《【書籍化&コミカライズ】婚約者の浮気現場を見ちゃったので始まりの鐘が鳴りました》2.その聲で聞かせて
騎士視點です。
リヴィオニス・ウォーリアンは騎士だ。
長いこと騎士を輩出してきた名家に生まれたので、おぎゃあと泣いた瞬間から騎士になることが決まっていた。まあリヴィオニスだって庭師とかコックとか執事とか、憧れた仕事が無かったわけじゃないけれど、葉うわけがなかった。だって屋敷の中の世界しか知らないんだもんね。
お父上のそのお父上のそのまたお父上の…とにかく長ぁい歴史を積み重ねてきた男子が皆そうであったように、リヴィオニスも全寮制の騎士學校に通うようになって、外の世界を知ってからだ。我が家は凄い家系らしいぞ?と気が付いたのは。
やや、これは逃げられないのではないか?と気付くには、ちいと遅かった。
おはようからおやすみまで、規律と家名が重たい彼かッてくらいにぴったり付いてきていたんだから。
いや彼というものについては、そんな余裕すら無かったので実際のところを知らんが、大切にしないと駄目で鬱陶しくてそれでも大事なものっていやあリヴィオニスは、「別れたいけど別れたくねぇんだよな…」と休みのたびにデートに出かける友人の疲れた顔が思い浮かぶのだ。
べつに本気で逃げたいわけじゃない。
騎士になりたくないってわけじゃない。
でも、納得はできなかった。
選択肢ももらえず、勝手に期待して勝手に背負わされて、それで朝から晩まで剣を振らされて走らされて怒鳴られて、ガミガミガミガミ教に怒鳴られる意味が、理解はできるけどわからない。
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そんなある日。
いやあもう本當に突然、なあんの前れもなく、リヴィオニスはをした。
事の起こりは、休暇中に父に連れていかれた騎士団の練習場。
「相手をしてやろう」
と、まあ尊大に言い放ちおったのは、一人だけ兜までかぶった、同じ背丈の子供だった。誰か上役の子供なんだろうな、と思ったリヴィオニスはおいを拒むことはせず、のんびりと木刀を振った。
貴族が多い騎士學校に通うリヴィオニスは、接待剣も嗜んでいるのである。「なんだこんなものか!」と知能指數が低いじに高笑いされても、リヴィオニスは「くっ」とか歯を食いしばる演技だってしてあげた。リヴィオニスの演技と言ったら、父が心底嫌そうな顔で見守ってくださる名俳優っぷりだった。
そう。この時はまだ、立ち合いをしている騎士が困ったように笑う顔を見て、そろそろ負けてやるか、と考える余裕もしっかりあったのだけれど。
13歳のリヴィオニスはちいっとばかり短気だった。脳みそと腕力が直結するタイプのゴリラ型短気。なわけで、
「ウォーリアン家の長男がこの程度とは、落ちたもんだなあ!俺なら恥ずかしくて演習場になんか來れないぞ!父親の顔が見てみたいなあウォーリアン卿!!!」
「あ」
リヴィオニスが気づいた時には、鎧のガキがぶっ飛んでいた。
おクソガキ様を王太子と知らず、うっかりぶっ飛ばしちまったこの日。リヴィオニスは父親にたんまりこってり絞られた。
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父は言った。
「知らなかったですまされない」
