《【書籍化&コミカライズ】関係改善をあきらめて距離をおいたら、塩対応だった婚約者が絡んでくるようになりました》タルト専門店にて
週末のタルト専門店行きに參加したのは総勢五人。もとは子三人で行く予定だったのだが、マーガレットが「兄も一緒でいいかしら」というので喜んで了承したところ、なんと彼に連れられてカインまでもが現れたのである。
「前にマーガレットに頼まれて伝言を伝えたことがあっただろ。それがきっかけで話すようになったんだが、こいつイケメンの割にいい奴なんだ」
熊のような巨漢のチャールズ・フェラーズはカインの背中をばしばしと豪快に叩きながら言った。
「兄がご迷かけてすみません、メリウェザーさま」
「いや、面白そうだから便乗させてもらったんだ。俺も甘いものは嫌いじゃないしな」
「ここのタルトは絶品だぞ。ちなみにブルーベリーがお勧めだ」
「じゃあ俺はそれにするよ」
「あらお兄さま、杏の方が味しいわよ」
「じゃあ私はそれにするわ。ビアトリスはどうする?」
「そうね、私もマーガレットお勧めの杏にするわ」
結局陣は杏のタルト、男陣はブルーベリーのタルトに決まり、ほどなくして紅茶とともに注文の品が運ばれてきた。
Advertisement
ビアトリスが寶石のようなタルトをひとくち食べると、甘酸っぱさと獨特の爽やかな風味が口腔に広がっていく。確かにこれはちょっと癖になりそうな味わいだ。
「味しいわ……!」
「そうでしょう、そうでしょう」
「マーガレットったら、なんで貴方が得意げなのよ」
「いいじゃない、シャーロットだって自分が紹介した本が面白いって言われて得意がっていたくせに」
「あれは……だってそういうものでしょう? 好きな作品が褒められると本好きとしては嬉しいものよ」
「甘味だって同じことよ!」
二人の掛け合いに笑いがれる。
ビアトリスは甘味を堪能しながら、ふと正面に座るカインに目をやった。
タルトを食べる彼の所作はとても綺麗で、市井で育ったとは思えないほど洗練されている。なんとはなしに見とれていると、ふいにカインと目が合った。
「なんだ?」
「あ、いえ」
「もしかしてこっちも食べたいのか?」
「え、ち、違います!」
「遠慮するな、ほら」
止める間もなく、カインは自分のタルトを切り分けてビアトリスの皿に移してしまった。食い意地の張ったはしたないだと思われたろうか。
「どうだ?」
「……味しいです」
「それは良かった」
カインの慈しむような微笑みに、ビアトリスは泣きたくなるような懐かしさを覚えた。以前にもじた、これは一なんなのか。もし「以前にもお會いしたことはありませんか?」と尋ねたら、彼はなんと答えるだろう。
ビアトリスがカインさま、と口を開きかけたとき、ふいに甲高い聲が響いた。
「ね、アーネストさま、すごく味しかったでしょう?」
「ああ、なかなか味かったよ」
「僕にはし甘すぎましたね」
「そんなこというならシリルはもうわないからね!」
「俺は味かったぜマリア」
「ふふっ、ありがとうレオナルド」
「うん、僕もこういうのは好きだな。マリアはいいお店知ってるね」
わいわいと店の奧から現れたのは、アーネスト率いる生徒會のメンバーだった。
彼に腕を絡めてはしゃいだ聲をあげているのはマリア・アドラー。アーネストが選んだ副會長だ。
去年の春、生徒會長に選出されたアーネストがビアトリス――績上位者で高位貴族でなおかつ會長の関係者――ではなく、平民であるマリアを副會長に指名したときは、學院で隨分と騒がれたものである。
「ビアトリスさまったら、よっぽどアーネスト殿下に嫌われているのね」と嘲る者もいれば、「ビアトリス嬢は人間に問題があるから、生徒會にふさわしくないと判斷されたのだろう」と訳知り顔に言う者もいたが、いずれにせよ當時のビアトリスにとって、それは「欠陥品」の烙印を押されたに等しい苦しみだった。その後もアーネストの隣にいるマリアを見るたび、まるで自分の居場所を奪われたようなの痛みを覚えたものである。
今も一緒にいる二人を目にすると、じくじくとが痛むのをじる。しかしそれ以上に強いのは、友人たちとの溫かな時間を壊されたくないというだ。彼らの前でアーネストに邪険にされて、気まずい雰囲気になるのは嫌だった。
(どうかこちらに気付かれませんように)
ビアトリスはうつむいて彼らをやり過ごそうとした。ところが間の悪いことに、顔を伏せようとした瞬間、アーネストがふいにこちらを向いた。
二人の視線が差する。
彼はビアトリスの存在に驚きの表を浮かべてから、次に向かいに座るカインに目をやり、再びビアトリスに視線を戻すと、鋭い目つきで睨みつけた。まるで親の仇でも見るような、怒りに満ちた眼差しだ。
(なんなの一、なんでそんな目で見られなきゃならないの?)
