《リターン・トゥ・テラ》13話『整備士の』
僕らが搭乗する戦艦、アルテミス級戦艦3番艦セレーネは確かに4番ドッグに停泊していた。
戦艦クラスなのでやはりとても大きい。その大きさに圧倒されていた。
そう言えばストライカーの修理などはどうなっているのだろうか。先程の話をけてサイの事も気になる。
乗船し、ハンガーへと向かう。出航まではまだ時間があったが、割と多くの乗組員とすれ違う。
中には僕から目を逸らしたり、こっちを見て笑う者もいる。何故だろうか。
「実はスパイなんじゃねーの。」
人とすれ違っている中でそんな聲を聞いた。
誰だったかはわからないが、僕は軍事スパイではない。ちゃんと託された想いと銀河帝國と戦う意思があってここにいる。
なぜ、そう思うのだろうか。やはり、僕が銀河帝國軍に所屬していたからだろうか。
もしかするとこの戦艦の中にも、大切に思ってた人の命を銀河帝國軍の攻撃によって奪われた人もいるのかもしれない。
そう思うとが苦しくなる。この気持ちはなんだろうか。シャーロットが來たら教えてもらおう。
しかし、ムラクモも言っていた通り、このメンバーと連帯していかなければならない。
まずは耳を貸さずに、僕は僕のやれる事をやろう。
信頼が失われているなら、それを取り戻すために信頼を持たれる行を取ればいい。A階級の座學であったような気がする。
だったら、この人たちの信頼を取り戻す為に、僕に出來ることは、アームドに乗り、銀河帝國と戦う事ぐらいだろう。
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そうこう考えているうちにハンガーへと辿り著く。
アームドは戦艦に16機艦載できる。アームドは1部隊4機の編だ。
つまり戦艦にはアームドの部隊が4つあると言う事になる。
ちなみに巡洋艦クラスには12機、空母には24機を艦載できるようになっている。
その分、ハンガーもかなり広い。自分の機を探すのも大変だ。でも、いつかはスクランブルもあるだろう。ちゃんと覚えておかなければ。
見つけるのも一苦労だと思っていたが、ストライカーは大きな重機で修復作業されていた。なので、すぐに見つける事ができた。
それもそうだ。コックピットに破片が刺さっていたな。それを引き抜くのも大変だっただろう。
ストライカーへとたどり著く。多くの整備兵が修復の真っ最中だった。
コックピット前ハッチにかかる足場にたどり著く。そうすると、小型の機械を使い、ハッチに何らかの作業をしている作業服を著たがいた。
茶の髪を後頭部で結んでいる。華奢なだ。見たじはとても若い。僕と同じぐらいの年齢だろうか。
ふと疑問に思う。地球軍には年兵団は無いと言っていた。若い兵士はいなかったのではないか?
ストライカーを見ると、コックピットに刺さっていた破片は完全になくなっていた。そこにあったのは傷もない綺麗なアームド、ストライカー。
やはりこのアームドのフォルムは綺麗だ。これが、古代人の知恵の結晶だと思うとし慨深い。
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「いやぁ〜運良く前ハッチだけの換で済んで良かったよ。他のところに損傷があったら、コクピットブロックごと換だったからね。」
が獨り言を呟いている。
「にしても、新型機に攜われるなんて夢みたいだな〜!専屬作業員になれたのは本當に栄な事!頑張らなくちゃ!私!」
専屬作業員なのか。では、これからお世話になるな。話かけておこう。そう思って近づき
「おい。」
と聲をかける。
「ひゃぁ!!何!?」
急に聲をかけたからだろうか、驚かせてしまった。は慌てて作業している機械の作を止める。申し訳ない事をしたな。
「急に聲をかけてすまなかった。専屬作業員と言ったな。これからよろしく頼む。ストライカーのパイロット、ケイだ。」
僕はに挨拶する。
「え、えと……話には聞いてたけど、本當に若いんだね……多分、私と、同じ、くらい……?」
そう言って僕の顔を見つめる。
いやいやいや、と言っては首を橫に振る。後頭部で結んである髪も一緒に揺れる。
「ううん、ごめん!挨拶が先だよね!私はサクラって言うの!17歳の整備兵!よろしくね!ケイ!」
サクラが元気な人である事が伝わってくるような挨拶だった。
「あ!ちょっと待っててね!」
サクラはそう言うと足場にかかる手すりからを乗り出す。そうして下で作業をしている他の作業員に向かって
