《【コミカライズ&書籍化(2巻7月発売)】【WEB版】婚約破棄され家を追われたの手を取り、天才魔師は優雅に跪く(コミカライズ版:義妹に婚約者を奪われた落ちこぼれ令嬢は、天才魔師に溺される)》不思議な力

誤字報告をありがとうございます、修正いたしました。

「お帰りなさい、兄さん!!」

レノが満面の笑みを浮かべて、マーベリックに勢いよく抱き付いた。

「ただいま、レノ。いい子にしていたかい?

……イリス、レノのことをありがとう」

レノを笑顔で抱き締めてから、イリスにも優な笑みを向けたマーベリックに、イリスもにっこりと微笑みながら駆け寄った。

「お帰りなさいませ、マーベリック様。本當に、ご無事でよかった……!」

ほっとした様子で、マーベリックを見つめて嬉しそうに頬を染めるイリスの頭を、マーベリックは優しくでた。

「思ったよりも早く片付いて、帰って來ることができてよかったよ」

「……長期の遠征と伺っていましたが、順調だったようで何よりです。マーベリック様のお元気そうなお姿を見ることができて、安心いたしました」

安堵の表を浮かべ、し瞳を潤ませたイリスを、マーベリックは軽く抱き締めた。途端、イリスの頬はかあっと熱を帯びる。

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「イリスが、俺の無事を祈ってくれたお蔭かもしれないな。君はきっと、俺の幸運の神だ。何故か、今回は信じられないほどに調子が良かったんだ」

「マーベリック様、お世辭がお上手ですね。……天才との呼び聲の高いマーベリック様ですもの、実力を発揮なさっただけですわ。

目覚ましいご活躍をなさったと聞き及んでいます。マーベリック様のご活躍のお蔭で、魔討伐が短期で終わったのですよね」

マーベリックの溫かな腕の中で、まるで蕓品のように整った顔をイリスが恥ずかしげに見上げると、橫でレノがぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねた。

「兄さん、すごいね!魔たちをすぐに倒しちゃうなんて。さすがは、兄さんだ」

「いや。レノの熱が下がったのを見屆けてから出発できたから、安心して遠征に臨めたしな」

「兄さんのいない間、もう熱は出なかったよ!イリスと一緒に、ちゃんといい子で待ってたよ」

「はは、そうか。それなら良かった。

……ところで、イリス」

「はい?」

なかなか解かれないマーベリックの腕を不思議に思いながら、イリスはマーベリックの顔を見つめた。

「君には、その……人とは違う能力があると言われたことは?」

きょとんとしてマーベリックの瞳を見てから、イリスは首を傾げて橫に振った。

「いいえ。

私は、マーベリック様もご存知のように、単なる一介の侍にすぎませんわ。當然魔法も使えませんし、そのような能力があると言われたこともありません」

「そう、か……」

し思案顔になったマーベリックだったけれど、イリスにふわりと微笑んで頷くと、ようやく腕を解いてイリスのを解放してくれた。

「レノ、街に行く準備はできているかい?

俺は、これからヴィンセントのところに顔を出す予定だが、近いうちに、レノとイリスと3人で出掛けようか」

「まあ。まだ遠征帰りですし、きっとお疲れのことでしょう。

しはお休みになられた方がよろしいのでは……?」

「いや、それほどは疲れも出てはいないんだ。

あとし、片付けたいことがあるが、そう遠くないうちに3人で出掛けよう」

「わーい、やったあ!

兄さんとイリスと街に行けるの、楽しみだなあ」

顔中でくしゃりと笑うレノを見て、マーベリックとイリスは、思わず顔を見合わせてにこりと笑った。

***

「おや、兄さん。私たちの拠點にいらっしゃるとは、珍しいですね。

……今回の魔討伐では、また隨分と派手に活躍なさったそうですね?もはや、風魔法が神業の域だったとか。私も、兄さんへの數知れない賛辭を耳にしていますよ」

「いや……」

「騎士団と魔師団が束になってかかっても苦戦していた魔たちを、ほんの一瞬で葬り去ったのでしょう?

並の人間では、とても出來ることではありませんよ。私も兄さんの弟として、誇らしく思います」

「ちょっと待て。俺はそんな言葉を聞きにここに來た訳じゃない。

お前に確認したいことがあるんだ、ヴィンス」

マーベリックは軽く苦笑した。

「……以前に、お前は怪我をしたところをクルムロフ家に拾われて、治療をけたことがあったな。その時、側から湧いてくるような不思議な力をじたと、そう言ってはいなかったか?」

ヴィンセントは、マーベリックの言葉に、ぱちぱちと目を瞬いた。

「ええ、確かに、そうでした。

……の奧から湧き上がるような、溫かな力でしたね。がその力に呼応して、凄い速さで回復しているような、不思議な覚があったものです。

しかし、どうして今になって、唐突にそれを?」

「今回の魔討伐の遠征で、俺も似たような覚があったんだ。何というか、の奧底から不思議と力が漲ってくるようなじだ。

あれほどの風魔法を放てたのは、俺も初めてだったし、しかも疲れすらほとんどじなかった。あれくらい威力のある魔法を放ったなら、俺でも、しばらくけなくなったとしてもおかしくはないのにだ。

……それが不思議でならなくてな。お前に、もう一度その時のことを聞けば、何か解決の糸口が見つかるかもしれないと思ったんだ」

「そうですねえ。

……以前にもお伝えしたかと思いますが。これは私の直にすぎないのですが、クルムロフ家のご令嬢に助けられてからなのですよ、その不思議な力をじたのは。

今まで忙しさにかまけて後回しになっていましたが、改めてお禮に伺わなければとは思っていたところです。兄さんも、私と同席して、件のご令嬢に話を聞いてみますか?」

マーベリックは思案げに口を噤んだ後で頷いた。

「……そうだな、頼む。

この力の源がいったい何なのか、知りたいと思っているんだ」

「兄さんは、レノにも何か能力があるようだと仰っていましたね。

今回兄さんがじた力は、レノからのもののように思われたのですか?」

「いや、違う。

……お前が言っていたのと同じように、これは俺の直だが。

比較的最近、レノ付きの侍になったがいてな。お前も知っての通り、今まで、レノ専屬の侍は皆続かずに辭めてしまっていたんだが、彼は違っていた。レノをありのままれて、大切に可がってくれているのが伝わってくるし、レノもすっかり彼を慕い、懐いている。

うまくは言えないのだが……魔討伐に行く俺の無事を願ってくれた彼が、その力の源になっているような気がするんだ」

ヴィンセントはしばらくマーベリックの顔を見つめてから、ふっと笑みを溢した。

「兄さんでも、のことを話す時に、それほど優しい表になることがあるのですね。いや、驚きましたよ。

に、もし本當にその力があるとして。彼はそれを自覚しているのでしょうか?」

「いや、聞いてはみたが、まったく自覚はないようで、俺の言葉に首を傾げていたよ」

「そうですか。それも、私がクルムロフ家のご令嬢に助けられた時と同じですね。

も同様に、そんな力についてはさっぱりといった様子でした」

「レノの力とはまた種類が違うのかもしれないが、なくとも、この國では一般に認められていない特殊な力という意味では、共通するところがあるのかもしれない。

そのご令嬢から話を聞く機會を待っているよ」

「では、訪問を告げる手紙を私から出しておきましょう。

……私が誰か知ったら、もしかしたら驚かせてしまうかもしれませんが……」

「お前、助けられたのに、そのご令嬢に名乗ってはいないのか?」

マーベリックが、あきれたようにヴィンセントの顔を見た。

「いえ、呼稱のヴィンスは名乗りましたが、當時、分までは明かしませんでした。

……兄さんも経験があるでしょう?私たちの外観や肩書きに目のを変えて、り寄るように近付いて來るたちに、悪寒をじたことが。そういうのが免だったので、咄嗟に、ヴィンスとだけ名乗ってしまったのです。私がもし魔師団長だと知れれば、々面倒になるかもしれないと思いましてね。

けれど、今から思えば、彼になら名乗ればよかったですね。何せ、當時、私は化けのような傷だらけの酷い顔をしていたのに、彼は微塵もそれを気にすることなく、必死になって、親切に私の怪我の治療に當たってくれたのですから。

……またお會いできるのが楽しみですよ」

し頬を染めたヴィンセントを見て、マーベリックも、くすりと楽しそうに笑った。

「お前のそんな顔も、初めて見たよ。

……また、訪問の日が決まったら教えてくれ」

「わかりました。またご連絡しますね」

(不思議だな。

ヴィンセントが助けられたという令嬢も、どこかイリスに似たところがある。こういう偶然もあるものなのだろうか……)

マーベリックはヴィンセントの言葉を思い返しながら、魔師団の拠點を後にした。

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