《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》さよならテオノトナタ その①

※※※

ヒガが死に、ハリシが死んだあの日から魔導王國は一変した。

軍部による反分子の一斉検挙が行われ、同時に各地の抵抗勢力が軍に対して徹底抗戦を宣言し、王國中に戦火が広がった。

首都シュルルツの周囲には巨大な防壁が出現し、一般人はシュルルツにる事さえ許されなくなった。防壁からは砲臺が顔を覗かせていて、いわばシュルルツ自が要塞化したようなものだ。

「時が來るのを待つのよ」

「……時?」

この北の地へ來る途中、自車の中でミアが言っていたことを思い出す。

「今この國は混狀態にあるわ」

「ミアの計畫通りにね」

「……そうよ。そしてそれは、えーくんが各地のレジスタンスに勝利の味を覚えさせたことが理由でもあるのよ。各地でレジスタンスが軍部に対し屈さなかったことで、軍部自が弱化しつつある現狀が呈した。このことが、王國中の抵抗勢力が軍部に対し一斉蜂起を促した―――」

ミアがじっと目を閉じる。

まるで、これまでのことを思い出しているように。

Advertisement

「それなのに僕らは北の地へ逃げるの? 混に乗じてシュルルツを落とすべきじゃない?」

「それをするために、時が來るのを待っているのよ。これは最後の戦いなのよ。私たちが――いえ、私とえーくん(しいたげられたひと)が勝つか、彼ら(けんりょくしゃ)が勝つかのね。そして、私たちが勝利するための最後のピースを手にれに行くの」

「そのピースがジャギア族ってわけ?」

「ええ。彼らを―――千年前、魔法の力をもってニヒトたちに勝利をもたらしたと言われるジャギア族を味方につければ私たちの勝利は盤石なものとなるわ。それに、あそこなら絶対に安全だもの。各地の勢力を見極め、確実にシュルルツを陥落させるためには、あなたという戦力を投するタイミングと場所を見極める必要があるの。……今は時間が必要なのよ。私たちには」

「…………」

この戦いで何人が死ぬのだろう。

―――死ぬのは僕と、僕らの敵だけで十分だったはずなのに。

自分で思っていたより、僕って脆い人間なのかもしれない。

「……えーくん、どうしたの?」

ミアの聲に我に返った僕の目に、いっぱいに広がる雪原が飛び込んで來た。

そうか。今、僕らはジャギア族の住む地を目指し歩き続けているんだった。

「ちょっと考え事をしていただけだよ。それで、目的地はどこ?」

「もう見え始めたわ」

ミアが指さした先には深そうな森があった。

「あの森に棲んでるの?」

「いいえ、森の向こうに集落があるの。その集落こそが、ジャギア族の居留地よ」

森を抜けるのか……。

大丈夫かな?

僕はギルさんやツヴァイちゃんの方を振り返った。

「どうしたんだよ、お兄様」

「ツヴァイちゃんが退屈してないかと思ってさ」

「あたしは平気なんだよ。ギルおじいちゃんも、元気でしょ?」

ツヴァイちゃんがギルさんを見上げ、それに応えるようにギルさんは頷いた。

「甘く見て頂いては困りますな。私とて王國の暗部出なのですよ。気配を消すために吹雪の中を一週間歩き続け、敵の拠點に侵したこともございます。この程度、大したことではありませんよ。それに」

と、ギルさんはミアやエヌを見て、言葉を続けた。

「彼らの魔法がありますから、そう寒さもじません。快適な旅ですよ」

「それなら僕も安心です」

だけど僕は、ギルさんが時々脇腹に手を當てているのを知っていた。

偽ツヴァイちゃんにやられた脇腹の傷を。

もしかすると、痛みを相當我慢しているのかもしれない。

「フッ。この暖かさを生み出す俺にせいぜい謝するんだな、えーくん」

「あれ? なんか幻聴が聞こえるなあ」

「…………」

悲痛な顔をして、それきり黙ってしまうエヌ。

「いや、一応謝はしてる。ありがとうエヌ……」

「フハハハハ、そうだろうそうだろう。もうし溫度を上げても良いぞ」

今、僕らの周囲はエヌとミアの魔法によって、寒さをじないくらいの溫度に保たれている。

炎魔法と風魔法の応用とか言っていたけれど、僕にはいまいち魔法のことは分からない。

とにかく、二人のおかげで快適だというのだけは確かだ。

北の地は極寒だから、準備もせずに足を踏みれるとたちまち凍死してしまうとかいう話もあるくらいだけど、今のところその心配はなさそうだ。

「そういえばミア」

「何?」

「グルツおじさんはどうなったの? あの人も一緒に逃げなくて良かったわけ?」

「彼は別行よ。……きっと後で分かるわ」

「教えてくれないんだ。ミアのいじわる」

「気持ち悪いこと言わないでくれる? そもそも私は意地の悪いよ。そんなことはえーくんが一番知っているはずだわ」

「確かに。うっかり忘れてたよ」

空から降って來る雪が、僕らの周囲の空気にれ、溶けて消えた。

そういえば雪なんて見たのはいつ以來だろう。

……ああ、『弱者の牙(ファング)』の一件で北部の街に行ったとき以來だ。

リジェさんたち、元気にやってるかな?

軍部の人たちにひどい目に遭わされてなきゃいいけど。

まあ、人のことを心配しているような場合でも――ないのだろうけれど。

次回の更新は2月14日です!

    人が読んでいる<外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください