《【コミカライズ&書籍化(2巻7月発売)】【WEB版】婚約破棄され家を追われたの手を取り、天才魔師は優雅に跪く(コミカライズ版:義妹に婚約者を奪われた落ちこぼれ令嬢は、天才魔師に溺される)》企み
「イリス。……ねえ、聞いてる?」
離れでレノと2人過ごしていたイリスは、イリスの顔を間近から覗き込んできたレノの言葉に、はっとした。
「ごめんなさい、レノ様。……何だか、ぼんやりしてしまっていたみたいで……」
レノは眉を下げて、心配そうに口を開いた。
「イリス、この前一緒に街に出掛けた時から、何だか元気がないし、顔も悪いよ。
時々、心ここにあらずみたいなじになってるけれど、大丈夫?」
イリスはレノの言葉に苦笑した。
「ごめんなさい、これでは、レノ様の侍として失格ですね……」
レノはぶんぶんと勢いよく首を橫に振った。
「違う違う、僕、そういう意味で言ったんじゃないんだ。
……僕の側にいてくれるのは、絶対にイリスじゃなきゃ嫌だし、僕にとって、イリスはすごく大切なんだ。いつもイリスには助けてもらってばっかりだから、僕だって、イリスの力になりたいし、役に立ちたいんだよ。
だから、心配ごとがあったら、何でも相談してね?」
Advertisement
「ありがとう、レノ様。レノ様は本當にお優しいですね」
イリスはにっこり微笑むと、レノのことを両腕でぎゅっと抱き締めた。
街でケンドールに聲を掛けられてから、イリスの心を、靄のような不安が覆っていた。その理由に、イリスは自分でも気付いていた。
マーベリックと自分とでは、分も能力も容姿も、何もかもが違うことはわかっていたはずなのに、それでも、そのことを指摘するケンドールの言葉に、イリスは思いのほか傷付いていたのだ。勿論、レノに対するケンドールの言葉は決して許せるものではなかったけれど、それだけではなく、イリス自も傷付いたことで、イリスははっきりと、マーベリックに対する自らの想いを自覚したのだった。
(私では、とてもマーベリック様には釣り合わないことはわかっているから、ご迷にならないように、この気持ちはそっとにしまっておかないと。
ああ、けれど、マーベリック様も、しいヘレナに心を奪われてしまうのかしら。マーベリック様はいつ、ヘレナの元を訪れるのかしら……)
Advertisement
つい、そんな考えが浮かんで來てしまうイリスの揺れる心を見かしたかのように、イリスの腕の中にいたレノが、気遣わしげにイリスを見上げた。
「イリス、まだちょっと浮かない顔してる。
……そうだ、気分転換に中庭に出てみない?」
「ええ、いい考えね。早速行きましょうか、レノ様」
レノに手を引かれてイリスが中庭に出た時、イリスは中庭をぐるりと見回すと、そういえば、と、首を傾げてレノに尋ねた。
「レノ様。
……初めて私がこの中庭にお邪魔したときに、レノ様が教えてくださったお友達は、あれからいらしてはいないのでしょうか?」
「ううん、違うよ。
みんなを、この辺りで見掛けることは多いんだけど。でもね、みんな結構恥ずかしがり屋だから、兄さんも一緒だったここ最近は、ずっと靜かに、ただ僕たちのことを見ていただけだったみたい。
この前みたいに、みんなが、踴る風や、弾ける水や燈る炎を見せてくれたのは、僕以外の人がいる時では、イリスをここに連れて來た時が初めてだったんだよ」
「そうだったのですか?」
イリスが驚いて尋ねると、レノはこくりと頷いた。
「うん。イリスには、他の人とは違う何かがあるのかなぁ?
