《【コミカライズ&書籍化(2巻7月発売)】【WEB版】婚約破棄され家を追われたの手を取り、天才魔師は優雅に跪く(コミカライズ版:義妹に婚約者を奪われた落ちこぼれ令嬢は、天才魔師に溺される)》(Side)イリスへの婚約指
雙葉社Mノベルス様より、「婚約破棄され家を追われたの手を取り、天才魔師は優雅に跪く」が2022年1月14日に発売されました!イラストはみつなり都先生です。本當に素晴らしいイラストを描いていただいています…!キャラクターデザインを活報告に載せておりますので、よろしければぜひご覧ください。また、本編に加え、3萬字以上番外編を書き下ろしています。
こちらは発売記念に書いたサイドストーリーで、イリスがマーベリックから贈られた婚約指についてのお話です(発売した書籍に含まれる番外編とはまた別です)。時系列としては、イリスがマーベリックのプロポーズをけた後、結婚前の話になります。
軽いノックの音がして、レノのいる離れのドアが開いた。
ドアの向こう側に覗いたマーベリックの顔を目にして、途端に、イリスの顔には花咲くような笑みが浮かぶ。
マーベリックも、優しくイリスに微笑みかけた。
「し時間をもらいたいんだが、イリス、いいかな? レノは、今は眠っているようだな」
マーベリックの視線の先では、レノがすうすうと軽い寢息を立てていた。
「はい、マーベリック様。レノ様は、ちょうどお晝寢中です。つい先程、可い寢息が聞こえてきたばかりなのですよ」
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マーベリックとイリスは、すやすやと気持ちよさそうに眠るレノの寢顔を眺めて視線をわすと、らかくその目を細めた。
「そうか。よく眠っているみたいだな。今のうちに、イリスに來てもらってもいいかい?」
「はい、マーベリック様」
手招きをしたマーベリックに頷いて、イリスが靜かに離れのドアを閉めると、マーベリックはイリスと並んで歩きながら、イリスを見つめて口を開いた。
「実は、イリスに選んでしいものがあってな。今日は、祖父の代からの古い付き合いのある寶石商を、本邸に呼んでいるんだ」
「寶石商の方を……?」
二人が裏口から本邸にると、戸った様子のイリスの手を、どこか楽しそうな様子でぎゅっと握ったマーベリックは、そのまま廊下を進み応接間のドアを開けた。
「すまない、待たせたな」
応接間のソファーに腰掛けていた白髪の老紳士が、マーベリックとイリスの姿を前にして立ち上がると、丁寧に二人に向かって頭を下げた。
「いえ、とんでもない。こちらこそ、このようなお二人の喜ばしい門出にあたってお聲掛けいただき、心より嬉しく思っておりますよ。この度は、マーベリック様とイリス様がご結婚なさるとのこと、本當におめでとうございます」
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「どうもありがとうございます」
初々しく頬を染めて、マーベリックと一緒に頭を下げたイリスを見つめて、老紳士は溫かく微笑んだ。
「私も、本日は選りすぐりのものを持參いたしました。……イリス様に気にっていただけるものが見付かるとよいのですが」
そう言った老紳士は、手にしていた黒い鞄を開け、白い手袋を両手にはめてから、中から艶やかな革張りの箱を取り出すと、マーベリックとイリスの前に開いて差し出した。イリスは箱の中を目にすると、目を瞠ってあっと小さく聲を上げた。開かれた箱には、応接間のシャンデリアのをけて煌めく、數々のしい寶石が並べられていたのだ。
マーベリックは、驚き困した様子のイリスの肩を、優しく抱き締めた。
「俺たちが結婚式を挙げて、互いに生涯を共にすることを誓うまで、まだもうしだけ準備の時間がかかる。それまで、君は俺の婚約者だ。だからイリス、君に、婚約指を贈りたいと思ってね。……俺が一人で決めてしまっても良かったのかもしれないが、せっかくなら、イリスが気にる寶石を一緒に選んで、婚約指にしたいと思ったんだ」
「まあ、マーベリック様」
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イリスは、おしそうにイリスのことを見つめるマーベリックを見つめ返した。婚約指に関するかつての辛い記憶が、完全に過去のものになったことをじながら、イリスはマーベリックの溫かな手をそっと握った。
「私は、マーベリック様とこれからずっと一緒にいられるというだけで、もう十分に幸せで、満たされておりますわ。……こちらの寶石は、素晴らしくしいものばかりですけれど。私のには過分かもしれません」
今まで贅沢とは無縁の生活を送ってきたからか、眩い輝きを放つ寶石を前にして、恐したようにを固くしたイリスに、マーベリックが小さくふっと笑った。
