《【書籍化決定】拾ったギャルをお世話したら、〇フレになったんだが。》第1話 ギャルと雨

第1話〜第5話までは短編とほとんど同じです。

第6話から、続きになります。

俺は今、人生の岐路に立たされていた。

場所は古びたアパート。

俺の一人暮らしをしている部屋の橫に、濡れ鼠になっているの子が一人、膝を抱えている。

染めているのか、明るい茶の髪。

見たところ、うちの高校の制服だ。でも2年では見たことない。3年か1年だろう。

刻一刻と雨足が強くなる。

遠くで雷が鳴り、その拍子にの子はをビクつかせた。雷が怖いんだろうか。

さて、ここで俺には2つの選択肢がある。

1つ。無視して部屋にる。

2つ。部屋にれる。

1つ目を選択した場合、俺の良心がゴリゴリに削られるだろう。

2つ目を選択した場合、不審者扱いされて俺の社會的地位が死ぬ。

前門の虎、後門の狼。

デッドオアダイ(死ぬか死ぬか)。おい、死ぬしか選択肢がないじゃないか。

考えること數秒。

──俺は、1つ目を選択した。

うん、無理無理。社會的に死ぬより、良心が削られた方がマシだ。

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今見たことは忘れよう。さっさと風呂はいって……。

「くしゅんっ」

「…………」

「くしゅんっ、くしゅんっ」

「……………………」

「くしゅんっ。……ぅぅ……」

気が付くと俺は急いで部屋にり、タオルとブランケットを手に戻った。

の子の肩からブランケットを羽織らせ、びしょ濡れの髪をタオルで拭く。

「ぁぅぁぅぁぅ……?」

「大丈夫っすか? 立てる?」

ゆっくり顔を上げるの子。

綺麗な空の瞳が俺を見つめ、思わず息を飲んだ。

いや、瞳だけじゃない。まるで蕓家が造形したような端正な顔立ちと儚げな雰囲気に、柄にもなく心臓が高鳴った。

良く言えば絶世の

悪くいえば絶世のギャル。

とにかく可い。こんな子がいるなんて。

數瞬の沈黙。

直後、の子は安心したのか、目から涙が零れた。

「……うぅ……うぇぇん……!」

あー、ダメっぽいなぁ。

とりあえず髪を拭いてやりながら、泣き止むのを待った。

の子が泣き止んでから部屋に上げ、とりあえず風呂にれた。

その間、制服はドラム式洗濯機にれて洗濯と乾燥をさせる。

申し訳ないが、乾くまでは俺の服を著てもらおう。

今日の夕飯はオムライスにコンソメスープ、キャベツの千切りだ。コンソメスープなら冷えたも芯から溫まるだろう。

2人分の夕飯を作り終えたところで、浴室の扉が開いての子がって來た。

置いといたドライヤーを使ったのか、フワッとしたウェーブの掛かった栗の髪が揺れた。

ティーシャツとハーフパンツを渡したつもりだが、サイズが合わなすぎて全的にダボッとしている。

けど、見てくれが良すぎてオーバーサイズの服を著たストリート系にも見えるな。

「あ、えと……」

「ん? どうした?」

……? ハーフパンツを押さえて、一……あっ。

「腰周りが合わなかったら、端っこ結んでいいぞ」

「あ、ありがと……っす」

の子は背を向けてゴソゴソと結ぶ。

それにしても、隨分と綺麗な聲だ。思わず聞き惚れてしまうくらい。

の子はズボンの裾を結び、改めてこっちを見た。

目が自然と食卓に向けられると、可哀想なくらいでかい腹の蟲が鳴いた。

「どうぞ。君の分も作ったから」

「え……い、いいんすか……?」

「うん。それに、そんな大きな音を聞かされてダメって言えないよ」

あ、お腹押さえて顔を真っ赤にした。

やば。今のはデリカシー無かったな。反省。

「さ、さあ食べよう。俺もついさっきまでバイトで、腹減ってるんだ」

「……うす……」

の子が対面に座り、ちょこんと正座する。

俺が手を合わせるのを見て、の子も手を合わせた。

「いただきます」

「い、いただきますっす」

スプーンを手に、おずおずとオムライスを食べる。

と、目を見開いてガツガツとかき込んだ。余程腹が減ってたんだろう。

俺も自分の分のオムライスを食べる。

うんうん、いい出來だ。卵もふわとろだし。

「まぐまぐ。……ぅ……まぐ。ぐずっ……まぐ、まぐ……」

の子が食べながら涙を流す。

とりあえず今はそっとしておいてやろう。聞かない方がいいこともある。

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