毆られて嫌なら騎士団の訓練に混ざんなよ挑発してくんなよつーかダッサイ鎧で顔見えなかったんだけどていうかオージサマって知ってたら言えよ、と反論することは勿論、リヴィオニスは許されていない。
さすがに、親子の土下座で済んでラッキーどころの話ではない、ということはわかっているので。
騎士団長の計らいが無ければ、危うくウォーリアン家は塵となるところだった。
「お前は悪くない。気にするな」
とこっそり、リヴィオニスにだけ聞こえるように笑ってくれた騎士団長様が、次いで王子を見ながら、「これに懲りて大人しくしてくれるといいんだが」と小さく小さく呟いた聲をリヴィオニスはしっかり聞いた。なんだかなあ。
大人しく醫務室に行くことすら億劫で、リヴィオニスは鼻を拭いながら、てってこと歩いていた。
特に目的地は無い。
父親の橫暴さをちょっと宣伝してみようかな、くらいの小さな反抗心を片手に、ちゃーんと叱られましたからね、というお知らせをもう片方の手に、鼻と土で汚れたシャツと腫れた頬で歩いているだけだ。
それはそれでまた怒られるのでは、ってのは大丈夫。迷子になりました☆って誠心誠意、平低頭、謝罪をするのみである。
しばらくして辿り著いたのは、とりどりの花が、さわさわと風に揺れている靜かな庭園だ。
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リヴィオニスの知る庭園といえば、がオホホホと扇片手に心にもない笑顔と譽め言葉をわすおっそろしい場所だったので、この時リヴィオニスは「引き返そう」と頷いた。即決即斷だった。
戦場では一瞬の判斷が命運を分ける。右に避けるか、前にかわすか、後ろに逃げるか、はたまた上に飛ぶか。無數にある選択肢の中に、正しいものは多くはない。より突飛で確実な選択肢を、一瞬にも満たない間に行に移す。それがリヴィオニスの売りなので。はい撤退、撤退。
そんなリヴィオニスを引き留めたのは、小さな聲だった。
すん、と鼻をすする、小さな小さな聲。
五だけは並みに優れていると教にお褒めいただいたリヴィオニスだからこそ、聞き取れた聲。うーん俺じゃなきゃ聞き逃しちゃうね。なんて軽い気持ちで聲の方へ足を向けた。
迷子がいたらかわいそうだし。僕も迷子みたいなものなんだけどハンカチくらい持ってるぜ、てなじで鼻を拭う。いやしかし止まらんな。仕方ない、気盛んな13歳だもの。
ガサリと植木をかき分けたリヴィオニスが見つけたのは、びく、と大きな目を見開いた、新芽みたいな緑の髪をしたの子だった。
どんぐりみたいなの目をまんまるく見開いて、涙をいっぱい溜めている。
ほっぺは真っ赤で、今にも零れんばかりの雫を堪えているのだろうか。膝の上でぎゅうと握りこんでいる拳が白くなっていた。
「…えっと、大丈夫、ですか?」
「……あなたこそ」
そりゃそうだ。
ず、と鼻をすすりながら、リヴィオニスは「大丈夫」と頷いた。
「いつものことなんです」
「鼻が?」
いやそれだと変質者みたいなんで訂正させてほしい。
「や、父に毆られるのが」
「…お父様が…?」
あ、しまったには過激だったろうか?今にも泣きそうな小さなお嬢様に聞かせる話ではなかったかもしれない。いやそもそもこんな格好な時點でアウトなんだけども。どうやってごまかそうかな、とリヴィオニスは頭の中の引き出しを開けて生臭くない話題を探そうとして、
「わたくしだけじゃないのね」
ぽろ、っと零れ落ちた聲に目を見開いた。
「は」
「あ」
