《リターン・トゥ・テラ》30話『水星の解放』

水星への突が開始される。

テラフォーミングにより作られた擬似的な大気の層を抜け、水星の空をセレーネは飛翔する。

サイが言うには、水星は充分なテラフォーミングが完了しているとは言え、それでも人が住むには厳しい環境らしい。

火星はそんなことはなかった。やはり太に近いというだけで、これほどまでに環境は違うようだ。

セレーネのハンガーの中、僕らはアームドの中で待機していた。

電流を浴びて電気系統に異常があるかどうかサイが念に確認をしている。

「どうだ、サイ。異常はありそうか?」

「パイロット、異常箇所は多數ありますが、作戦への問題はありません。安心してください。」

「武裝しているだろう民間人たち、信者と言ったか。今は気絶しているのだろう?その人々が起き上がって攻撃してこないことを願うしかないな。」

「いやなジョークですね。パイロット。ですが、信者の方々にかかっていたマインドコントロールはかなり強いものです。ですから、それはないかと思われます。」

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「サイ、何故、教祖とやらは人々にマインドコントロールをかけてまで、神に執著させようとしたんだ?」

「また難しい質問ですね。パイロット。この戦いになってからパイロットの質問がより一層、難しいものになりました。宗教に馴染みのないので仕方ないと思いますが。」

「おそらく、マインドコントロールをかけたのは信者達がこの信仰を信じ切った後にやっています。その理由として、軍を相手取るには、そのぐらいしなければならなかったのです。」

「神を信じさせる為にかけたのではなく、軍と戦う統率力が必要だったのです。」

「なんでそこまでして僕らと戦う必要があったんだろうな。」

「地球國家繁栄の裏にある、闇の部分ですね。首謀者である教祖についての詳しいデータが先程送られてきたので、読み上げます。」

「もともと栄えてないコロニー出の彼は、反地球國家組織を立ち上げ、暗躍していたようです。それが形を変え、宗教組織となり、人々を集めてこの反に至る。ということのようです。」

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「巻き込まれた信者は不運なんだな。それじゃあ。」

「その通りですね。宗教を名目に、ただ、地球國家への反の道として教祖に扱われたと思って間違い無いでしょう。」

「僕らと似たようなものか……」

「パイロット、それは考えない方がいいかと思われます。」

「そうだな。サイ。すまなかった。僕には託された想いがあって、もう一人のちゃんとした人間だ。」

「水星のマインドコントロール裝置さえ潰せば、られていた人々は元通りになる。だから、絶対に助ける。」

「その意気です。パイロット。」

「最後にひとつ疑問なんだが、どうして教祖はアームドを並以上にれたんだろうな。」

「データを確認したところ、どうやらそのコロニーにいた頃、ワーカーで無理矢理働かされていたようで、適正手けていたようです。おそらくそれが影響しているようですね。」

「確かにワーカーをかせれば、アームドもかせるが、それにしては強敵だった。おそらく特殊な訓練を積み続けて來たんだろうな。この戦いに臨むまで。」

「おそらくそうですね。向こうから見たら火星に艦隊が集結してるのは好機です。その隙を伺うまで、アームドの技を磨いていたのでしょう。それをおそらく信者にもやらせていたかと。」

