《【書籍化決定】拾ったギャルをお世話したら、〇フレになったんだが。》第107話 先輩とファミレス

「あ〜……バイト辭めてぇ」

「バイトしながらバイト辭めたいとか言わないでください」

今日も今日とてバイトにを出す日々。

まあやる気満々なのは俺だけみたいだが。

お客さんがいないとは言え、花本さんはレジで気だるげにため息をついた。

は言わないから、不労所得で月50萬くらいしいな……」

の塊」

思わず引きつった笑みが出てしまった。気持ちはわかるけど。

けど俺は、今日という日が楽しみで仕方なかった。

今日は給料日だ。夏休みで結構シフトれてたし、なんなら夏休み中は人手が足りないから夏休み手當も出してくれる。

そのおかげで、俺の口座にはいつもより高い金額が支払われていた。

週末の澄香への誕生日プレゼントも買えるし、バイト終わったらすぐ百貨店行かないと。

花本さんは、暇そうに髪のをくるくるといじる。

と、急に「あ」と聲を上げた。

「そういや白百合から聞いたぞ。お見合いの件、解決したんだってな」

「あ〜……解決したって言えるのか、わかりませんが」

「それでもだ。ありがとうな、吉永。よくやった」

花本さんは背びをすると、俺の頭をがしがしでた。

決して優しくはないし、雑なで方だけど……なんとなく、心が溫まった気がした。

「んで、どんなことになったんだ? 白百合は詳しいこと教えてくれなくて」

「それは……」

流石に言えないよな。白百合さんが言わないってことは、あまり知られたくないことだろうし。

「晝飯」

「あの日は白百合さんに連れられてですね」

ごめん白百合さん。でも高校生の胃袋は食に忠実なんです。

方の顛末を話すと、花本さんは腕を組んで頷いた。

「なるほどなぁ。おばさんに気にられるなんて、やるじゃん。怖かったろ、あの人」

「怖いというか、化けにしか見えませんでしたよ」

「あはっ、化けね。確かにあの人の察力と推理力はえげつないから」

人目がないことをいいことに、花本さんは腹を抱えて笑う。

そんなに笑ってると、店長に叱られますよ。今だって普通に睨んできてるし。

「ま、吉永なら気にられるのもわかる」

「なんで斷定するんですか」

「んなもん、私が気にってるからだよ」

きゅっ……急にそんなこと言わないでほしい。照れる。

頬が急激に熱くなるのをじ、花本さんから目を逸らす。

そんな俺を見て、花本さんは楽しそうに笑う。

「んで、ヤったの?」

「臺無しだよ」

は? 何言ってんのこの人。

おいコラ、きょとん顔すんな。

「え、今の流れでヤらなかったの?」

「なんで今の流れでヤると思ったんですか」

「そりゃあ、実家に顔見せしたら勢いと盛り上がりで?」

「脳どピンクか」

なんで勢いと盛り上がりでヤらなきゃならないのだ。

若さ故の過ち? 過ちをおかすほどの度なんてないわ。

「ちぇー、つまんねーの」

「つまんなくて結構です。それより、約束通り晝飯奢ってくださいよ」

「奢るなんて一言も言ってないぞ」

「は?」

「怖っ。吉永、今めっちゃ怖い顔してるぞ」

いや、こんな顔にもなるが?

でも、あの花本さんがドン引きしている。ちょっと愉悅。

「し、仕方ないな……弁當でいい?」

「…………」

「……ファミレスで許してくれ」

「やった」

純夏はちょうど天さんと出掛けてるし、晝食どうするか迷ってたんだよな。

まさかこんなところでタダ飯にありつけるだなんて。

「あ、あんまり食べないでくれよ? 私だって一人暮らしでかつかつなんだからな」

「わかってますって。駅前の安いファミレスでいいですから」

「え……駅前か……」

花本さんが、急に顔を引き攣らせた。

この辺にあるファミレスだと、駅前が一番安いんだけど……どうしたんだ?

「実は俺、この後純夏の誕生日プレゼント買いに行くんです。なんで、駅前が都合いいんですけど……ダメですか?」

「……いや、大丈夫。よし、お姉さんが奢ってやろう」

花本さんは口角を上げて笑う。

ちょっと無理させたかな?

そう思い聞こうとすると、団のお客さんがどかっとやってきた。

この日はタイミング悪く、それから仕事が終わるまでひっきりなしに客がやってくる始末。

なんだか、いつもの倍疲れた……。

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