《【書籍化&コミカライズ】関係改善をあきらめて距離をおいたら、塩対応だった婚約者が絡んでくるようになりました》共に歩む未來

マーガレットは最近、柑橘系のお菓子にはまっている。なんでも婚約者の領地が有名な柑橘類の産地なので、柑橘類の味しい食べ方について々研究したいのだという。

マーガレットいわく「果をそのまま出荷するだけじゃなくて、味しく加工して名産品にできたら素敵でしょう?」とのこと。

領地はほとんど管理人任せにする貴族もなくない中で、マーガレットの婚約者は先祖からけ継いだ伯爵領をかにすることに熱を注いでおり、マーガレットも彼の力になりたいらしい。

二人で顔を突き合わせて、あれこれ相談しながら領地経営する景が想像できて、なんだか微笑ましくなってしまう。

シャーロットもとある侯爵との縁談が持ち上がっているという。シャーロットより一回り年上だが、文化蕓に造詣が深く、んな畫家や作家を後援するのが趣味だとのこと。自も絵を描くのが好きらしく、「結婚したら君の肖像畫を描かせてほしい、なんておっしゃるのよ」と恥ずかしそうに報告してきたので、出來上がったら絶対見せるようにと、二人がかりで約束させた。

出來上がった絵はきっと侯爵邸に大切に飾られるのだろう。しく著飾るシャーロット、赤ん坊を抱くシャーロット、子供たちに囲まれるシャーロットと、彼をモデルにした絵はしずつ増えていくのだろう。

幸せな景が目に浮かぶようで、ビアトリスは思わず顔をほころばせた。

友人たちと柑橘系スイーツの店をはしごした翌日、ビアトリスは王妃教育をけるために王宮へと赴いた。

久しぶりに會ったアメリア王妃は、今回の試験結果にいたくご立腹のご様子で、自分を後回しにして人のためにばかり頑張り過ぎるのはアーネストの悪い癖だわそういうときこそ傍にいる貴方がきちんと見てあげなくては駄目なのに貴方はアーネストを支える立場だということを自覚してくれなくちゃ困るわね自分だけが目立てばいいなんて考えは捨てなければいけないわもちろんお勉強ができるのは悪いことではないけれど首席をとって得意がっているようでは駄目なのよとこんこんとお説教をけていたら、やがてアーネストがお茶のいに現れた。

今回は半ば予期したことなので、特に驚きはしなかった。前回と同様にサンルームへエスコートしようとするアーネストに対し、ビアトリスは久しぶりに王宮の庭を見たいと主張した。

「昔、連れて行って下さったアーネスト様のの場所に行ってみたいんですの」

出會って三回目のお茶會で、アーネストが連れて行ってくれた特別な場所だ。

そこは王宮庭園の奧深く、木立の間に湧き出した小さな泉のある空間で、初めてアーネストに見せられた時は、王都の真ん中にこんなところがあるなんて、とひどくしたものである。

こうして今目の前にしても、やはり幻想的でしい。

「よくこんなところを覚えていたね」

「大切な思い出ですもの。忘れたりしませんわ」

「そうか、嬉しいよ」

そう、アーネストとの間には素敵な思い出がたくさんある。

思い出。全て思い出ばかり。

「アーネストさま、お願いがあるんですの」

「なんだいトリシァ?」

「私との婚約を解消してくださいませ」

するりとアーネストから表が抜け落ちた。

木立のに無表でたたずむ彼は、まるでしい幽霊のようだ。

「申し訳ありませんアーネスト様。貴方と共に歩む未來が、私にはもう見えないのです」

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