さあ、どうする？

敵は僕を殺す気でいる。

右足から針を引き抜くこと自はそう難しくはない。

問題は、敵がそれを許してくれるかどうかだけど。

きっと、僕が針を引き抜く挙を見せた瞬間に襲ってくるだろう。

かといって、このまま止まっていても僕が不利である狀況は変わらない。

……だったら、逆に相手を利用してみるか。

僕は足に突き刺さった針を引き抜くため、屈んだ。

同時に、ハリシが僕の方へ突っ込んでくる――が、すぐに立ち止まった。

「どうしたんですか？　來ないんですか？」

「やめておこうかな。お前が攻撃をっているように思ったからな」

「よく分かりましたね」

僕は針を抜き取り、立ち上がった。

僕の周囲には、【切斷(キル・ユー)】の見えない刃が滯空していた。

もし相手が攻撃してきたなら、そのを引き裂いてやれたんだけど。

「お前のような人間が簡単に隙を見せるはずもないからな」

「すごい観察眼だ」

「趣味は野鳥の観察だからな」

「……それ本當ですか？」

「まさかな」

「信じかけましたよ。詐欺師でもなった方がいいんじゃないですか？」

「人を騙すのは卑怯者のすることだな。俺はそういうのは気にらないな」

骨に嫌な表をするハリシ。

そして僕は、僕に迫る針の先端を見た。

「！」

判斷は一瞬。

【死線(デッドライン)】で針を切り落とす。

【切斷(キル・ユー)】では、針の勢いを殺せないみたいだったからだ。

だけど、気づいたときには、僕の顔面にハリシの膝がクリーンヒットしていた。

「うっ、ぐ！」

よく分からないき聲が出た。

思わず顔を抑えた瞬間、次は腹に拳の直撃をけた。

「良くないな、殺人鬼。もうし周囲に気を配れる人間だと思っていたが、俺の勘違いだったかな？」

「事を同時進行で進めるのは、昔から苦手なんですよ」

毆られた衝撃で、胃から苦いものが込み上げてくる。

僕は、苦し紛れに【切斷(キル・ユー)】と【貫通(メーク・ホール)】をし、ハリシから離れた。

ハリシは、そんな僕の攻撃を難なく回避する。

畜生、こいつは僕の両親を殺した敵だ。

同時に、僕の獲を奪ったということにもなる。

だからできるだけ苦しませて殺したいんだけど。

だけど……そんなこと言ってたら、殺されるのは僕の方になる。

かといって【死線(デッドライン)】を當てて即死させるのも、簡単なことじゃないだろう。

はっきり言って、この敵は強い。

……なんでこんなやつが僕の地元にいるんだ？

殺人犯のいる街なんて、嫌なところで生まれ育ったものだなあ、僕。