「謙虛な君がそう言って遠慮するかもしれないとは、予想はしていたよ。だが、これは俺の気持ちだし、イリスがもう俺と婚約しているという印を、君にに付けていてしいんだ。……どうかな、君は、俺からの贈りをに付けるのは嫌かい?」
「いえ、そんなことは! マーベリック様のお気持ちは、心から嬉しく思いますわ」
慌てて首を橫に振ったイリスの瞳を、マーベリックがじっと覗き込んだ。
「なら、これは俺の我儘だと思ってけ取ってしい。結婚という一生に一度の機會なのだから、イリスが本當に気にった寶石を、指用に選んでもらえればと思う」
二人の様子を眺めていた寶石商の老紳士は、和な笑みを浮かべると、まだ躊躇っている様子のイリスに話し掛けた。
「それほど肩肘を張っていただかなくても大丈夫ですよ。不思議なもので、人と人との相と同じように、寶石と人にも相があるのです。もし、イリス様のお気に召すものがなければ、こちらにご用意したものから無理に選んでいただく必要はございません。それに、私の店に限らずとも、マーベリック様のお気持ちにも沿うような、イリス様に縁のある寶石に出會うことも、きっと遠くはないでしょうから。
……私は長いこと寶石商をしておりますが、私の役目は、人と寶石との縁を繋ぐことだと思っております。良い出會いがあるだろうかというくらいの気持ちで、肩の力を抜いて見ていただければと思います」
マーベリックは老紳士の言葉に頷いた。
「彼は、寶石商とは言ってもし変わっていてね。……いくら金を積んで寶石を売ってしいと頼んでも、その寶石と、選んだ人との相が悪いと思えば、首を縦に振ってはくれないことで有名なんだ。そんな彼だからこそ、祖父の代から信頼していたんだよ」
イリスは、誠実そうな老紳士の顔を見つめた。商人というよりも、どこか職人のような、その道に達した趣をじさせる彼は、マーベリックの言葉の通り、イリスにも信頼に足る人のようにじられた。まるで我が子を見つめるような、のこもった眼差しで、革張りの箱の中に並べられた寶石を眺める老紳士につられるように、イリスも煌めく寶石に視線を移した。
はっとするような輝きを放つ、存在のあるしい寶石が惜しげもなく並べられている様子と、それぞれの寶石が違う表で放つに、イリスはほうっと一つ嘆の溜息を吐いた。
「どうです、それぞれの寶石に個があるでしょう? 寶石の種類や大きさといったものにはあまり拘らず、目を惹いたものや、気になるものがあれば仰ってくださいね」
老紳士は、イリスと、イリスを見つめて頷くマーベリックを互に見つめて微笑んだ。マーベリックは、イリスと一緒に、箱の中に並ぶ寶石を覗き込んだ。
「……カットの異なる複數のダイヤモンドだけでなく、様々な種類の寶石を持って來てくれたのだな。サファイア、ルビー、エメラルドにオパール、真珠も。あまりこの國では見掛けない、珍しい種類の寶石もあるようだね」
「はい。やはり、実際に目にしていただかないと、どのような寶石に縁をじていただけるかというのはわかりませんから。これはと思う寶石の中から、各種取り揃えてまいりました。……ところで、」
そこまで話してから、ふと老紳士は、イリスので、金の鎖の先にっている赤紫の寶石に視線を移すと、どこか嬉しそうに目を細めた。
「し、話は逸れますが。そちらの、イリス様の元で輝いているロードライトガーネットは、長い時間を大切にけ継がれて來たものではないでしょうか? イリス様に寄り添い守ろうとするような、靜かながら確かな力をじます。……きっと、イリス様の思いや願いが葉えられるよう、側で見守って來たのでしょう。イリス様が大切にする方々までも包み込むような、溫かな力のある、素敵な寶石ですね」
イリスは、はっとしたように老紳士の言葉に目を見開いてから、大切そうに元のペンダントにれると、こくりと頷いた。
「はい。よくお分かりになりましたね。お言葉の通りで、これは、母からけ継いだ大切なものなのです。寶石としての価値としては、それほど高価なものではないかもしれませんが、私にとっては寶です。……ところで、寶石には、今仰っていたように、持ち主や、周囲の人に対しても力を及ぼすようなところもあるのでしょうか?」
老紳士は優しい笑みを浮かべてイリスの言葉に頷いた。
「ええ。ただ、それは寶石と持ち主との間で育まれた関係や、持ち主の心持ち次第とも言えるでしょうね。他者に対して及ぼし得る影響ーー例えば、する人との絆を深めたり、その功をで支えたりすることーーを含めて、寶石の種類によって、一般にその寶石がめている効力として謳われる石言葉もあります。でも、考え過ぎずに、直で気にったものを選んでいただくのが、結果的に相の良い寶石との出會いに繋がることが多いですね。……イリス様、こちらの寶石が気になりますか?」
イリスがある寶石の上でしばらく視線を止めたことに気付いた老紳士は、手袋をはめた手でその寶石を取り出した。
