《リターン・トゥ・テラ》27話『水星圏の』
火星を取り戻して以降、銀河帝國からの表立った攻撃はなく、著々と整備、修復は進められていった。
セレーネの修復も完了し、月に向けての出航が予定されていた頃、月面本部のジェームズ提督から通信がる。それは、新たな戦いへと僕らを導くものだった。
「水星圏で、太信仰の信者達が地球軍に対して攻撃を開始した。セレーネは金星の艦隊と合流し、これを鎮圧してしい。」
「何故セレーネに直接この任務を與えたか、についてだが、水星で建造されたストライカーが太信仰の教祖によって奪われたのだ。」
「金星のストライカーはまだ未完だ。このままでは金星の艦隊が危ない。」
「金星が制圧されると、次に狙われるのは間違いなく地球だ。」
「ストライカーを所有するセレーネ諸君らにしかできない任務である。」
「すまないが頼んだぞ。諸君らの健闘を祈る。」
そう言って通信が切れる。
すぐさまブリーフィングが開始された。
ブリーフィングの終わりに、僕は気になっていた事をマキシに質問する。
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「太信仰と言うのは、前にサクラに聞いたが、何故、地球軍に攻撃を開始したんだ?」
マキシはいつにもなく真剣な表で答える。
「太信仰っちゅーのはな、言わば地球國家の闇の部分じゃ。地球國家は栄えている部分もあれば、栄えていないところもある。」
「その栄えていないところから始まったのが太信仰でな、どうやら太神様の導きの元にをおけば、何事も都合が良くなるとかどうとか。そこら辺はさすがにわからんのじゃが……」
「とにかく、地球國家への不満を発させた教徒達が、攻撃を開始したって考えるのが簡単じゃろうな。」
「水星は地球軍の基地はあるのじゃが、一番小さい基地でな。なにせテラフォーミング用の天蓋がありながらでも、水星の環境があまりに悪いもんで。」
「ただ、銀河系の図を考えてもらえればわかりやすいように、一番狙われにくいと言う場所でもあってな。ストライカー・タイプ・マーキュリーの開発も進んでいた。」
「おそらく、この火星への艦隊集結を知って、奴らは水星の基地へのテロ攻撃を開始し、タイプ・マーキュリーを奪ったんじゃ。」
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「おそらく、敵の參謀の中には元地球軍軍人もおるんじゃろう。じゃなければ、ストライカーの報など握れんはずじゃ。」
「そして坊主、今回の戦闘は今までの戦闘と違うぞ。奴らは宗教の元いている。神の名の下にじゃ。」
「今までもマインドコントロールされてるような奴らと戦闘してきたが……」
「おそらくそれ以上じゃ。急な特攻、エーテライトオーバーロード、おそらくなんでもありな戦法で來るじゃろう。」
「そして、奴らが使うアームドもおそらく地球軍のものじゃ。同士討ちを気をつける為にIFFの確認だけは念に行うんじゃぞ。」
「了解した。々ありがとう。マキシ。」
マキシに言われたことを書き溜めたメモを片手に、僕はストライカーへと向かう。
出撃に備えるためでもあるが、サイに詳しい話を聞くためでもある。
ハンガーにたどり著き、ストライカーのコックピットに通じる足場までたどり著くと、サクラが取りしており、他の整備兵に取り押さえられていた。
「離して!!私もアームドに乗ってお母さんを探しに行くの!!」
「お嬢!!無理ですよ!!ワーカーをかすならまだしも、普段アームドに乗らないお嬢にアームドなんて……」
「嫌!!水星にはお母さんがいるの!!聖地ソレイユ・エクラに行くって言って……!!」
そうだ。サクラの母は太信仰によって、水星にいると聞いていた。
「このままじゃお母さんも危ないの!!だからお願い!!私をアームドに乗せて!!」
確かにサクラはアームドの適正手をけている。そして、予備のアームドもある。しかし、普段戦場に出ない彼が戦場に出たら、ひとたまりも無いことぐらい僕にはわかっている。
僕は冷靜に彼を説得するために聲をかける。
「サクラ、聞いてくれ。ブリーフィングでもあったが、民間人には危害は加えないように全部隊に伝わっている。だから安心して待っていてくれ。」
