《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》さよならテオノトナタ その⑨
※※※
シロの助力もあり、僕らは合流地點となっている町に辿り著いた。
町―――というか、村かもしれない。そのくらいの規模だ。
遠くにシュルルツの姿が見える。
この國の首都たるシュルルツの、全方位を分厚い壁で囲まれた姿が。
それは見る者すべてを威圧しているようだった。
……いや、そんなことは、今の僕にとって関係ない話だ。
この町はもっと重要な要素を含んでいた。
「あのさミア」
「どうしたの、えーくん」
「一つ聞いておきたいことがあるんだけど」
「何? 私の知っていることなら何でも答えてあげるわよ」
「ここは―――僕の記憶が正しければ、僕が良く知っている場所なんだけど」
「それはそうでしょうね。なぜなら、この町にはあなたの実家があるの(・・・・・・・・・・)だから(・・・)」
そう、抵抗勢力の合流地點に選ばれたこの町こそ、僕が生まれ育った(と言っても地下に監されていただけなのだけれど)町だった。
「どうしてこんなところを指定したの? 僕に対する當てつけだとしたら悪趣味だし、そもそもそんなことをされる心當たりがないんだけど」
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「安心して、えーくん。何も私はあなたに意地悪をするつもりはないのよ。ただ、抵抗勢力の各幹部が集まるのに一番都合のいい場所がたまたまここだっただけなの。もしあなたを嫌な気持ちにさせてしまったのなら謝るわ。それでも許せないのなら、私のパンツの一枚や二枚見せてあげる」
「いや、別にどうってことはないけど。それから後でパンツは見せてもらうけど」
「……求に素直なのね、えーくん」
「君は知らないかもしれないけど、僕は求が全で歩いているような人間を自稱しているんだよ」
思えばハリシに出會ったのもこの町だった。
そして、両親の死をバラバラにしたのも、慣れない拷問をしたのも。
……すべては思い出だ。それが良いか悪いかは置いておいて。
はあ。
やれやれ。
まったく。
なんて、僕が深く息をついた瞬間、小さな人影が勢いよく僕らの前にり込んで來た。
「今、下著の話をされていませんでしたですっ!?」
「―――イチゴさん!」
そう、この人《へんたい》を見間違えるはずがない。
下著と聞いて飢えた野生のように目をぎらつかせるこのこそ、『瓶の中の小人(ホムンクルス)』の特攻隊長であるイチゴさんだ。
「あなたがイチゴ・ナナハさんね」
「そうですそうです。『瓶の中の小人(ホムンクルス)』、義によって助太刀いたしますですよ!」
しい敬禮をキメながら、イチゴさんが元気な聲で言う。
「いやあ、イチゴさんが來てくれると安心です」
「ふっふっふ、変態仲間の窮地には変態が駆けつけるものでございますです。えーくんさんがお呼びなら、私は地の果て海の果て、パンツのレース模様の果てまでも追っていきますですよ!」
「うーん、それは意味が分からない!」
「でございますですよねー!」
わははははは。
僕とイチゴさんはひとしきり笑いあった。
そしてミアは、そんな僕らを一歩引いたところから完全に冷め切った目で眺めていた……。
「ちょっと待ってよミア、そんな顔されるとまるで僕らが変態みたいじゃないか」
「まるで、じゃなくて変態だわ」
「うわーっ、言われちゃいましたですねえーくんさん」
「でも事実そうだからしょうがないですよね!」
「ねー!」
「なんだかムカついて來たわ。とりあえず一度あなたたちの周囲を火炎魔法で焼け野原にしていいかしら」
「お、落ち著けよミア。ちょっとした冗談だよ」
ミアの目はマジだった。
僕は慌てて彼をなだめた。
そんなミアの背後に、一目見て好青年と分かるような、若い男が現れた。
「やあ、なんだか騒がしいな」
「リジェさん!」
「久しぶりだなえーくん。元気そうで何よりだ」
そう言ってリジェさんは僕に右手を差し出した。
その右手を握り返しながら、僕は答える。
「リジェさんこそ。あれから大丈夫でしたか?」
「君たちの援助もあって、『弱者の牙(ファング)』の勢力は完全に立て直したよ。それに、周囲の反分子も巻き込んでさらに強固な組織になった。……王國を倒す準備は整ったというわけだ」
「……らしいですね。今日はそのための會合ですから。ところで、リジェさん一人で來たんですか?」
「ん? いや、まさか。心強い護衛を一人連れて來たよ」
「護衛?」
「あたしのことだにゃーん!」
リジェさんの影からピンクの髪のが姿を見せる。
こ、この焼けしそうなキャラは……。
「…………」
「あれれー? あたしのことわすれちゃったにょろ? あたしだよあたし! 『弱者の牙(ファング)』ナンバーツーの、マニー・クインだよう!」
「……いや、覚えてますよ。覚えてますけど、リジェさん。どうしてこの人連れて來たんですか」
「うん? ああ、優秀な仲間も多くてね。俺とマニーがいない間は頑張ってくれているんだ。心配はいらない」
「そうじゃなくて、ええと」
イチゴさんに続きマニーさんまで來ちゃうと、キャラが大渋滯しちゃうような。
「よう、俺は『安息』のミジャだ! 援助の借りを返しに來たぜ!」
しゃがれた男の聲に振り向くと、右目に深い傷のある男が立っていた。
「……えーと」
「おお、えーくんじゃねえか。あの時は世話になったな。俺は自分が認めた相手には盡くすタイプだぜ。今回も信用してくれ」
えーと、この人、誰だっけ……?
『安息』……?
確かにそういう組織もあった気がするけど……。
いかん、ヒメリアさんのことはばっちり覚えてるのに。
あのスタイルの良い人のお姉さんの姿はすぐに思い出せるのに。
この、いまいちキャラの薄い男のことは――――あんまり思い出せない。
ごめんね、ミジャさん……あれ、ムジャさんだっけ?
次回の更新は3月1日です。
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