《【書籍化&コミカライズ】関係改善をあきらめて距離をおいたら、塩対応だった婚約者が絡んでくるようになりました》勇気がいること
マリアはビアトリスの姿にぎょっとした表を浮かべると、隣のシリルに食ってかかった。
「シリル、ちょっとどういうこと? なんでこの人がここにいるのよ!」
思ったよりも元気そうでなによりだ、というのがビアトリスの率直な想だったが、むろん口にはしなかった。
「さ、さあ、僕も何が何やら」
「俺が勝手に連れてきたんだ。シリルは関係ない」
「つまりメリウェザー先輩が私をはめたんですか? 私はただ、告白ならちゃんとお會いしてお斷りするのが禮儀だと思ったから、わざわざこうして來てあげたのに!」
「はめたとは人聞きが悪いな、俺は『君と會って話したい』としか言づけていないはずだが」
「だって普通、このシチュエーションならそう思うじゃないですか! もういいです、帰ります!」
「待ってください。アドラーさん、単刀直にうかがいます。アーネスト様は、私が不正をしたという貴方の意見に賛同していたんじゃないですか?」
ビアトリスの言葉に、部屋を出て行こうとしていたマリアはきを止めた。
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そして警戒心に満ちた表でゆっくりとこちらに振り向いた。
「……なんでそんなこと言うんですか?」
「あのときの貴方の態度、そしてアーネスト様の様子から、そうではないかと思ったんです。貴方は生徒會室でアーネスト様と一緒に順位表を見て、これは不正じゃないかとお二人で話し合ったんじゃないですか?」
「今さらそんなこと聞いて、どうするつもりなんですか?」
「確認したいだけです。自分の婚約者が自分のことをどう思っているのか興味あるのは當然でしょう?」
知りたいのはむしろ「アーネストがどういう人間か」だったが、今それをマリアに言う必要はない。あくまでアーネストの自分に対する気持ちが知りたいのだ、という風に持ち掛けると、マリアはようやく口を開いた。
「そうです。アーネストさまが、トリシァがいきなり一位なんておかしい、不正の可能があるっておっしゃったんです。だけど自分は王族だから、王立學院の不正について口にしたら大ごとになり過ぎるっておっしゃったから、私が代わりに言いに行ったんです」
「そうですか。不正を言い出したのはアーネスト様だったんですね……」
アーネストは単に賛同したのではなく、むしろ言い出した側だった。
それは十分に予測できることではあったし、実際にビアトリス自も、その可能を考えていないわけではなかった。しかしこうして事実として突きつけられると、言いようのないおぞましさに、心をえぐられるようだった。
(アーネスト様はマリア・アドラーに対して、自分から私の不正を言いたてた。そしてマリア・アドラーを使って存分に私を貶めてから、今度はマリアを侮辱する形で私を皆の前で庇って見せた――完璧な王子様の顔をして)
アーネストが自分にした仕打ちがショックなのか。あるいはマリアにした仕打ちがショックなのか。判斷する暇もなく、野太い聲がビアトリスの思考を斷ち切った。
「ちょっと待てよマリア! それっていったいどういうことだよ!」
「レ、レオナルド? なんでここに……」
ビアトリスとカインはもちろん、シリルとマリアにも完全に予想外だったようで、二人とも目を丸くしたままぽかんと口を開けている。
「お前がその、告白されるかもしれねぇって言うから、気になって様子を見に來たんだよ。それよりマリア、どういうことだよ。試験の不正は殿下が言い出したことなのか?」
「そうよ、だけど私は」
「それなのに、みんなの前でお前のことを責め立てたのかよ。そんなの最低じゃねぇかよ! 今すぐ俺がみんなに言って――」
「やめてレオナルド!」
マリアが悲鳴のような聲を上げた。
「違うの! 私が悪いの! 私が勝手に勘違いしてたの! 殿下は表立って騒ぐべきじゃないってお考えだったのに、私が間違えて暴走しちゃっただけなの!」
「だけどマリア」
