《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》赤錆の非リア その⑦
「能力者や魔法使いに反を持っている割には、軍部のやり方に迎合するんですね? 矛盾してるんじゃないですか? ニヒトはあなたの嫌っている、能力者優位の制を維持するために生きている人間ですよ」
「だから、壁は解除してあげるって言ってるんだよ。私だって軍部に魂まで売ったわけじゃないさ。ただ、君との決著は――実験の結果がどうなるかを、研究者として最後まで見屆けておきたかっただけだよ」
「実験、ですか」
「そう、実験だよ。私にとっては君たちがこの國を壊そうとする試みさえも実験の一つに見える。個人の意思が、どれほどまで大きな結果を生み出すかって実験だよ」
「それをあなたは傍観者のように眺めているだけですか?」
「所詮私はスキルも魔法も使えない凡人(モブ)だからね。この世界(・・・・)においては、君みたいに特異な力――それも、群を抜いた力(チートスキル)を持っていないと中心人(・・・・)にはり得ないんだよ。なろうとしたってね。もちろん、それだけの力があったとしても、誰にも気づかれることなく埋もれていくことだってある。いいかいえーくん。私は好きで傍観者をやっているわけじゃないよ。私みたいなのはただ見ている(・・・・・・)ことしかできないのさ(・・・・・・・・・・)」
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「……?」
一何が言いたいんだ?
分からない。
いや、分からなくても良いのかもしれない。
今の僕がやるべきことはラフィさんに壁を解除させることだけなんだから。
「お喋りにはもう飽きたんだよ。さっさと話を進めてしいんだよ」
ふいにツヴァイちゃんが口を開いた。
僕はちょっとだけ驚いて、彼の方を見た。
「ごめんごめん、つまらなかったかな?」
おどけたように笑いながらラフィさんが答える。
「……ツヴァイちゃんの言う通りですよ。もう十分でしょう。早く壁を取り除いてください」
「はいはい。まったく、三年ぶりだっていうのに緒もへったくれもないねぇ」
「緒がないっていうのはあなたも一緒でしょ、ラフィさん」
「言い得て妙だね」
本當につかみどころのない人だ。
この人が金髪巨じゃなかったらイライラして殺していたかもしれない。
「時間稼ぎをしているわけじゃないんですよね?」
「當たり前だよ。私はただ、君たちに私の思いを聞いてもらいたかっただけなんだから。だけど、それももう限界みたいだね。さあ、壁を取り除こう」
ラフィさんは立ち上がると、部屋を出た。
僕らがその後を追うと、ラフィさんはちょうど所長室の扉に手をかけたところだった。
「そこに壁の制裝置があるんですか?」
「もちろん。そもそも、この研究所に裝置を用意しておけば、いずれ君たちがここに來てくれるだろう? ミアちゃんもそろっていればもっと踏みった話もできただろうけどねー」
「踏みった話?」
「だから、世界を壊した後の話だよ。あの子は一何を考えているんだろう。このままだといずれ大変なことになるような気がするんだ、私は」
「そう思うなら、ラフィさんも僕らの味方をしてミアを助けてくれればいいじゃないですか」
「殘念ながら私はそこまでできた人間じゃないんだよ。私たちの敗北が確定した今でさえ、力を持つ人間への憎悪は微塵も揺るがないからね。だけど、こんな話はもううんざりなんだろ? とりあえず、ここで待っていてよ」
「……中にっちゃダメなんですか?」
「見られて困るようなものはないけど、ついて來ても君たちに出來ることはないだろうからねー。まあ、約束は守るよ。壁は解除してあげる。だけど……その後は、くれぐれも諦めずに頑張ってね」
「頑張る?」
何をだろう。
僕は基本的に、頑張るとか努力するとかいう言葉が大嫌いなんだけど。
「それから、これね」
「なんですか、これ」
ラフィさんが僕に手渡したのは、一本の注だった。
『強化薬(ティルフィング)』に見えなくもない。
「君の能力を解析して作り上げたものだよ。もし君がこの世界に絶しきってどうしようもなくなった時に使うといい。本當はいつか私が使う予定だったんだけど、君にあげちゃおう」
「それは……どうも」
一何をくれたんだ?
ここまで來て毒薬ってことはないだろうし。
うーん、謎だ。
「それじゃまあ、この辺でお別れだね」
そんなことを言い殘し、ラフィさんは所長室へっていってしまった。
直後、何か機械が作するような重低音が響いたかと思うと、同時に銃聲が鳴った。
「……部屋の中から聞こえたんだよ」
ツヴァイちゃんが呟く。
「僕もそう思う。何があったんだろう」
「お兄様の、分かっているのに分からないふりをするところ、あたし実はそんなに好きじゃないんだよ」
「ごめん。だとしたら――」
「うん。ラフィ様は、多分……」
ツヴァイちゃんの言葉を待たず、僕は所長室のドアを開けた。
そこには、見慣れない大型の機械と―――頭からを流して倒れるラフィさんの姿があった。
その右手には拳銃が握られている。
「最初からこうするつもりだったんだ、この人」
「死ぬ気だったってこと?」
「そうだろ。軍部の方に付いたときから、いつかはこうして死ぬつもりだったんだ……」
「どうして?」
「え?」
「どうして死ぬつもりだったんだよ? だって、死んだら死んじゃうんだよ?」
「そんなこと僕に訊くなよ。それより、この機械が壁を制してたんだろ。ミア達と連絡がつくところまで行こう。ここは魔法がジャミングされて……」
「話をすり替えたね、お兄様」
「…………」
め、目敏い。
「別に気を使うことは無いんだよ。あたしはラフィさんやマショウが死んだことに揺なんてしてないんだよ。ただ―――どうして死んじゃったのかなって、思っただけなんだよ」
「簡単な話だよ、ツヴァイちゃん。僕たちがこの人に勝ってしまったら……この人の生きる意味を、僕に勝利するという目標を奪ってしまったから、だと思うよ」
もちろんラフィさんが本當は何を考えていたかなんてことは、僕には分からない。
問い質そうにもラフィさんは脳みそをぶちまけた狀態で床に倒れてしまっている。
自分から僕らに手を出しておいて、思い通りにならなければ死んでしまうなんて、本當に自分勝手な人だ。
「ねえお兄さま」
「何?」
「あたしさ、ラフィ様に実験道としか見られていなかったかもしれないけど……ラフィ様がくれた力でお兄様を助けられるんだって思うと、私の人生も悪いことばかりじゃなかったような気がするんだよ」
「僕だって、『強化薬(ティルフィング)』がなければ今頃どうなっていたか分からないし……そう考えると、何がしたかったんだろうね、この人は」
僕は言わぬ死を見下ろした。
もしかすると、ラフィさん自何がしたいかってことが分からなくなってしまったのかもしれない。
だから、最期は憎悪にだけを躍らせて、仲間と共に死ぬ未來を選んだ。
そういうことなんですか、ラフィさん?
そして――それでよかったんですか?
※※※
次回の更新は3月17日です!
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