……兄さんも、僕が1人でみんなとここで遊んでいた時に、みんなが起こした、ちょっと変わった現象を見掛けて、驚いたことはあったみたいだけどね。
あっ、ちょっと待ってね」
中空で視線を止めたレノに、イリスは目を瞬いた。
「……ね、イリス。僕の友達の、一番小さな金の竜が、イリスに聞きたいことがあるみたい」
「ええ、何でしょう?」
レノが中空に目をやりながら、言葉を続けた。
「イリスの首にかかっている、その赤紫の寶石の付いたネックレス。
見たことがあるって、そう言ってるんだ。昔、大好きだった人がに著けていたんだって。あと、この前、僕たちと一緒に街に出掛けた時のイリスが、その人にそっくりに見えたって。
……イリス、その人のこと、何か知ってる?」
「……もしかしたら、お母様のことかしら……」
イリスは大切そうに、元に輝く赤紫の寶石にそっとれた。
「このネックレスは、私のお母様の形見なの。
それに、この前、レノ様たちと街に出掛けた時に著ていた服も、お母様が昔著ていたワンピースだったのですよ。
だから、私がお母様に似ているように見えたのかもしれませんね」
「そうかあ、イリスのお母さんかぁ……。
うん、そうみたいだね。會えなくなって、寂しかったって言ってるから」
イリスは、優しく、そしてしかった母のことを、遠い記憶の中から思い出していた。まさか、亡き母のことを、目に見えない神的な存在が知っているなんて、とても不思議な覚だった。
「その金のお友達は、まだ小さいのかしら?
私のお母様が天に召されたのは、もうずっと昔のことなのだけれど」
「竜はね、僕たち人間よりも、ずっと壽命が長いし、長するにも時間がかかるんだって。
それに、イリスも、お母さんによく似てるねって、イリスのことも好きだって、そう言ってるよ」
「あら、それは嬉しいわ」
微笑んだイリスの前で、ふわっと、小さな炎が、花を象るように現れた。
ふわり、ふわりと、小さな炎でできた花が、次々と目の前に浮かび上がって來る。
「わ、綺麗ね……!」
幻想的な炎の花が咲いては散っていく様子を、イリスが夢中になって眺めていると、橫でレノが嬉しそうに笑った。
「よかった、イリス、ちょっと元気が出たみたいだね」
「ええ、とっても!
そのお友達に、ぜひお禮を伝えてくださいね」
「うん。……この子も、イリスを勵ましたかったみたいだよ。
これからもよろしく、って」
「こちらこそ、ぜひ仲良くしてくださいね」
イリスは、何も見えない中空に向かって、けれど確かにその神的な存在をじながら、にっこりと笑いかけたのだった。
***
「いい加減にしてくださいませんか、ケンドール様。
私、この家にはもう來ないでしいと、そう言ったはず……」
苛立った様子で、ケンドールを家から追い返そうと、そこまで言い掛けたヘレナは、目の前にふらりと立つケンドールの様子が以前とは隨分違っているのを見て、ぎょっとして思わず一歩下がった。
暗い顔をして、服は薄汚れ、うらぶれた雰囲気を漂わせているケンドールからは、隠し切れない酒の臭いがしている。その瞳には、若干の狂気とも取れるようなが浮かんでいた。
(何なの、彼。怖いわ……)
ヘレナはごくりと唾を飲み込んだ。彼を下手に刺激しない方がいいと、そうヘレナの本能が告げていた。
ヘレナは、元まで出掛かっていた辛辣な言葉を飲み込むと、多の距離を取りながら、ケンドールに対して作り笑顔を浮かべた。
「何か、私にご用でも?」
「ああ。君に、いいことを教えてやろうと思ってな」
「それは、どのような?」
「イリスのことだよ。彼、今はエヴェレット家にいるんだ」
「エヴェレット家って、あの、マーベリック様とヴィンセント様の……」
驚いた様子のヘレナに、ケンドールはにやりと笑った。
「ああ。それに、イリスはマーベリックから、特別大切にされているよ」
「イリスお姉様が……?」
「そうだ。イリスはマーベリックの末弟の世話係として、あの家で働いている。相當、マーベリックに気にられているようだよ。僕のこの目で見たんだから、間違いはない。
……いくら君でも、イリスがいたらマーベリックを手にれるのは難しいだろうって、そう伝えに來たのさ。
はっ、君だって、誰の心でも捕らえるなんてことはできないってことさ」
(振られた私への當て付けに來たのかしら?
