《リターン・トゥ・テラ》31話『それぞれの思い』

月面基地へと帰還する。水星の脅威もなくなり、月面基地には、金星の艦隊も集結。さらには、銀河全から大規模な地球國家の艦隊が集結している。

最終決戦に向けた調整が続いているようだ。

各艦隊到著のその後、セレーネのクルーは、ハンガーに集まり、ジェームズの放送を聞くことになっていた。

間も無くしてジェームズから放送がる。

「我々は、ついに銀河帝國への大規模な攻撃作戦を開始する。」

「作戦名は"デイブレイク・オブ・アース"。」

「大まかな作戦容は、集結した艦隊を振り分け、主要艦隊は木星のエウロパ、帝都クリスタルウォーターへの攻撃を行い、首都陥落を目指す。」

「その他の艦も銀河帝國領コロニーへと攻撃を行い、戦力を削ぎ落とす。」

「そしてこの作戦の最終目標は、ヴィンセント皇帝がいるであろう、冥王星のコロニー、プルート1への攻撃である。」

「悲しいことに大勢の市民を巻き込みかねない戦いとなる。」

「しかし、我々もこの戦爭において、大勢の犠牲者を出している。」

「この負の連鎖をここで斷ち切る為、諸君らの力を貸してしい。」

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「君たちを危険な戦いに行かせることしかできない私を許すな。この贖罪は背負うつもりでいる。」

「諸君らの健闘を祈る。」

作戦開始は2週間後。それまでは特殊な編での訓練や、演習などが行われる。

僕はその放送を聞いて、し苦しくなっていた。

憎しみが憎しみを呼ぶ戦爭。攻撃と報復。その連鎖。

結局地球國家も銀河帝國も同じなのだろう。

そして、僕も……

だが、ジェームズはここで斷ち切ると決めた。

僕も地球を守るという使命もある。フィルとシャーロットとの約束。そして、ジンとの約束でもある。

この作戦が、大規模な攻撃であったとしても、地球を守る為には不可欠であることには間違いはない。

しかし、こちらの犠牲者はどうなる。

間違いなく、地球國家側にも大勢の犠牲が出るだろう。

どうすれば──────

そう思っていると聲をかけられる。マキシからだった。

「よぉ坊主。ひでぇ顔してんなぁ。」

「そんなに顔が悪くなっていただろうか。し考え事をしていた。いや、し過ぎていた、か。」

マキシはカカカ、と笑うと

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「前に比べたら良く喋るようになったじゃねぇか。坊主もしずつ変わってきてんだな。」

「前にも言ったが、坊主には坊主の役割があんだ。それを忘れずに、やれる事をしっかりとこなせ。そうすりゃ、大丈夫だ。」

「そりゃワシだって今回の作戦に思うところはあるさ。長年軍人やっててもな。」

「でもな、ここぞという時に撃てないと、撃ち返される事もある。」

「だからこそ、今回で終わらせるんじゃ。ワシらでな。」

僕の役割……。

ストライカーに乗って、最前線で戦う。

最前線に出ると言うことは、おそらく首都への攻撃に出たり、プルート1への攻撃に行くことになるだろう。

もちろん僕だけじゃない。マキシも、エドワードも、グリムも一緒だ。

みんな、同じ思いをしているんだろう。

「また渋い顔してんなぁ!」

とマキシに背中を叩かれる。

「坊主が何を考えてるかは知らんが、ワシらもワシらでやれる事をやる。だから安心しな!」

そう言って親指を立てるマキシに元気付けられた僕は、しだけ安心する。

隊のみんなを守る。そして僕も守られる。

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そんなじで、お互い支え合えば、きっと無茶な作戦も乗り切れる。

