《【8/10書籍2巻発売】淑の鑑やめました。時を逆行した公爵令嬢は、わがままな妹に振り回されないよう格悪く生き延びます!》59、天鵞絨の小袋
「私の婚約者に何をするつもりですか」
イリルの聲は恐ろしいほど冷えきっていた。
「私の娘だ! 離せ!」
「それは手を上げていい理由にはなりません」
「うるさい!」
父はじたばたと暴れていたが、イリルはびくともしなかった。
「はっきり言っておきますが、クリスティナに手を出したら公爵でもただでは置きませんよ」
「私は父親だぞ!」
「私の中では子供に害なす者をそうは呼びません」
ヒートアップする父をどうやって宥めようか私が考えていると、
「何よ、何よ、何よ、お姉様ばっかり!」
突然ミュリエルがんだ。
「いつもそう! お姉様ばっかり大事にされてる!」
「何を言ってるの、ミュリエル」
「お姉様なんて大嫌い!」
陛下がついに立ち上がった。
「これでは話にならん。公爵、場を騒がせた責任は追及させてもらう」
父は慌てたように陛下に向き直った。イリルもようやくその手を離す。
「しかし陛下、私は國のために」
その聲には純粋な疑問が滲み出ており、父は本當にこれが國のためだと思っているのだと私はじた。だとしても、なぜ。
Advertisement
どんな崇高な意図があるにせよ、もっと適切なやり方があったはずだ。案の定、會場のざわめきは収まらない。お兄様が苛立ったように眉をひそめているのが見えた。公爵家としてどのように後始末をするか考えているのだろう。肩書きはともかく、私にはお兄様とお父様の立場はすでに逆転しているように思えた。陛下がため息混じりに父に告げる。
「本當に國を思うなら、娘を他國に嫁がせるなど言わないはずでは?」
「あれは例え話ですよ」
「とにかく話は後で聞かせてもらう」
陛下は目で側近たちに合図した。父はすがるようにぶ。
「待ってください!」
陛下はそれを無視し、父ではなく卒業生たちに向かって聲を張った。
「パーティはここでお開きだが、君たちの將來を」
そこで突然、陛下の顔が苦しそうに歪んだ。
「——ぐっ!」
を押さえて前のめりになる。
「あなた?!」
「父上?」
ルイザ様が支えようとしたが間に合わず、陛下はそのままゆっくりと床に倒れていった。
「大変だ!」
「なんてこと!」
「誰か!! 醫者を!」
あちこちからび聲が上がる。レイナン殿下とイリルがすぐさま駆け寄った。
「……イリ……ルラ……」
陛下が何かおっしゃったのをイリルが口元に耳をつけるようにして聞き取っていたのが目にった。イリルがはっとしたように目を見開く。
「醫者を! 醫者を早く!」
レイナン殿下の聲に、何人かが走って外に出て行った。私もフレイア様の元に寄ろうとしたそのとき。
「ふふふふ……」
耳を疑って振り返った。父が嬉しそうに笑っているのだ。
「お父様?」
この場にそぐわないその表に、ミュリエルでさえ怯えた様子だった。周りの目を気にもせず、父は本當に嬉しそうに懐に手をれる。張が走ったが、父が取り出したのは何の変哲もない、天鵞絨の小袋だった。
「陛下、そんなときこそこれです! 私は心が広いので出し惜しみしません!」
妙に浮かれた口調の父は、袋の口を逆さにした。ころん、とツヤのある黒い石のようなものが父の手のひらに転がる。
「ほら、役に立つ日が來たぞ。行ってお前の役割を果たしなさい。ミュリエル、早くここに」
父は貓なで聲で呼んだが、ミュリエルはかなかった。するとーー。
「ひっ!」
「あれは?!」
石の方からき出した。父の手のひらからゆっくりと浮かび上がった黒い石は、弱々しく空中を浮遊し始めた。
「なんだ……あれは?」
あり得ないその景に、その場にいた誰もが何も出來なかった。もちろん私も。しかし信じられないことに、石は急にスピードを上げ一直線に私に向かって飛んできた。
「え?」
驚く私の目の前で石が止まる。あちこちで悲鳴が上がった。石は私を見つめるかのように、目の高さでじっとしていた。
「クリスティナ!!」
傍に來たイリルがその石をぱっと摑んだ。
「何をする?! それはミュリエルのだ!」
父の言葉をイリルは無視した。
「走ろう! 逃げるんだ。多分公爵は正気じゃない」
わけもわからず私は頷き、イリルの手を取った。
「兄上、父上を頼みます!」
イリルは最後にそうび、私たちは會場を出た。何が起こっているのかわからないせいか、誰も私たちを止めなかった。
學に繋がれていた馬にイリルと二人で乗った。馬を走らせながらイリルは言う。
「急いで支度を整えて、ペルラに向かおう」
「ペルラ? 修道院ですか?」
「ああ、さっき父上……陛下が倒れながら私に呟いたんだ。ペルラに行け、と。おそらく、そこなら君を本だと証明できる」
「本?」
イリルは頷いた。
‡
「おやおや、大変なことになりましたね」
バルコニー席にこっそり忍び込んでいたドゥリスコル伯爵は、階下の喧騒を眺めてそう呟いた。
「オーウィンの子息の卒業を祝おうと、こっそりり込んだのにそれどころではなくなりましたね」
生意気な公爵令嬢をもっと追い詰めたかったが逃げられてしまった。
——わかっていたが、使えない男だ。
「陛下は大丈夫かしら」
ギャラハー伯爵夫人が隣で呟く。ドゥリスコル伯爵は心配そうに頷いた。
「ケイトリン、そうですね、陛下の力にならなくては」
「これからどうなるんでしょう?」
ギャラハー伯爵夫人の細い腕を取ったドゥリスコル伯爵は、赤い目を細めた。
