《外れスキル『即死』が死ねば死ぬほど強くなる超SSS級スキルで、実は最強だった件。》雑魚の地球儀 その②
※※※
「それは大変だったねえ、えーくん」
「え、ああ、うん」
気が付けば僕はシロやエヌに囲まれていて、シュルルツへ突するための前線拠點へやって來ていた。
し距離が離れているとはいえ、ここからはシュルルツを守るように展開されたの大群がよく見える。
「君がむなら、ミア・ミザルとの記憶をボクが上書きしてあげよう」
「……いや、僕は遠慮しておきます」
「フッ、まったく。君は冗談も通じないのかい?」
前髪を人差し指でりながら、爽やかな口調でシロが言う。
僕は全に鳥が立つのをじた。
「……………」
「あれ、どうしたのエヌ。さっきから黙ったままで」
「えーくん。お前、この作戦が終わったら俺がこの手で殺してやるからな」
うわ。
マジギレしてる。
なんて嫉妬深い男なんだ……。
「ミア・ミザルと何があったのかについて深く聞くつもりはないから、必要事項だけ確認させてもらおう。作戦はきちんと把握しているのかい、えーくん?」
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「もちろんだよ。要するに、數グループによる同時攻撃だろ。ツヴァイちゃん軍団に関してはグルツおじさんが何とかしてくれる……そう聞いているけど」
リジェさんとマニーさんが率いる『弱者の牙(ファング)』のグループ、イチゴさんとハイル君の『瓶の中の小人(ホムンクルス)』のグループ、そして僕らの合計3グループが、敵軍勢の壊滅と同時にシュルルツへ攻めこむ。
その間にレネン君率いる工作部隊がシュルルツのエネルギーラインを麻痺させる。
要は、當初の予定通りってわけだ。
問題はグルツおじさんがどんな手を用意してくれているのかってところだけど……?
『全反軍に告げます』
突如、僕の頭の中にミアの聲が割り込んできた――いや、僕だけじゃない。周りを見ると、エヌやシロもそれぞれに反応していた。
「全に信魔法を? ミアってそんなことできたんだ」
「知らなかったのか? この戦いが始まってから、ミアは全域に対しこうして指示を出して來たんだ」
「それは凄いね。とんだかくし蕓だよ」
『これよりシュルルツ周辺に対し殲滅攻撃(・・・・)を行います。各自、十分に注意してください。繰り返します……』
ミアの聲が連絡事項を復唱する。
同時に、どこから空気を切り裂くような音が聞こえて來た。
「……あれは何だ?」
空を見上げながらエヌが呟く。
その視線の先には、空中に浮遊する三角形のの編隊があった。
三角形の一団は徐々にこちらへ向かってくる。
「あの奇妙なが、ミアの策なのか……?」
僕が呟いた瞬間、風切り音と共に編隊が僕らの頭上を通り過ぎ―――僕らの眼前で激しい発が起こった。
「伏せろ、えーくん!」
シロに覆い被さられ地面に倒れこんだ僕の目には、発に巻き込まれ試算していく數百のツヴァイちゃんが焼き付いていた。
何が、起こったんだ?
あの三角形の飛行が何かやったのか?
