《【8/10書籍2巻発売】淑の鑑やめました。時を逆行した公爵令嬢は、わがままな妹に振り回されないよう格悪く生き延びます!》65、お前が「魔」か
振り返る前から誰かわかっていた。
黒い髪に赤い瞳。
イリルはさっと両手を広げ、私を背中で守るようにして言った。
「ドゥリスコル伯爵、どうしてここに?」
伯爵は、赤い目を細めながら馬から降りた。そして笑う。
「石を奪って逃走したあなたたちを追えとレイナン殿下が命令したので」
——レイナン様が?
まさか、と思った私よりも早く、イリルが口を開く。
「いい加減なことを言わないでください。レイナンは貴方にそんなことを頼まない」
「ほう? なぜ言い切れるのですか」
「宮廷にどれだけ人がいると思っているんですか? 仮にレイナンがそんな命令を下したとしても、頼む相手は貴方ではない。他の者を寄越す」
「つまり私は信用されていないと?」
「當たり前だ……というか、伯爵、私たちに追い付いたということは、馬を何頭も乗り潰したのですか?」
早く辿り著こうとするなら、そういうことになる。自分の休憩もわずかで、使い捨てのように馬を換して。
でも、と私は思う。レイナン様が命令したのではないなら、伯爵はなぜそこまでするの?
カシャン。
イリルは腰にそっと手を當てた。伯爵は楽しそうに一歩踏み出す。イリルは重心を低くする。イリルの足手まといにならないよう、私も伯爵から視線を外さない。
伯爵は疲れ果てて足を折り曲げて座り込んだ自分の馬を見て言う。
「何頭も、ではありませんよ、これ一頭だけです」
「それは無理だろう。この距離で、この時間でここまで來るということは、途中で馬を換しなくては保たない」
「でもそれは馬の疲れを考慮した話ですよね? 疲れても、ずーっと頑張ってもらえばいい」
「そんなこと不可能でしょう?」
「普通ならね」
そんな會話をわしている間に、馬の様子が段々とおかしくなっていたことに私は気づいた。さっきまで大人しく座っていたのに、呼吸が荒くなっていくのだ。イリルも不審に思ったようで、背中に漂う張が増した。自分の頭を支える力も無くなったのか、馬は地面に顔を付け、ついに足全を地面に投げ出した。苦しそうに、を上下させてぐったりと橫になる。
「何をしたの?」
私は思わず聞いた。伯爵は禍々しく笑った。
「あなたたちはすぐに気持ちとやらを考えるんでしたね。大丈夫、苦痛はじてません。ただ、が限界なだけで」
「何かをかけたのか」
イリルが剣を、すっと抜いた。ゆっくりと構えながら、伯爵に聞く。
「お前が『魔』か?」
おや、と伯爵は両眉を上げた。嬉しそうに。
「ご存知でしたか——はっ!」
ブワッと音を立てて、馬から黒い何かが一斉に飛び立つ。蟲でも土でもない。いわば黒い霧のようなものだ。
「イリル、気をつけて! あれにれないようにして!」
私は本能的にんだ。あれはダメ! あれにれると取り込まれる! 何故かわからないけどそう思ったのだ。
「わかった!」
理由も聞かずイリルは答える。私はどうにかしてあれを消さなくてはと焦る。
「小用なことをしても無駄ですよ」
伯爵は右手を大きく上げ、そしてイリルに向かって振り下ろした。黒い霧はそれは合図だと言わんばかりに、イリルに向かって飛びかかった。
「やめてっ!」
私は悲鳴に似たび聲を上げた。あれにれると、イリルが取り込まれてしまう! それくらいなら私が代わりに——
「逃げて」
イリルは短く言った。踏み出そうとした私より速く、剣を構えて伯爵に向かう。霧も一斉にそこに向かう。イリルは軽快にジャンプして、伯爵の右腕に斬りつけた。
ざしっ。
嫌な音がした。ドゥリスコル伯爵は、涼しい顔をしながら、右手で剣をけ止めた。
ドーナツ穴から蟲食い穴を通って魔人はやってくる
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