《【8/10書籍2巻発売】淑の鑑やめました。時を逆行した公爵令嬢は、わがままな妹に振り回されないよう格悪く生き延びます!》52、俺ばかり苦労している
‡
部屋で一人ワインを飲み、ボトルがすぐに空になる。そんなことでさえ、今のオーウィンにとっては不機嫌の種だった。
「酒だ! 酒を持ってこい!」
「旦那様、もうそのくらいにしておいた方が」
「うるさい! 執事の分際で俺に指図するな!」
トーマスが諦めたように頭を下げる。
人のダニエラ・イローヴァーが、芝居の練習で忙しいなどと理由をつけては呼び出しに応じないのもイライラに拍車をかけていた。
——どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって。
練習なんて噓に決まっている、とオーウィンは考える。俺が呼んでいるのに來ない理由なんてあるもんか。
何もかも気にらなかった。
領地の不漁が回復し、聖誕祭の出荷に間に合う見込みが出たという、本來なら喜ぶべきことも今のオーウィンには面白くない。そのせいで周りがやたらシェイマスを褒めるのだ。
——何がさすが坊っちゃまですね、だ。
領地からの報告で、いい知らせにはすべてシェイマスの賞賛がついてくる。
Advertisement
——若いうちはもっと苦労すべきだ。
調子に乗ったシェイマスは、オーウィンの反対を押し切り、規模を小していた祭祀を復活させるなどと言う。領民のご機嫌を取るつもりなのだろうが、そんなことをしてもつけあがらすだけだとわかっていないところが子供だ。
「大、この謹慎はいつ解けるんだ」
酔いの深まったオーウィンはグラスを傾けながら、獨り言を言う。宮廷からはなんの沙汰もない。
——まったく俺ばかり苦労している。
ボトルがまた空になった。
「トーマス、お代わりだ」
「旦那様、もう本當にその辺で——」
「うるさい!」
ガシャン!
トーマスの足元目がけてグラスを投げたが、そこまでは屆かず手前で落ちた。
「片付けておけ!」
黙って欠片を拾うトーマスを目に、オーウィンは寢室に引き上げた。寢臺に倒れ込む前に、ふと思いついて、離さずにつけている天鵞絨の小袋を懐から取り出す。
袋の口を緩めて逆さまにすると、手のひらに、ころんと、ベリーほどの大きさの真っ黒の石が転がる。
楕円形でツヤのあるその石は、小さいながら見つめるものを吸い込むような存在があった。
ふふっとオーウィンは笑った。
「まあいい。俺にはこれがある」
出産後のエヴァが差し出した「守り石」だ。ミュリエルが生まれたときに握りしめていたらしい。でかした、とんだあの日の自分を覚えている。
……アルバニーナ様が出來ないことをしましたか?
そう言って微笑むエヴァの顔はおぼろげだが。
「そうだ、俺は特別なんだ」
守り石を袋に戻して、オーウィンはニヤつく。「特別な子供」であるミュリエルを今まで大事に育ててきた俺こそが、特別な存在なのだ。そう思いながら眠りについた。
‡
オーウィンの部屋を片付けて廊下に出たトーマスは、ブリギッタが自分の部屋ではない扉を開けようとしているのを見て眉をひそめた。
もちろん鍵がかかっている。ブリギッタは諦めたように、次の扉に手をかけた。
「何をしているのですか」
びく、と肩を揺らしたブリギッタはゆっくりと振り返った。
「部屋を間違えてしまいました」
もうとっくに休んでいるはずの時間だ。
「貴方の部屋から隨分と遠いですが」
ブリギッタは悪びれず答える。
「考え事をしていたもので」
「お送りしましょうか?」
「いえ、大丈夫です。おやすみなさいませ」
ブリギッタは踵を返した。
トーマスはその背中が見えなくなるまで、そこをかなかった。
‡
「ブリギッタとサーシャから、まだ何もわからないと報告があったわ」
以前に比べるとすっかり面やつれしたギャラハー伯爵夫人が、ドゥリスコル伯爵に向かって言った。
ギャラハー伯爵の別邸で過ごすドゥリスコル伯爵だが、いつの間にかギャラハー伯爵夫人もそこで一緒に暮らすようになっていた。
夫であるギャラハー伯爵は領地と本邸を往復するばかりで、何も言わない。夫婦仲はとっくに破綻していたが、今のギャラハー伯爵夫人にとっては重要なことではなかった。
それよりも、目の前の男の反応が気になった。
「役に立ちませんね、貴方も彼たちも」
ドゥリスコル伯爵の聲は穏やかだったが、ギャラハー伯爵夫人は怯えたような目を向けた。
「……めんなさ……」
ドゥリスコル伯爵は、ふふ、と微笑んでギャラハー伯爵夫人の肩を抱いた。
