《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》赤錆の非リア その⑤

「あなたの言いたいことは分かりました。なら、僕があなたを殺しても何も問題はありませんね?」

「か、構わない。む、むしろ、むところ。す、既に準備は終わっている」

アイさんの右手から空になった注が転がり落ち、乾いた音をたてながら地面を刎ねた。

恐らくは『強化薬(ティルフィング)』のった注だったのだろう。

僕の目の前に立ちはだかるの人の、雰囲気が変わったような気がした。

「気にらないから、むかつくから、邪魔だから……人殺しの理由は単純な方がいい。複雑になると、判斷が鈍るだけだから」

「お、お前は敵だ!」

ひゅん、と何かが空気を切り裂いた音がした。

同時に僕の頬が切れ、が噴き出した。

これは……【切斷(キル・ユー)】!?

「どうしてあなたがこのスキルを……!?」

「け、研究の果だ」

嫌な予がしてその場を飛びのくと、さっきまで僕が立っていた場所に大が開いた。

これじゃ【貫通(メーク・ホール)】そのものじゃないか。

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「研究って、まさか」

「つ、ツヴァイの戦闘データや生データ、あらゆるデータを検証しより改良された形で私は私自を改良した」

アイさんの顔中に管が盛り上がるのが見えた。

「ツヴァイちゃんと同じ力、同じスキルを得たってことですか?」

「お、同じ力じゃ、ない。私の方が優れている存在なんだから」

「……謙虛な人の方が、僕は好きですね」

「そ、そんなことは訊いてない!」

再び、空気を切り裂く音が僕を取り囲んだ。

一旦下がろうと後ろへ飛んだ瞬間、背中に鋭い痛みが走った。

斬られた……!?

「僕の背後に罠を仕掛けてたんですか? 回りくどいことをしますね」

「し、仕掛けていたつもりもない。あなたのきに合わせているだけ」

「僕のきに合わせる?」

何を言っているんだろう。

とりあえず僕はアイさんの橫に回り込もうとした――が、嫌な予がして止めた。

「……う、かない方が賢明」

右腕の皮にひりつくようながあった。

あとしでも橫にけば、僕の右腕は真っ二つになるだろう。

ほとんど百発百中じゃないか。

こうなると、最初から僕の周囲に【切斷(キル・ユー)】を仕掛けていたのでなければ、考えられる可能は一つ。。

「仕掛けていたつもりはない――ね。よくそんなことが言えますね? どっちみち同じことじゃないんですか? 僕のきを先読みして(・・・・・・・・・・)攻撃するのなら」

「そ、そのままじっとしているべき。すべてが終わるまで」

「すべてが?」

「あ、あなたたち反軍が全滅するまで。あなたをラフィ様の元へは行かせない」

「そんなに長い間は待てませんね。大、僕は一歩もかなくてもあなたを攻撃できるんだ」

「そ、それも無駄。あなたのスキルは――いいえ、正確にはこの世に存在するスキルによる攻撃は私たちの前では無効化される。こ、このことはマショウとの戦闘で分かっているはず」

「理屈は分かりませんがそうらしいですね」

「だ、だから、死にたくなければあなたはくべきじゃない。たとえあなたのスキルがあったとしても、私の先読みの力は破れない」

「それはどうでしょう。僕は今まで、あなたのように言う人を何人も殺して來たんですよ」

時間はないんだ。

こうしている間に、みんなが死んでしまうかもしれない。

あの人たちは、死んでしまうとそれっきりなんだから。

だけど僕は――違う。

だからく。

「!」

先読みされようとスキルを無効化されようと関係ない。

僕が何度死のうが関係ない。

脳が限界を迎えようが関係ない。

ただ、僕以外の誰かを死なせないために―――あれ?

僕は何を考えてるんだ?

さっき、殺すのに理由は要らない、なんてことを言ったばかりじゃないか。

え……?

