《リターン・トゥ・テラ》37話『これが最後の』

「パイロット、大丈夫ですか。」

何度目か、サイから僕に聲がかかる。

僕はアルファとの2度に渡る敗戦を悔やみ、何も言う事ができないままでいた。

僕らのストライカー3機はボロボロの狀態で、機ハンガー口に転がり込んだままの狀態になっていた。

まず、勢を立て直し、立ち上がったのは、タイプ・ヴィーナスだった。

通信で僕らに呼びかける。

「ボサっとしてんじゃないわよ!すぐに整備してもらって、戦線に上がらないと!」

タイプ・ムーンも立ち上がる。

「そうですね。そうしなければ、月面防衛艦隊どころか、後方に位置する金星の艦隊まで被害をけます。」

その言葉を聞いても僕は立ち上がれないままでいた。

「ほら!何やってんのよアンタ!生きてるんでしょう!?」

エミリアから通信がる。

僕は通信を何て返したらいいかわからなくなっていた。

退避する指示は僕が出した筈だったが、どうしても悔やむ気持ちの方が強い。

痺れを切らしたサイが無理やり機を制し機を立ち上がらせる。そして2機に通信を送る。

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「ジ・アース、AIのサイです。パイロットの神が安定していないのでワタシが喋ります。」

「データリンクによる機のダメージコントロールを計算したところ、3機とも全て戦線に上がることは不可能と判斷しました。」

「そこでワタシから提案があります。」

「機で健全な部位を1機にまとめて、改造します。つぎはぎではありますが、その方がこのまま戦線にあがるよりは勝率が上がります。」

エミリアから通信が返ってくる。

「はぁ!?本気でいるってるのそれ!?」

サイは冷靜に

「2機にデータを転送します。見てください。」

と言い、戦闘シミュレーションのデータを送る。

僕もモニターに映し出される資料に目を通していた。

ソフィアは納得した様子で

「なるほど。ストライカー同士、ブロック単位でのパーツの換になるから、整備さんたちの手間も省けて、勝率もしながら上がる。これなら大丈夫そうね。」

とサイの提案に乗ったようだ。

一方エミリアは

「確かにデータ上はそうかもしれないけど、3機の方が絶対に良いに決まってるでしょ!大誰が縦すんのよ!」

「3機分の機繋ぎ合わせたら、それだけピーキーな運になるし、かせる奴いるの?」

サイは答える。

「はい。ワタシとワタシのパイロットならできます。」

エミリアは怒る。

「さっきの戦闘で神が不安定になってるパイロットに信頼できるかっての!大、ジ・アースのパイロット、いつでもタイミング悪いし、油斷するし、さっきも敵の新型にやられてたし、信用ならないのよね!」