お姉様なんて、私の相手になんてならないとは思うけれど。それでも……)
ヘレナは、口ではそう言いながらも、イリスとの復縁が葉わなかったのであろう、悔しさをその表に滲ませているケンドールの姿を、改めて眺めた。
これほどまでに様子が変わるとは、相當の衝撃をけたのだろう、と想像してみると、イリスを探しに行って、マーベリックに大切にされている彼を目撃したのだろうと考えれば、彼の言葉には、否定できない真実味があった。
ケンドールが徐に口を開いた。
「疑問なんだが、なぜマーベリックにヴィンセントまで、君のところに來るんだい?」
「……ヴィンセント様が、助けられたお禮を言うためにですって」
「他人事みたいだな。君が彼を助けたんじゃないのか?」
「いいえ?
もしかしたら、お姉様がヴィンセント様を助けたのかもしれないけれど。クルムロフ家の令嬢に會いたいって仰っているのはあちらですし、今は私しかおりませんからね」
當然のようにそう話すヘレナに、ケンドールはふっと笑みをらした。
「……君も大概だな。
で、どうしてマーベリックまで?」
「それが、よくわからないのよ。
君のお蔭で特別回復が早かったようだ、君には何か特殊な能力があるんじゃないか、なんて、ヴィンセント様からの手紙に書いてあったの。今までにもそのようなことはなかったか、何か心當たりはないかって。
……マーベリック様も、どうやらそのことについて聞きたいのですって。
魔法の使い手である私に、それを聞くならわかるけれど、お姉様に、そんな力がある訳ないじゃない?ありふれた魔法の屬ですらも、どれも認められなかったお姉様に。
ケンドール様も、そう思いませんか?」
「……。
……もしかしたら……」
突然、ケンドールが高笑いを始めた。ヘレナはぎくりとしながら、更に一歩後退った。
ケンドールは笑いを止めないままで、目に滲む涙を拭いながら、ヘレナに答えた。
「そうか、面白い。実に面白いよ。
……僕も、改めてイリスがしくなった」
(……この方、何を言っているのかしら?
でも、障害になるものは、できる限り排除しておきたいわ。それなら……)
「ねえ、ケンドール様。
マーベリック様とヴィンセント様がこの家にいらっしゃる日を、知りたいですか?」
「それは、どういう……?」
ヘレナは、口元に薄い笑みを浮かべた。
「その日であれば、なくとも、マーベリック様も、ヴィンセント様も、エヴェレット家にはいらっしゃらないということですよ。
……私の言いたいことが、おわかりですか?」
ケンドールの瞳が、ヘレナの言葉に暗く輝いた。
「ああ、よくわかったよ。
で、それはいつなんだ?」
「ええ、それはね……」
ケンドールはヘレナの返答に頷くと、すぐにくるりと踵を返した。
(もしかしたら……いや、きっと、これは)
ケンドールは、高鳴るを抑え切れずに、自分の腕に巻かれた包帯を眺めた。
昔、イリスと婚約していた時も、騎士団の仕事で深い傷を負ったことはそれなりにあった。
けれど、なくとも今に比べれば、何故だか回復が早かったのだ。
それだけではない。の中から湧き上がるような力によって、の切れも攻撃力も、いずれも今より格段に高かったと言えた。
(荒唐無稽な話にも思えるが。
ヴィンセントのあの手紙に、以前に目の前で見た、マーベリックの神がかった風魔法。
……僕の経験に、あの2人のことまで考え合わせれば、確かに辻褄が合う。
あの力の鍵は、イリスだったと、そういうことか)
ケンドールは、隠し切れない笑みをその顔に浮かべた。
(イリス、君が、あのマーベリックと想い合っていたとしても。
それでも、どんな手を使ってでも、君さえ取り戻すことができれば、僕は……)
イリスには口さがない言葉を掛けていたけれど、ケンドールは、本當は気付いていたのだ。マーベリックがイリスに向ける溫かな視線は、たった一人のしいに向けるそれに他ならないということに。
ケンドールは、頭の中で來たる日の算段を付けながら、その瞳に暗いを宿していた。
【書籍化決定】ネットの『推し』とリアルの『推し』が隣に引っ越してきた~夢のような生活が始まると思っていたけど、何か思ってたのと違う~
