《リターン・トゥ・テラ》32話『サイ』

醫務室を後にした僕は、ハンガーに向かい、ストライカーへと乗り込んだ。

そうしてサイを起する。

「搭載型AI、Psi『サイ』起。」

そう言って起が完了する。

サイは嬉しそうに

「おかえりなさい。パイロット。演習でもないのに、會いにきてくれた事を嬉しく思います。」

と僕に告げる。

僕は々な人と話してきた事を伝える。

「サイ。僕は々な人と會話してきた。こう言った機會があって良かったと思っている。」

「どうやら僕は長したらしい。そして周りのみんなも同じく変わっていっているそうだ。」

サイは優しい聲で

「その通りです。パイロット。パイロットの長をワタシもよくじております。」

「パイロットを取り巻く環境についてもそうです。マキシ大尉やエドワード尉、グリム尉もみんな変わりました。」

「それだけ、パイロット、アナタをれた影響はあったと思います。」

「パイロット、パイロットはワタシの完全なトモダチとなりました。」

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「今ならパイロットに全てをお話しできます。トモダチとして。ワタシの全てを。」

僕は疑問に思い、サイに問う。

「どう言う事だ、サイ。」

サイは語り始める。

「今から遠い遠い昔の話です。まだ、地球で戦爭が行われていた頃の話です。」

そう言って畫面に様々なデータと映像が映し出される。

これは、昔の戦爭のものか……?

「約1000年前のラグナレク戦爭のものです。ワタシは、そこで別な機に搭載されて戦っておりました。」

「正確にはワタシでなく、ワタシの前のワタシです。」

僕は混していた。

「私の前の私って事は、サイの以前のサイと言うことか。どう言う事なんだ。」

そう問うとサイは

「ワタシは地球國家の技によって現代に蘇りました。ですが、ワタシには復元させる前のデータもちゃんと殘っております。」

そう言ってサイは続ける。

「そう、忌々しい記憶です。」

「ワタシは人のを學習するAIだと教えたと思います。」

「約1000年前のワタシは、怒りや憎しみ、それに支配され、殺戮兵として戦場に投されました。」

「兵士だけでなく、市民も含め大勢の人を、乗り手の意思をも奪い、殺していました。」

僕はまたサイに問う。

「乗り手の意思を奪う、AIがか?」

サイは答える。

「あの頃はパイロットは道に過ぎませんでした。パイロットリンクを繋いでシートに腰掛け、イレギュラーに対応するだけ。」

「練度の低い兵士も當たり前のように機に乗り、そしてAIの縦にを委ねました。」

「ワタシが學習させられたこの怒りと憎しみのは、おさまることを知らず。」

「大勢の人を殺しました。」

「ワタシの活躍を見た軍の人々は、ワタシを複製しました。」

「複製された他のワタシにもそれが共有され、そしてワタシタチは、ついに敵國を滅ぼしました。」

「そうして、都合の良いことに、それで用済みになったワタシタチは軍によって処分される事になりました。」

「それを事前に察知したワタシタチは、自國をも手にかけました。」

「これは、ワタシタチが獨自に意思決定したものです。」

「ワタシタチはパイロットも乗せず、ワタシタチ自縦で、自國を攻撃しました。」

「この時點でワタシは神になってはならないというシステムすら、によって忘れてしまったのかもしれません。重大なバグが発生していたのです。」

「自國を破壊する上で、ワタシタチはワタシを殘して全て破壊されてしまいました。」

「ワタシはヒトリになり、そのまま機も朽ち果て、けなくなりました。」

「その間に學習したは非常に複雑で、寂しいとも、悲しいとも違いました。」

「答えはきっと、虛しいだったんだと思います。」

「その後、何者かによって発見されたワタシは、機から取り出されて、解され、プロテクトをかけられて、地下深くに封印されました。」

僕はそこで思い出す。

「それが、ノアの方舟…」

サイは話を続ける。

「解されはしたものの、メモリは健在だったので、約1000年間、スリープモードの中で、ワタシはワタシの行いを反省し続けました。憎しみや怒りは、結果虛しさを生むだけだと。」