それでもサイは冷靜に応える。

「ワタシが特殊なAIだと言うことはご存知だと思います。ピーキーな運能に関しては、ワタシが全面バックアップのもと、機を制してみせます。」

「それにコックピットブロック、頭部メインカメラが正常なのはジ・アースだけです。」

「パイロットについてなのですが、パイロットもし特殊で、敵の新型に乗ってる敵パイロットが因縁の相手で、し取りしているだけです。」

ソフィアがそう言えば、と切り出す。

「月面基地で聞いたけれど、ジ・アースのパイロットって元銀河帝國の兵士で、しかも子供なんだって……。本當?」

「全て事実です。パイロットは元々クローン兵で、敵の新型に乗っているのが、パイロットのオリジナルのニンゲンのようです。」

サイが答える。

エミリアは驚愕した様子だった。

「噓……。金星までそんな話回ってきてなかったんですけど……。」

「作戦にはあまり関係のない話ですからね。本來ならば、明かされるべきでなかった事実に想定します。ですから提督は、月面艦隊だけにその事実を話していたのでしょう。」

エミリアは申し訳なさそうに

「なんかこれじゃ、私が悪い大人になっちゃってるみたいじゃん……。怒鳴り散らかして、偉そうに命令して……。」

と言う。

サイはそれに対して

「何も言わなかったワタシにも責任はあります。」

そこでようやく僕はから言葉が出てくる。

「エミリア、ソフィア、すまなかった。オリジナルに2度敗北した事実に悔やみ続けていた。」

「先程サイが提案してくれた資料に僕も目を通した。この容なら僕らでやれるはずだ。」

「だからお願いだ。機と力を貸してほしい。」

エミリアは僕の狀況に対して納得してくれた様子でこう応える。

「良いわ。因縁の相手なら、絶対にやっつけて見せなさい。子供でも、男なんでしょ?」

「あと、名前を教えてちょうだい。共闘しても聞いてなかったから。」

「ケイだ。」

「ケイくんね。了解。」

ソフィアから茶々れがる。

「エミリア、子供好きだもんね。」

エミリアはそれに対して怒る。

「今言わんでいい報を出すなー!」

ストライカーの整備が始まる。

僕は機が整備されている場所の遠くからそれを見ていた。

タイプ・ジ・アースの頭と

タイプ・ムーンの両腕。

タイプ・ヴィーナスの両足。

サイは必死に計算してるんだろう。各所のバランスを。

それに加えて見慣れない裝備が足に取り付けられていた。

これはなんだろうと思い、サクラに聞こうと思って、ストライカーに近寄る。

サクラは忙しそうに作業をしていた。

聲をかけてもいいのだろうか、僕が迷っていると、逆にサクラから聲がかかる。

「ケイ……。」

「すまない。また負けてしまった。」

「でも、無事でよかった……。それなのに……。」

「それなのに?」

「ケイは、また戦場に出るんだね……。」

「僕はパイロットだから。そしてこの足の裝備はなんだ?」

「これはね、エーテライトエンジンがついた、ブースターなの。本來はペーパープランに終わっていた裝備なんだけど、今回、出力を上げるために付けられた。」

「凄い速度が出るんだけど、それ専用のパイロットスーツもあって、Gに耐えれるようになってるから。」

「絶対に危険な裝備だから、こんなの取り付けたくないって思ったんだけど、もう月面基地も限界みたいで、急いで救援に向かってもらいたいからって……。」

サクラは悲しそうに話す。

「また、死なないって約束できる……?」

そう聞くサクラに、そうだ。と思って僕は近づく。

そして、今度は僕からサクラの口に口をつける。

サクラは僕の背中に手を回す。

ほんの數秒だったが、長い時間にもじた。

「サイから聞いた。これはを示す行為だと。サクラが僕をしてくれる限り、僕は死なない。」

「ケイ……。必ず戻ってきて……。」

「必ず。信じてくれ。」

ものすごく大きなパイロットスーツを裝著し、僕はストライカーに乗り込む。

サイは、相変わらず

「おかえりなさい。パイロット。」

と出迎えてくれた。

「にしても、無茶な裝備ですね。エーテライトエンジンをそのまま足のブースターに付けて出力を上げるなんて。被弾したらひとたまりもありませんよ。」

「このプランしかなかったようだ。仕方ないだろう。」

「調整もだいぶ大変だったんですよ。腕、腳、そしてブースター。ワタシをもってしても5秒はかかりました。」

「大変なのか、それは。」

「そりゃもう大変ですよ。」

そこにムラクモから通信がる。

「ケイくん。月面艦隊の74%がやられた。さらに、後方の金星艦隊まで被害が及んでいる。」

「そして、月面基地のバリアも限界だそうだ。我々もまたスタースピードで月面艦隊付近まで航行。加勢する。」

「ブレイブ隊は全機健在。今は月面基地と艦隊の防衛を行なっている。」

「スタースピード航行を抜けた直後に、すぐに出撃だ。頼んだぞ!」

「スタースピード航行準備!」

そう言って通信が一旦途切れる。

「パイロット。おそらくこれが……。」

「わかっている。生きても死んでも。」

「これが最後の出撃だ。」

38話へ続く。

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