《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》さよならテオノトナタ その⑦

※※※

「まったく、この三人だけが殘るとは思わなかった」

森の中を駆けながら、エヌが言った。

ツヴァイちゃんとギルさんを置いてきちゃったから、僕とエヌ、そしてミアの三人で行することになってしまった。

「大人數の方が良かったかしら?」

「フッ、冗談はよせ。何ならミアと二人でも良かったくらいだぞ、俺は。ふはははは」

「……人選を間違ったみたいだね、ミア」

「全く同だわ。エヌ、今からでも遅くないからジャギア族の地へ帰りなさい」

「馬鹿なことを言うな。俺は地の果てまでもお前を追っていくぞ。えーくんだけにミアのを任せるわけにはいかんのでな!」

「どうかな? 試してみる?」

僕が言うと、エヌは口の端を歪めた。

「本気か、えーくん。お互いただじゃ済まんぞ」

「何も毆り合いをやろうってわけじゃないんだ。じゃんけんって知ってる?」

「じゃん拳? 拳法の一種か?」

「まあ、そんなところ。ミア、説明してあげて」

「分かったわ。いいかしら、よく聞いておくのよ、エヌ。グーはチョキに勝ってチョキはパーに勝ってパーはグーに勝つのよ」

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「……つまりは心理戦ということだな? よし分かった、かかって來るがいい、えーくん」

よし。

じゃあ早速―――。

「じゃん!」

「けん!」

このゲーム、実は必勝法がある。

相手が手を出すと同時に相手の手を把握し、それに勝てる手を瞬時に出すことが出來ればいいのだ。

そして、【即死(デストラクション)】で死に続け、視力が極限まで上昇しきった僕ならばそのくらいのこと朝飯前、余裕のよっちゃんだ。

―――そのはずだった。

「なん……だと……!?」

僕の出していた手はエヌと全く同じもの―――チョキだった。

「フハハハハハ甘いなえーくん!」

「な、何!?」

「お前は俺の魔法を忘れているようだ」

「エヌの魔法……!?」

そうか。

思い出した。

こいつの魔法は相手を意のままにる魔法。

それさえあればじゃんけんに勝利することなど簡単なんだ。

相手が自分に負けるよう作すればいいのだから。

「顔が冴えないなあ、えーくん。さっきまでの自信はどうした?」

「自信なんてものはもとより持ち合わせていないんでね。それよりも、今ので僕に勝てなかったことを後悔させてあげるよ」

僕はもう一度右手を前に出した。

エヌもそれに合わせるように右手を出す。

「ふん。やれるものならやってみるがいい」

「いくぞ、エヌ」

「來い!」

「じゃん!」

「けん!」

その瞬間、エヌが勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

僕の右手はパーを出していて―――エヌの右手は、チョキを出していたからだ。

「……!」

「フアハハハっ! 悔しかろうえーくん! しかし貴様が敗北したことに変わりはないのだァ―ッ!」

「どうかな?」

「……何?」

片方の眉だけをかし、エヌは僕を見下ろした。

「誰も(・・)、右手で勝負するなんて(・・・・・・・・・・)言ってないよ(・・・・・・)」

「なっ、き、貴様……ッ!」

僕の右手は確かにパーを出していた。

しかし―――僕の左手(・・)はグーを出していた。

「僕の勝ちだ、エヌ」

「ひ、卑怯な!」

「きちんとルールを確認しなかった方が悪い」

「お前なあ! いつか友達なくすぞ、絶対!」

「うっ、その言葉は普通に刺さる……」

もし僕に友達と呼べる存在が居ればの話だけど。

「二人とも、いつまで遊んでるの。周囲の警戒を怠らないで」

ミアが冷たい聲を上げた。

その様子に、僕は違和を覚えた。

「敵なの、ミア?」

「そうらしいわ」

「ふむ。何人だ? 俺に任せろ」

「相當多いわね。もしかすると、私たちが本だってバレちゃったのかも」

「あーあ、エヌが大きな聲をだすから」

「な、何!? 俺のせいだというのか!?」

「そこまでだ、抵抗分子!」

気づけば僕らは武裝した兵士たちに取り囲まれていた。

十數の銃口が僕らを正確に狙っている。

「お父様も役に立たないわね、全く」

「……ケートさんが囮作戦をやってくれたから、このくらいの數で済んだのかもしれないよ」

「そんなこと分かってるわよ」

どっちだよ。

相変わらず変なだ。

「とにかく問題はこの場をどう切り抜けるかだ―――とはいっても、俺に任せてくれるのならば、雑兵の集団など瞬殺してやろう」

「あ、そう? じゃあ任せる。僕はあんまり疲れたくないし」

「お、お前……ふん、まあいいだろう。見せ場を奪われたと後悔しても遅いぞ」

エヌが僕らの前に出て、兵士たちと対峙する。

一瞬、迫した空気が周囲を覆った。

兵士たちの姿がまるで霧のように消え去った(・・・・・)のは、その時だった―――。

「魔法か……!?」

エヌが呟く。

しかし僕はこの現象―――人間が知らぬ間に消失(・・)してしまうという現象を知っていた。

それを起こすことのできる男を知っていた。

「たった三人に十數人で襲い掛かるのはいささか不公平(・・・)な気がしたからね。余計なことかもしれないけれど、手を貸させてもらったよ―――と言っても、ボクが手を貸したのはこれもまた些か不公平(・・・)なことかもしれないけどね」

木の影から聲がする。

僕の記憶が呼び起こされる。

「お前は……」

「それなりに派手な登場になったみたいで、ボクとしては幸運だったかもしれないね。その善し悪しを無視すればの話だけど」

僕らの前に現れたのは痩せた、小柄な、白髪の年。

隣でミアが息を呑む音が聞こえた。

僕は一歩前へ出て、年と向き合った。

「シロ……なの?」

「そうだよ。久しぶりだね、えーくん」

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