《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》いちばんしたの大往生 その③
……さっきからハリシはぴくりともかない。
早くしなければ失で死んでしまうかもしれない。
僕がかなければ、この場は打開できないらしい。
「……【殺劇場(サーカス)】」
【切斷(キル・ユー)】と【貫通(メーク・ホール)】をキュタめがけて一斉に発する。
だけど、僕の攻撃が當たった瞬間、敵の姿は靄みたいに消えてしまった。
「幻使いだって、せっかくギルが教えてくれたのにね」
背後からキュタの聲が聞こえた。
振り向きざま、僕は【死線(デッドライン)】の鎌を振るった。
キュタは軽に躱す。
「當たってくれれば良かったのに」
「やだよ。そのスキル、前に見覚えがある。當たったら死んじゃうやつだろ?」
……時間は、ない。
こいつを殺してハリシと一緒にここを離れる。
――だけど、どうすれば?
僕は敵の方へ一歩踏み込み、鎌を振り下ろした。
鎌の刃先が相手を掠めた瞬間、キュタの姿は霞んで消えた。
「どうなってるんだよ、これは!」
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「ぼくのスキルは【幻覚(ファントム)】。その名の通り、幻覚を創り出す能力だよ。君はぼくの幻にまんまとひっかかっちゃってるわけ」
「解説どうもありがとう!」
聲のした方へ【死線(デッドライン)】を振る。
が、やはり直撃した瞬間にキュタは消えてしまう。
これじゃキリがない。どこかにいるはずの本を殺さなければ、永遠にここから離れられない。
「さあさあ、君はどうするのかなあ? このままじゃ疲れるだけだよ」
キュタの聲が二重にも三重にも聞こえた。
気が付くと敵の姿が増えていて、僕は數人のキュタに取り囲まれていた。
「――ッ!」
「卑怯なんて言うなよ。ぼくは今までこうやって來たんだからさ」
キュタが一斉に拳銃を構える。
そして、同時に発砲した。
四方から弾丸が僕に迫って來る。
「【切斷(キル・ユー)】……っ!」
複數枚の刃を【追尾(ストーカー)】でり、僕の周囲を守るように高速回転させる。
弾丸が切り刻まれ、ぜるのが見えた。
數人のキュタが、同じように驚いた顔をする。
「へー、複數のスキルが使えるとそういうこともできるんだね? あの距離で防げるんだ」
「……よそ見してると、危ないよ」
「!?」
鉛の球がキュタを背後から貫く。
僕が仕掛けておいた【貫通(メーク・ホール)】だ。
――が、風があいたはずのキュタのは、やはり霧のように消えてしまった。
こうなると、どうすればいい?
全員同時に攻撃してみるしかないか?
いや、それだと度が落ちる。萬が一殺しきれなかったやつが本で、僕の攻撃に何かしらの対策を打たれるとますます厄介だ。
だとしたら、やっぱり本を見つけ出して、そいつを確実に殺すしかない。
「っていうか、ミアを殺しに來たんじゃないの? 僕と戦ってていいわけ?」
「うん? ……ああ、そんな心配いらないよ。むしろここであのを殺すより、ここで君を殺す方が優先だろ。だって、君さえいなければあんないつでも殺せる。今までだってヒガに免じて見逃してやってたんだよ。あの男は敵にするとし厄介だからね」
「その余裕が命取りにならないといいけどね」
敵の位置はおおむね把握した。
僕はハリシの倒れている場所に気を配りながら、【切斷(キル・ユー)】を斉した。
不可視の刃が直撃し、キュタの幻影が次々と消失していく。
そしてすべての幻影が僕の周(・・・・・・・・・・)囲から消えた(・・・・・・)。
すると、通路の後方から足音が聞こえて來た。
振り返る。
「いやー、危なかったなあ、今のは。まさか一斉攻撃なんてね」
キュタだ。
やはり傷一つない姿で、拍手をしながらこちらへ歩いて來る。
「これでも殺しきれないなんて思わなかったよ」
「君は凄い。複數のスキルが使えて、そこそこ狀況把握能力もある。そして何より他人を殺すことを躊躇しない。見直した」
「…………」
「だけど、それじゃダメだ。それじゃぼくには屆かないし、ニヒトも殺せないなあ」
「追い詰められてるのはあんただろ。幻影を出してみなよ」
「もはや出す必要がないんだ。既に君は詰んで(・・・)いるんだからさあ」
「その言葉、そのままお返しするよ(・・・・・・・・・・)」