「とにかく私が悪いんだから、レオナルドは変なこと言いふらしたりしないでね!」
「だけど……」
「絶対よ!」
マリアに怒鳴りつけられて、レオナルドは叱られた犬のように項垂れた。
マリアはビアトリス達の方に向き直ると、傲然と顔を上げていった。
「私は今でも不正を疑ってますけど、皆の前で言ったのは軽率でしたし、あの場を収めるにはアーネスト様がああ言うしかなかったことも納得しています。ウォルトンさんも、アーネスト様が私より自分の味方をしてくれたなんて思わないでください。それじゃ、いきましょうレオナルド」
マリアはそう言い捨てると、レオナルドを引っ張って部屋を出て行った。
「信じられないな、あんな目に遭わされてもまだアーネストを庇うのか」
カインが呆れた聲を上げた。
「私は彼の気持ちが分かるような気がします」
「そうか?」
「ええ、慕っている相手から理不盡な目に遭わされたとき、相手が酷い人間であることを認めるよりも、自分が相手から大切にされていないことを認めるよりも、自分の行に非があったせいだと考える方が楽なんです」
それはビアトリス自にも覚えのあるだった。
本心から好きだった相手の正を認めるのは、とても勇気がいることだ。
「それにしても、よりによってレオナルドに知られてしまうとは、これは生徒會崩壊の危機ですね」
シリルがやれやれとばかりに嘆息した。
「アーネストの自業自得だろう」
「今殿下は々不安定なんですよ。仲間をこんな風に扱うデメリットはわきまえておられるはずなんですけど、最近はちょっとたがが外れてきていると言いますか……そういうわけでビアトリス嬢、アーネスト殿下といい加減に仲直りしていただけませんか?」
「はい?」
話の流れが見えなくて、ビアトリスは怪訝な聲を上げた。
「前に申し上げたでしょう? 貴方が生徒會を辭めた頃から殿下の様子がおかしいって。いえあえていうなら、貴方が殿下と一緒に晝食を取らなくなった辺りから、かもしれませんけど。いずれにしても殿下の変調の原因はおそらく貴方にあるんです。貴方さえ殿下と仲直りしていただければ、もうこんな無茶な真似をすることもなくなると思うんですよね、僕は」
「仲直りと言われましても、別に喧嘩しているわけではありませんので」
そもそも仲直りとは何だろう。自分にとってのアーネストとの「仲直り」とは、學前のいころにまでさかのぼる。いつの日かあの頃の関係に返ることを夢見て、長い間ひたすら関係改善を試みて來た。アーネストが振り返ってくれさえすれば、あの日々に戻れると信じていた。
しかし実際問題、アーネストがかつてのように優しく振舞ったとしても、今の自分はあの頃のようなを彼に抱くことができるのだろうか。
八歳のときにアーネストと婚約して以來、いずれアーネストの妃となることはビアトリスの中で確定事項になっていた。
幸せな花嫁になるにせよ、不幸な花嫁になるにせよ、彼と結婚すること自は微塵も揺らぐことはなく、ビアトリスの前に厳然と存在し続けた。
それ以外の未來なんてまるで考えもしなかった。
(だけど……それでいいのかしら)
自分はどうしたいのか。今後アーネストとどうなりたいのか。あるいはなりたくないのか。
アーネストに、そして自分自に、本気で向き合う覚悟をきめるときが來ていた。
【書籍化&コミカライズ】関係改善をあきらめて距離をおいたら、塩対応だった婚約者が絡んでくるようになりました
【6月10日に書籍3巻発売!】 「ビアトリスは実家の力で強引に俺の婚約者におさまったんだ。俺は最初から不本意だった」 王太子アーネストがそう吹聴しているのを知ってしまい、公爵令嬢ビアトリスは彼との関係改善をあきらめて、距離を置くことを決意する。「そういえば私は今までアーネスト様にかまけてばかりで、他の方々とあまり交流してこなかったわね。もったいないことをしたものだわ」。気持ちを切り替え、美貌の辺境伯令息や気のいい友人たちと學院生活を楽しむようになるビアトリス。ところが今まで塩対応だったアーネストの方が、なぜか積極的にビアトリスに絡んでくるようになり――?!