サクラはまだ聲を荒げながら僕にこう言う。
「そんなの無理!!教祖の命令によってみんなが武裝して水星を占拠しているかもしれないんだよ!?その中にお母さんもいるかもしれないんだよ!!」
「では、サクラがアームドに乗ったら、その武裝した民間人の中からお母さんを救出できるのか。それは難しいだろう。ブリーフィングにもあったように、まず、その教祖とやらを倒して相手の戦意を削ぐ必要がある。」
「その役目は僕がやる。水星の民間人の鎮圧は、その後になる。だからサクラはいつものように、僕を信じて送り出してくれ。」
「……結局見てることしか、見送ることしかできないの。私には……」
「そうじゃない。こうやってストライカーを整備してもらった事によって、救える命がある。僕はそう思ってるんだ。」
「……ケイは変わったね。変わってないのは、私の方。」
その時、艦が離陸態勢にるとの連絡がった。
「サクラ、離陸だ。僕はストライカーに乗る。」
「信じてくれ。絶対に、救ってみせる。水星の民間人達を。」
サクラから返答は無かった。
力なく待機場に他の整備兵に連れて行かれるサクラを見ていると、悲しい気持ちになったが、サクラを救うには、水星の民間人達を助けなければならない。
そう思い、僕はストライカーに乗り込む。
ストライカーの起が終わると、サイは僕の心境をすぐ読み取ったように話しかけてくる。
「宗教、さらには地球國家側の人間と爭わなければならない。そんなわからないことだらけな上に、武裝した民間人を助けるなんて難しい任務を與えられて困っている様子ですね。パイロット。」
「そうだ。どう言うことなのかさっぱりわからない。」
「では説明しましょう。宗教とは……」
「それはわかっている。神にすがりたい人々が考えたものだろう。何故、その人々が地球國家に楯突いたか、それも貧困層不満が発したからだとマキシが言っていた。」
「そうですね。データベースを検索したところ、こう言ったテロは初めて行われたようです。」
「何故こんな事になる。教えてくれ、サイ。」
「難しい質問をしますね。パイロット。そうですね。弱った人間は何かにすがりたくなり、そうしたところに先導する者、今回で言えば、過激な考えを持った教祖ですね、が現れてしまうと、その教祖の導きのままにいてしまいます。」
「過激な考えか……同じ國家に所屬していながら、その國家にテロとも言える攻撃をするぐらいだ。確かに過激な思考を持ってないとできないな。」
「そういえば、サイも神になれないと言っていたな。何故だ。サイも過激な思想があるのか。」
「し違う話にはなりますが、ワタシ達AIは計算で事を考えます。」
「もしワタシが先導をするモノになってしまったら、計算の判斷によっては、人々に苦しい道を提示する事もあるでしょう。」
「そう言う事だったのか。安心したよ。サイ。」
「パイロット、相手は宗教の名の下に戦ってきます。それは、ほぼほぼマインドコントロールと同じ事です。」
「相手のアームドのパイロットは完全にもう自我がないような狀況だと言うことです。」
「られてる狀態と言っても過言ではありません。教祖の命令一つで特攻してきたり、あるいは教祖の盾になる者もいるでしょう。」
「大丈夫だサイ。考えがある。」
「と言うのは……」
「僕と相手をする教祖以外のアームドは単に戦闘不能にしてしまえばいい。」
「そうすれば、救える命も増えるだろう。」
「そんな無茶苦茶です。実現できる可能を計算しますと……」
「やれるさ、僕とサイなら。」
「……ストライカーが改修されているので、現実的な數値ではありませんが、しは確率が上がっています。」
「パイロットがその意志なら、ワタシはそれに従い、任務を完遂させるだけです。」
「なら……!」
「はい。救いましょう。アームドに乗せられているのも、おそらく軍人ではありません。」
艦にスタースピードにる放送が告げられる。
放送によると太信仰の教徒達は、もう金星の艦隊との戦にっているようだ。
抜ければ即戦闘宙域だろう。
僕は、この機で救える命を救う。
それだけを考えていた。
28話へ続く。
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