聞き間違いじゃなかったらしい。
「僕が毆り返してあげましょうか?」
父は引くほど厳しいが、母には引くほど優しい男だった。メロメロのデロデロだった。
父は組手の最中、リヴィオニスと弟を毆り飛ばしながら、「には傷一つ負わせてはいけない」と騎士道を説く不屆きものだ。子供にも傷負わせんなや、と噛みついた弟のは紙かってくらいよく飛んだ。リヴィオニス?リヴィオニスは勿論「はい父上」って背中で中指立てながら神妙に言ったけれど、なんでだろうバレてて蹴り飛ばされた。
そんなわけでリヴィオニスは、こんな小さなの子を毆れるクズ野郎はこの世から抹消すべきだという結論に至った。過激なのはしょうがない。家風だ。
は、驚いたように目を見開いて、ふるふると首を振った。
「駄目です。しかられますよ」
それは僕が?君が?と思ったが、リヴィオニスはこう見えて気遣いもできちゃう13歳なので、にっと笑った。
「大丈夫ですよ。僕の父は、自分より力の弱い者に暴力をはたらく奴は皆殺しにしろって言う頭のおかしい奴なんで」
誇張してないところがリヴィオニスの父の凄いところだ。
は、ぱちんと瞬きをして、ふふ、と笑った。
「素敵なお父様なんですね」
「え、今のでそうなります?」
結局暴な話してるな、とリヴィオニスはちょっと反省しているのに、はあんなに零れていきそうだった涙を忘れたように笑っている。
ふわふわとした笑顔が可い。お砂糖みたいだ。
リヴィオニスはうずくまるのドレスを汚さないように、慎重に隣に座った。
「父上は、息子と部下は訓練だって言えばいくらでも毆っていいと思ってる野蠻人なんですよ」
ずず、と鼻をすする。マジで止まらん。あのクソおやじ。
「國のために立派な騎士にならないといけない、ってのはわかってるんですけどね」
そういう家に生まれた。それはもう仕方がない。
そういう家だからこそ與えられる富を、贅沢を、リヴィオニスは知っている。ならば対価を払わねばならん。當たり前だ。理解はしている。でもなー、あ(・)れ(・)を守るんか、と思う気持ちもあるわけで。
モンスターならいくらでも狩るんだけどな、と鼻を拭うドス黒くなってきたシャツにリヴィオニスはため息をついた。
は、ふふ、と小さく笑った。
「教育だ、って見えない場所に暴力を振るう、うちの両親と比べることすら失禮なくらい、素敵なお父様ですわ」
うっわ母親もクズらしい。ある?そんなこと。
リヴィオニスの母は、怒らせると口を挾む隙間もないくらいに、矢継ぎ早に言(げん)を飛ばす論破系かーちゃんだけれど、ヒステリックにんだり手を上げたりはしない。常に貴族然としている貴婦人で、父の前ではうら若き乙ですって顔をする優だ。
リヴィオニスは、母がの子を毆る様子を想像して、やっぱり「ありえない」という結論に至った。
「見えないところ、って人に見られて不味いことをしているって思ってるってことでしょう。うちの父上なら人前で毆れないような事はしません。僕が社會的に抹殺してあげましょうか?」
リヴィオニスは本気の過激派だった。仕方ない、家風なので。
冗談だと思っているは、クスクスと笑った。
「お父様に怒られますよ」
「そんなことで怒る男なら騎士団クビになってますよ」
ついでにリヴィオニスも家から走してやる。
「…大丈夫です。わたくしの努力が足りないだけですわ」
リヴィオニスは、ぎゅっと眉を寄せた。
ついぞ涙を零さない、このが?