「キリ良いから一旦休憩ー!再開は30分後ー!」
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と聲をかける。
ふぅ、というとサクラは足場に腰掛ける。僕もそれに合わせて腰掛ける。
「なんてね、口実。本當は君とお話がしてみたかったの。年齢が同じぐらいの兵なんて絶対いないと思ったからさ、気になってね!ね、君、何歳?何歳になるの?」
「生まれて3年だ。」
そういうとサクラは驚愕したのか固まる。暫く間を置いて
「ええっと、聞き間違いじゃないよね?本當に3歳……?」
と聞き返してくる。
「3年だ。」
と僕は返す。
「聞き間違いじゃなかったか〜……えぇっと、お父さんとお母さんは?」
また知らない単語だ。
「お父さんとお母さんとはなんだ?」
サクラはまた固まる。々と脳の整理がつかないようだ。
地球國家と銀河帝國の違いは大きい。まずはサクラの混を解く話の持っていき方をしよう。
「すまない。混させたようだ。僕は銀河帝國軍の捕虜から地球軍兵士になったばかりの者だ。かつては年兵団と言う部隊に所屬していた。」
「僕はキャベツ畑という、軍事スペースコロニーで生まれたクローン兵だ。生まれて3年というが、生まれてからこのだった。」
それを聞いたサクラは
「ぎ、銀河帝國って凄いとこなのね……」
と言う。怖がっている様子だろうか。
「やはり、僕の出が銀河帝國だから、怖いか。」
僕は、先程言われた言葉を思い出す。
「いやいやいやいや!違うの!そう言う意味じゃなくて!」
サクラは首をまた橫に振る。
「地球國家では考えられない事だったからさ……気を悪くしたらごめんね……」
確かに銀河帝國と地球國家では違うことが多すぎる。
「再び混させる事を防ぐ為に、し話させてもらうぞ。いいか?」
そう言うとサクラは
「うん!是非聞いてみたい!君の話!なんでストライカーに君が乗るのかも気になるし!」
と言う。サクラの了承も得られた事だ。僕は自分の事を語る。
かつての相棒との別れ。
フィルとの出會いと別れ。
そしてフィルから名前を貰ったこと。
フィルからこのアームド、ストライカーを託された事。
シャーロットから戦爭の悲しさと、復讐心を持って戦ってほしくないと言われた事。
その2人の想いを託されて、地球軍として地球を守る為に戦う決意を抱いた事を話した
そうするとサクラはこう語る。
「そっか……フィルさんって人に名前をつけてもらったんだね。そして想いと、機を託された……じゃあ、きっとフィルさんがお父さんみたいなじ!」
「そして、君に々教えてくれたシャーロットさんが、お母さんみたいなじだよ!」
結局はそのお父さんとお母さんについての説明はまだ貰ってない。僕はサクラに質問する。
「そのお父さんとお母さんとはなんだ。教えてくれ。すまないが、僕は地球國家に來たばかりで言葉を知らなすぎるんだ。」
「ええっとね……なんで説明すれば良いかな、地球國家では、お父さんと呼ばれる男と、お母さんと呼ばれるがいないと本來、子供は生まれないの。」
フィルとシャーロットが言ってた人という関係か。
「それは人と言うものか?」
僕はサクラに質問する。
「うーん、その上かな。人はね、いずれ結婚するの。」
とサクラは答える。なるほど。人の上が結婚なのか。シャーロットも結婚と言う単語を口にしていた事を思い出す。
サクラは話を続ける。
「そうして、結婚して、えーっと……」
言葉に詰まった後、サクラの顔が赤くなってる事に気づいた。どうしたのだろうか。
「合が悪いのか、顔が赤いぞ。」
僕はサクラに問う。
サクラは顔の赤さを気付かれた事にハッとした様子で、大袈裟に首を橫に振って
「なんでもない!なんでもないよ!」
と言う。僕は僕なりに理解した事をサクラに聞き直す。
「そうか、とにかく地球國家では男とが結婚しなければ子供はできないと言うわけだな。教えてくれてありがとう。」
そう言うとサクラはホッとした雰囲気だ。僕が理解できた事を安心しているのだろう。
そう言えば言葉以外でも、こちらも聞きたいことがあった。僕はサクラに質問する。
「地球軍には年兵団は無い。サクラのような若い兵士が戦場に出る事になったのは何故だ。」
サクラは表を曇らせる。
「あのね、話すと長くなるんだけどね、私のお父さんはね、機械整備工場を自己経営で行ってたの。私はそれをい頃から手伝ってた。お父さんの収はなかったけど、楽しい毎日だった。」
「お母さんは優しくて、その頃は毎日3人で楽しく暮らしてた。」