『……撃機というのよ、えーくん』
「撃機?」
『要するに、発を投下するために作られた空飛ぶ機械。それが、敵の防衛隊に攻撃を行ったの。そっちに被害はないわね?』
「そ、そりゃ、僕らは無事だけど、でも」
でも。
こんなに圧倒的な力なんて。
目の前でツヴァイちゃんが――僕の良く知っているの子の同じ姿をした人間が、臓をまき散らしながら発四散する姿なんて見たくなかった。
『グルツおじさんは、撃機の部隊派遣を要請するために外國へ行ってもらっていたの。何とか間に合ったわね』
「……やり過ぎじゃないのか?」
『私たちの被害を抑えるためにはこの方法しかなかったの。そうしなければ、死んでいたのは私たちの方よ』
「それはそうだろうけど」
『さあ、えーくん。シュルルツへの突破口は開いたわ。最後の命令よ。ニヒトを倒して』
「……分かった」
僕はシロを押しのけ、立ち上がった。
発の煙と、の焼けたような臭いがした。
三角形の飛行――撃機と呼ばれたあのは、シュルルツ上空を旋回している。
※※※
違和はあった。
あの偏執的な男(ニヒト)が仕掛けている罠が、ツヴァイちゃん軍団だけだとは思えなかった。
僕はそれを、撃機が落とした弾(・・・・・・・・・・)が(・)、シュルルツ上空で靜止《・・・・・・・・・・》している(・・・・)のを見た瞬間に気付くべきだったのかもしれない。
「ふっふっふ、えーくん。ニヒトとやらを倒しミアに認めてもらうのはこの俺だということを先に言っておこう!」
シュルルツ突直前のことだ。
ミアの號令で、首都攻撃隊の三部隊は同時に行を開始した。
僕とエヌ、シロの三人は、ツヴァイちゃんたちのを踏み越えながら走っていた。
目的地はシュルルツり口の巨大な門だ。
撃の影響か、門は既に半壊していた。
「そこまでミアに拘るのも妙だよ。君とミアってどういう関係なの?」
「ふん。ミアは俺にとって半のようなものだ」
じゃあ僕は、半分エヌとキスしたようなものか。
うわ、気持ち悪くなってきた。
「全く、君たちの張のなさには驚かされるよ。これから死地に向かおうというのにね」
呆れたようにシロが言う。
「あれ、君ってそんなこと言うようなキャラだったっけ?」
「こう見えてもボクは政府直轄機関のリーダーをやっていたわけだからね。戦闘の心得というものは多なりともあるつもりだ。もっとも、君に勝てなかったボクの言うことだから信憑は低いかな?」
「いや、そんなつもりは……」
「冗談さ。だが、気を引き締めるに越したことはない。何せここから先は敵の本拠地―――」
「フハハハハハ、一番乗りはこの俺だッ!」
シロの制止も聞かず、エヌがシュルルツの門をくぐって行く。
異常が起こったのは、そのときだった。
門をくぐりシュルルツへったはずのエヌのは、そのまま靜止してしまった。
ちょうど、瞬間だけを切り取った畫像のように。
シュルルツにった瞬間固定(・・)されたように。
「【抹消(ホワイト・アウト)】―――っ!」
間一髪シロの能力が発し、僕らはエヌの二の舞を避けた。
そして、シロのこの能力こそが、対ニヒト用の切り札だった。
つまりは、シロの展開するスキルの結界でニヒトの『固定』という能力そのものを無効化し、弾戦に持ち込むという作戦だ。
……だけど。
「まさか、シュルルツ全にニヒトの能力が展開されてるなんて……」
「し見積もりが甘かったようだね。この様子じゃ他のチームも危ないかもしれないな」
「どうする? 君の能力でどうにかならないの、シロ?」
「殘念ながら無理だ。能力を消し去る空間を作ることでスキルによる攻撃を事前に防ぐことは出來ても、既に固定されてしまった人間を元に戻すことは出來ない。今の、結界を張ったこの狀態だとボクもスキルを使えないからね。能力をけた人を一人ずつシュルルツの外に出せば不可能じゃないかもしれないけど―――それよりも」
「ニヒトを殺した方が早い、か」
「そういうことさ」
ますます時間との闘いになって來た。
それにしてもエヌ――こいつは、獄してから今まで活躍する機會がなかったよな。
元來不運な男なんだろう。同する。
「だけど、ニヒトがどこにいるかなんて分からない……」
「君らしくないね、えーくん。探しもしないでそんなことを言うのかい? 口では弱音を吐きながら最後まで勝利を諦めない、そういう抜け目のない男だと思っていたけど」
「買いかぶりすぎだよ。大、みんなそうだ。みんな僕を買いかぶってるんだよ。あんまり期待され過ぎると、いい加減僕も疲れちゃうぜ。――まあ、とりあえずは中央省庁區へ回ってみる? この様子だと、敵もいないみたいだしさ」
僕が歩き出すと、不意にシロから肩を摑まれた。
「あまりボクから離れないでくれ。能力の範囲外になる。……ただでさえニヒトのスキルは強力なんだ。あまり離れられると、無効にできない」
「……今は君に従うよ。元リーダーさん。だけど、そんな風で実戦は大丈夫?」
「大丈夫さ。萬が一の場合は、ボクにも策がある」
怪しく笑うシロ。
その笑顔からは、嫌な予しかしなかった。
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