《【書籍化決定】拾ったギャルをお世話したら、〇フレになったんだが。》第5話 ギャルと提案

ふと顔を上げると、もう二時間も経っていた。流石に疲れたな。

「ふぅ……ん?」

「あ、センパイ。お疲れ様っす」

え? 清坂さん?

いつの間にかソファーに座っていた清坂さんが、暇そうにスマホを弄っていた。

「寢たんじゃなかったの?」

「それがその……ちょっと々思い出しちゃって、寢付けなかったというか……」

あー、あるある。わかるなその気持ち。

俺もたまにそういう時あるし。

「でも寢ないと、明日に響くでしょ?」

というか俺、よく考えると徹夜してるから、今だいぶ眠いんだけど。

「そうなんですけど……あっ、センパイ。ちょっと手を借りてもいいですか?」

「手?」

何か手伝うことがあるんだろうか?

首を傾げて手を出す。

すると。細く、らかく、しなやかな指が、まるで蛇のように俺の指に絡んで握ってきた。

「き、清坂さん……?」

「やっぱりセンパイの手を握ると、落ち著くっす……」

「お、落ち著く……?」

「うす。わかんないですけど、海斗センパイの手を握ってると……なんだか眠気、が……しゅぴぃ」

「ここで寢んな」

「……はっ! お、落ちかけたっす。危うく危なかったっす」

何言ってんだこいつ。

まあ、疲れてるんだろうなぁ……男の家にいるし、張もしてんだろう。

「わかった、わかった。今日も寢るまで傍にいてあげるよ」

「ホントっすか? あざっす」

寢室にり、ベッドに潛り込む清坂さんの隣に座る。

手は握りっぱなし。今日も離してはくれないみたい。

「海斗センパイは寢ないんすか?」

「寢るよ。清坂さんが寢てからね」

「……一緒に寢ます?」

「……は?」

一緒に、て……え?

「何言ってるんだ。そんなこと出來るわけないでしょ」

「でも私、センパイと手を握ってないと眠れないです」

「本當に何言ってんの?」

子供か。そんな歳でもないでしょう。

「今朝センパイが調悪かったのって、私のせいですよね。私がこうしてワガママを言ったから……」

「……気付いてたのか」

「なんとなくですが。でも私、センパイの手を握ったまま寢たいです」

モジモジと上目遣いで見つめてくる。

何だこれっ。くそ、可すぎる……!

「う、ぐ……その……い、一緒には無理だっ。でも隣では寢てあげるから」

「ほ、ホントっすか!? えへへっ、ありがとうございます!」

満面の笑みを見せる清坂さんに、つい魅ってしまった。

そんな清坂さんから逃げるように。ベッドの橫に布団の準備をした。

ベッドに橫になり、橫向きになって俺の方を見る清坂さん。

手はしっかりと握られていて、反対側を向くことは出來ない。ただ黙って天井を見上げる。

「へへ……私、生まれて初めて誰かと一緒に寢るっす」

「大袈裟だな。子供の頃とか、親と寢てるでしょ」

「寢てないっす。……ずっと、一人でした」

……しまったな。普通に地雷踏んだ。

もう清坂さんの家族の話題は絶対にやめよう。

黙ってると、心臓の鼓と時計の針の音がやけに大きく聞こえる。

それに、暗闇の中清坂さんの息遣いが生々しく聞こえてきて、々とヤバい。

「……センパイ、知ってます?」

「なっ……何を?」

いきなり話し掛けられて、つい聲が上ってしまった。

話し掛ける時は、話し掛けるって話し掛けてから話し掛けて來てしい。俺の心臓に悪いから。

……何を言ってるんだ、俺は。

「こうやって添い寢する男のことを、添い寢フレンド……ソフレって言うらしいっすよ」

「何その不純な関係」

「今の私らもそれじゃないっすか?」

あー……そう言われると、確かに?

添い寢フレンド。ソフレ。

いいのか、それで。

「これから海斗センパイは、私のソフレっす。寢る時はいつも一緒っすよ」

「拒否権は?」

「私の睡眠とお貌がどうなってもいいのなら」

「その自分を人質にする渉やめな?」

俺としては、一年生で既にトップカーストの超勝ち組子と添い寢なんてごめんなんだが……。

「……俺が手を繋いでたら、寢れるのか?」

「! はいっす! それはもう、今までにないくらいぐっすりっす!」

「……はぁ。手を繋ぐだけだぞ」

「あざっす!」

これはもう、役得って考えていい……のか?

清坂純夏。

同じ鎧ヶ丘高校の生徒で、後輩で、1年トップカーストの超勝ち組のの子は。

今日、俺のソフレになりました。

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