「ありがとう。マキシ。元気付けられた。」

そう言って僕も親指を立てて見せる。

「頼んだぜ。坊主。」

マキシはそう言うと、自分の機の方へと向かって行った。

演習が終わり、僕は休憩室にいた。

そうすると、偶然にもエドワードがってきた。

「よう。お前か。偶然だな。」

エドワードは自販機で飲みを買って。僕の橫に座る。

「ったく、別チームとの演習ってのは、大事なのはわかるが、変に気を使うから疲れるんだよな。そういや、お前もちょっと気合り過ぎてたしな。」

「そうだろうか。」

変に気がっているのは自分では気づかなかった。サイは気づいていただろうか。

「戦闘ではあんまり踏み込み過ぎんなよ。今回の作戦を終えて、また死神なんて呼ばれたら嫌だかんな。」

僕は咄嗟にこう答える。

「もうエドワードを死神なんて呼ばせはしない。お互いがお互いを守り合って、何が何でもみんなで生き抜く。」

エドワードはふっと笑うと

「お前の芯の強さは変わらねぇなぁ。前にも言われたな。そんな事。」

そんな話をしてる間に、アレックスとエレナが休憩室にってくる。

「おう!奇遇だなぁ!年とエドワード尉!先程の演習はお疲れ様だな!」

アレックスは大きな聲でワハハと笑う。

「砲雷長、聲が大きいです。ここは休憩室ですよ。」

とエレナ。

「す、すまない、エレナ。」

アレックスはエレナに言われ、おとなしくなる。

「にしても、だ。」

アレックスが話題を切り替える。

「前にもこんな事があったよなぁ。この4人で揃って。」

「あの時はエドワード尉が……」

言いかけたところで、エドワードが

「あぁ……、あん時は悪かったよ……。」

と僕に申し訳なさそうに言う。

エレナは

「砲雷長、空気を読んでください。」

と呆れたように言う。

そうするとエドワードは

「いいんだ、あん時は々と尖ってたからな。」

「コイツと々と戦場に一緒に出るようになってさ、俺も変わったのかもしれねぇな……。」

「コイツはまだまだ學んだ方がいいとこも多いが、俺も學ばせてもらった事も多い。」

「まぁ、そんなとこだ。」

そう言って僕の方に向き直ると

々と頼んだぜ、本當の意味を込めて、お前はエースなんだからな。」

と言い、立ち上がると

「んじゃ仮眠取ってくるわ。また演習も近ぇしな。」

と言い殘し、休憩室を後にする。

アレックスは腕を組みニッと笑うと

「皆、変わって行くな。君のおかげかもしれない。」

と僕の方を見てそう言う。

エレナも

「私も同意見です。ケイさんは、私たちに良い影響をもたらしたのかもしれませんね。」

と言う。

僕は

「そうだろうか。でも、そうならば、ありがたい。」

一杯の謝を伝えた。

何度目かの演習が終わる。サイに謝を告げ、機から降りる。

サクラたち整備兵は忙しそうに機の整備を行なっている。

それを橫目に下に降りて行くと、丁度グリムと合流した。

グリムはメモを取りながら何かを呟いている。

僕はグリムに聲をかける。

「グリム、凄いな。戦データリンクを見るに、凄い長を遂げているのは間違いない。機能を確実に引き出している。何かコツはあるのか。」

「うわぁ!!ケイくん!?」

いきなり話しかけたからだろう、グリムはびっくりしてしまったようだ。

「申し訳ない。話しかける前にちゃんとタイミングを見るべきだったな。」

僕は謝罪する。

「いや、いいんです。大丈夫。僕もちょっと夢中になり過ぎていました。」

「いや、この隊に所屬して、自分も強くならないとって思って努力した甲斐があります!褒めていただいて栄です!」

そう言って僕に敬禮する。

「そんなにかしこまらなくても大丈夫だ。でも本當に見違えるようだ。」

そう言う僕にグリムは

「でも、皆さんについて行くにはまだまだです!この期間、やれるかぎりの最善を盡くして、皆さんと同じ位置にいれるように……!」

必死に答えるグリムに、僕は

「そんなに気を張っていては、今後の作戦にも影響が出る。僕もエドワードに言われた。し張り切り過ぎだと。」

「そしてマキシにこう言われた。いつものように、やれる事をやればいい。」

「僕はこう思っている。部隊がお互いを支えあれば、作戦は必ず遂行できる。それに、グリムはもう、互いを支え合える力は持ち合わせている。」

し休もう。グリム。次の演習まではまだ時間がある。」

そう言うとグリムは

「ありがとうございます!ケイくんにそう言っていただくと、なんだか本當に自信が湧いてきます!」

「では、お言葉に甘えて仮眠を取らせていただきますね!ありがとうございます!」

そう言って、ハンガーを後にした。

自分も仮眠に向かおう。そう思ったところで、大聲で

「ケイ〜!!」

と呼ばれる。

聲の主はサクラだった。

「なんだか久しぶりだね。こうやって話すの。」

ストライカーのコクピットにかかる足場に腰掛け、サクラはそう言う。

「確かに久しぶりだ。作戦も近いから、お互い、忙しいからだな。」

いつぶりだろうか、もうかれこれ1週間が過ぎようとしていた頃合いだろうか。

作戦前は必ずサクラが僕に挨拶してくれた。この場所で。

「演習、どう?」

サクラは僕に聞く。

「サクラが整備をしてくれているおかげだ。ストライカーの調子も良好だ。いつもありがとう。」

サクラは顔を赤くしながら、えへへと笑うと

「どういたしまして。」

と微笑む。

「サクラといると、なんだか落ち著く。サクラが言ってくれる、必ず帰ってきて、と言う言葉、いつも勵みになるんだ。」

