フィルとの約束も……!!」
「僕は……!!うわああああ!!!!」
何もわからない。どうしたらいい。助けてくれ、相棒。頼む。僕を導いてくれ。
「ケイくん……君は、銀河帝國に……」
「やめろ……!!それ以上言うな……!!相棒が、僕に、噓を言うはずがないッ!!」
混のあまり、僕はムラクモを毆ろうとしていた
その時だった。に電流が走る。
そうして僕はその場に倒れた。
10話へ続く。
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