《リターン・トゥ・テラ》22話『火星の空へ』

グリムとエレメントを組みながら敵アームド、対空砲を撃破していく。

気づけば降下部隊第4陣投下まで後5分を切っていた。

「どれほど掃討したかわからないが、そろそろ投下が始まる。グリム、大丈夫か。」

僕はグリムに接通信を送る。シールドを折り畳んで、左手でグリムの乗るガーディアンの左肩にマニュピレーターを乗せる。

「推進剤がほぼ空っぽです。飛び上がることも難しいです。」

「第一陣で降下してきたのなら無理もない。作戦本部も、まさかこんなに要塞化が進んでるとは思ってもいなかったと思う。」

その時サイから聲がかかる。

「パイロット、グリム機と合流後、対空砲は12臺、アームドは7機撃破しています。中には対空武裝をしたアームドもありました。この短時間でかなり掃討した方だと思います。」

「なら一安心だと、思いたいが……」

徐々に砂嵐も収まりつつある。

銀河帝國軍がどう仕掛けてくるかわからない。

そうしていると、タイマーが降下部隊4陣の

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降下作戦の開始を伝える。

「グリム、ポイント・ストーンバンカーまで下がるぞ、座標を送ってもAIによる案がないから僕から離れずに付いてきてくれ。」

マキシから通信が來る。

「援軍さんがおいでなすったようだな!お掃除の時間はおわりじゃ!いいじに片付けただろうな?」

続けてジンから通信がる。

「だいぶやったと思いたいよな。エドワード。」

エドワードからも通信がる。

「ああ。俺たちは奇跡的に合流できたからな。じゃ、戻るか。合流地點まで。」

マキシからまた通信がる。

「なら一旦後退してポイント、ストーンバンカーで合流だ!」

マキシとの通信を切る前に僕は、部隊からはぐれたグリムを助けた事を話す。

「マキシ、別の部隊のアームドだが、AIと右腕をやられたガーディアンを助けた。パイロットはレイヴン隊のグリムと言うらしい。推進剤も使い切っているようだ。彼も連れて行く。」

マキシから通信が返ってくる。

「坊主は人助けが得意よなぁ!とりあえず合流してから考えるぞ。連れてこい。」

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「了解した。」と僕は答えて通信を切る。

ようやく合流だ。ここまで長かった。

ストーンバンカーに後退する頃にはすっかり砂嵐も収まっていた。先程の地獄とはうって変わって、火星の空も落ち著きを取り戻している。赤茶けた砂嵐の後の空。

ようやくの合流。一息をつきたいと思っていたのも束の間、空母ツクヨミから通信がる。

「離陸しているポイントが判斷できないが、敵のアームドがフライトユニットを裝備して空に上がってきている!これは……例のルビー隊か!?」

「降下部隊の4割が撃破されたが6割は地上にたどり著いたのを確認した!ただ、ルビー隊が厄介だ。」

「地上にいる全部隊に通達!ルビー隊を掃討してくれ!」

そう言って通信が終わる。

地上に降りてからの作戦指揮は空母ツクヨミがけ持っている。追加任務だ。

それにしても相手はルビー隊か。

マキシから通信がる。

「坊主、ルビー隊の報で知ってることはあるか?」

「非クローンの大人が縦している事ぐらいだ。ルビー、サファイア、エメラルド、ダイヤモンド隊とあって、全ての部隊が手慣れの大人たちで構されている。機はモノアイが特徴のサイクロプス。グラディエーターより高能の第7世代機だ。」