「おっと、出撃命令です。行きますよ、パイロット。」

「行くぞ、サイ。救える命は全員救ってみせる。」

水星の空をる。大きな街があり、そして太信仰の宮殿、ソレイユ・エクラに続く道がある。

水星には太信仰の関係のない一般人達もいると聞いた。

その人々の避難は行われているのだろうか。それとも、どこかに幽閉されているのだろうか。

水星の部は靜まりかえっている。

各様々な場所にセレーネ所屬のアームドがスタンバイし、民間人の捜索、救出にあたる。

僕らはブレイブ隊はソレイユ・エクラのマインドコントロール裝置の破壊の任務を與えられていた。

一刻も早くそこへ向かう。

宮殿はとても大きかった。

宮殿部に多くの生反応が検知された。

宮殿の外裝を破壊しては、中の人の命まで奪う事になるだろう。

エドワード機とマキシ機は機に殘り、外で待機。

僕とグリムは機から降り、宮殿部でマインドコントロールの機械を探す事になった。

宮殿にると、多くの人が祈りを捧げながら気を失っていた。

その景を見たグリムは

「あまりにも不気味すぎます……マインドコントロールを早く解かなければ……」

と言う。

祈りを捧げながらまるで死んだようにかない人々。

僕も確かに不気味だと思った。

その時、インカムにサイから通信がる。

「どうやらマインドコントロールの機械はその施設の地下にあるようです。降りれる所を探してください。」

スキャンの解析が出たようだ。

「グリム!地下のようだ!急ぐぞ!」

「了解です!ケイくん!」

地下へと続く螺旋階段を僕らは駆け降りる。

地下はものすごく広く、電子機やコードで埋め盡くされていた。

その奧に青白くるモニター、その下に設置された大きな機械。

おそらくこれだろう。

サイに確認を取る。

「これか?サイ!」

「パイロットの位置報に基づくとおそらくそれです。銃弾で破壊できる強度ではありません。プラスチック弾による破壊を推奨します。」

「了解した!」

グリムと共に配線を繋ぎ、弾を設置し、安全な位置まで退避する。

発させますよ!ケイくん!」

3カウントで弾が炸裂する。

その裝置は木っ端微塵に砕け散った。

「喜ぶのはまだ早いですよ。ケイくん。上に戻って信者達がどうなったかを確認しなければ!」

そうしてまた螺旋階段を駆け上がる。

祈りを捧げた姿だった信者達は床に伏していた。

グリムが一番近くに倒れている人の脈を測りに行く。

脈を測りおえたグリムは僕にサムズアップをする。

どうやら大事ないようだ。

そうするとその信者は起き上がる。

「あれ……私は……」

「もう大丈夫です。あなた方を苦しめる機械は完全に停止し、教祖は撃たれました。あなた方を縛るものは何もありません。」

グリムはそう答える。

信者は驚いた様子で

「どう言う事……ですか……」

「教祖様が撃たれた……とは……」

とグリムに摑みかかる。

サイが言っていた事を思い出す。彼らは信仰を信じ切った後にマインドコントロールをかけられていたと。

信者達は次々と起き上がり、教祖を失った事を知ると混し始める。

「グリム!まずいかもしれない!」

「どうやらそうみたいですね……」

僕らは完全に目の敵にされていた。それはもちろん地球軍のパイロットスーツをにつけているからだろう。

完全に包囲され、萬事休すかと思ったその時。

衛星通信で聲がおくられてくる。

それは水星中のモニターやスピーカーから聞き取れるものになっているようだ。

この宮殿に付いているスピーカーやモニターからも同じように聞こえてくる。

その聲の主は前に會ったジョージ大統領だった。

「太信仰、並びに水星の市民、そして周辺コロニーの皆様へ。どうか私の言葉を聞いてください。」

「先代までの大統領が格差への対処を怠った挙句、その格差を埋めようとしなかった事を私から謝罪させてください。」

「そして、聞いていただきたい。私のマニフェストとして、この格差への対処、並びに全宇宙市民の平等を約束するとあります。」

「対策の容として以下の公約を───────。」

「グリム、今のうちだ、逃げるぞ。」

僕はグリムに耳打ちをする

「あ、ああ……。」

そうして僕らは宮殿のり口まで走って行った。追って來るものはいなかった。

セレーネに著艦する。ジョージの演説はもう終わっていた。

信仰の信者によって、やはり水星の一般の市民達はシェルターに幽閉されていたようだ。

その解放も終わったようで、他の部隊も著々と艦に戻りつつある。

制圧された水星基地も、太信仰の信者から解放できたようだ。

「ジョージに助けられたな。」

「そのようですね。パイロット。しかしながら、これ程大規模な演説ですから、大統領も大変だった事でしょう。」

「大統領は、水星にワタシたちが行くと決まった時から演説を行う事を決定させていたのですよ。」

「マインドコントロール裝置を破壊した後、サイがジョージに演説をしてと伝えたって事か?」

「ご名答です。」

「また重要な場面で助けられたよ。ありがとう。サイ。」

「これも偶然みたいなものですよ。ナイスタイミングでしたね。」

そうして機をハンガーに戻す。

「サイ、今回もありがとう。」

「はい。パイロットもお疲れでしょうから、ゆっくりと休んでください。」

キーをオフにして機から降りる。

出迎えてくれたのは、サクラだった。

サクラは僕に抱きつく。

「ありがとう……太信仰の人たちを救ってくれて……きっとこの中にお母さんもいると思う……」

「そしてごめん……出撃前の事……」

「気にしていない。大丈夫だ。そして、救えてよかった。水星の人たちを。」

あの時、ジョージが何を言ったか、僕にはよくわからないが、簡単に一件落著というわけにはいかないことはわかっている。

ただ、今は水星にいた人々を救えた。それが嬉しくて仕方なかった。

セレーネは水星基地に停泊している。

どうやらジョージは単なる演説だけでなく、太信仰のマインドコントロールについても言及したらしい。

それで太信仰の信頼は薄れ、ある一定數の信者だった人たちを連れて、後日、セレーネは月へと帰還する事になった。

その中に、サクラの母がいたようだ。

母と再會したサクラは、子供のように大聲で泣いていた。ただ、

「お母さんが生きていてくれた事、そして、こうして再會できた事はとても嬉しいよ。でも、私たちを置いていった事は、決して許される事ではないから。」

それを聞いたサクラの母は俯き、涙をこぼす。

「それでも、こうやって帰ってきてくれたなら、時間が解決してくれる。と、思う。だから、お父さんに會いに行こう。」

と言っていた。

そこにあるのも複雑ななんだろう。

僕は親と子いうものを知らない。

でも、僕にとっての母がシャーロットで、父がフィルだったとしたら。

きっと、いいものなのだろうな。と思う。

數日が経ち、セレーネは飛翔する。月へと向かって。

作戦會議で、提督はどうやら、決戦に向けて準備を進めると言っていたらしい。

銀河帝國との決戦は、もう元まで迫っている。

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