8 64平和の守護者(書籍版タイトル:創世のエブリオット・シード)
時は2010年。 第二次世界大戦末期に現れた『ES能力者』により、“本來”の歴史から大きく道を外れた世界。“本來”の世界から、異なる世界に変わってしまった世界。 人でありながら、人ならざる者とも呼ばれる『ES能力者』は、徐々にその數を増やしつつあった。世界各國で『ES能力者』の発掘、育成、保有が行われ、軍事バランスを大きく変動させていく。 そんな中、『空を飛びたい』と願う以外は普通の、一人の少年がいた。 だが、中學校生活も終わりに差し掛かった頃、國民の義務である『ES適性検査』を受けたことで“普通”の道から外れることとなる。 夢を追いかけ、様々な人々と出會い、時には笑い、時には爭う。 これは、“本來”は普通の世界で普通の人生を歩むはずだった少年――河原崎博孝の、普通ではなくなってしまった世界での道を歩む物語。 ※現実の歴史を辿っていたら、途中で現実とは異なる世界観へと変貌した現代ファンタジーです。ギャグとシリアスを半々ぐらいで描いていければと思います。 ※2015/5/30 訓練校編終了 2015/5/31 正規部隊編開始 2016/11/21 本編完結 ※「創世のエブリオット・シード 平和の守護者」というタイトルで書籍化いたしました。2015年2月28日より1巻が発売中です。 本編完結いたしました。 ご感想やご指摘、レビューや評価をいただきましてありがとうございました。
8 158TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―
【イエス百合、ノーしりあす!】 好きな人を守って死んだ男子高校生が、前世と同じ世界でカリスマ溢れる美少女として転生! 前世の記憶と神様からの恩恵を使って、彼女は前世では出來なかったことを送っていきます。 妹や親友たちに囲まれて幸せな日々を送る、ほんわかユルユル女の子たちのハートフルコメディです。 全編、女の子たち(主人公含めて)が楽しく日々を描いております。 男はほとんど登場しません(ここ大事)。 頭を空っぽにしても読める、楽しい百合を目指しています! 前書き後書きは最新話のみ表示しています。 ※現在一話から読みやすいよう修正中、修正後の話には『第〇〇話』と付けております。 ※小説家になろう様・カクヨム様・アルファポリス様にも投稿しています。
8 158僕はまた、あの鈴の音を聞く
皆さまの評価がモチベーションへとつながりますので、この作品が、少しでも気になった方は是非、高評価をお願いします。 また、作者が実力不足な為おかしな點がいくつもあるかと思われます。ご気づきの際は、是非コメントでのご指摘よろしくお願い致します。 《以下、あらすじです↓》 目を覚ますと、真っ白な天井があった。 橫には點滴がつけられていたことから、病院であることを理解したが、自分の記憶がない。 自分に関する記憶のみがないのだ。 自分が歩んできた人生そのものが抜け落ちたような感じ。 不安や、虛無感を感じながら、僕は狀況を把握するためにベットから降りた。 ーチリン、チリン その時、どこからか鈴が鳴る音が聞こえた。
8 101名探偵の推理日記〜囚人たちの怨念〜
かつて死の監獄と呼ばれ人々から恐れられてきた舊刑務所。今ではホテルとして沢山の客を集めていたが、そこには強い怨念が潛んでいた。そこで起きた殺人事件の謎に名探偵が挑む。犯人は本當に囚人の強い恨みなのか?それとも生きた人間による強い恨みなのか? 〜登場人物〜 松本圭介 小林祐希 川崎奈美(受付の女性) 吉川尚輝(清掃員のおじさん) 田中和基(清掃員のおじさん) 磯野吉見(事務のおばさん)
8 165未解決探偵-Detective of Urban Legend-
警察では解決できない都市伝説、超能力、霊的問題などの非科學的事件を扱う探偵水島勇吾と、負の感情が欠落した幼馴染神田あまねを中心とする“解決不能“な事件に挑む伝奇的ミステリー。
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