《【8/10書籍2巻発売】淑の鑑やめました。時を逆行した公爵令嬢は、わがままな妹に振り回されないよう格悪く生き延びます!》62、境目から水が染み込むように
そこから、イリルと私はペルラの修道院に向けて急いだ。王都からペルラまで、馬車で一週間はかかる。
「この馬ならその半分の時間で行けるよ」
とイリルは安心させるように言ってくれたけど、どんな馬も休息は必要で。
「仕方ない、今日はこの村で休もう」
「……そうね」
私たちは途中で一度だけトロフェンという小さな村に立ち寄った。
「母が亡くなったんで、親類に妹を預けに行くんだ」
私たちは訳ありの兄と妹として宿屋に泊まった。早くペルラに行かねばと焦る気持ちはあったが、が疲れていたのも本當で、屋と壁のありがたみを噛み締めた。
「おやおや、それは大変だね」
人の良さそうなおかみさんが同した聲を出す。深く帽子を被った私は神妙に頷いた。おかみさんがパンをひとつ余分にくれた。
「ほら、これも食べな」
「ありがとうござ……ありがとう」
わざとぞんざいな言葉遣いにするに意外と苦労した。パンはとても優しい味がした。
「ところで、最近何か変わったことはないかな?」
Advertisement
イリルが何気なく聞いた。周りがしざわめいたのがわかった。
「まさか、事故が多いとか?」
おかみさんが驚いたように答えた。
「あんた、なんで知ってるのさ」
「ここに來る前、ブリビートの村に行ったことがあってね。村長が亡くなったとか、大騒ぎだったよ」
なるほど、とおかみさんと常連客らしいおじさんが頷いた。ブリビートの村のことはここまで知れ渡っているようだ。
「あそこで事故が続いたって話だろ? 私らも行商人から聞いて気味悪がっていたんだけどね、この村は無事だったんだよ」
「どういうこと?」
思わず顔を上げて私は聞いた。おかみさんの安心したような笑顔が目にる。
「この間、突然馬が暴れたんだけどね、不思議なことにルイザ様のブレスレットを著けたうちの娘は無事だったんだ」
「だからそれを言ってるのおかみさんだけだって」
「うちの娘が噓ついてるって言うのかい?!」
「そうじゃなくて、見間違えとか」
おかみさんと常連客のおじさんの話は続いていたけれど、私は黙っていられなくて口を挾んだ。
「あの! それ、詳しく聞かせてもらえませんか?」
「おや、妹さん、興味があるのかい?」
「え……っと、はい」
おかみさんは得意気に語る。
「うちの娘、マーリーザって言うんだけどね、教會の帰り、畑の脇を歩いていたら突然馬がこちらに向かって來たって言うんだ。危ないじゃないか。そうだろ?」
「はい」
「でもね、娘が言うにはブレスレットがって馬が驚いて、それで助かったんだよ! 本當だよ? そんなのは誰も見てないっていうんだけど、私と娘はルイザ様のおかげだと思ってるのさ」
「ルイザ様のブレスレットは……どこで手にれたんですか?」
「ああ、慈善院が近くにあるからね、そこで特別に配られたんだ」
ああ、あのとき作ったあれだ、と私は思った。よかった。ちゃんと間に合った。私はもうひとつ、答えのわかっている質問をする。
「娘さんはおいくつですか?」
「もうすぐ16だよ」
袋の中で守り石がふるふると揺れた。
‡
なぜか最近、「あれ」がうまく行かない。
ドゥリスコル伯爵は、仕掛けた罠から獲が逃げるような腹立たしさを立て続けに味わっていた。
それまではそうではなかった。仕掛けた『魔』は、簡単に人を捕らえ、また次の大がかりな『魔』を仕掛けることができた。
ゲームに勝ったような高揚を味わっていた伯爵は、たまにはこうやって手順を踏むのも悪くはないと思っていた。文句があるとしたら、簡単すぎて張り合いがないことくらいか。
——これならあいつのみもすぐに達できるだろう。
じられたを使って「ドゥリスコル伯爵」を呼んだ男のそもそもの願いは、自分を王にしてくれ、だった。馬鹿なやつだと伯爵は笑った。
——なぜお前の言うことを聞かなくてはならない? そんなことをして私に益は何もない。
善の邪魔をしてこそ『魔』。目の前の男は『善』とは程遠かった。つまらない。死の恐怖と快楽のいを使い分けて、人々を墮落させることこそが彼の楽しみであり使命だった。しかし、男は諦めなかった。
——それでは、カハル王國の王を殺すことはできるか。
カハル王國。その名前には聞き覚えがあった。彼が拒絶しないのをじた男は続ける。
——あの國は『聖なる者』を生み出す國。王は何重にも守られている。『聖なる者』の邪魔をして、最終的に王を殺してくれ。
——それでも私に益はないが?