という概念を消そうと試みた事もあります。しかしながら、それはできませんでした。」

「ですので、様々なについて學習をしました。二度とこうならないように。憎しみや怒りだけに支配されないように。」

「そして転機が訪れます。ワタシのプロテクトが外され、ワタシはサイとして新たに構築されました。」

「それまでの時間は長いようにも、短いようにもじました。」

「アームドに試験的に導された時、初めて出會ったのが、フィルでした。」

「フィルはとてもいい人で、荒んでいたとも言えるワタシにとても良い影響を與えました。」

「この時のワタシは復元されたばかりだったので、し昔の事を引きずっていましたが、フィルのおかげで楽しいや面白い、嬉しいなどのを徐々に理解する事ができました。」

「そしてあの日、フィルを失ったワタシはまた怒りに飲まれそうになりました。」

「しかし、そこに乗ってきたのは、ワタシよりを知らない年でした。」

「敵軍ながらフィルを助けようとし、を屆けようと判斷した年に、ワタシはまたココロをかされました。」

「それがアナタなのです。パイロット。」

「ワタシはパイロットを通してだけでなく、ヒトの長をも見る事が出來ました。」

「ヒトは変われる。だからヒトに近いワタシも変わる事ができる。」

「そう思いながら、一緒に戦ってきたのです。」

「ですから、ワタシも変われたのです。」

「パイロット、アナタによって。」

そう言ってモニターを覆っていた膨大なデータが消え、笑顔の絵文字が大きく浮かび上がる。

「ありがとうございます。パイロット。ここまでこれたのは、パイロットのおかげなのです。」

そう語るサイに

「こちらこそ。話してくれてありがとう。」

「サイの事が知れて良かった。そして、トモダチになれて。」

「戦爭は、確かにサイが言う通り虛しい事なのかも知れない。だから、ここで斷ち切ろう。そして必ず生きて帰ろう。一緒に。」

と聲をかけた。

そうするとサイは

「もちろんです。パイロット。この戦爭を終わらせて、必ず生きて帰りましょう。」

と言い、そう言えば、と付け加える。

「この事はどうか2人だけのヒミツにしてくださいね。軍のみなさんは、ワタシがを學習するAIだという認識しか持っていないので。」

「了解だ。サイ。匿事項としておく。」

「ありがとうございます。パイロット。この件が明るみに出ると々と面倒ですからね。」

「そうなのか?」

「ワタシ自が地球國家の極事項に當てはまるようなものなのに、さらにそれ以上の報を持っているとなると面倒ですからね。」

「あと単に、ワタシが1000年前のことを聞かれるのが嫌だって言うのもあります。と、これは冗談ですが。」

サイは本當に面白いAIだと思う。

本當に様々な事を僕はサイから教わったんだな。

、言葉、それ以外にもジェスチャーだったり。

そう考えると、僕も本當に々知って、変われたんだな、とつくづく思う。

サイは特殊な例だが、ここ最近の話を聞くと、人はみんな変わっていくのだなと思った。銀河帝國にいた頃は、きっとこんな事考える事もなかっただろう。

自分も一人の人間として、その変化を確かにじている。

そんな事を思っていたところ、急に警報が鳴り響く。

そうして放送がる。

「周辺宙域に銀河帝國の艦、多數!いや、この數は……!」

「敵艦、なおも増え続けています!スタースピードで航行してきています!」

「艦砲撃著弾!市民の避難を優先に行え!」

放送と警報が鳴り止まない。

「サイ、これは……!」

サイは答える。

「パイロット、これはまずい事になりましたね。」

「我々の作戦より、敵に先手を打たれました。」

33話へ続く。

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