「まさか」
「まあ」
貴方わたくしを知らないでしょう、と笑うの名を、リヴィオニスはたぶん、知っている。
から見ればリヴィオニスはその他大勢だけれど、王太子の隣に並ぶの子なんて一人だけだ。
パーティーやら茶會やらで、綺麗に笑顔を乗っけているを、リヴィオニスは見たことがある。そう、いつも綺麗に綺麗に笑顔を浮かべていた。
おべっかとか嫌味とか、気の悪いものに包まれた場所で、リヴィオニスが「げえっ」とこっそり舌を出すような場所で、いつも背筋をばしていた。
騎士団すら手を焼くあ(・)れ(・)は、あんなにも自由に生きているのに、こんなに小さなで、たった一人で泣くのを我慢しているの子の努力が足りないなんて、誰がそんなふざけたことを言ったんだ。リヴィオニスは、不快で吐き気すらするのに。
「わたくしは、そういう家に生まれたのですから、責任を果たしたいんです」
だから大丈夫、とはふわりと笑った。
貴婦人のように、力強い瞳で。
「貴方の頑張りに見合うものでなければ、あの方をお支えできないもの」
あ(・)れ(・)にそんな価値あります?なんて冗談でも言えないくらいに、そっと細められた瞳は、泣きたくなるくらいに切実だった。
が苦しくなるほどに優しくて、強くて、悲しいほどに脆い瞳。
紅茶みたいにき通ったその瞳から、リヴィオニスは目が離せない。
だから、そっとハンカチが當てられている事に気が付いて、滅茶苦茶に慌ててしまった。
「汚れます!」
「ハンカチはそのためのものでしょう」
「いやいや野郎のを拭いていいもんじゃないでしょう!」
らかいハンカチの手りに揺するリヴィオニスに、は楽しそうに笑った。
「わたくしのものなんか、安ですからご安心ください」
「そんなわけないでしょう!」
土とで汚れた手で、の細い手を握るわけにもいかない。
わたわたとするリヴィオニスの顔を呑気な顔で拭うの顔が近いことにも、リヴィオニスは揺する。うっわ近くで見ると可いな。
純な13歳の心臓がバクバクいってることなんて知りませんて顔で、お嬢様はハンカチをぽんぽんごしごし。リヴィオニスは、しずまれ~しずまれ~と教の熊みたいな顔を思い浮かべつつも、2つの目をの顔から引き剝がせない。
あまい、いいにおいのキャラメルみたいな丸い目に、上向きの睫、すっと通った鼻筋に、小さなサクランボの、それからほんのりと日に焼けた瑞々しいを、野郎に囲まれて寢起きするリヴィオニスは、これはこの世のものだろうかといっそ疑いすら抱き、じいいっと見詰めた。
だからリヴィオニスは聞き逃さなかった。
「貴方が獻を後悔しない國であれるよう、負けないから」
きんと冷えた日の、朝に濡れる若葉のようなその聲を。言葉を。
リヴィオニスは一文字も聞き逃さなかった。
誓いのように。
言い聞かせるように。
戒めるように。
すっと落ちた、きっと誰にも聞かせるつもりのなかったその聲を、リヴィオニスは聞き逃してやれなかった。
その聲に、リヴィオニスはに落ちた。
素晴らしい。それまでの自分が360度まるっと変わっちまう、そんなだ。
真逆を向いたくらいじゃ足りない。一周くるりとまわって戻ってきた場所は同じだけれど、脳みそからポケットまで全部ひっくり返されたような、そんなだ。
リヴィオニスが騎士になることも、教がクッソ厳しいことも、友人がなんだかんだ彼一筋なのも、彼が王太子の婚約者であることも、何一つとしてなーんも変わっとりゃせんけど、リヴィオニスは苦しくてしょうがなくなった。
苦しくて、苦しくて、なんとしてでも彼を守らねばならなくなった。
ああ、ああってやつは、なんてクソみたいに素晴らしいのか。そりゃあ巷で小説が流行るわけだわ、と帰りの馬車でリヴィオニスは父に詰め寄った。
あのをなんとか助けたい。
必死に伝えると、父は苦い顔で「ああ、なるほど」「そうか」と呟き、リヴィオニスの頭を暴にでた。は?うざい。
「そのご令嬢は、お前に助けを求めたのか」
わかっていて言う、父親のこういうところがリヴィオニスは嫌いだ。
「…いいえ」
だろうな、って頷く橫顔を毆り飛ばしたいが、生憎リヴィオニスにまだその力は無い。じろりと見上げると、父は仕方がないものを見るように目を細めた。
