《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》ノータリンの擔架 その⑥
「……貴様、いつの間に!?」
「さあ、いつの間でしょう」
僕らが姿を消せば、敵は全方位へ線を放つだろうということは予想できていた。
だから僕は、リジェさんが明化を使った瞬間、周囲の遮蔽にうまく隠れながらテンヤの背後にある塔まで走り、そしてその側面を駆け上がったのだった。
予想通りテンヤは線を撃って、それは僕の上っていた監視塔にも當たった。
あとは塔が倒れるのに任せて上空からテンヤに接近、とどめを刺したというわけだ。
「私は……死ぬ、のか」
テンヤの全からが噴き出す。
【死線(デッドライン)】の能力が発したらしい。
「それがこのスキルですから」
「そうか……國のためにといて來たつもりだったが、私はそれ以上の業を背負ってしまっていたらしいな」
諦めたようにテンヤが口元だけで笑った――次の瞬間だった。
「が、逆賊を生かしておくわけにはいかん。死に土産を貰うぞ」
「!?」
「えーくん!」
テンヤのが発する。
リジェさんが僕とテンヤの間にをり込ませる。
同時に、激しいと熱の奔流に飲み込まれた僕の視界は真っ白になった。
「――ッ!?」
ようやく視界が元に戻った時、僕とリジェさんは何もない平たい土地に立っていた。
それが軍部の拠點の跡だということに、僕らはしして気が付いた。
テンヤが死に際に放った線がすべてを破壊したのだ。
「そ、そんな……マモト、ラクシャ……死んでしまったのか!?」
ふらついたリジェさんがそのまま膝をつく。
恐らくマモトとかラクシャとかいうのは一緒にこの基地に潛した仲間の名前だろう。
基地一つつぶすような攻撃で無事だったとは思えない。恐らくは即死だったはずだ。
だけど僕は、さらに最悪の事態に思い當ってしまった。
「……あの、リジェさん」
「あ、ああ、すまん、し取りした。が、目的は達した。彼らの死を無駄にしないためにも俺たちは戦わなきゃならない。拠點へ戻ろう」
「その拠點なんですけど」
僕らの背後には、焼け焦げたような跡が巨大な線のようになってずっと向こうまで続いていた。線が発された跡だ。
そしてそれは、『弱者の牙(ファング)』の基地がある方向を指し示していた。
リジェさんの顔が変わる。
「――急ごう、えーくん」
僕らは基地へ走った。
いつの間にか雪は止んでいた。
※※※
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