《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》いちばんしたの大往生 その②
「この先に車があるの。それに乗って移するわ」
「誰が運転するの?」
「ここは執事である私がやりましょう。怪我の合もそう悪くはない」
「じゃあ、ギルさんにお願いするわね。みんな揃っているかしら」
「うんうん。みんな揃ってるよー」
「!?」
突如割り込んできた聞きなれない聲に、一瞬、その場にいた全員の表が固まった。
が、直後、それぞれが者に対し一斉に攻撃を仕掛けた。
僕は【死線(デッドライン)】を。
エヌはの魔法を。
ミアは炎魔法を。
ギルさんは超質の糸を。
ハリシは針を。
ツヴァイちゃんは不可視の刃を。
それなのに。
その場に現れた、黒髪を肩の辺りで切り揃えた年は。
微笑さえ浮かべたまま、僕らの攻撃をすべて回避した。
「―――ひどいなあ、挨拶もなしにこんなことするなんて。それともこれが君たちなりの挨拶なのかなー?」
年は僕らから一歩下がって、言った。
「その前に君は誰? 人に挨拶をしてしければ自分から挨拶しなきゃ。そうやって平和のを広げて行こうじゃないか」
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「ああ、君がえーくんか。なるほどなるほど。想像していた通りの人だ」
「……僕の言葉が聞こえなかったのかな? 君は何者だって訊いたんだけど」
「ああ、ぼく? ぼくはねえ、アリク・ジェラート……っていうよりも、元老院のキュタって名乗った方が分かりやすいかなあ?」
「……キュタ」
ミアが呟く。
「知り合いなの、ミア?」
「この國の暗部を司る元老院よ」
「なんでそんな人がこんなところに――って、訊くまでもないか」
暗部の人間が居る理由、そんなものは殺し(・・)のために決まっている。
つまり、僕らを殺しに來たのだ、こいつは。
「……あっ、見覚えがあると思ったら君、ギル・ラルバ? 久しぶり。元気にしてた? 顔悪いみたいだけど」
「え、ギルさん知り合いなんです――」
僕が最後まで言い終える前に、キュタの首が跳んでいた。
薄暗い空間の中で、糸がきらめくのが見えた。
うわ、容赦ない。
「この男の言うことを聞いてはいけません、皆さま方。この男は裏切りに裏切りを重ね今まで生き殘ってきた男です」
「それってどういう……」
「キュタの座をかけた継承戦に私は彼の敵として參戦しました――が、彼の暗躍を見抜けず敗北した。暗殺者として生きるために生まれて來たような男なのです」
ギルさんは全方位に殺気を放ちながら、両手に糸を構えた。
同時に、キュタの生首が喋りだ(・・・・・・・・・・)した(・・)。
「ひどいなあ。昔の話をいつまでも引きずるなよな。切り替えが大事なんだって」
ツヴァイちゃんが小さく悲鳴を上げたのが聞こえた。
それを合図にしたように、キュタの首が霧のようなものに包まれ、そしてそれが晴れた時、キュタは何事もなかったかのように傷一つない姿でそこに立っていた。
「こいつは幻使いなのです。……戦わずして逃げるべきでしょう」
「そうみたいね」
ミアが後ろを振り返る。
「ちょっとちょっと、冷たいんじゃない? その態度はさあ」
「!?」
その聲は、僕らの進行方向から聞こえて來た。
気が付けば、キュタは僕らの行く手を塞ぐような位置に移していた。
この一瞬でどうやって――いや、そもそもさっきまで喋っていたキュタが、そもそも幻覚だったのか――?
銃聲が鳴った。
僕は、余計なことを考えた自分を恨んだ。
そうすることで敵に時間を與えた自分を恨んだ。
キュタは、まるで息をするみたいに何の躊躇もなく、そして何の前れもきっかけもなく、ミアに銃口を向け――発砲したのだ。
だけど。
倒れたのは、ミアではなかった。
「……ハリシ?」
「逃げろ」
右と腹部に空いたからを流しながら、ハリシがいた。
それとほぼ同じタイミングで、キュタのが糸のようなもので壁際に縛り付けられた。
「行きましょう。逃げるしかありません」
「は、はい!」
ギルさんの聲で我に返った僕は、ハリシを抱え走り出した。
先頭をミアとツヴァイちゃん、そのすぐ後ろをエヌ、そしてギルさん、僕らの順番だ。
だけど、走り出した瞬間僕は強い力に背中を引っ張られ、地面に転がされた。
ハリシのが地面を跳ね、僕は視界の隅でミア達の方へ向かうキュタを見た。
「待てよ!」
反的に僕はキュタにとびかかり、そのを地面に組み伏せた。
『えーくん!』
ミアの聲が信魔法を伝って僕の頭に響く。
「先に行くんだ。こいつは僕が押さえる」
『でも』
「必ず合流するから」
「……全く、君もしつこいなあ」
僕のの下でキュタがいた。
剎那、僕はその場から飛びのいていた。
お腹の辺りに鋭い痛みが走る――キュタのナイフで斬られたらしい。
「ミアのところには行かせないし、誰も殺させない」
ミア達の足音が遠ざかって行く。
どうやら逃げてくれたようだ。
向こうにはエヌもギルさんもいるし、萬が一のことがあっても大丈夫だろう。
キュタは、僕のに濡れたナイフを片手でもてあそびながら、
「これじゃまるでぼくが悪者じゃん。魔導王國グラヌスに仇なす大犯罪者は君たちだろ?」
「僕にとって正しいとか悪いとかは関係ない。ミアの敵は僕の敵だし、ミアを殺そうとするやつは僕が殺す」
「あはー、やっぱり思った通り面白いね君。あの役立たずも君をずいぶん気にっていたみたいだし」
「……役立たず?」
「君一人に壊滅させられた組織――【異能力者処理統括機関(ファーバ)】のリーダーだよ。知り合いだよね、君も」
僕の頭に、あの白髪の男が思い浮かぶ。
「あいつと君も知り合いなの?」
「知ってるも何も、【異能力者処理統括機関(ファーバ)】は暗部の直轄組織なんだよね。むしろぼくと君が今まで出會わなかったことのほうがびっくりだよ」
「僕は全くそんなことんでないけど」
「だろうね。そんな顔してる」
無害そうな笑顔でキュタは言う。
だけどさっきから、この年の刺すような殺気は常に僕に向けられていた。
一歩でもけば殺される。
間違いない。
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