《リターン・トゥ・テラ》14話『死神』

仮眠から起きた僕は、休憩室の椅子に座り、コーヒーを飲んでいた。

販売機で買ったものだが、ムラクモが作ってくれたものとは味が全く違った。

ムラクモが作ってくれたコーヒーの方が比べられないほど味しかった。

また、ムラクモにお願いして作ってもらおうか、と考えていた時、休憩室に男がってきた。

背が高く、髪の長い男だった。すごくの線が細い。

男は僕が居ることに気づくと

「おっ!提督のお気にりのエースパイロット様じゃあないですか!これはこれは!休憩中でございましたかぁ!」

と、ヘラヘラしながら激しい振り手振りで聲をかけてくる。

僕は男に聞く。

「すまない。意味がわからない。確かに僕は休憩中だが、ジェームズのお気にりでも、エースパイロットでもない。何か用か。」

男は嫌な顔をして僕に近寄ると

「なんでお前のような帝國出の殺人鬼が、提督に気にられて、ストライカーのパイロットになったんだって言ってるんだよ!」

と怒鳴り散らす。

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何故男が怒ってるかはわからないが、僕は冷靜に男に返答する。

「それはストライカーのAI、サイが僕以外を乗せたくないと言ったからだ。何故そのように言ったかはわからない。」

男は僕の軍服の襟を摑み、また怒鳴る。

「AIのせいにすんのかあ!?てめぇ!!お前らにどれだけ俺らの仲間が殺されたと思ってんだ!!それなのにストライカーに乗って、地球軍の作戦の要になるだぁ!?狂ってるだろ!!提督も、艦長も!!」

僕は何て言われようとも良いが、ジェームズやムラクモをバカにされたのは許せない。でもここはあくまで冷靜に行くべきだ。

「ジェームズやムラクモに相手をすり替えるな。お前が嫌なのは僕なんだろう。」

「てめぇ!!」

男はそう言って腕を振りかぶる。毆るつもりだろう。

一応対人の格闘戦につけてはいるが、それをしてしまったら、またこの男は僕を憎むだろう。

今はとりあえず……

そう思っていたところ、男の腕が止まる。いや、別な人によって止められていた。

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男の後ろにはものすごくががっしりした黒の筋質の大きな男がいた。

さらにその後ろに、それを見守るように、が細く、眼鏡をかけた白の黒い長い髪のが立っている。

男はどうやら、その大きな筋質の男によって腕を止められている様子だった。

「やめないか、エドワード尉。」

そう言われて、エドワードと呼ばれた男は、大男から手を振り払い、僕の襟から暴に手を離し、振り向き、去っていく。

エドワードは去り際に

「戦場でしでもおかしな真似をしてみろ。お前を後ろから撃ち殺してやる。」

と、僕に吐き捨て、休憩室から出て行った。

「全くアイツは……」

大男は呆れた様子で、そう呟く。

そうして僕に向き直り、

「大丈夫かい、年。私の名前はアレックス。この艦の砲雷長を務める者さ。」

「後ろにいるエレナとCICで作業をしていてね、2人で休憩に行こうと思って、ここに來てみたら、これだ。」

アレックスがそう言うと、エレナと呼ばれたが僕に聲をかける。

「申し遅れました。エレナと申します。この艦では、主にアームドの通信管制を行います。」

「ケイさん。あなたのことは艦長から聞いております。アームドに乗る貴方とは通信で関わることが多いと思いますので、以後、お見知り置きを。」

僕はその2人にまだ謝を伝えてなかった。

「ありがとう。アレックス、エレナ。助かった。」

アレックスは、わははと笑いながら

「いいって事さ!君が無事だったんだ。それでヨシとしようじゃないか。にしても……」

アレックスはニヤリとすると僕に

年の構えを見ると、反撃をする事もできた、と言う見解だ。よく耐えたな。見た目は年だが、心はアイツよりよっぽど大人、と言うわけだ。誇っていいぞ。」

そう言うアレックスに僕は

「エドワードは銀河帝國に仲間が殺されたと言っていた。それは変えられない事実だ。だから相手の気の済むようにしてやろうと思った。復讐心は簡単に止められるものじゃない。」