「全てのものを救うのが騎士だ。けれど、誰でも救えるわけではないんだよ」
リヴィオニスは自分と揃いの紫の瞳を、これでもかと睨みつけた。
「うるせえクソじじィ!!!」
速攻でぶん毆られたのは言うまでもない。
「ソフィーリア様のお母様は、亡くなっていらっしゃるの」
抵抗空しく、父にぼっこぼこに負かされた夜。もも盡き果てるまでをかして、それでもあの聲を、眼差しを、笑顔を忘れられないリヴィオニスに、母はゆっくりと語る。
「絆を結ぶのは大変なことよ。きっと、新しいお母様と妹さんと、必死に縁をつないでいらっしゃるところなのよ」
オブラートどころか、リヴィオニスが頭からぐるっと被っている布団のように分厚い面で覆った母の言葉に、リヴィオニスはむすりと頬を膨らませた。
「拳で分かり合えるのは雙方が力を振るってこそで、ついでに言うと父上のようなクソ野蠻人だけですよ」
その野蠻人の息子であるリヴィオニスは、オブラートだろうがお布団だろうがゼラチンだろうが、何かに包まねばならん作法が嫌いだ。毆って毆られても嫌いだが、わかりやすいところだけは評価している。まあ所詮、野蠻人の息子なので。
「そうね。でも、わたくしの可いリヴィならわかるでしょう?彼は王太子殿下のご婚約者ですもの。そう簡単な問題ではないのよ」
こう見えてリヴィオニスは、貴婦人の母と、騎士団でまあまあ立場のある父に育てられた賢い年であったので。ええ勿論ですとも。ちゃんと理解は(・)していますとも。
例えば、いじめにあっていた同輩を助けにって、相手をリヴィオニスがぶん毆ったとき。年が「いじめなど無い」と言った瞬間に、自に無法者のレッテルがバシーンとられたように、この手の問題は繊細だってことを、リヴィオニスは知っている。
年を恨むつもりは頭ない。
年の震える歯が奏でる不協和音に耳を貸さない大人がクズなだけで、プライドの塊であった年の家が、そもそも意味の無い暴力を働く連中がクズなだけで、年は悪くない。
父の言うとおりだ。聲を上げてくれないと、騎士だってどこに走ればいいのかわからない。理解はできる。
でもでも。でも。
それじゃあ、聲を上げたくっても上げられない年は。あのの「助けて」は。どこへ行くのだろう。
悔しくて、空しくて、悲しくて、リヴィオニスは涙が止まらなかった。
教に毆られても叱られても、父に骨を折られようとも、一度だって泣いたことは無い。
だけどもその日、リヴィオニスは、ちっぽけな自分の無力さを、學舎を去った背中を止められなかった日と同じようにを見送ってしまった己の弱さを許せなくて、自分のために泣いた。その淺ましさが、悔しくって仕方が無かった。
「…彼のお父様が、家同士で決められた婚約に納得せず外に人をつくっていたことは、有名な話だったのよ。ソフィーリア様のお母様が亡くなってすぐに奧様とご息をお迎えになったことを、誰も不思議に思わなかったわ。…きっと、ソフィーリア様も」
母は社界の噂に通じている。
淡々と告げる、糞悪い話にリヴィオニスはぎしり拳を握った。
「あの家は王家の流れを汲んでいるから、失腳することを陛下はまないわ。ソフィーリア様はその全てをわかっているからこそ、いつでも背筋をばして微笑みを浮かべていらっしゃるのよ。…その聡明さを、國は手放さないわ」
つまりはリヴィオニスにできることは、なんにも無かった。
自が、なんでもありません、と綺麗な笑顔を浮かべて立っているのだから、がどんな目にあっていても、何も起きていないのだ。クソか。クソだ。
「僕は、人を守る力を付ける為に、父上や教に毆られても甘んじてやってるのになんですかこれ。マジでふざけろクソったれめ」
「せっかく綺麗な顔に産んであげたんだから、そういう言い方やめてちょうだい」
諦めろ、と諭す大人の聲に、リヴィオニスは布団で耳をふさいだ。
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指風鈴連続殺人事件 ~戀するカナリアと血獄の日記帳~
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