《【8/10書籍2巻発売】淑の鑑やめました。時を逆行した公爵令嬢は、わがままな妹に振り回されないよう格悪く生き延びます!》11、せっかく同じにしてあげたのに
大勢の人が集まった公爵家の大広間で、まったく同じのドレスを著た私とミュリエルが向き合った。
シェイマスお兄様の、思わず囁いてしまったと言わんばかりの、
「嫌がらせか?」
という率直な言いに、思わず吹き出しそうになる。
私も同じように、お兄様にだけ聞こえるように囁く。
「お兄様、ここは私に任せてくださらない?」
戸いを見せながらも、お兄様は小さく頷いた。
「意外と落ち著いてるな」
「ええ、まあ」
私は曖昧に微笑むにとどめた。
ーーだって、二度目だもの。
余裕があるのか、「前回」の私には見えなかったことが見え、聞こえなかったことが聞こえる。
例えばこんな貴婦人たちのひそひそ話も。
「……同じだなんて」
「妹君だとか……」
「ああ、引き取られたとかいう」
「でも、仲の良さを見せつけるにしては……ちょっと非常識では」
白い目を向ける方の大半は、イリルの婚約者候補として名前が上がった貴族令嬢達だ。
彼たちは隙あらば、私を引きずり下ろそうとしている。
そんなことはさせませんけど。
様々な思と、好奇心に満ちた視線が、ミュリエルから私に移る。
たっぷりとそれを浴びてから、私は口を開いた。
「ミュリエル」
令嬢らしく、姉らしく、穏やかに呼びかける。
ミュリエルは頬を薔薇に染めた。
「お姉様! おめでとうございます! とても素敵な誕生日會ですね!」
「ありがとう」
私は鷹揚に頷いてから、
「それで、どういうことなのかしら?」
ミュリエルはなんのことかわからない、という顔をする。重ねて尋ねた。
「あなた、どうして私と同じのドレスを著ているの? 確か桃のドレスにしたんじゃなかったかしら」
ミュリエルは満面の笑みを浮かべた。
「やっぱりお姉様と同じを著たくて、こっそり作ってたんです! 喜んでもらえました?」
どこまでが本心なのかはわからない。ただ、そう言って笑うミュリエルはとてもらしかった。
しかし。
「そうだったのね、でも」
私は無慈悲に伝える。
「今すぐ著替えてらっしゃい」
ミュリエルは口をぽかんと開けた。
「著替え?」
「髪がれたらそれも直すのよ」
「どうして……なんで?」
「紛らわしいからよ」
「でもせっかく……お姉様と同じで……」
周りが聞こえよがしに囁いた。
「まあ、まだ社界の常識もご存知ないのだわ」
「無理もありませんわ。だって、ミュリエル様のお母様って……ねえ?」
「ですが、それならクリスティナ様がきちんと教えてあげるべきでは?」
それら全部に聞こえないふりをして、私はほんのし眉を下げた。
困った顔に見えるように。
「ミュリエル……あなたって本當に可いわ」
シェイマスお兄様がものすごい勢いで私に怪訝な表を向けたが、余計なことは言わないように、目で制した。お兄様のきが止まる。
ーー次からは気をつけまぁす。
私だけが、「前回」のあのミュリエルを知っている。
だから、なんとかできるのも私だけ。
ーーお姉様のもの全部しいの。
あの言葉がずっと耳に殘っている。
ミュリエルが、本気で私に憧れて、同じにしたわけじゃないのはわかっている。
私のものがしいだけ。
私と同じのドレスを著て、私と自分を比べさせ、その上で自分の方を多く褒めてしいのだ。
ーー本當に、張りね、ミュリエル。
私への稱賛までしがる妹。
だけど、今回はそんな簡単に奪わせない。
「ミュリエル、何度も言っているでしょう? あなたもそろそろ淑にならなくちゃ」
ミュリエルは、見る見るうちに涙を浮かべた。
「ひどぉい……!」
悲しげに訴える。
「せっかく私が……お姉様と同じにしてあげたのに……ひどい」
正直に言うと、ドレスのなんかどうでもよかった。それで私の何が変わるわけではない。
ーーだって、私は何も失わない。
だからこれはむしろ親切だと思ってしい。
私はミュリエルの手を取った。
ミュリエルは本気で驚いたように目を丸くした。
「大丈夫よ」
人々の注目をじながら、私は言う。
「なんでも私と同じじゃなきゃ自信がないのね。あなたは十分可らしいのに」
【書籍化】解雇された寫本係は、記憶したスクロールで魔術師を凌駕する ~ユニークスキル〈セーブアンドロード〉~【web版】
※書籍化決定しました!! 詳細は活動報告をご覧ください! ※1巻発売中です。2巻 9/25(土)に発売です。 ※第三章開始しました。 魔法は詠唱するか、スクロールと呼ばれる羊皮紙の巻物を使って発動するしかない。 ギルドにはスクロールを生産する寫本係がある。スティーヴンも寫本係の一人だ。 マップしか生産させてもらえない彼はいつかスクロール係になることを夢見て毎夜遅く、スクロールを盜み見てユニークスキル〈記録と読み取り〉を使い記憶していった。 5年マップを作らされた。 あるとき突然、貴族出身の新しいマップ係が現れ、スティーヴンは無能としてギルド『グーニー』を解雇される。 しかし、『グーニー』の人間は知らなかった。 スティーヴンのマップが異常なほど正確なことを。 それがどれだけ『グーニー』に影響を與えていたかということを。 さらに長年ユニークスキルで記憶してきたスクロールが目覚め、主人公と周囲の人々を救っていく。
8 171【書籍化作品】離婚屆を出す朝に…
書籍化作品です。 加筆修正した書籍のほうは、書店での購入は難しいですがネットではまだ購入できると思いますので、興味を持たれた方はそちらも手に取って頂ければ嬉しいです。 こちらのWEB版は、誤字脫字や伏線未回収の部分もあり(完成版があるので、こちらでの修正は行いません。すみません)しばらく非公開にしていましたが、少しの間だけ公開することにしました。 一か月ほどで非公開に戻すか、続編を投稿することになれば、続編連載の間は公開します。 まだ未定です。すみません。 あらすじ 離婚屆を出す朝、事故に遭った。高卒後すぐに結婚した紫奈は、8才年上のセレブな青年実業家、那人さんと勝ち組結婚を果たしたはずだった。しかし幼な妻の特権に甘え、わがまま放題だったせいで7年で破局を迎えた。しかも彼は離婚後、紫奈の親友の優華と再婚し息子の由人と共に暮らすようだ。 思えば幼い頃から、優華に何一つ勝った事がなかった。 生まれ変わったら優華のような完璧な女性になって、また那人さんと出會いたいと望む紫奈だったが……。 脳死して行き著いた霊界裁判で地獄行きを命じられる。 リベンジシステムの治験者となって地獄行きを逃れるべく、現世に戻ってリベンジしようとする紫奈だが、改めて自分の數々の自分勝手な振る舞いを思い出し……。 果たして紫奈は無事リベンジシステムを終え、地獄行きを逃れる事が出來るのか……。
8 186化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~
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8 177-COStMOSt- 世界変革の物語
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