「よろしければ、こちらにイリス様の掌を出していただけますか」
頷いたマーベリックに背中を押されるように、遠慮がちに差し出されたイリスの掌の上に、老紳士は一つの寶石をそっと置いた。それは、並べられた他の寶石と比べるとし控えめな大きさの、深い緑に澄んだエメラルドだった。イリスが掌の上のエメラルドを眺める様子を、マーベリックが嬉しそうに見つめた。
「俺も、なぜかそのエメラルドが気になって見ていたんだ。イリスの瞳のにも、よく合っているね」
「マーベリック様も、ですか? 吸い込まれるような、とてもしいエメラルドですね。ほかの寶石もどれも綺麗なのですが、どうしてか、こちらに目を引かれてしまって」
老紳士は、掌の上で輝くエメラルドを、興味深そうにじっと見つめていたイリスに話し掛けた。
「イリス様、その石を乗せた部分の掌に、ふわりと溫かいような覚があるのではないでしょうか?」
「仰る通りです。……不思議ですね、まるで生きているかのように、優しい力を分けてくれているようにじます」
「これは、深く、とりわけ癒しの力の高い石なのですよ。夫婦のと絆を深め、癒しの効力があるとも言われるエメラルドですが、萬人がこの石のことをイリス様と同じようにじるかというと、そんなことはありません。波長が合う、合わないということもありますからね」
マーベリックが、イリスの肩に優しく手を乗せた。
「イリス、どうかな。君が気にったのなら、このエメラルドを君への婚約指に仕立てたいのだが」
「あの、本當によろしいのでしょうか? こんなに高価そうな寶石を……」
「もちろん。イリスによく似合う、気にってくれた寶石が見付かって、俺も嬉しいよ。……では、このエメラルドをイリスへの婚約指に」
マーベリックの視線をけて、老紳士は了承を示すと頭を下げた。
「かしこまりました。このエメラルドをあしらった指のデザイン畫も、すぐにご用意いたします」
「ああ、そうしてもらえると助かる。早く、イリスの指に、このエメラルドの婚約指をはめたいからね」
「マーベリック様、素敵な寶石を一緒に選んでくださって、そして優しいお心遣いを、本當にありがとうございます」
嬉しそうに見つめ合うマーベリックとイリスを、老紳士は微笑ましげに眺めると、イリスの元に送り出すことが決まった、澄んだ輝きを放つエメラルドを、溫かな眼差しで見つめたのだった。
***
「イリス、君の左手を出してくれるかい? 君に贈る婚約指が出來上がったんだ」
マーベリックは笑顔で、イリスが差し出した左手を取ると、そのほっそりとした薬指に、手にしたビロードの小箱から取り出した、金で縁取られたエメラルドの指をそっとはめた。
澄んだ緑のエメラルドが輝く指をうっとりと見つめたイリスの頬が、嬉しそうに紅する。
「とてもしいですね。……マーベリック様、こんなに素晴らしい婚約指を、どうもありがとうございます」
「よく似合っているね。俺も、これで君が俺の婚約者だと示せて嬉しいよ」
目を細めて微笑んだマーベリックは、イリスの額に軽くキスを落とした。
「マーベリック様と結婚してからも、一生大切にしますね」
「ああ、気にってくれてよかった。そのエメラルドも、イリスと出會って喜んでいるようにじると、あの寶石商の彼も言っていたよ」
「そうなのですか? ……でも、確かに、このエメラルドからは、優しく溫かな力をじるような気がします」
にっこりと幸せそうに笑ったイリスの顔を見ながら、マーベリックは、完した婚約指をけ取った時の、寶石商の老紳士の言葉を思い返していた。
……この石も、ようやく相の良い持ち主に巡り會えて良かった。このエメラルドをしがる方は今まで幾人もいたのですが、石の方が頑なでしてね。自らを著飾るためだけにこの石をしがるような方の元には、行きたがらなかったのです。イリス様は、自らのことよりも他者の幸せを願う、純粋で溫かな心をお持ちの方のようですね。この石も、イリス様と出會えて喜んでいるようですから、きっとこれからイリス様に寄り添い、見守ってくれることでしょう。イリス様も、無意識的に、それをじ取られたのかもしれませんね。
人の目に見えないものが見えるとも評判の、目利きなのは確かだけれど、時に頑固な寶石商から、笑顔で手渡されたエメラルドの婚約指。それをマーベリックがイリスの左手薬指にはめた時、マーベリックにも、なぜかそのエメラルドが一際その輝きを増して、嬉しそうに煌めいたように見えたのだった。
こちらもお付き合いくださって、どうもありがとうございました!
書籍版も実をお手に取っていただけたら、本當に嬉しく思います。
また、こちら、続編の第2巻が2022年7月上旬に発売予定です!
みつなり都先生が描いてくださったしい書影を含め、詳細は是非活報告をご覧ください。
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