《【書籍化決定】拾ったギャルをお世話したら、〇フレになったんだが。》第79話 腐れ縁と急避難
「あちぃ」
外を歩くこと十分弱。
照りつける太のせいで、頭を冷やすどころの騒ぎじゃない。バカ暑い。
まだ七月の中旬なのにこの暑さ。八月になったらどんだけ暑いんだろう。
とりあえずコンビニにろう。涼まないと。
一番近場のコンビニにると、店の冷えた空気がにまとわりつく。
汗が冷えて、いいじにが冷えていく。
「はぁ……涼しい」
誰に言うでもなく獨り言ちる。
申し訳ないけど、し居座らせてもらおう。
軽食と飲み、あとは雑誌を買い、イートインスペースへと向かった。
と、そこに見慣れたプラチナホワイトの髪を持つ後ろ姿があった。
「ソーニャ?」
「んぇ? あ、ヨッシー!」
やっぱりソーニャだった。
月藏ソフィア。通稱ソーニャ。最近まで腐れ縁だと思っていたが、何故か俺のことが好きなの子。
そんなソーニャが、イートインスペースでスムージーを飲んでいた。
「なんでこんな場所に? しかも制服だし」
「夏休みのほしゅー。きょーは終わったから、帰る前にご飯食べよーと思って」
「あ、なるほど」
そういやソーニャ、一つだけ赤點があったんだっけか。
ソーニャの隣に座ると、なんか急激に申し訳ない気持ちになってきた。
「あー……ごめんな。俺の教え方が至らないばかりに、補習をけさせることになって」
「なーに言ってんのさ。どー考えても私のせーでしょ。ヨッシーが気にすることはないない」
いでっ、背中叩くな馬鹿。
抗議しようとソーニャに視線を向ける。
が、思ったより近い位置にソーニャの顔があった。
いや、明らかに近付いてる。近い近い。顔が良すぎる。あといい匂い。
すると、ソーニャはにへっと幸せそうな笑みになった。
「でも嬉しーよ、こーしてヨッシーに會えるなんてさ。もしかしてうんめーかも?」
「ぐ、偶然だろ」
「そーかもね。でも事実、こーして會えたわけだし」
「偶然だろうが必然だろうが、會えたという事実の前にはどうでもいい、と?」
「うん。私が、ヨッシーと、會えた。それでいーんだよ」
ニコニコのまま引き下がり、スムージーに口をつけるソーニャ。過程よりも結果、か。ソーニャらしいな。
隣で俺もサンドイッチを食べながら、ペラペラと雑誌をめくる。殘念ながらつまらない。たまにはと思って買ってみたけど、俺には縁のない特集ばかりだった。
互いに無言の時間が続く。
ソーニャと一緒にいて、沈黙になることは珍しくない。
だけど昔から、この沈黙は嫌じゃなかった。
「ところで、キヨサカさんたちは? どーせ一緒にいたんでしょ?」
「事があって避難中」
流石に酔っ払いのことは話せない。
飲んでないとはいえ、飲みの席に未年がいることがまずいんだし。
「ふーん。ならウチくる?」
「……え?」
「ここにずっといてもお店のめーわくになるしさ。ウチ、きょー家族は誰もいないし。よし、決まり!」
ソーニャは俺の了承を取る前に立ち上がると、ゴミを捨てて俺の手を取り立ち上がった。
「ちょっ、ソーニャ!?」
「いーからいーからっ」
よくないが!? の子の家に転がり込むとか、全然よくないが!?
しかもソーニャって俺のこと好きって明言したよな!? キスフレだよな!? そんな狀況でソーニャと二人きりとか、俺の心臓がもたないんだが!
ソーニャに無理やり手を引かれること數分。
高級住宅地の一角にある、豪邸の前に立ち止まった。
豪邸を囲う塀に、重厚な木の門。表札には『月藏』の名前が彫られている。
「でっか……」
「そっかな? ふつーだよ」
「そりゃこの辺の豪邸と比べたらな」
見渡す限り、豪邸ばかり並んでいる。
こんな場所でそだったら、そりゃあ覚は麻痺するわ。
そういや、純夏の家も豪邸だったな……俺の周り、金持ち多くね?
呆然と豪邸を見上げていると、ソーニャが鍵を使って門の橫の扉を開けた。
中にると、驚くほど広く綺麗な庭が広がっている。
近所にこんな場所があったのか……。
「春になるとそこの桜並木が満開になるから、家族で花見とか出來るんだよ」
「そりゃ、贅沢だな……」
塀に沿って並んでいる桜の木は見事な大きさだ。
その前には小さな池と川がある。なんと、鯉まで泳いでいた。
「とんでもないな」
「全部おとーさんとおかーさんの趣味だけどねー。さーさー、ヨッシー。暑いし家ろーよ」
「わ、わかったから押すなっ」
ここまで來てしまったら、もう後戻りは出來ない。
俺は覚悟を決め、ソーニャの実家へと足を踏みれた。
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