それを聞いてアレックスは

年……!」

と言いながら僕に抱きつく。

相手のが大きすぎる。振り解けない。香水の匂いがする。

「や、やめてくれ、アレックス。どうしたんだ。」

僕は困する。

「人の痛みをわかるのだな、年よ。私はしてしまったよ。」

の締め付けがさらに強くなる。僕はエレナに助けを求める。

「申し訳ない。エレナ、助けてくれないか。」

エレナは冷靜に

「砲雷長、そうやって誰にでも抱きつこうとするのをやめてください。ハラスメントになります。」

そう言うとアレックスは僕からばっと離れて

「う、訴えるのはやめてくれ!これは癖で!」

とエレナと僕を互に見ながら言う。

エレナはし呆れた様子だったが、僕の方を見つめ、話始める。

「ケイさん。先程、艦のアームド部隊の振り分けが行われて、決定しました。」

「ケイさんの所屬するのは、1番隊、コールサインはブレイブ。ケイさんはブレイブ2となります。」

そこでエレナは表を曇らせる。

「ブレイブ隊のメンバーなのですが……後に艦長から放送があって、部隊顔合わせの機會があると思います。」

エレナはぁ、と、ため息をつく。僕はエレナにその理由を聞く。

「そのブレイブ隊に何か問題があるのか?」

エレナは下に視線を落としながら答える。

「そのブレイブ隊のメンバーの中に、先程、貴方に突っかかった方、エドワード尉がいるのです。」

その言葉に、僕よりもアレックスの方が驚いていた。

「エレナ、それは本當なのかい!?」

そのアレックスの問いに、エレナは冷靜、と言うか呆れた様子で

「何故、砲雷長の方が驚いているんですか。」

と返す。

その時だった。エレナに言われた通り部隊編の発表についてムラクモから放送がった。どうやらパイロットはハンガーに集まってしいとの事だった。

2人に別れを告げ、僕は急いでハンガーに向かった。

ムラクモのちょっとした演説の後、部隊名と振り分けが発表された。そして、各部隊ごとに集まって顔を合わせる機會を設けられた。

各部隊のメンバー発表で、一番驚いたのは、あのマキシがアームドのパイロットで、同じ1番隊の部隊長を務めるという事だった。

僕が1番隊の集合場所を探していると、

「おお〜い!坊主!こっちじゃ!」

と聲がかかる。マキシの聲だ。

1番隊のメンバーはストライカーの足元に集まっていた。

僕はマキシに近づき、聲をかける。

「まさかマキシがパイロットで、隊長とは驚きだ。これからよろしく頼む。」

そう言うとマキシは、がははと笑いながら

「まさか坊主と肩並べて戦うとはなぁ!期待してんぞ!」

と言い肩をバンバン叩く。

それを見ていた1人の男が聲をかけてくる。

「この年はマキシ教とも何かご縁が?」

マキシは答える。

「まぁ、小型艇で々あってな!それにしてもジン、おめぇもだいぶいいツラするようになったじゃねぇか!」

ジンと呼ばれた男はし照れながら答える

「教にご指導いただいてた頃からは、長したと思いたい……のですが。」

マキシはジンにこう語る。

「パイロットとして長したじがひしひしと伝わるぜ。言わなくともわかる。お前さんにも々とあったんじゃな……」

マキシはそしてジンに向かって親指を立て、こう言う。

「あと、ワシはもう教じゃねぇ。ここでは隊長じゃ!よろしく頼むぜ。」

「よ、よろしくお願いします!隊長!」

ジンは禮をする。どうやらマキシは尊敬されているようだ。

そうしてジンは僕の方を向いて聲をかける。

彼の黒髪は短くまとまっており、誰が見ても好青年というじの男だった。

「俺の名前はジン。階級は尉だ。ケイくんだね。話は聞いてるよ。これからよろしく頼む。」

爽やかな聲で挨拶される。僕もそれに答える。

「よろしく。ジン。」

その時だった。エドワードから聲がかかる。どうやら遠巻きに僕らを見ていたようだ。

「ちっ……教のお気にりでもあんのかよ。どこまでもいけ好かないガキだな。まぁいい、本當に怪しいきしたら、すぐにでもあの世に送ってやるよ。」

ジンはそれを聞いてエドワードに怒る。

「おい、エドワード、口が過ぎるぞ。」

マキシは黙って聞いている。

エドワードはジンに対して皮気味にこう答える。

「あらあら、子人気も高いジンさんは誰にでも優しいんですね。」

そして僕の方に近づきながらまた悪態をつく。

「だいたいこのガキ、まともにアームド乗れんのかよ。俺が殺すまでもなく、すーぐ撃墜されて、大変なことになっちゃったりして。」

ついにマキシは口を開く。

「お前は何も変っとらんな、エドワード。」

エドワードはマキシにも食いつく

「これはこれは教殿。いや、隊長殿。お久しぶりでございます。隠居はもうお辭めに?」

さらにジンが怒る

「おい!エドワード!やめろ!」

それをマキシは、やめておけ。の一言で片付ける。

マキシはいつもは口も悪く、怒りやすいのに妙に冷靜だった。

