《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》即死使いの譫言詠唱《ワールドエンド》 その②
「ちょうどよかった。僕の食べかけがあるんだ。これを與えてみよう」
僕はおじさんに向かって、魚のすりが突き刺さった串を差し出した。
その瞬間、おじさんは目にもとまらぬ素早さで僕の手から串を奪うと、勢いよく食べ始めた。
ミアが骨に嫌そうな顔をする。
「どうしたの、ミア?」
「人がものを食べる音、私、苦手なの」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたね」
僕らにお構いなしに、おじさんは串焼きを食べ終わってしまった。
「……生き返ったでおじゃるな」
おじさんが立ち上がり、言葉を続ける。
「すまぬな、若人よ。おかげさまで助かったでおじゃる」
おじさんは太り気味のをしていて、背はそれほど高くなかった。
丸々としたのある顔をしている。
「あ、いえ、僕は特に何も」
「いやいや、一食の禮は忘れぬのがこのわし、グルツ・テンド・ハルフォードの信條でおじゃるよ。君たち、何か困っておることはないでおじゃるか?」
思わず、僕とミアは顔を見合わせていた。
「どうする、ミア?」
「どうするったって、どうするのよ」
「どうしようか」
「ほほう、困りごとがないのが困りごとでおじゃるか?」
「あ、いや、そういうわけじゃないんですけど」
僕が言うと、
「それならわしが勝手に恩を返させてもらうでおじゃるよ。君たち、お金を持ってはおらぬか?」
「……いいえ、今ちょうど盡きたところなの」
「おお! そうだったでおじゃるか。ならば好都合。わしにほんの一枚紙幣を渡してくれれば、何倍にでも増やしてあげるでおじゃるよ!」
「ふーん。だってさ、ミア」
「信用できないわね」
「お、おやおやおや、このわしを信用できぬと申すでおじゃるか!? このグルツ・テンド・ハルフォードを?」
「だって、お金っていうのはそう簡単に増やせないから、お金としての機能が果たされるのだわ。それを増やそうなんて言う人、信用できなくて當たり前じゃない?」
「むっ……」
グルツなんとかと名乗るおじさんは、言葉を詰まらせた。
「まあ、いいじゃんミア。ちょっと任せてみようよ」
「任せるのは構わないわ。でも、この人に渡すほんの一枚の貨幣すら、今の私たちは持っていないのよ」
「……マジ?」
「それなりにマジ」
「それなり?」
引っかかる言い方をするじゃないか。
「ええい、ならば仕方ないでおじゃるな。証拠を見せてあげるでおじゃる。二人とも、この石ころをよく見ておくでおじゃるよ?」
グルツが、道端に落ちていた石ころを拾い上げ、僕らの方に向けた。
「手品でも見せてくれるの、おじさん?」
「若造、見ておるがよいでおじゃる。【倍加(ダブルアップ)】!」
すると、グルツの手の中の石ころは、一瞬で二つに増えていた。
凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】
現代ダンジョン! 探索者道具! モンスター食材! オカルト! ショッピング! 金策! クラフトandハックandスラッシュ! ラブコメ! 現代ダンジョンを生き抜く凡人の探索者が3年後に迫る自分の死期をぶち壊すために強くなろうとします。 主人公は怪物が三體以上ならば、逃げるか隠れるか、追い払うかしか出來ません。そこから強くなる為に、ダンジョンに潛り化け物ぶっ倒して経験點稼いだり、オカルト食材を食べて力を得ます。 周りの連中がチートアイテムでキャッキャしてる中、主人公はココア飲んだりカレーやら餃子食べてパワーアップします。 凡人の探索者だけに聞こえるダンジョンのヒントを武器に恐ろしい怪物達と渡り合い、たのしい現代ダンジョンライフを送ります。 ※もしおはなし気に入れば、"凡人ソロ探索者" や、"ヒロシマ〆アウト〆サバイバル"も是非ご覧頂ければ幸いです。鳥肌ポイントが高くなると思います。 ※ 90話辺りからアレな感じになりますが、作者は重度のハッピーエンド主義者なのでご安心ください。半端なく気持ちいいカタルシスを用意してお待ちしております。
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