《【8/10書籍2巻発売】淑の鑑やめました。時を逆行した公爵令嬢は、わがままな妹に振り回されないよう格悪く生き延びます!》10、あのドレスも素敵だった
それからしばらくは、お茶とお菓子を楽しみながら取り止めのない話をした。
ドレスの選びで私がどれほど苦労したか、一部始終を話すとイリルは大笑いした。
「それはぜひ見たかったな」
「でしょう?」
私も笑ってしまう。
「視察先をもっと近くに変えたいくらいだよ。そうしたら、君のドレスと、オフラハーティ公爵の桃の上著に間に合うように帰ってこれる」
私はそっと聞いた。
「どちらまで行かれますの?」
「ドーンフォルトの國境近くだよ。陛下からのご指名じゃなければ斷るのに」
イリルはさらりと答えたが、重要な任務だった。
海に面した小國である、我がカハル王國は、背後に連なる山脈のおかげで大國の侵略は免れている。
が、いつ何が起こるかはわからない。
ドーンフォルト國は、山脈の向こう側に位置する國だ。今までに何度もこちらに攻めようとした。
だから、牽制を込めて、定期的に國境付近を視察するのは、とても大事なことだった。
私はなんとか勵まそうと、イリルを見つめる。
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「アカデミーの卒業も近いですし、いよいよ責任のあるお役目を任されるようになってきたのは、素晴らしいことだと思います」
「栄だよ。でも」
イリルは肩をすくめた。
「クリスティナのデビュタント後、初めての本格的なパーティーなのにエスコートできないのは、やっぱり殘念だ」
「それならお兄様が代わりをしてくれますから、ご安心ください。私、立派に主役をやり遂げてみせますわ」
ふむ、とイリルは腕を組んだ。
それから、もう一度私に聞く。
「普段から本ばかり読んでいるシェイマスを引っ張り出すのに、かなり苦労しただろう?」
「なんだかんだで妹思いなところありますから」
噓だった。何通も手紙を書いてやっと説得した。
でもそんなことは言えない。
「どうぞ気になさらないで」
イリルはふふっと笑った。
「クリスティナ、気付いてる? 君、さっきから淑の鑑みたいなことしか言ってないよ」
「え?」
そして私の瞳を覗き込む。
「どうせならそうじゃない言葉が聞きたいな」
私は慌てて首を振った。
「それとこれは別ですわ。そもそも淑の鑑をやめるのは、ミュリエル限定のつもりですし」
だがイリルは引かない。
「に付いた習慣は簡単には変わらないよ。練習だと思って、淑らしからぬ、今の本當の気持ちを言ってみて」
「言っても、困らせるだけです」
「困ってもいいよ」
案の定、イリルは引かない。私は赤くなる頬を隠すように橫を向いた。
イリルは諦めたように呟く。
「ということは、さっきのがクリスティナの本當の気持ち? シェイマスがいれば構わない?」
ーー違う。
シェイマスお兄様に不満がある訳じゃないけれど。
辺りを見回した私は、思い切って小聲で打ち明けた。
「どうせなら私も……イリルにエスコートしてもらいたかった。アメジストに合わせたドレス、見ていただきたかった……です」
言い切ると不思議と清々しい気分になった。
ミュリエルを邪魔者扱いしたときには湧かなかった覚だ。
ーーはしたないかもしれないけど、言ってよかったのかもしれない。
そう思って視線を上げると、ぼんやり私を見つめるイリルがいた。
「イリル?」
そんなことは珍しいので思わず聲をかけると、はっとしたようにまばたきをした。それから。
「あーあ。僕も、かなり見たかったよ、君のドレス姿」
心から殘念そうに、言ってくれた。
そんなふうにお茶會は無事に終わった。別れ際に、また手紙を書き合う約束をした。
「戻ってきたら、會いにくるよ」
「楽しみにしてます」
イリルとの些細なやりとりをひとつひとつ大事に思い返しながらも、日々は忙しく、私はパーティーの準備に明け暮れた。
‡
そして、誕生日當日。
み通りの紫のドレスを著つけた私は、鏡越しにルシーンに聞いた。
「おかしくない?」
「とてもお綺麗です」
「ミュリエルも出席よね?」
「はい、ですが今日はまだお姿を拝見しておりません」
拗ねているのか、あれ以來ミュリエルは私と顔を合わさないようにしていた。
し不穏な予もしたが、今日ミュリエルが部屋から出てこなかったら、気分が悪くなったようだと誤魔化すつもりだった。
ーーでも、あのドレスも素敵だったから、出てくるんじゃないかしら。
ちらりと見たミュリエルの桃のドレスは、思った以上にかわいらしく、ミュリエルのあどけなさをうまく引き立てるだろう。
「お父様もいらっしゃるのね?」
「先ほどお見かけしました」
お父様も忙しかったのか、まったく話す機會がなかった。
ーーまあ、それはいつものことね。
そこに控え目なノックの音が響いた。
返事をすると、お兄様だった。
「準備はできたかい」
「ええ、お兄様。今日はわざわざありがとうございます」
頷いたシェイマスお兄様は、すぐに私を促した。
「もうかなり集まっているみたいだ」
「まあ、急がなきゃ」
正裝したお兄様の隣に立つ私は、銀髪に合う紫のドレスに、イリルから贈られたアメジストを付けている。
満足して、大広間に向かった。
「クリスティナ様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「なんておしい」
あっという間に囲まれた。
口々に挨拶をわすと、何人かが言いたげに黙り込むことに気がついた。
「どうされました?」
そのうちの一人に聲をかけると、扇で口元を隠しながら、説明してくれた。
「あの、申し訳ありません、わたくし、てっきりあちらの方がクリスティナ様だと思っていてーー」
そこまで聞くと、もうわかっていた。
「どういうことだ?」
隣でシェイマスお兄様が呟く。
「お姉様、お誕生日おめでとうございます!」
駆け寄ってきたミュリエルのドレスは、私とまったく同じ紫だった。
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