マキシはそれに対して

「手慣れの部隊、ましてや大人と來たもんだ。腕がなるもんじゃ。」

と言ってアームドのマニュピレーターを拳の形にしてガチッと合わせる。

ジンから通信がる。

「ケイくんから聞いてから、なんだかグラディエーターを攻撃するのも気が引けるようになったから、今度はどっちかと言えばやりやすい、かな。」

エドワードからも通信がる。

「どっちにせよ、やる事は変わらねぇ。飛び回るヤツらを叩き落としてぶっ潰す。ジンの言う通り、相手がガキじゃなくて潰すのが、かえって楽だったりしてな。」

マキシが

「では、ブレイブ隊、行くぞ!」

と言った時、グリムが僕に接通信で通信を送ってくる。

「待ってください!自分はどうしたらいいですか。」

僕はグリムにこう返す。

「推進剤も武裝もないのなら、このまま後退し、を隠したほうがいい。」

「し、しかし!ただ見ているだけとは……!」

「助かった命、無駄にしてはいけない。グリム。」

僕だってそうだ。

かつてここを攻撃した時、大勢のクローン兵、年兵団が死んだ。

僕は助かった。

宇宙空間を彷徨って、フィルと出會った時。

あの時も、僕は助かった。

キャベツ畑に攻撃した時、僕と似たクローンだけじゃなく、大量のクローン兵、年兵団の人々が死んだ。

いろんな要因が重なって、僕は々な人に助けられ、そして今、生きている事を痛した。

命を無駄にしてはいけない。

々な想いを乗せてグリムに伝えたからだろう。

グリムは、はっきりとした聲で、

「了解です!ご武運を!」

と言い、後退して行く。

サイから聲がかかる。

「パイロットの長をじます。アナタがパイロットで良かった。」

そうして、サイは戦データリンクを繋ぐ作業にる。

「ブレイブ隊の皆さん、サイです。戦データリンクを結びます。部隊が揃うとやっぱり良いですね。安心があります。」

マキシが通信をれる。

「そうだな!サイ!戦データリンクももらった事だ!気を取り直して、行くぞお前たち!」

僕はサイに聲をかける。

「サイ、行こう。絶対に生きて帰ろう。」

「もちろんですパイロット。」

サイは一瞬だけパイロットリンクを切り離す。そして僕に見える位置で、マニュピレーターを握り拳の形にして、親指だけ立てる。

「サイ、これはなんだ。」

「サムズアップと言います。様々な意味合いがありますが、肯定の意味合いを表したりもします。」

「そうか。覚えておくよ。」

火星基地付近。戦闘は激化していた。ルビー隊だけでなく、年兵団の援軍も來ている。

僕ら部隊も戦闘に加わる。

なんとしても戦線を上げて、基地を解放しなければ。

しかし、空にはフライトユニットを取り付けた帝國軍、ルビー隊のアームド、サイクロプス。

地上からしか攻撃できない分、かなり厄介な相手だ。

「ちっ、火星の空はワシらのものだってのに、悠々と飛びやがって。」

「そうですよね。マキシ隊長。火星の空は俺たちの空だった。あの赤茶けた地平線まで飛ぶのが俺らの楽しみだった。」

マキシとジンは火星基地から來ている。何か思うところがあるのも無理もない。

「なぁ、サイ。推進剤の量的にこの機で空中戦をやる事は無理か?」

「流石に無理だと推測します。1機は持っていけそうですが、それ以降は推進剤がなくなります。」

走路のハンガーにフライトユニットが殘っていれば、走路から飛べるよな。」

「対空砲がどれほど殘ってるかによりますが、やれない事はないと思います。」

「なら、希を信じて走路まで抜けるぞ!」

僕は通信をれる。

「みんな、聞いてくれ。先程僕が降下したのは走路だった。降下した直前にはあまりそこには敵はいなかった。」

「僕の降下を見て敵が集まってきたような気配があった。もしかしたら、手付かずの場所かもしれない。そもそも、年兵団は任務にある事以外はほぼ何も考えずに行する。」

「そして、おそらくルビー隊は、この基地の走路ではなく別な場所から離陸してここまで飛んできている。」

「そこで、走路のハンガーに殘ってるかもしれないフライトユニットに期待して、走路まで抜けたい。フライトユニットさえあれば、空を飛ぶルビー隊とも戦える。」

