《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》さよならテオノトナタ その⑤

※※※

そうして僕はミアの部屋を追い出され、屋敷の中をふらふらと歩いて回った。

ふと顔を上げると、ケートさんが廊下を向こうから歩いて來るのが見えた。

彼もこちらに気付いたようで、おや、というような顔をした。

「こんなところで、どうしたんだね。部屋が気にらなかったかね?」

いてないと落ち著かないタイプなんですよ、僕」

「そうか。君、名前は?」

「名前ですか。みんなは親しみを込めてえーくんと呼んでくれていますけどね」

「……ならば、えーくん。時間があるか? し話をしようじゃないか」

「僕を通じてミアを説得しようっていうんですか?」

ケートさんは困ったように笑った。

「違うさ。ただ、君はあの子と歳が近いようだからね。ミアが向こうでどんな暮らしをしていたか知っているんじゃないかと思って」

おじさんたちから金を巻き上げ、狹苦しいアパートに住んでましたよ―――なんてことは言えない。

挙句の果てに僕みたいな変な男を拾ってしまったことが運の盡きでしたよ、なんて。

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「ま、まあ、僕の話せる範囲なら構いませんよ」

ケートさんは優しく頷くと、僕についてくるように促した。

※※※

「千年の時と共に、私たちジャギア族は魔法を基礎とした新たな生活インフラを構築した―――まあ、これは魔導王國も同じだろうがね」

屋敷の最上階、ジャギア族の住む地を一できる大きな窓のある部屋で、僕はテーブル越しにケートさんと向かい合って座っていた。

街並みは、人通りこそないものの、石造りの建が整然と立ち並ぶ姿は僕にも綺麗に見えた。

「生活インフラってなんです?」

「要するに、生活に必要な環境の基盤のことさ。水や火、食料の供給、溫度や度の管理、病気や怪我の予防、治療。私たちはこれらをすべて魔法で補っている。北の地にしては溫かいと思っただろう?」

言われてみれば確かに、牢屋にれられていたときから寒さはじていない。

「人の住みやすい環境が整ってるってことですか?」

「そうだ。千年前、我々の祖先たちがこの北の地を永住の地として選んだのは、魔法によって厳しい自然を克服できると考えたからだろう。それは魔法の力を過信しすぎた、うぬぼれにも似たような考えだったように私は思う……」

「でも現に、あなたたちはここで暮らしてるじゃないですか。魔法の力で」

「えーくん。私はこう考えている。千年前にジャギア族は獨立しておくべきだったと」

「獨立?」

「ああ。魔導王國に屬する部族としてではなく、ジャギア族の単一國家として」

「……難しい話をしないでくださいよ」

この人は何を言い出すんだろう。

だけど、このケートという初老の男に、僕はミアの面影を見たような気がした。

「北の地に追いやってもなお、魔導王國は私たちを管理下に置いておこうとしている。そこにの歪みが生まれ、ミアのような子を作り出してしまったのだと。それを防ぐためには、ジャギア族が獨立しておくしかなかった。しかしそれをしなかったのは、やはり、魔法の力を過信していたからだろう。魔法さえあれば、どのような困難でさえ乗り越えられる。だからこそ、自分たちから何かを勝ち取るようなことはしなくてよい、と。魔法に不可能がないと考えるのなら、その力を持って國を創るべきだったのだよ」

「つまりミアがああいう風になったのはジャギア族のせいだって言いたいんですか?」

「その通りだよ。そしてそれは、あの子の父親である私の責任でもある。ここに君を呼んだのはお禮を言うためだ。けない私に代わって、今まであの子を守ってくれてありがとう」

ケートさんは穏やかな笑みを浮かべ、僕に右手を差し出した。

無視するのも悪いなあと思って、僕はその手を握り返した。

「それじゃあ、ケートさんは僕らに協力してくれるんですか?」

「父親としてはそうしたい。だが、族長としてはそうするわけにはいかない。そして私は、ミアの父親である前にジャギア族の族長だ」

けない言い訳ですね?」

「笑ってくれて構わんよ。だが、族長としての立場から君たちにできることは可能な限り行おうとは思っている」

父親である前に族長――――か。

そんなだからミアはあんなじになっちゃったんじゃないのか?

「今あなたの話したことをそのままミアに言えばいいんですよ。そうしたらミアだってしは納得してくれますよ」

「父であることより族長であることを選ぶ私を―――いや、今までそうしてきた私に、ミアの父親としての資格はないだろう」

「……ミアがここを出て何年になるんです?」

僕の質問に、ケートさんは不可解そうな顔をした。

「もう六年にもなるが……それが何か」

「ミアはあなたの知っているミアじゃないと思いますよ。十分に大人だ。今まであなたが族長としてミアに接してきたのなら、今回もそうすればいい。父親と族長と、どちらにも徹することができないから、そこにミアも甘えているんじゃないですか? ……いや、すみません。他人の家のことに口出しをするような資格は僕にないんですけどね」

「十分に大人……」

「……え?」

ケートさんの様子がおかしい。

なんだか嫌な予がした。

「まさか、確認したのか?」

「か、確認? 何をですか?」

「ミアが大人になったかどうか、君が確認したのかっ!? がせたのかっ!?」

機を叩きながら勢い良く立ち上がるケートさん。

「あ、あのー、誤解があるようですが、僕は斷じてミアに何もしていませんよ」

「信じられるか! だから都會になんかやりたくなかったんだ、私は! 私の可いミアをっ!」

肩を震わせて怒っているのかと思ったら、ケートさんは泣いていた。

うわあ(ドン引き)。

ジャギア族がどうとか、魔導王國がどうとか、多分関係ない。

周りの人たちがこんなだからミアはあんなじになっちゃったんだよ……。

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