「大丈夫、すべて私に任せてください」
「よかった」
ギャラハー伯爵夫人は安心したように微笑んだ。
パドックの下はパクチーがいっぱい/女子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー
京都競馬場のイベント。著ぐるみを著た女が階段から落ちて死んだ。その死に疑問を持った女子大の競馬サークルの後輩たちが調査を始める。なぜか、顧問の講師に次々と降りかかるわけの分からない出來事。 講師に好意を抱く女子學生たちの近未來型ラブコメディー&ミステリー。 講師の心を摑むのは、人間の女の子か、それとも……。 そして、著ぐるみの女の死は、果たして事故だったのか。推理の行方は。 「馬が教えてくれる」という言葉の意味は。 そして、妖怪が仕掛けた「合戦」によって得られたものは。 推理とはいえ、人が人を殺すという「暗さ」はなく、あくまで楽しく。 普通の人間、ゾンビ人間、妖怪、ペットロボットが入り亂れ、主人公を翻弄します。 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリーです。 錯綜したストーリーがお好きなミステリーファンの皆様へ。 第四章から物語は不思議な転換をし、謎が大きく膨らんでいきます。お楽しみに。 かなりの長編になりますので、少しづつ、ジワリと楽しんでいただけたら幸いでございます。
8 186ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years
昭和38年の春、高校1年生の少女が林 の中で、突然神隠しに遭った。現場には、 血塗れとなった男の死體が殘され、偶然 その場に、少女と幼馴染だった少年が居 合わせる。そして男は死に際に、少年へ ひとつの願いを言い殘すのだった。 20年後必ず、同じ日、同じ時刻にここ へ戻ってくること。そんな約束によって、 36歳となった彼は現場を訪れ、驚きの 現実に直面する。なんと消え去った時の まま、少女が彼の前に姿を見せた。20 年という月日を無視して、彼女はまさに あの頃のままだ。そしてさらに、そんな 驚愕の現実は、彼本人にも容赦ないまま 降りかかるのだ。終戦前、昭和20年へ と時をさかのぼり、そこから平成29年 という長きに亙り、運命の糸は見事なま でに絡み合う。 そうしてついには100年後の世界へと、 運命の結末は託されるのだ。 172年間にわたって、時に翻弄され続 けた男と女の物語。
8 97學園一のお嬢様が風呂無しボロアパートに引越してきたんだが
俺、狹山涼平は苦學生だ。高校二年生にして仕送り無しの一人暮らしをこなす日々。そんなある時、涼平の隣の部屋にある人物が引っ越してきたのだが……。 「さ、狹山くんが何故ここにいますの?」 「それはこっちのセリフだ!」 なんと隣人はクラスメイトの超セレブなお嬢様だったのだ。訳ありで貧乏生活を迫られているらしく、頼れるのは秘密を知った俺だけ。一人で生きるのも精一杯なのに金持ちの美少女も養えとか無茶振りだっつーのっ!
8 157異世界転移した俺がやることは?
突如教室に現れた魔法陣に慌てるクラスメイト達。そんな中1人、落ち著いている奴がいたそいつは、「あ、これもしかして異世界転移じゃね?」とのんき にそんなこと考えていた。強い光があたりを照らし、その光が収まって周りを見渡すとそこは、學校の教室ではなく全く知らない場所だった... ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ この作品は自分がなんとなく書きたいなぁと思って始めたものです。拙い文章で読みにくいかも知れませんが見てくださるととても嬉しいです。 6月21日 タイトルを変更しました。 6月23日 サブタイトルを若干変更しました。
8 67《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
【第Ⅰ部】第1話~第49話 完結 異世界転移した先は、クロエイという影を食うバケモノのはびこる世界。その世界の人たちは、血液をエネルギーにして生活していた。血の品質の悪い者は、奴隷としてあつかわれる。そんな世界で主人公は、血液の品質が最強。血液でなんでも買えちゃう。クロエイだって倒せちゃう。あと、奴隷少女も救っちゃう。主人公最強系戀愛ファンタジー。 【第Ⅱ部】第50話~第96話 完結 セリヌイアの領主――ケルゥ・スプライアは酷い差別主義者で、庶民や奴隷の血液を多く集めていた。「セリヌイアに行き、虐げられている者たちを助けてやって欲しい」。フィルリア姫に言われて、龍一郎はセリヌイアへ向かう。そのセリヌイアの付近には、絶滅したはずの龍が隠れ棲んでいるというウワサがあった。 【第Ⅲ部】第97話~第128話 完結 龍騎士の爵位をもらいうけた龍一郎は、水上都市セリヌイアの領主として君臨する。龍一郎は奴隷解放令を施行して、みずからの都市の差別をなくそうと試みる。そんなとき、サディ王國の第一王女がセリヌイアにやって來て、人類滅亡の危機が迫っていることを告げる。
8 104未解決探偵-Detective of Urban Legend-
警察では解決できない都市伝説、超能力、霊的問題などの非科學的事件を扱う探偵水島勇吾と、負の感情が欠落した幼馴染神田あまねを中心とする“解決不能“な事件に挑む伝奇的ミステリー。
8 93