《【書籍化決定】拾ったギャルをお世話したら、〇フレになったんだが。》第81話 腐れ縁とヤキモキ

「あ、えっと……あ、暑いよね! アイス食べる?」

「じゃ、じゃあ頂こうかな」

「ま、待ってて!」

ソーニャはいそいそと部屋を出ていくと、部屋には俺一人しかいなくなった。

はぁ……ようやく落ち著ける。

いや部屋の匂いに包まれて、ちゃんとは落ち著けないけど。

純夏たちから逃げてきたと思ったら、まさかソーニャの部屋に転がり込むことになるなんて。

と、その時──俺のスマホが鳴った。

メッセージじゃない、電話だ。

「……え、純夏? もしもし」

『あ、カイ君? どこいるんすか。謝るから帰ってきてしいっす。寂しいっす』

『海斗くーん! ハグしたいー! ギュッてしたいんですけどー!』

うるさっ。

思わずスマホを耳から遠ざける。

更に白百合さんや花本さんもやいのやいのと何か言っているのが聞こえた。

まだテンション高いなぁ、この四人。

「あー、ちょっと友達と會ったから、し遊んで帰る。白百合さんと花本さんは、夕方までに帰ってくださいよ」

『それ、私たちが迷って言ってんですかー?』

『吉永のくせに生意気だぞー』

この絡みが面倒だから帰りたくないっつってんですよ。

なんて口が裂けても言えないけど。

それに、このまま電話してたらソーニャが帰ってくる。

今のこの四人に、ソーニャと一緒にいるのを知られるのはまずい。

「と、とにかく、もうししたら帰るか──」

「ただいまー! ヨッシー、バニラアイスでいーい? 私、ストロベリー!」

ちょ、バカ聲でけぇ!

『えっ、今の聲ってツキクラ先輩!?』

『海斗君、ツキクラ先輩と一緒にいんの!?』

『というか、友達ってツキクラ先輩のことっすか!? 一緒に遊ぶってどういうことですか!? 遊ぶってナニで遊ぶつもりっすかー!!』

ギャーギャーワーワー!

う、うるさい……。

俺が電話をしていたことに気付いたのか、キョトンとしていたソーニャがにやりと破顔した。

うわ、悪そうな顔。

と、ソーニャはアイスをテーブルに置き……俺の膝の上にってきた。

「そ、ソーニャ……!?」

何してんのこいつ!

てか距離! 距離近い!

ソーニャは俺の首に腕を回すと、耳に口を寄せ──。

「あぁ〜んっ♡ ヨッシー、そんなことしちゃらめぇ〜♡」

「はぁ!?」

『『『『はぁ!?』』』』

何してんのこいつ!

何してんのこいつ!!

何してんのこいつ!!!

びっくりしすぎて何してんのこいつしか出てこなくなったわ!

「すごぉ♡ ヨッシーでかぁ〜♡♡」

「もう黙れお前!?」

『かかかかかかカイ君っ、カイ君!?』

『ホント、ナニしてんのさ海斗君!!』

「なんもしてない! マジで何もしてないから!」

せっかくやばい空間から逃げたのに、今の方が修羅場なんだけど!?

「と、とにかく後で説明する! じゃ!」

『ちょっ──』

ブチッ──!

……はぁ。勢いで切っちゃったけど、帰ったら面倒くさそうだなぁ……。

「ぷぷぷ、慌ててやんの」

「お前なぁ」

「いいじゃん。ちょっとくらいヤキモキさせてやれば。──私がいつもヤキモキしてるようにさ」

……え?

ソーニャは俺の上からどくと、橫に座ってアイスの蓋を開けた。

「私がヤキモキしてないと思ってる? 好きな男の子が、敵と同棲なんて」

「いや、純夏は同棲というか居候というか……」

「どっちも一緒だよ」

俺の肩に頭を乗せ、ソファーに三角座りをする。

ソーニャはちみちみとアイスを食べながら、俺を上目遣いで見上げてきた。

ちょ、ソーニャさんそんな薄著で元緩めたら、とてもえちちなんですが……!?

だけどソーニャは気付いてないのか、いじいじツンツンしていた。

「ヨッシーがキヨサカさんやアマナイさんとイチャイチャしてる間、私なんて一人ぼっちなんだよ。ずるいよ……」

「そ、そうは言ってもな。別に俺もイチャイチャしてるわけでは……!」

「してんじゃん。今もしてたじゃん」

そう言われるとぐうの音も出ない。

だけど俺にとってはイチャイチャしてるんじゃなくて、イチャイチャされてるじだ。

まあ、そんな狀況を楽しんでるって言ったらクソ野郎になるけど……正直、どうしていいかわからず困ってる。

誰かを選べば誰かは選ばれず。

當たり前のことだけど、それが辛い。

「……ごめんね、ヨッシーも辛いのに」

「いや、その……」

「いっそのこと、みんなで付き合う?」

「おバカ」

「冗談だよ」

こいつ……まあ當たり前だ。一人でみんなと付き合うとか、常識的に普通じゃない。

俺は火照ったを冷ますべく、溶けかかったアイスを頬張った。

冷てっ。

「……半分はね(ぼそっ)」

「え?」

「なんでも!」

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