マキシから通信が返ってくる。

「決まりだな。坊主、やってくれると信じてるぞ。」

「となれば俺らのやる事は一つ!坊主の離陸までの護衛だ!行くぞお前ら!」

ジンとエドワードは

「了解!」と答えると、ストライカーの後ろに護衛につく。

混戦している場所を遠回りして、走路までのルートをサイが算出してくれていた。

そのルートで移をする。

道中、些細な遭遇戦はあったが、難なく走路までたどり著いた。

やはりここはノーマークのようだ。敵の気配はない。

マキシが呟く。

「あの時確か、演習があるって言って推進剤を充填したまま置き去りになったハンガーがあったはずだ。ええと、どこだっけかなぁ。」

ジンはそれに答える

「確か6番ハンガーです。ゴースト隊の演習があるタイミングだったはず。」

「よく覚えてんなぁ、ジン!でかしたぞ。」

マキシは大聲でジンを褒める。

それに対してエドワードは

「もうトシですか、隊長。」

と言ってからかう。

「エドワード、戦いが終わったら1人でブリーフィングルームに來い。今回の戦闘での説教がある。」

マキシはエドワードを脅す。エドワードはそれに対して

「はいはい、ご勘弁を。」

と言い、機を使って頭を下げる作をする。

あまりにも戦闘中とは思えない気の抜けた會話だが、これがブレイブ隊の良いところでもあるのだろうか。

こうしているうちに6番ハンガーにたどり著く。

ビンゴだ。セットアップされている狀態で、フライトユニットが準備されている。

後はこれをストライカーに取り付けるだけだ。

「サイ、チョバムアーマーをパージしてくれ。」

「了解です。パイロット、アナタの腕を信じてます。」

チョバムアーマーがパージされ、その場に落ちる。その間にサイがフライトユニットをスキャンして狀況をチェックする。

「コンディション、推進剤、良好です。いつでも接続できます。」

その間ジン機、マキシ機は外で待機、エドワードは機から降りてフライトユニットの接続にとりかかる。

エドワードは僕に

「これで貸し1こ、な。」

と言っていたが、よく意味がわからなかった。後で聞こうと思う。

フライトユニットの接続が始まる。背中にあるハードポイントにフライトユニットをはめ込むかたちでの接続だ。第7世代機は基本全て裝著できる。

接続が完了。サイが接続におけるフィードバックを行う。

「F-111、フライトユニット、接続完了。正常に接続。推進剤のコントロール。正常。スタビレーター、フラップ、正常作。ジェットエンジン、良好。」

「パイロット、オールグリーンです。いつでも飛べます。」

「了解だ。サイ。エドワード!助かった。ありがとう。」

そう言うとエドワードは、

「だから貸しだっての。しっかり空の連中を撃破してチャラにするんだな。」

と言い、親指を立てる。

あの合図は、さっきサイがやってたものだ。

フライトユニットを裝備し、ハンガーの外に出る。

まだこっちまで戦線は來ていなかったが、マキシとジンは構えていてくれていた。

「おお、坊主!やってくれ!火星の空を取り戻してくれや!」

「頼んだよ。ケイくん!」

みんなの期待の背負って、僕はこの空を飛ぶ。

離陸用のランディングギアをストライカーの足に裝著する。

そうしてエンジンに火をれる。

そうしてゆっくりと走路に進んでいく。

その時だった。ルビー隊の1機がこちらに気づき、攻撃を仕掛けてくる。

アサルトライフルの掃だ。気づいて離陸を早める。

マキシ機とジン機が応戦してくれる。

アフターバーナー點火。

応戦しているジンの機が被弾をする。左腕関節、チョバムアーマーの隙間だ。シールドごと地面に落ちる。

今なら助けれるが……

「行け!俺に構うな!ケイくん!あがれ!」

ジンそう言われて僕は足のパドルを強く踏み込む。

ものすごい速度で走路をり、火星の空へと飛び立つ。

赤茶けた、火星の空へ。

23話へ続く。

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