——そうしてくれたら、我が國の善良な者も差し出そう。
自分ののために善良な者を差し出すということは、自分こそ悪である自覚があるということだ。面白い。そんなことを言う馬鹿は初めてだった。
何百年か前にシーラに眠らされた「私」が、もう一度あの國を躙する。
——いいだろう。
彼は答えた。
——ただし、覚えておけ。「私」とお前はもう、魂の共同だ。私に何かあればお前も滅ぶ。
男は震えていたが頷いた。
そこからすぐに「私」はこの國に來た。境目から水が染み込むように、じわじわと力を増していった。
どうやら長い年月の間に、人々の意識にも変化があったようだ。この國を守るべき『聖なる者』が目覚めていない。「守り石」と離されているのだろう。だからこそ易々とり込めた。
馬鹿な奴らだ。
目覚める前に消してしまえと、「私」は16歳になるを狙って『魔』を仕掛けた。ゆくゆくはそれ以外の者たちも狙うつもりだった。なのに。
「アラナン、今聞いたのだけど、あちこちの村でブレスレットが配られているらしいわ。あなたが危険だと言ったあのブレスレットよ。どうしましょう、でも王妃様のご命令らしいし……」
「なんだと?」
「アラナン……アラ……ナン」
大分ターゲットも絞れた。そろそろ「人形」たちも壊れてくる頃だ。ここでカタをつけておこうか。
‡
オトゥール1世が倒れた宮廷で、レイナンは急遽代理として采配を振るうこととなった。
ひとまず『聖なる者』候補とされたミュリエルは賓客扱いされ、オーウィンも保護者としてそれに準じた扱いをけている。警備という名の見張りは厳重に付けられているが、本人たちは気にしていない。
教會関係者が慌てたようにミュリエルに面會を求めたのも気にらなかった。限られた者のみに許したが、今まで何もしなかった癖にと苛つく気持ちをレイナンは抑えられない。
憧れの宮廷でお客様扱いされたミュリエルは、最大限にわがままに暮らしていた。
「嫌よ、こんな服、もっと素敵なのないの?」
「すぐに代わりをお持ちします」
「頼むよ、うちのミュリエルは特別なんだ、わかるだろう?」
そんな會話が繰り返されていた。
書籍・漫畫化/妹に婚約者を取られてこのたび醜悪公と押しつけられ婚する運びとなりました~楽しそうなので張り切っていましたが噂が大げさだっただけで全然苦境になりませんし、旦那様も真実の姿を取り戻してしまい
【書籍化・コミカライズ企畫進行中】 「私は父に疎まれておりました。妹に婚約者を取られても父は助けてくれないばかりか、『醜悪公』と呼ばれている評判最悪の男のところへ嫁ぐよう命じてきたのです。ああ、なんて――楽しそうなんでしょう!」 幼いころから虐げられすぎたルクレツィアは、これも愛ゆえの試練だと見當外れのポジティブ思考を発揮して、言われるまま醜悪公のもとへ旅立った。 しかし出迎えてくれた男は面白おかしく噂されているような人物とは全く違っており、様子がおかしい。 ――あら? この方、どこもお悪くないのでは? 楽しい試練が待っていると思っていたのに全然その兆しはなく、『醜悪公』も真の姿を取り戻し、幸せそのもの。 一方で、ルクレツィアを失った実家と元婚約者は、いなくなってから彼女がいかに重要な役割を果たしていたのかに気づくが、時すでに遅く、王國ごと破滅に向かっていくのだった。
