《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》弱い雑魚オーバーキル! その③

※※※

僕は一人食堂で、お茶を飲んでいた。

ギルさんが見當たらなかったので自分で淹れたお茶だったが、やはり味しくはなかった。

うーん、ちょっと練習した方が良いかも。壊滅的な味だ。

僕はそのお茶ともいえないようなを一気に飲み干した。

……こんなところに一人で座って思い出していたのは、ラフィさんと養護園とかいう施設へ行った時のことだ。

『薬投與、催眠療法、人改造。私ができるすべてを懸けて作り上げたのがツヴァイちゃんってわけ。あの子の適は素晴らしいものだったよ』

そんなことをラフィさんは言っていた。

ツヴァイちゃん。

僕に似せて作られた贋作。

元々他人に関しての薄い僕だけれど、なんだかんだあの子とはずっと一緒にいる。

付き合いだけで言えばミアの次くらいに長い。

家族といえば僕を地下室に閉じ込めていたあの人たちくらいしかいなかった僕にとっては、僕のことをお兄様と呼ぶツヴァイちゃんには――多が移る。

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っていうか別に嫌いじゃない。

僕を殺そうとしたなんて昔の話だし。

僕のことを殺したい人なんて珍しくないだろうし。

「妹、ねえ……」

まあいいか。

深く考えないでおこう。

余計な考えは敵を殺す一手を遅らせるだけだ……。

「悩み事かな、殺人鬼」

そう言って僕の隣に座って來たのはハリシだった。

「そんなところですよ。ミアがあんなじじゃ、あなたも暇でしょう」

「あのは大したものだな。見直したよ。あの時殺さなくて良かったと思う人間は、あのだけだな」

そういえばそうだったな。

こいつも敵だった。つい最近まで。

「何しに來たんですか?」

「休憩といったところだな。それともなんだ、俺は休まないとでも思ったかな?」

「いや、別に」

「おお殺人鬼、カップが空じゃないか。ちょうど俺も何か飲もうと思っていたところでな、し待っていろ」

そう言うとハリシは僕のカップを持って臺所の方へ引っ込んでいった。

なんだ? 妙に親切だな。何か裏があるのかもしれない。

ハリシの言うようにしの間待っていると、彼はカップを二つ持って戻って來た。

その片方を僕の前のテーブルに置き、ハリシは僕の隣に座った。

「……毒とかってるんですか?」

「安心するんだな。俺は、雇い主は裏切らない主義だからな」

怪しいなぁ……。

とりあえず、死んだつもりで飲んでみるか。

ペロッ……これは普通のお茶!

しかもそこそこ味い!

ハリシが笑い聲を上げる。

「ふん。昔から趣味でな、これは」

「これって、お茶が?」

「そんなところだな。気を張り続けていては疲れるだけだからな……人殺しという仕事は」

い、意外な趣味だ。

しかも似合わない。

……いやむしろ似合うのか? 毒の調合とかやってそうだし、その流れでお茶も淹れたりするのかもしれない。

「ミアに休めと言ったのはあなただと聞きましたけど」

「ああ、そうだな。あのに倒れてもらっては面白くないからな。それに、雇い主を守るのが俺の仕事だ。この右手の事もある」

ハリシは、カップを握る右手を僕の方に見せた。

外國の技で作られたという義手だ。

「意外に義理堅いんですね」

「そういう主義だからな。それに、ここは面白い……考えてもみろ、あのツヴァイとか言うガキも、ギルも、俺も、元はお前たちの敵だったんだぞ」

「……ちょうどそういうことを考えていたところなんです」

「そうか。やはり俺とお前、人殺し同士考え方も似ているのかもしれんな。だが、それゆえにあのに倒れられては困るだろう。俺たちは人を殺すことしかできない。ミア・ミザルに何かあれば俺たちは行き場を失うことになるからな。だから休ませた。その代わりはグルツにやらせている――あいつも相當のやり手のようだからな」

ハリシはお茶を啜りながら、お湯の溫度が高すぎたか、なんてことを呟いている。

「敵の様子はどうなってるんですか?」

「そんなことは、敵に訊いてもらわなければ分からないな」

「あなたの見立てを訊いてるんですよ」

「戦力的にはどう考えても不利だな。もし攻撃してくるなら、ミア・ミザルのきが鈍っている今だろう。このことはギルにも伝えてある。迎撃の勢は整えておくべきだからな」

「……そうですか」

「お茶のお替わりは?」

「いや、要りません」

「そうか……味が悪かったかな?」

「いえ、そういうんじゃなくて。もうお腹いっぱいなので」

「ふむ。なら、消化を良くするお茶を淹れてやろう」

そういうことでもないんだけどな?

「ちょっとミアの合でも見てきますよ。こんなところにいてもどうしようもないのでね」

「ああ、思い出した」

突然ハリシが聲を上げた。

「何をです」

「お前に言わなければならないことがあってな。ミア・ミザルが呼んでいたぞ」

「僕を? っていうか、目が覚めたんですか?」

「ちょうど良かった。會って來ると良い。そういえば話したいことがあると言っていたな」

「どうしてそれを最初に言わないんですか」

「俺はお楽しみを後に取っておくタイプだからな。大事な話ほど後回しにしたいのさ」

そう言ってお茶を啜るハリシ。

その様子はくたびれた中年というじで、とても人殺しには見えなかった。

もしかするとそう思わせるのが狙いなのかもしれないけれど。

「じゃあ僕はこの辺で」

「そうか。ミア・ミザルによろしくな」

「覚えていたらそうします」

椅子から立ち上がり、僕は食堂を後にした。

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