「そんな怖がらなくても大丈夫です、ケイトリン。さあ、私の目を見て」
「……あ……アラナ……」
ギャラハー伯爵夫人の聲がさらにか細くなる。ドゥリスコル伯爵は、満足そうに頷いた。簡単なものだ。他の者も、みなこうだったら楽なのだが。
ドゥリスコル伯爵は、先日會った生意気な公爵令嬢を思い出して苦笑した。
——仕方ない、まずは確実なところからいきましょうか。
「ケイトリン、以前言っていた、陛下付きの侍のポリーですが」
「……はい」
「そろそろ會わせてもらえますか?」
「でも……」
「ケイトリン、目を見て。私は誰?」
「アラナン……はい……アラナン……手紙を書きますわ……」
「絶対ですよ?」
「ええ……アラナン……」
ギャラハー伯爵夫人はうっとりと呟いて、ドゥリスコル伯爵の肩に頭をもたせかけた。
「ケイトリン、可い人」
ここまでくるのに時間がかかったが、こうなると話が早い。ドゥリスコル伯爵は満足そうに頷いた。
星の見守り人
如月 星(きさらぎ せい)はごく普通の宇宙好きな天文探査官だった。 彼は銀河連邦の公務員で有り、科學や宇宙が好きだったので、宇宙探査船に乗って、宇宙探査局の命令に従い、のんびりと宇宙探査をしていた。 辺境の宇宙を しかし彼の少々変わった才能と、ある非常に特殊な遺伝的體質のために、彼は極めて特殊な計畫「メトセラ計畫」に関わる事となった。 そのために彼は萬能宇宙基地とも言える宇宙巡洋艦を與えられて、部下のアンドロイドたちと共に、宇宙の探査にでる事となった。 そしてある時、オリオン座のα星ベテルギウスの超新星爆発の調査に出かけた時、彼のみならず、人類全體の歴史と運命を背負う事になってしまった・・・ これは科學や探検が好きな一人の人間が、宇宙探検をしながら、しかしのんびりと暮らしたいという矛盾した欲求を望んでいたら、気が遠くなるような遠回りをして、ようやくその願望を葉える話である!
8 137【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!
二年前、親から絶縁され一人暮らしをすることになった天原ハヤト。當時14歳。 最終學歴中卒でろくな職場にもありつけない中、空から降ってきた隕石が未知の世界”ダンジョン”を日本にもたらした!! もう食ってくためにはこれしかねえ! と速攻で探索者になった彼だが、金にものを言わせた企業戦士たちに勝てるはずもなくあえなく低階層でちびちびとモンスターを狩る毎日。 そんなある日、ついに生活することすら難しくなった彼は飛び降り自殺を試みる。しかし、そんな彼を助けたのは隕石についてきた美女(脳內限定)。どうも彼女の話によるとダンジョンは地球の寄生蟲だからさっさと攻略したほうが良いらしい。 彼女から【武器創造】と【スキルインストール】という二つのスキルを貰ったハヤトは地球を救う……ためではなく目の前の生活のためにダンジョンに潛ることにした。 そうしないと、飯が食べられないからね。仕方ないよね……。 『2019/11/16 日間ランキングで1位になりました!』 『2019/11/19 週間ランキングで1位になりました!!』 『2019/11/27 月間ランキングで1位になりました!!!』 この作品はノベルアップ+、カクヨムでも連載しています! 『2020/6/18 完結ッ!!』
8 85異世界でチート能力貰ったから無雙したったwww
とある事情から異世界に飛ばされた躄(いざ)肇(はじめ)。 ただし、貰ったスキル能力がチートだった!? 異世界での生活が今始まる!! 再連載してます 基本月1更新です。
8 59神がくれたステータスがいかれ過ぎているのだが?
主人公の小林 裝が小さい子を助ける 神に會う 転生する あれこれたくさんある ⚠不定期です。
8 111外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜
異世界に転移した主人公に與えられたスキルは、ただ永遠と生きる事が出來る『不老不死』。ステータスは村人レベルであり、他にマトモなスキルといえば、算術やら禮節やらの、現代日本で培ってきたものばかり。 しかし、主人公を異世界に召喚した先が特殊で…。 ___________________________________________ 夜中に思いつきで投稿しました!後悔も反省もしてません! 現在好評(?)連載中の『転生王子は何をする?』もお願いします。
8 106ドン底まで落ちた私
25歳でドン底を見た私がもう一度這い上がる為の決意をする話
8 73