「僕にはかつての相棒、フィル、ジン、みんなから託された想いがあって、生きなきゃならない。」

「そして、サクラからもそれを貰っているんだな、と実させられる。」

「次の作戦も必ず、帰ってくるよ。」

そう言うとサクラは、し泣いている様子もあったが、ほほ笑み

「絶対だよ!約束だから!」

そう強く僕に言った。

演習の終わりに、ムラクモにコーヒーにわれた。

ムラクモはいつものように僕にコーヒーを淹れてくれた。その場には珍しくユウカも一緒だった。

僕はユウカに聞く

「コーヒーは苦手ではなかったのか。」

ユウカはふふん、とご機嫌そうに

「最近飲めるようになったのよ〜。でも缶のはダメね。艦長が淹れてくれたコーヒーに限り、ね。」

そうユウカが言うとムラクモは嬉しそうに

「やはり、手間暇かけて淹れたものは味しい証拠だな。」

と言ってコーヒーを飲む。

ユウカが僕に聞く

「そう言えばケイくん。最近の子と仲良いんだって〜?人のいないお姉さんからすると、羨ましいぞ〜!」

何のことかわからないが、多分の子とはサクラの事だろう。

「ああ、整備兵のサクラの事か。ストライカーの整備や、出撃前に勵ましを貰っている。」

そう言うとムラクモが

「こらこら、ユウカくん。ケイくんをからかうのはやめなさい。」

「えー!艦長!重要な話題ですよ!」

「それのどこが重要なのだね。」

バナは立派な乙の嗜みです!」

「乙という年齢かね……」

と、艦長とユウカのやりとりは続く。

なかなか話にれないので、僕はムラクモにコーヒーのおかわりをお願いする。

「ああ、すまなかったね。」

そう言ってコーヒーを僕のカップに注いでくれる。

ユウカはこちらに手を合わせごめんね。と言っている。

そうしてムラクモが僕に言う。

「話題を変えよう。この艦にケイくんが來て、結構な月日が流れた。ケイくんも変わりつつある。だが、変わったのはケイくんだけじゃなく、君を取り巻く環境も変わった。」

「最初はれない人も一定數いたんだが、今となっては完全に戦友として認めてくれている。それはケイくんの働きがあってこそだ。」

「ケイくんも気づいてるだろう。んな人が、んな風に変わり始めてる事を。そして、先程話したように君自も。」

「これがね、人間というものなんだよ。」

「これが心を持つ人間というものなのさ。だから、この変わったという事を大切にしなさい。」

その後、表を曇らせる。そして

「殘念ながら、今回の作戦も我々セレーネは危険な最前線へと行くことになるだろう。」

「もしかしたら……」

そう言いかけたところで僕はムラクモに

「危険になる事は、みんな知っての通りだ。だから、みんなが互いを守る。そうすれば生き殘れる。必ず、みんなで生きて帰るんだ。」

と言う。

そうするとムラクモは艦長帽を深く被り直し

「ケイくんの言うとおりだ。必ずや全員を生還させよう。私も盡力するよ。」

ユウカも

「危険な目に遭わないような縦をちゃんとしなくちゃね!艦長、私も頑張ります!」

と言って敬禮する。

「僕も生きて帰る。必ず。」

僕も強くそう答える。

こうして束の間のコーヒーブレイクは過ぎていった。

サイと會話すべく、ハンガーに向かう途中、醫務室の扉が開いていた。

中をのぞくと、シャーロットがさまざまなの準備をしていた。

聲をかけるタイミングを見失っていたが、シャーロットがこちらに気づいて聲をかけてくれる。

「あら、ケイくん。どうしたの?」

僕は答える

「大変そうだ。何か、手伝える事はないか。」

「ううん。大丈夫。それより、久しぶりにお話しでもしない?」

確かにシャーロットとも久しぶりだ。

「そうだな。話をしよう。」

シャーロットは椅子に腰掛ける。

僕は醫務室にり、ベッドに腰掛けた。

「様々な醫療だ。し見ていたが、準備が大変そうだ。作戦が近いからか?」

シャーロットはし悲しそうに

「そうね……。今回の作戦はきっと負傷兵も増えるだろうし、私だけじゃなく、他の軍醫もこの艦に乗る事が決まってるの。」

「みんなが怪我しないでくれるのが一番なんだけどね。」

僕はシャーロットに言う

「シャーロットたちの働きで、きっと救える命もあるだろう。必ずみんなで生きて帰ろう。」

そう言うとシャーロットはクスっと笑って

「ケイくんってどこかフィルと似てるとこあるかも。その底抜けにポジティブなところとか。」

僕はシャーロットに聞く

「ポジティブ、とは前向きと言う意味だな。サイから教えてもらった。」

シャーロットはほほ笑みながら

「正解よ。言葉も々と覚えてきているのね。出會った頃とは本當に大違いね。長しているわ。」

「子供の長は早いものなのよね。し、背もびたんじゃないかしら。」

「本當にたくましくなったわ。」

そう言うシャーロットに、謝と練習した笑顔を作ってみようとした。

「ありがとう。そしてこの笑顔は練習中だ。」

そうするとシャーロットは僕の頭をでて

「私の方こそありがとう。ケイくんと話してると私も前向きになれるわ。」

「あら、そろそろ時間だわ。新しい人が來るのよ。」

「こちらもそろそろサイと話に行こうと思っていたところだ。すまなかったな、時間を取ってしまって。でも、話せて良かった。」

「ううん。こちらこそ。私も話せて良かったわ。」

「必ず帰ってきて。」

そう言うシャーロットに

「ああ。必ず。」

と返した。

32話へ続く。

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