に刺すような痛みが走り、僕は我に返った。

見ると、僕の両手両足のみならず、中に出來た切り傷からが噴き出していた。

「……半殺しってわけですか?」

「そ、その通り。あなたは、殺した方が(・・・・・)面倒なことになる」

対策は萬全ってわけか。

僕は心舌打ちした。

「だったら話は早い。あなたが僕を殺す気がないのなら、むしろ都合がいい」

「な、何を」

「僕が痛みにさえ耐えれ(・・・・・・・・・・)ば問題ないってことで(・・・・・・・・・・)しょ(・・)」

が切り刻まれるのを無視して、僕はアイさんの方へ歩みを進めた。

「ば、馬鹿な、なぜそこまで……」

「簡単なことですよ。僕がやらないと誰もやらないからです」

馬鹿な、という表現は正確だと思う。

文字通り馬鹿なことをやっている自覚はある。

こんなこと、僕以外には絶対誰もやらないだろう。

僕は、もう目の前に迫ったアイさんの顔に手をばした。

「!」

―――同時に、僕の右腕が地面に落ちた。

切り落とされた、と言った方が正しいかもしれない。

「よ、余計なことをするから。けば苦しくなるだけなのに」

両足が、糸が切れたようにかなくなる。

ダメージが許容量を超えたのだろう。

そのまま僕は地面に倒れこんだ。

「……っ」

「だ、大丈夫。すぐには死なない。あ、あなたの仲間たちが全滅するくらいの時間は十分に生きていられる。そ、そうなれば私が治療してあげる」

「そんなの冗談じゃない!」

【切斷(キル・ユー)】を放ってみたが、案の定アイさんには通用しなかった。

から抜けていく。

このままだといずれ死ぬ。

だけど恐らく、そのいずれ(・・・)というタイミングは永遠にやってこないのだろう。

「か、に力をれ過ぎない方が良い。余計に痛みが増すだけだから」

「アドバイス、どうも……」

僕を倒すために殺さないなんて方法、想像してなかった。

このままじゃ本當にアイさんの作戦通りになってしまう。

助けを呼ぼうにも信魔法はジャミングされていて使えないし、そもそも呼んでも來てくれる人なんて心當たりがない。

あーあ、都合よく誰かがこの場をなんとかしてくれないかなあ。

なんてことを考えた瞬間、アイさんの元が切り裂かれ、が飛び散った。

アイさんは音もなく仰向けに倒れる。

……まさか僕、ここにきて新しい力に目覚めた的なアレか?

それとも、僕の気迫に押された的な方だろうか。

「なんか、的外れなことばかり考えているようだけど、多分全部勘違いなんだよ、お兄様」

呆れたような聲と共に、僕の背後(っていうか倒れてるから足元)の方から足音が聞こえて來た。

「……ツヴァイ、ちゃん……?」

「べ、別にお兄様を助けに來たんじゃないんだよ。作戦が遅れないように監視しに來たんだよ。勘違いしないでしいんだよねっ」

「突然のツンデレ!?」

いや、何にせよ助かった。

このままだと完全に手詰まり八方塞がり四面楚歌ってじだったから。

ツヴァイちゃんは僕を蔑むような目で見降ろしながら、片足だけで用に靴と靴下をいで足になると、僕の目の前に足先を差し出した。

「あーあ、そんなところに這いつくばったりなんかして、まったくけないお兄さまなんだよ。まるで野良犬みたいなんだよ。ほら、犬は犬らしく、謝と復讐の気持ちを込めてあたしの足をなめるんだよ」

舐めた。

「ぺろっ」

「ぎ、ぎゃああああああああっっ!? 全く躊躇しないなんてこの人頭おかしいんだよ! 不潔なんだよ! プライドのかけらもないんだよ!」

「ふっ、殘念だったねツヴァイちゃん。君が今僕にはいた暴言全て、僕のコピーたる君にもそのまま當てはまるのさ。つまり君は僕を貶めれば貶めるほど自分を貶めることになるんだ」

「……お兄様とあたしは別の人間なんだよ。なくともあたしには年下のの子の足を舐める趣味はないんだよ」

「……実は僕にも無いんだ」

「じゃあなんで舐めたんだよ……」

「舐めろって言われたから……」

「だったらせめてあたしがこの手でとどめを刺してあげるんだよ。さあ、どうやって殺してしい、お兄様?」

「できれば僕の千切れた右腕を元に戻して、中の傷も治してしい。それで最後にニヒトを倒したら、いつでも殺してくれていいよ」

「……急に真面目な話をされるとあたしも興醒めなんだよ。まあ、今はその真面目さに免じて見逃してあげるんだよ」

そう言うとツヴァイちゃんは地面に落ちていた僕の右腕を拾い上げ、僕の肩の辺りに置いた。

「これで繋がった、とか言わないよね」

「ちょっと黙っててほしいんだよ。ちゃんと治してあげるからさ」

ツヴァイちゃんが両手を僕の方に向ける。

回復魔法をかけてくれるらしい。

「……ど、どうして、私たちを裏切るような真似を……」

アイさんのうめき聲に、ツヴァイちゃんは骨に嫌な顔をした。

「裏切ったのはあなたたちの方なんだよ。どうして敵の側についちゃったんだよ」

「そ、それは、違う。私たちの目的――能力者を凌駕する計畫に準じたまで」

「そんなの、あなたたちの勝手な都合なんだよ。大人のくせに自分に正直すぎたんだよ、あなたたちは」

次回の更新は3月13日です!

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