「でもある日ね、お母さんが、今流行りの太信仰に勧されて、そこから生活がおかしくなっていったの。」
不思議な単語が出てきた。僕はサクラに解説を求めた。
「太信仰とはなんだ。これも聞いたことない言葉だ。」
そうするとサクラは表をさらに暗くして答える。
「詳しくは私もわからない。でも、地球國家の貧困層で最近流行している宗教よ。」
ジョージは地球國家の中でも富裕層と貧困層の格差があると言っていた。それに関係した事柄なのであろう。しかし、わからない単語が多い。
「質問ばかりで申し訳ない。宗教とはなんだ。」
そう言うとサクラは
「そうだよね、知らないよね。解説するね。」
と暗い表のまま解説をしようとする。そんな調子なので、僕は聞くのが申し訳なくなった。
「サクラ、すまない。語りたく無いのであれば語らなくても良い。」
そうするとサクラは
「いや、君、どうせわからないと思ったからさ。」
と言い悲しい表のまま、口元だけ笑顔になる。し申し訳ないが、聞かせてもらおう。そうしてサクラは解説を始める。
「宗教ってね、古代人達が地球にいた頃からずっとあったものなの。何かを信じて、心の不安を取り除こうとするようなものよ。」
「その対象は神様だったり、人間だったりするんだけど。」
神様という言葉の意味がわからなかったが、話の腰を折るのはやめておこう。まずは聞いてから質問しよう。そう僕は思った。
「古代人たちは、その宗教が原因で戦爭を繰り返し行なったりするぐらいだったみたい。生まれた時からそれを信じ込まされて、その教えに基づいて生活してた人たちもいるぐらいだからね。そのちょっとした考え方の違いでも戦爭は絶えなかったみたい。」
「地球が危機に陥った約1000年前からその思想はだいぶ廃れていってね。古代人の考えた宗教を信仰する人たちは今の世の中ではもうあんまりいなくなったんだ。一応、今では地球國家が宗教の自由を宣言していて、何を信じてもいいみたい。」
「それでも、宗教とか関係なく、やっぱり良いことや良くないことがあると神様〜!ってんじゃうよね。」
聞くのはこのタイミングだろうか。僕は質問する。
「すまない。また質問だ。神様とはなんだ。」
サクラは驚いた様子であったが、質問を返してくれる。
「神様、知らないかぁ……うーんとね、説明しにくなぁ……人間が想像する、何もかもを持ってる全知全能の存在……?みたいな?」
そんなものは存在しないだろう。僕は僕なりに文脈から解釈する。
「なるほど、人の想像の産というわけか。それで、不安があったりするとそれにすがると言うわけだな。」
サクラはニコッと笑い
「分かりいいね〜!」
と言う。そうして話を戻す。
一瞬元気そうになったが、今は相変わらず暗い顔をしている。
「話、線しちゃったね。それでお母さんはその太神様にすがってね。太信仰の聖地、水星を目指して旅立っちゃったの。おそらく、貧困であったことや、私のことで不安だったのね……」
「それからお父さんもおかしくなって、お酒ばかり飲んでね。仕事も手につかなくなった。」
僕が質問する前にサクラは自分で僕の知らなそうな単語を説明してくれた。
「あ、お酒って言うのはまだ私たちが飲めないもので、人をダメにする飲みなの。だから君もわれても飲んじゃだめだからね。」
先に言ってもらえたのでありがたかった。話の腰を折りすぎるのもよくないと相棒も言っていた気がする。
「忠告を謝する。お酒は飲んではダメなものなのだな。」
サクラは話をさらに続ける。
「私はお父さんから學んだ技でなんとか工場を立て直す努力をしたの。そこで地球軍と関わるようになって、アームドの整備とかを請け負うようになったの。」
「そうして、その腕を買われて、認めてもらったの。」
「地球軍としても私みたいに若い人を戦線に出す事はしたくなかったみたいなんだけど、何度も頼み込んで採用してもらった。これもお父さんの為でもあるんだけどね。」
「あ、私、い頃にワーカーをかす為にパイロット適正手けてるから、アームドもかせるんだよ!」
「まぁ、ワーカーはいいけどアームドはダメダメなんだけどね……」
そう言ってし笑う。
「うーん!君に話したらなんかスッキリした!ごめんね、暗い話聞かせちゃって。」
顔はサクラ自らスッキリしたと言うだけあって、良くなっていた。
「いや、サクラが謝る必要はない。謝罪するのは、苦しい過去の事を語らせた挙句、質問ばかりしていた僕の方だ。サクラの事、そして地球國家の事を教えてくれてありがとう。」