「ただでさえパイロットが不足しとるんじゃ。戦線にワシが上がってもおかしくない、そんな狀況もわかっとらんのか?」

そうして悲しそうにこう語る。

「お前の面倒を見たワシが馬鹿だったようだ。今のお前を見てると本當に悲しくなる。」

マキシはエドワードをキッと睨みつけこう語る。

「あとな、エドワード。人を見かけで判斷してはならんぞ。戦闘データを見る限り、この坊主は帝國にいた頃、ストライカー4機をたった1人で撃墜させちょる。」

それを聞いたエドワードはし驚いた様子だったが、呆れた様子を出しながら

「だったらなおさら、なんでコイツをストライカーに乗せるんすかねぇ?」

僕は答える

「それは先程も説明した通りAIのサイが……」

話を遮ってエドワードは僕に怒鳴り散らす

「うるせぇ!お前には話聞いてねぇんだよ!」

そしてエドワードは視線を落とし、暗い聲でこう言う。

「ふん。まぁいい。どうせ俺の所屬する隊は俺を殘して全員死ぬ運命にあんだよ。」

そうして振り向き、僕たちに背を向け

「殘された時間、せいぜい楽しく生きな。老害とクソ好青年とクソガキ。」

と、言って去っていく。

マキシとジンは大きなため息をつく。

僕は気になる事があった。それを2人に聞いてみる。

「マキシ、ジン。エドワードが僕を嫌う理由はわかる。何故マキシやジンまでも……?」

それにはジンが答える

「エドワードは、みんなに死神と呼ばれる男なんだ……」

わからない単語だ。僕はジンに質問する。

「死神とはなんだ?」

マキシがそれに答える

「おう、ジン。どうやらその坊ちゃんは知らない言葉が多いんでな。」

「死神っちゅーのは、そうだな。死を司る神や。まぁ簡単に言えば、死を持ってくる奴じゃな。」

神、そういえばサクラから聞いた単語だ。人間の生み出した想像の産

想像の産が現実のものになっているという事なのか……?

僕が考えてるうちに、今度はまた、ジンが話を再開する。

「わかりました、マキシ隊長。わかりやすい言葉で彼に説明しますね。」

「それで、エドワードが、死神と呼ばれる理由はなんだが……」

「エドワードが所屬する部隊は、必ずエドワードを殘して全滅してしまうんだ……それも、部隊結後の初陣で、必ず……」

ジンは悲しい顔をして下を向く。

「エドワードは俺と同期で、パイロットになった。そして、當時教だったマキシ隊長から、アームドの作を學んだ。」

「エドワードは元はいい奴だった。あんな捻くれた格じゃなく、明るく、面白い奴で……」

「アームド縦の腕も良くて、將來有なパイロットだったんだ……」

ジンはさらに暗い表になる。

「どんどん戦火が拡大していった頃、ウワサを聞いたんだ。アームド乗りの死神がいると。」

「それは火星基地防衛の時に確信に変わった。エドワードが所屬していた部隊がエドワードを殘して全滅した。」

「俺はアースゲートで出撃の準備中だったんだが、その時、エドワードがボロボロになったガーディアンで帰還してきたんだ。」

「その時な、コックピット開けてたから聞こえてきてしまったんだよ。整備兵が『死神様が帰ってくるぞー!』ってぶのを……」

「エドワードは毎回、仲間を失う辛さを味わった挙句、軍の間で死神とウワサされるようになって、し狂ってしまったんだ……」

「だから、あんな格になっちまったんだ……」

マキシも悲しい聲で語る

「アイツはそもそも人そのものに信用っちゅうものをなくしとる。」

「アイツが死神なら、ワシなんてどうだ。何人の教え子が戦場で死んだかわからん。それについてワシも上から何回も言及されたりもした。」

「それでもな。いつまでも後ろを向いてちゃいけねぇ。なんとかして前を向いて、この戦爭を終わらせなくちゃならねぇ。」

「アイツにはそれが出來ていない。過去に振り回されて、前を向く気力がなくなりつつある。」

「アームドパイロットとしての育て方は良かったが、人間としての育て方を間違えたかのう……」

僕は2人に言う。

「なら、みんなで生き殘って、エドワードの死神って名前を消すしかない。そうして、エドワードを前に進ませよう。」

「僕も、この艦の人間から信用を持たれていない。なんとか2人で、いや、4人で協力して信用と、死神の名前を回復させる。」

それを聞いたマキシはまたがははと笑いながら、僕の頭をわしわしする。そうしてこう話す。

「ったく、坊主、毎回一丁前の事ばっかり言いやがって!へたこいたら承知しねぇぞ!」

ジンも笑いながら

「前向きな考えはいいことだ!なんだか不思議と、君が言うと上手くいきそうな気がするよ!」

「この調子ならみんなでうまくやっていけそうだな!ケイくん、よろしく頼むよ!」

と言う。

そこで艦放送がる。どうやらブリーフィングが行われるようだ。

いよいよ、戦闘が近づいてきている。

15話へ続く。

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