仲間と楽しく過ごしている週末に、大嫌いなビアトリスなんかを目にしたことに対する怒りの眼差しだろうか。気持ちは分からないでもないが、いくらなんでも理不盡すぎる。
「どうかなさったんですか? アーネスト殿下」
立ち止まったままのアーネストに、書記のシリル・パーマーが聲をかけた。宰相の息子で、いつもアーネストと首位爭いをしている秀才だ。
「いや……なんでもない」
「早く行きましょうよアーネストさま、この後はみんなでお芝居を見るんですからね!」
「ああ、そうだなマリア」
ようやく一団が立ち去ったあとも、ビアトリスの心は晴れなかった。
アーネストの、怒りに満ちた眼差しが頭から離れない。
(なにか面倒なことにならなければいいけれど……)
ビアトリスはそう祈らずにはいられなかった。
銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者
『銀河戦國記ノヴァルナ』シリーズ第2章。 星大名ナグヤ=ウォーダ家の新たな當主となったノヴァルナ・ダン=ウォーダは、オ・ワーリ宙域の統一に動き出す。一族同士の、血縁者同士の爭いに身を投じるノヴァルナ。そしてさらに迫りくる強大な敵…運命の星が今、輝きを放ち始める。※この作品は、E-エブリスタ様に掲載させていただいております同作品の本編部分です。[現在、毎週水曜日・金曜日・日曜日18時に自動更新中]
8 190俺、覇王になりました。
主人公の転道 覇道は全てに置いて卓越した才能をもっていた。とある中3の夏に寢ていると転生神によって転生させられてしまう。_これは主人公の覇道が最強になるお話です。_
8 70転生したはいいけど生き返ったら液狀ヤマタノオロチとはどういうことだ!?
いじめられ……虐げられ……そんな人生に飽きていた主人公…しかしそんな彼の人生を変えたのは一つの雷だった!? 面倒くさがりの主人公が作る異世界転生ファンタジー!
8 184ファルダーミール -明日の世界-
どこにでもいる普通の高校生。 甘奈木 華彌徒[カンナギ カヤト]は、平和な日常を送っていた。 顔も性格も家柄も普通な彼には誰にも……いや……普通の人には言えない秘密があった。 その秘密とは、世に蔓延る亡者、一般的に言えば幽霊や妖怪を倒すことである。 ある時、友人にその事がばれてしまったがその友人はカヤトに変わらずに接した。いや、むしろ、自分からこの世ならざる者と関わろうとした……。 ───────────────────── 【目指せ、お気に入り1000人達成!?】 2018/10/5 あらすじの大幅改変をしました。 【更新は気長にお待ち下さい】 ─────────────────────
8 111竜神の加護を持つ少年
主人公の孝太は14歳の日本人、小さい頃に1羽の無愛想なオウムを母親が助ける。時が経ち、両親を交通事故で亡くし天涯孤獨になってしまうのだが、実は昔助けたオウムは異世界からやってきた竜神だった。地球に絶望した孝太が竜神に誘われ異世界にやって來るが、そこでは盜賊に攫われてドラゴンの生贄にされそうになってる少女達の姿があった。盜賊を討伐しお寶をゲットまでは良かったがハプニングによるハプニング、助けた少女には冷たくされたりしながらも泣き蟲で臆病な少年が竜神の加護を受け最強を目指しながら大人へと成長する物語である。主人公防御は無敵ですが心が弱くかなり泣き蟲です。 ハーレム希望なのにモテナイそんな少年の切なくもおかしな物語。投稿初期はお粗末な位誤字、脫字、誤用が多かった為、現在読み易いように修正中です。物語は完結しています。PV39000、ユニーク5400人。本當に多くの方に読んで頂けて嬉しく思います。この場をお借りして、有難う御座います。 尚、番外編-侍と子竜-を4/6日にアップしました。
8 79終末デイズ〜終末まで殘り24時間〜
殘り24時間、あなたは一體何をしますか? 好きな人と共に過ごすのか、家族に感謝を伝えるのか、己の欲望のままに行動するのか。 そんな人間ドラマ集です。 twitter始めました(作品に関する質問やイラスト等をお待ちしております)→@HaL3NoHeYa
8 179