【書籍化が決定しました】 都內在住の大學3年生、天童蒼馬(てんどうそうま)には2人の『推し』がいた。 一人は大手VTuber事務所バーチャリアル所屬のVTuber【アンリエッタ】。 もう一人は大人気アイドル聲優の【八住ひより】。 過保護な親に無理やり契約させられた高級マンションに住む蒼馬は、自分の住んでいる階に他に誰も住んでいない事を寂しく感じていた。 そんなある日、2人の女性が立て続けに蒼馬の住む階に入居してくる。 なんとそれは、蒼馬の『推し』であるアンリエッタと八住ひよりだった。 夢のような生活が始まる、と胸を躍らせた蒼馬に『推し』たちの【殘念な現実】が突きつけられる。 幼馴染で大學のマドンナ【水瀬真冬】も巻き込み、お節介焼きで生活スキル高めの蒼馬のハーレム生活が幕を開ける。
8 197【書籍化】解雇された寫本係は、記憶したスクロールで魔術師を凌駕する ~ユニークスキル〈セーブアンドロード〉~【web版】
※書籍化決定しました!! 詳細は活動報告をご覧ください! ※1巻発売中です。2巻 9/25(土)に発売です。 ※第三章開始しました。 魔法は詠唱するか、スクロールと呼ばれる羊皮紙の巻物を使って発動するしかない。 ギルドにはスクロールを生産する寫本係がある。スティーヴンも寫本係の一人だ。 マップしか生産させてもらえない彼はいつかスクロール係になることを夢見て毎夜遅く、スクロールを盜み見てユニークスキル〈記録と読み取り〉を使い記憶していった。 5年マップを作らされた。 あるとき突然、貴族出身の新しいマップ係が現れ、スティーヴンは無能としてギルド『グーニー』を解雇される。 しかし、『グーニー』の人間は知らなかった。 スティーヴンのマップが異常なほど正確なことを。 それがどれだけ『グーニー』に影響を與えていたかということを。 さらに長年ユニークスキルで記憶してきたスクロールが目覚め、主人公と周囲の人々を救っていく。
8 171【書籍化】探索魔法は最強です~追放されたおっさん冒険者は探査と感知の魔法で成り上がる~
※BKブックス様より第1巻好評発売中! リーダーやメンバーから理不盡なパワハラを受け、冒険者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者ロノム。 しかし、趣味に使える程度だと思っていた探査と感知の魔法は他を寄せ付けない圧倒的な便利さを誇っており、全てのダンジョン探索がイージーモードになるような能力だった。 おっさん冒険者ロノムはその能力もさることながら、人當たりの良さと器の大きさもあって新パーティのメンバーや後援者、更には冒険者ギルドや國の重鎮達にも好かれていき、周りの後押しも受けながらいつしか伝説の冒険者と呼ばれるようになっていく。 一方、知らないところでロノムの探査魔法にダンジョン攻略を依存していた前のパーティーはどんどん落ちぶれていくのであった。 追放によって運が開かれたおっさん冒険者のサクセスストーリー。
8 67バミューダ・トリガー
學生の周りで起きた怪異事件《バミューダ》 巻き込まれた者のうち生存者は學生のみ。 そして、彼らのもとから、大切にしていた物、事件の引き金《トリガー》とされる物が失われていたのだが・・・? ある日を境に、それぞれの運命は再び怪異へと向かって進み始める。分からない事だらけのこの事件に、終息は訪れるのか? 大切な物に気づいたとき自分の個性が武器となる・・・!! ―初挑戦の新作始動―
8 53異世界落ちたら古龍と邪龍の戦いに巻き込まれまして・・・
この物語は、勇者召喚に巻き込まれ そのあげく古龍と邪龍の戦っている真っ只中に落ちてしまった一人の異世界人の物語である おそらく主人公最強もの、そしてスーパースキル「ご都合主義」が 所々に発生するものと思われます
8 163もしも末期大日本帝國にミリオタが転生してみたら
ある日 何気なく過ごしていた矢本紗季は、過労により死亡したが 起きて見ると 身體が若返っていた。 しかし 狀況を確認して見ると 矢本紗千が 現在居る場所は、末期大日本帝國だった。 この話は、後にと呼ばれる 最強部隊の話である。 注意 この作品には、史実も入っていますが 大半がフィクションです。 Twitterの方で投稿日時の連絡や雑談をしています。 是非フォローの方を宜しくお願いします。 http://twitter.com@dfbcrkysuxslo9r/
8 140