僕が言うとサクラは何故かし照れた様子で
「どういたしまして!」
と笑ってくれた。
そう言えばまだ知りたいことがあった。本來はシャーロットに聞こうと思っていたが、サクラも々と知っているだろう。
「そうだ、サクラ。まだわからない事があるんだ。今度はの事だ。し聞いてもらってもいいか。」
サクラは腕につけている時計を確認し
「まだ大丈夫だからいいよ!」
と答えてくれた。
「忙しいところ、いろいろとすまない。ありがとう。」
と僕は謝する。そうしてサクラに質問をする。
「艦の通路を進んでここに向かう時に言われたんだ。僕は軍事スパイじゃないかって。」
「確かにそう思われても仕方ない。僕が銀河帝國出だから。」
「もしかすると銀河帝國に大切な人を奪われた人もこの艦に乗っているかもしれない。」
「そう思ったらが苦しくなった。このの苦しさを教えてくれ。」
サクラは立ち上がり、拳を握る。怒っている様子だった。
「酷い……!許せなくない!?」
「君だって、これからこのストライカーに乗って、地球を守る為に、約束の為に、命かけて戦うんでしょ!?銀河帝國と!」
「それなのに……事も知らないで……酷いよ……」
サクラが怒り、興して立ち上がったので、僕も立ち上がり、目線を合わせる。
「サクラ、怒っても仕方のない事だ。信用を取り戻すには、信用を持たれるような行を続ければ良いだけのようだ。」
「信用を取り戻す為に僕に出來ること、それはストライカーに乗って戦うことだ。」
サクラは僕を見つめている。先程の怒りは消えているようだった。
「君、考え方はよっぽど大人なんだね。」
「教本のけ売りだ。僕はそれに従ってみようと思っただけだ。」
僕はストライカーのメインカメラが搭載されている部分。人間における顔を見上げながらこう呟く。
「それに、このストライカーは特別な機だ。最新型というだけでなく、特殊なAIも積んでる。」
「そのAI、サイにも々とを教えてあげなきゃならないんだ。」
「だから教えてくれ。このの痛みを。」
サクラは迷っている様子だった。考えているようだ。
しばらく考えた後にサクラはこう言う。
「うまく説明できないんだけどね、多分悲しさと悔しさもあるんだとおもう。」
「だって、ちゃんとした決意を持って、戦おうとしてるのに、そんなこと言われたら、悲しいし、悔しいじゃん……」
「それに、人の痛みを君は理解しつつあるんだと思う。」
「確かに銀河帝國の攻撃で、悲しい思いをした人も艦の中にいる。確か、作業員のうちの1人もそうだった。」
「それは銀河帝國にいた頃、地球軍を攻撃してるときは何も思わなかったでしょ?」
確かに、作戦本部からの命令に従って作戦を遂行していただけだった。サクラは語り続ける。
「それはね、ここに來て地球國家や軍の人と話して初めてわかる事だと思う。」
それを聞いて僕はフィルやシャーロットの事を思い出していた。
「お互い、痛みを知る心があれば、戦爭なんかきっとなくなるのになぁ……」
その時、下からお嬢ー!!と聲がかかる。
「あ!そろそろ時間だ!」
サクラは、先程手にしてた機械を持って
「話の途中でごめんね!あと、これから本當によろしく!」
と言い、下に降りていく。
その途中で
「戦闘中、ストライカーに傷つけたら苦労するの私だから!頼むよー!」
と楽しそうに言っていた。
悲しみや悔しさのを今、サイに伝えるのは良くないだろうと思った。パイロットリンクを繋ぐのは今度にしよう。
そう思いその場を去ろうとした時、下から話し聲が聞こえる。
「お嬢、お似合いでしたよ。いいじゃないですか、あの年。」
作業員の1人だろうか、先程もサクラはお嬢と呼ばれていたな。サクラに話しかけているのだろう。
それにサクラは
「バカっ!そんなんじゃないからっ!」
と怒った様子だった。
その會話にどんな意味があるかわからなかった。聞くのは今度にしよう。
出航まではまだ時間がある。仮眠室などがあるならば、しを休めよう。あの作戦から、寢たと言えば電気ショックをけた後だけだ。あれは寢たうちにらないだろう。
そう思ってまた僕は通路へと向かった。
14話へ続く。
[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者少女を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!
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