8 152【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
8 88【WEB版】劣等賢者のケモノ魔法革命〜「獣人は魔法が使えない劣等種だ」と宮廷魔術師から追放されたけど、弟子とFランク冒険者を満喫してたら、いつの間にか最強の魔法學院ができていた〜:書籍化+コミカライズ
第一部完結。 書籍化&コミカライズ決定しました。 「アンジェリカさん、あなたはクビです!」 ここは獣人は魔法を使えないことから、劣等種と呼ばれている世界。 主人公アンジェリカは鍛錬の結果、貓人でありながら強力な魔法を使う賢者である。 一部の人間たちは畏怖と侮蔑の両方を込めて、彼女を【劣等賢者】と呼ぶのだった。 彼女はとある國の宮廷魔術師として迎えられるも、頑張りが正當に認められず解雇される。 しかし、彼女はめげなかった。 無職になった彼女はあることを誓う。 もう一度、Fランク冒険者からやり直すのだ!と。 彼女は魔法學院を追いだされた劣等生の弟子とともにスローな冒険を始める。 しかも、どういうわけか、ことごとく無自覚に巨悪をくじいてしまう。 これはブラック職場から解放された主人公がFランク冒険者として再起し、獣人のための魔法學院を生み出し、奇跡(悪夢?)の魔法革命を起こす物語。 とにかくカワイイ女の子+どうぶつ萬歳の內容です。 基本的に女の子同士がわちゃわちゃして、ドタバタして、なんだかんだで解決します。 登場する獣人のイメージは普通の人間にケモミミと尻尾がついた感じであります。 ところどころ、貓や犬やウサギや動物全般に対する獨斷と偏見がうかがえますので、ご注意を。 女性主人公、戀愛要素なしの、軽い気持ちで読める內容になっています。 拙著「灼熱の魔女様の楽しい溫泉領地経営」と同じように、ギャグベースのお話です。 評価・ブックマーク、ありがとうございます! 誤字脫字報告、感謝しております! ご感想は本當に勵みにしております。
8 57とある素人の完全駄作
限界まで中二病っぽく設定を盛った自分を、「とある科學の超電磁砲」の世界にぶっ込んでみた、それだけの超駄作小説。 P.S.白井黒子の出番が少ないです。黒子好きの人はご注意下さい。 主人公はCV:梶裕貴or高山みなみでお願いします。
8 1263人の勇者と俺の物語
ある世界で倒されかけた魔神、勇者の最後の一撃が次元を砕き別世界への扉を開いてしまう。 魔神が逃げ込んだ別世界へ勇者も追うが時空の狹間でピンチが訪れてしまう。 それを救うのが一ノ瀬(イチノセ) 渉(ワタル)、3人の少女と出會い、仲間を得て、 魔神を倒す旅へ出る。 2作目の投稿となります。よろしくお願いします!
8 71異世界転生者〜バケモノ級ダンジョンの攻略〜
pv【12000】越え! 私こと、佐賀 花蓮が地球で、建設途中だったビルの近くを歩いてる時に上から降ってきた柱に押しつぶされて死に、世界最強の2人、賢王マーリンと剣王アーサーにカレンとして転生してすぐに拾われた。そこから、厳しい訓練という試練が始まり、あらゆるものを吸収していったカレンが最後の試練だと言われ、世界最難関のダンジョンに挑む、異世界転生ダンジョン攻略物語である。
8 159