《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》弱者のミカタ その⑤

「は――排除」

サイカがく。

僕はそんな彼に向けて、【切斷(キル・ユー)】と【貫通(メーク・ホール)】をした。

「【殺戮劇場(サーカス)】!」

不可視の刃が、鉛の球が、今度こそサイカのを切り裂き貫いた。

僕らの周囲の瓦礫が砕され、土煙を上げた。

それでもサイカは止まらない。

腕がはじけ飛び、(オイル)をまき散らし、片目が潰れても、僕に向かってくる。

……どうしてだ?

どうしてく?

どうして戦う?

剎那、僕の視界が赤く染まった。

だ。

目からが流れている。

いや、目だけじゃない。

鼻や口、顔中から出している。

直後、僕の脳髄に引き裂かれるような痛みが走った。

強化薬(ティルフィング)が完全に切れたらしい。

視界に映るものすべてが回転を始めた。

上下左右が分からなくなった。

気が付けば僕は地面に倒れていた。

「……あ」

サイカが僕の目の前で立ち止まる。

の千切れかけた右腕を振り上げる。

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僕もここまでか――まあ、いいか。

サイカが右腕を振り下ろす。

ふいにその右腕が止まった。

「――やりましたですよ! ついに手にれましたです! 軍部の白服の下著でございますですっ!」

場違いに気な聲が聞こえた。

サイカの背後で、イチゴさんが三角形の布切れを片手に狂喜舞しているのが見えた。

あいつ、やりやがった。

下著を――奪い取りやがった。

サイカは呆気に取られたようにきを止めている。

チャンスだ。

「う、おお」

僕は無理やりを起き上がらせ、サイカの顔面めがけて右拳を振るった。

手ごたえがあった。

サイカはまるで糸の切れた人形のように、瓦礫の破片が飛び散る地面に倒れこんだ。

……やった。

勝った。

ギリギリの勝利だった。

主に僕の自業自得ではあるのだけれど。

その時、僕はサイカのの上でる何かを見つけた。

拾い上げてみるとそれはペンダントのようなもので、中には寫真がれられていた。

とその母親らしき人の寫真だ。

二人は穏やかな笑みを浮かべて正面を見つめていた。

には、サイカの面影があった。

……僕はペンダントをそっと元の場所に戻した。

がどんな人だったのか、僕は知らない。

僕を殺すために現れたということ以外、何も知らない。

だけど、もっと違う出會い方をしていれば――お互いに殺し殺されあうような関係ではなく、違う関係を築けたのかもしれない。

今となってはもう遅いことだけれど。

とにかく疲れた。

が重たい。

こんな戦いは早く忘れてミアの所へ帰りたい――結局僕の帰る場所は、ミアのいるところ以外にはないのだ。

「えーくんさん」

「……何ですか?」

サイカの前に屈んでいたイチゴさんが僕を見上げる。

しの間、向こうを向いていてもらっても良いでございますですか?」

「向こうを? ……いいですよ」

とにかく疲れていた。

今、真冬の海に飛び込めと言われたら、何も考えずに従ってしまうくらいには。

だからというわけではないが、僕はサイカから目を離し、廃墟になった街の方へ顔を向けた。

銃聲は聞こえなくなっていた。

恐らくは『瓶の中の小人(ホムンクルス)』が勝利したのだ。

だけどなぜか達はなかった。

まあ、もともとの薄い方ではあるか、僕は。

「もういいですよ、えーくんさん」

振り向くと、イチゴさんは両腕でサイカのを抱えていた。

まるで大切な何かを抱えるように。

「その人、どうするんですか?」

「連れて帰って、丁重に葬りますです。これほどの実力者ですから」

「……ああ、そうですね」

「これほどの実力者ですから、かなりの変態に違いありません」

「――え」

あれ?

なんか妙な言葉が聞こえた気がしたけど?

「強力な戦士ほど心の中には深い変態を隠し持っているものなのでございます。私やえーくんさんのように」

「いやちょっと待ってください、その理論は……」

その理論はおかしい。

今まで僕が戦ってきた強敵もみんな変態ってことになっちゃうぞ、それ。

……あれ?

あながち間違ってもいないような……。

「とにかく彼は連れて帰ります。もし來世とかいうものがあるのなら、その時はきっと下著を肴に朝まで飲み明かせるような関係になることを祈ります」

「その意見には賛です」

僕は頷いた。

※※※

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