僕は振り向きざま、自分の背後めがけて(・・・・・・・・・)拳を振った。
僕のすぐ背後(・・)にはキュタが居て、その手にはナイフが握られていた。
右拳がキュタの顔面にめり込む――と同時に、【砕(クラッシュ)】を発。
キュタのは宙を舞い、地面に倒れこんだ。
頬骨の陥沒した顔を上げ、キュタは僕の方を見上げた。
「い、いつから分かってたのかなあ。本當のぼくの位置が(・・・・・・・・・)」
「途中から。本のあんたは僕に霧のように消える幻覚(・・・・・・・・・・)を見せて、あたかも幻覚が消え去ったように振舞っていたんだ。それが、幻覚で作られたあんたと混ざっていたから最初は見分けがつかなかった」
「なら、なんで」
「だよ。本のあんたの服には、僕を刺した時の返りがついてたんだ」
「……!」
キュタが自分の上著を見る。
そこには確かにを浴びた跡が殘されていた。
「さあ、とどめだ」
僕は【死線(デッドライン)】を発し、鎌を振り上げた――その時だった。
「詰めが甘いな、殺人鬼」
僕の背中の方で男の聲がした。
同時に発砲音が。
振り返ろうとした瞬間、僕は誰かに押し倒されていた。
「ハリシ――!?」
「俺は雇い主には忠実な男だからな。ミア・ミザルと――あのに必要な人間は守って見せる」
ハリシの顔は青白かった。
そして、僕は、ハリシの中に開いたから零れるを浴びた。
何が起こったのか正確には分からない。
だけど、はっきりと分かることが一つだけあった。
ハリシは僕を庇って撃たれたのだ。
次回の更新は2月10日です!
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8 66クリフエッジシリーズ第二部:「重巡航艦サフォーク5:孤獨の戦闘指揮所(CIC)」
第1回HJネット小説大賞1次通過、第2回モーニングスター大賞 1次社長賞受賞作品の続編‼️ 宇宙暦四五一二年十月。銀河系ペルセウス腕にあるアルビオン王國では戦爭の足音が聞こえ始めていた。 トリビューン星系の小惑星帯でゾンファ共和國の通商破壊艦を破壊したスループ艦ブルーベル34號は本拠地キャメロット星系に帰還した。 士官候補生クリフォード・C・コリングウッドは作戦の提案、その後の敵拠點への潛入破壊作戦で功績を上げ、彼のあだ名、“崖っぷち(クリフエッジ)”はマスコミを賑わすことになる。 時の人となったクリフォードは少尉に任官後、僅か九ヶ月で中尉に昇進し、重巡航艦サフォーク5の戦術士官となった。 彼の乗り込む重巡航艦は哨戒艦隊の旗艦として、ゾンファ共和國との緩衝地帯ターマガント宙域に飛び立つ。 しかし、サフォーク5には敵の謀略の手が伸びていた…… そして、クリフォードは戦闘指揮所に孤立し、再び崖っぷちに立たされることになる。 ――― 登場人物: アルビオン王國 ・クリフォード・C・コリングウッド:重巡サフォーク5戦術士官、中尉、20歳 ・サロメ・モーガン:同艦長、大佐、38歳 ・グリフィス・アリンガム:同副長、少佐、32歳 ・スーザン・キンケイド:同情報士、少佐、29歳 ・ケリー・クロスビー:同掌砲手、一等兵曹、31歳 ・デボラ・キャンベル:同操舵員、二等兵曹、26歳 ・デーヴィッド・サドラー:同機関科兵曹、三等兵曹、29歳 ・ジャクリーン・ウォルターズ:同通信科兵曹、三等兵曹、26歳 ・マチルダ・ティレット:同航法科兵曹、三等兵曹、25歳 ・ジャック・レイヴァース:同索敵員、上等兵、21歳 ・イレーネ・ニコルソン:アルビオン軍軽巡ファルマス艦長、中佐、34歳 ・サミュエル・ラングフォード:同情報士官、少尉、22歳 ・エマニュエル・コパーウィート:キャメロット第一艦隊司令官、大將、53歳 ・ヴィヴィアン・ノースブルック:伯爵家令嬢、17歳 ・ウーサー・ノースブルック:連邦下院議員、伯爵家の當主、47歳 ゾンファ共和國 ・フェイ・ツーロン:偵察戦隊司令・重巡ビアン艦長、大佐、42歳 ・リー・シアンヤン:軽巡ティアンオ艦長、中佐、38歳 ・ホアン・ウェンデン:軽巡ヤンズ艦長、中佐、37歳 ・マオ・インチウ:軽巡バイホ艦長、中佐、35歳 ・フー・シャオガン:ジュンツェン方面軍司令長官、上將、55歳 ・チェン・トンシュン:軍事委員、50歳
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